とりあえず、適当に書いた序文をあげてみることにする。

そのとき居たのはI、U、そしてぼくの三人だった。ぼくらは昼休みのひとときを利用して、イギリスのガイドブックを前に、どこに行こうかという議論をしていた。まだ寒い二月頃、修学旅行での班も決まり、早速、自由時間に何をするかという話になったのである。

まず、軍事関係の話に通じているIが地図をじっくりと眺めて、英国中の軍関係の展示場をリストアップしていった。次にUが、すらすらとリストに十個以上の候補を足して行くに至って、ついにぼくもついにげんなりとしてしまい、旅行本を少し人に預けて遠き英国の地に思い馳せてみることにした。旅行は七月の初めだから、向こうは薔薇が綺麗に咲いている頃合いだろう。やっぱりご飯はまずいのだろうか。このようにどうでもいいことをしばらく考えていると、ぼくはふとハムトンコートのことを思い出した。テムズ川の畔の、十六世紀の宮殿の綺麗な庭園と迷路……そう、迷路。昔の作家はここの迷路についてこう語っている。

「うん、ヨーロッパ最大の迷路の一つだからな」

 

「そうだよ、ハムトンコートだよ。迷路に入らなきゃ」

とぼくは叫んだが、そのときにはすでに二人の出した候補でルーズリーフは真っ黒になり、もはや寸分の余地さえ残されていなかった。そこで、ぼくは紙の隅に、申し訳程度にハムトンコートと書き込んでおくことにした

ぼくは数研で合宿をしたときの事を思い出す。あのときは半年以上前にすべての予定をたて、これで大丈夫だろうと思っていたが、結局すべて固まったのが出発の前日になってしまった。しかし、この計画性の無さばかりは持って生まれた物だからどうしようもない。こんこんと、これだけの量を一日で回るのは物理的に不可能だから、頼むから候補を減らしてくれと説得した結果、なんとか二人とも候補を絞ってくれることになった。

つまり、Iはトラファルガー広場と海軍、陸軍、空軍博物館に行きたいと言い、Uはなぜかにやにやとしながら、トラファルガー広場だけで十分だと力説しはじめたわけだ。結果としてリストに加えられたのは、ベーカー街とグリニッジ、大観覧車に切り裂きジャック巡りであった。

こうして、英国での具体的行動に関する話し合いが動き始めたのだが、ここにきて、ぼくたちは一つ採決をすることにした。これ以上議論を続けるべきか? この意見は満場一致で決を採られ、よってこれ以上の話し合いは後日に延期されることになった。つまり、残りの弁当を片づけて、他愛のないお喋りをはじめることにしたのである。

 

次に話し合いの場が設けられたのは六月のことだった。修学旅行の自由行動の範囲が指定されたけれども、何をしようかという問題だ。しかし、IとUは中世ヴェネチアについての議論を黒板でずっとやっていたし、ぼくはぼくで、行動範囲の狭さに憤慨していたため議論どころでは無かった。残りK人を顧みても、彼はただのどかに座っているだけであり、結局、議論が始まるまでには少々の時間を必要としたのである。

なぜなら、何度調べても行動範囲が六平方キロ (諏訪湖の半分ぐらい)しかなかったからだ。その中にはベーカー街もリージェンツパーク(ロンドン随一の薔薇の名所)も含まれていない。グリニッジも遙か彼方。ロンドンから数十マイルも離れたハムトンコートなんて論外。地図を見ていると、奴にこんな具合で馬鹿にされているような気がして頭に来たが、

「まあ、迷路の中で迷い死んでも困るから、丁度良かったんだよ。交通機関も無理だとの話だし、テムズ川を泳いででもして行くかい?」

と友人は言われて理性を取り戻した。まあ確かにそうかもしれない。自由時間は5時間と、いくら何でも短すぎるが、確かに範囲制限なしで高校生を百人以上街に放り出したら危険すぎる話である。仕方あるまい。

 

いや、本当に仕方ないものだろうか?海外の慣れない道だと、うっかりベーカー街あたりに迷い込んでいる可能性も無い訳じゃない。計画にない道に踏み込み、にやりと笑って顔を見交わしてから歩き始める。

しかし、この案に対する風当たりは強かった。皆が危険すぎると主張するため、リージェンツパークの夢は潰えた。なんと夢の無いことか!

  そういえば、ロンドンから五時間どこまで行けるものなのだろう?

調べてみると、車さえあれば、リージェンツパークを出発してから六時間でパリやアムステルダム、五時間あればブリュッセルまでたどり着けるそうだ。ヨーロッパは思ったより狭い世界だったのだろうか。

 

そのうち、誰かが実際的にも、食事の話でもしようかと言い出した。一つ気になるのは、向こうの食事があまりにもあんまりだった場合はどうしようかということだ。周りに聞いてみると、もうすでに何か持って行く心づもりをしているそうだ。

「一般的な漢方ぐらいならもって行くよ」

とUは言った。それならば、と

「とりあえず必要な物は……フライパンと鍋と、それから……」

と僕が言うと、誰かがこれを聞いて、

「フライパンなんて食べられ無いぞ」

と言ったので、あまりにも無茶なことを言うんじゃないよと制止した。いやしかし、いくらなんでもホテルにガスコンロはあるまい。湯沸かしポットに袋ラーメンを入れて保温をきちんとすると、うまい具合にラーメンができるかもしれないが……いや、ホームシックに罹るような、天然記念物のごとき繊細な精神の持ち主がいるだろうか? そんなバナナ……

 

そうそう、自由行動の話だった。どうもOが知り合いの方から、安くて美味しいイギリス料理の店について聞いてきているそうだ。その店はピカデリー・サーカスの近くにあり、イギリス人もよく行く所らしい。それならば安心と言うことで、まとまった計画は以下の通り。

ピカデリー・サーカスを出た後、件の店で昼食をとる。その後、トラファルガー広場で写真をとり、ウエストミンスター寺院へ向かう。テムズ川を渡り、コヴェント・ガーデンで買い物をし、ロンドンの三越で集合。

こういう具合だ。各の場所の説明は後に譲るとして、とりあえず、ここまで決まった段階でぼくたちは鞄を引っかけ、家路につくことにした。

 

こうして、後は出発を待つのみとなったわけだ。
                   >>その2 関空〜クロイドン
   
<思い出ぼろぼろ>
……もう少し文章の流れを改善しないと、載せられたものじゃないな。 
脚色しなくても十分ばかばかしかったから、すこし脚色してみた。