Stemming とは,英単語から語幹(stem)を取りだすことですが,Porter Stemmerは1979年に公開された古典的なステマ―で,各種の言語版が開発されています.Common Lisp 版の porter stemmer は Franz 社の Steven M. Haflickによって移植されたものがあります.使ってみるとすぐ分かりますが,まず第1に品詞の区別なくstemmingしますので,connections から connect が得られます.
cl-user(3): (stem "connections")
"connect"
ここは "connection" が出てきてほしいところです.もともと porter stemmer が情報検索 (IR) を目的に開発されたものらしくって,確かに情報検索用にはこれで問題ないでしょうが,それ以外の目的,たとえばエージェントの対話機能のためとか,英語の自然言語解析に使おうとすると,品詞を区別するとか,もっと精密なステミングがほしいということになります.porter stemmer のアルゴリズムは言ってみればヒューリスティックなもので,軽くて速いという利点はありますが,検索精度や再現率はあまり高くないということになります.porter stemmer の問題点は先の資料やオリジナル論文にもきちんと書いてあります.

IBM の Watson では,stem クラスというものを設けて,この問題に対処しているようです.私は WordNet をLODデータにしていますが,WordNet には synset にその意味の説明文や例文があるにもかかわらず,WordNet 内部での相互リンクはありません.synset の説明文や例文をLOD的にアノテートしようとすると,どうしても stemmer が必要になります.Watson とは異なって,WordNet 用のステミング機能が必要だと考えています.