風呂から上がってみると、家族を前にした父がこっくりさんをやっていた。どうやら、小学校時代に流行った遊びについて話に花を咲かせていたらしい。
 ぐいぐいと十円玉を動かしている様子は傍目に非常に愉快で、尋ねる文言も明日の夕食といった詰らぬ内容である。呼び付けられた方もいい迷惑であろうし、こっくりさんでなくても低級霊を箱詰めして送り付けたくなることは必至だ。
 しばらく眺めて内に話は変わり、昔に試した相性診断について盛り上っていた。これがまた非常にうさんくさい。手順は以下の通りである。
 1.相性を調べたい者の名前を、母音と子音にわけて数字に置き換える。例えば「ち」なら第四行(あ、か、さ、た)の第二列(a,i)であり、(4,2)とする。
 2.数字を横一列に並べる。
. 3.パスカルの三角形の要領で計算を繰り返す。
 4.最後に残った数字の下二桁が相性(百分率)である。
ね、下らないでしょう?

 時局が急変したのはその五分後のことであった。弟に恋ひ焦れる相手がいるという噂が家族じゅうに(それも一瞬の内に)広がったのだ。浮いた話とは全く無縁の僕とは大違いであり、弟とその人との相性を調べる流れになったのはいうまでもない。僕が発案し、両親が賛成し、妹がうえーいと喜んで計算を始めた。
 しばらく後、父がたらりと汗を垂らし、僕と妹が水道管のように吹き出してコーラを無駄にした。数瞬が過ぎ、弟が複雑な表情を作った。
 結果は一桁も一桁、なんと2%であったのだ。

 まあなんだ、おみくじと同じではないか。当るも八卦、当らぬも八卦。良くても少し嬉しいぐらいだが、悪ければ悪いで、喉に刺さる小骨の如くちくりとする。
 裏でひっそり大学との相性を調べ、悪くはない結果に胸を撫でおろした。

【思い出ぼろぼろ】
・コーラは骨を溶かすという都市伝説が流布していたのを覚えている人はいらっしゃるだろうか。僕はこれを信じてはいなかったけれど、いくらかは精神的な影響を受けていたのか、今でもコーラを飲むことはあまり無い。
・おみくじを売ったことのある身としては、『氷菓』の第何話だったか、『あきましておめでとう』には大いに共感できた。受付をやっているシーンで、傍らにちらりとミルク飴が映っていたのだ。お客が多いといってもルーチンワークは次第に飽きてくる。そんな時にひょいと手を伸ばして舐める飴は美味しく楽しい。
・家の鳥がやけにはしゃいでいるようだった。不思議なテレパシイでも働くのだろうか、こいつは僕が沈んでいるときや体調の悪い日は静かにしていることが多く、作業をする際に邪魔だなあと辟易していると、知らぬ間に巣に帰っていたりする。殿試前日の不思議な精神状態を、平静を装っても見抜かれていたのかもしれない。
・京都アニメーションのアニメは描写が細かいと素人目に思う。持ち物や小さな仕草で好みや性格を表現しているようだ。キャラクターもあくが強くなく、所作の端々に相手への思いやりや優しさが垣間見せているのが好ましい。
・この三日の間に、なんと五回ほども留学してはみないのかと問われた。何ですか、あなたがたはそこまで私を国外追放したいとお思いなのですか。