2010年09月08日

戦術よりも、作戦を重視せよ

作 戦 レ ベ ル ー現代将校の死活的知識ー
         Major Charles Bauland
はじめに  
 
 戦争は、3つのレベル、すなわち戦略レベル、作戦レベル、戦術レベルで研究される必要がある。この小論はこのうち作戦レベルについて述べる。キャンペーン計画の立案に際し、「戦争の作戦レベル」に関する考え方を理解することは、米軍将校の重要な要件である。
 作戦レベルは、戦争のすべてのレベルに接続し、軍事的手段によって国家の戦略目標を効果的に達成する上で極めて重要である。このレベルにおいて、指揮官の基本的な任務は、戦略目標を達成する軍事状況を作り出す一連の行動を決定することである。換言すれば、作戦レベルの指揮官は、「如何に戦術部隊を運用するか」を決定する時、絶えず戦略レベルと相互に関係付けなければならない。このような相互関係が存在するため、「戦争の作戦レベル」の問題を解く鍵は、戦略にあるのである。

1、作戦レベルの無視 
 「戦争の作戦レベル」の認識および研究は、第二次世界大戦以来無視されてきた。L.D.ホルダー大佐は、彼の論文[米国陸軍における作戦術]の中で次のように述べている。「米国陸軍においては、作戦に関する研究は第二次世界大戦で終わった。われわれは、作戦術について議論することを怠っただけでなく、それに関して考えることさえ拒絶した。1980年代の初めになって、やっと作戦レベルとキャンペーン計画の立案に関心が向けられだした。」

2、戦争の3レベルの定義とその相互関係
 「戦争の作戦レベル」の考え方の重要性を理解するための基礎として、戦争の3レベルを定義することから始め、次いで各レベル相互間の密接な関係を示すことにする。
(1) 戦略レベルとは 
 米陸軍戦争大学のマイケル・モリン大佐は、戦略レベルを、国家あるいは国家グループがその安全保障目標を決定し、その目標を達成するため、国家的資源を造成・使用する戦争レベルと定義する。さらに、米陸軍の[FM 100-5作戦]は、軍事戦略について次のように記述している。
 「軍事戦略とは、武力の行使ないしは脅しによって、付与された政策目標を達成するため、国家あるいは同盟国の軍隊を運用する術(ART)および科学である。軍事戦略は、戦争を抑止ないしは遂行するにあたり、軍事行動の基本的条件を規定する。それは戦争戦域(theater of war)と作戦戦域(theater of operations)におけるゴール(戦略目標)を設定し、部隊を割り当て、装備を付与し、武力使用の条件を規定する。」
(2) 作戦レベルとは
 FM 100-5を参照すると、作戦術に関する陸軍の見解は、「作戦術は、キャンペーンおよび主要軍事行動(major operations)の設計・編成・遂行によって、戦略目標を達成するための作戦戦域における軍隊の運用法」である。モリン大佐は、さらに、次のように詳述する。
 「作戦レベルにおける諸活動は、作戦目標を確立し、その目標を達成するためのイベントを連続段階的に定め、これらのイベントを生起・継続させるための資源を投入することによって、戦術と戦略を結びつける、」と。
(3) 戦術レベルとは
 「戦争の戦術レベル 」は、FM 100-5に「軍団以下の小部隊指揮官が、潜在的な戦闘力(combat power)を戦闘(battle)および交戦(engagement)に転換する術(art)」と記述されている。モリン大佐は、戦術レベルについて「戦術部隊あるいは特別任務(task)部隊に付与された目標を達成するために、戦闘(battle)および交戦(engagement)が立案され、実行される戦争レベル」として記述している。
(4) 戦争の3レベルの相互関係
 戦争の各レベルを定義することによって、戦略レベルから作戦・戦術レベルへの明確な連結の存在が明白になった。ホルダー大佐は、この連結を次のように記述する。
 「その最上部が戦略に接続する作戦術は、情勢分析、戦略上のニーズを満たす作戦目標の決定、任務(タスク)達成に必要な手段の指定という軍事術である。 作戦術は、その最下部で、領域におけるキャンペーンを設計し、遂行する方法である。その方法は、戦術行動から最も大きな利点を引き出すよう、いつ、どこで闘うべきかを決め、戦闘(battle)を予期して部隊を配置することである。」
 モリン大佐は、作戦レベルを戦略・ 戦術レベルと関連づけるにあたって別の側面から説明する。「作戦レベルでは、部隊は、戦術レベルよりも時間的にあるいは空間的に広い次元で行動する。すなわち、作戦レベルの部隊運用では、戦術部隊の兵站・管理支援を確保するとともに、戦術上の成功が戦略目標を達成するように部隊を活用すべきである。」と。
  しかし、作戦レベルを理解することの重要性は、誇張されてはならない。優れた作戦術あるいは戦術上の運用が戦略を補うには、常に戦略というガイダンスを明確に理解しなくてはならない。ジャブロンスキ大佐は、マルコス・ツリウス・シシアロの「もし本国での賢明な会議がなければ、陸軍は野戦であまり価値がない」という言葉を引用して、この点を指摘する。

3、作戦レベルの重要性を示す歴史上の事例
(1) 第二次世界大戦中のドイツ軍の事例
 作戦レベルと戦略レベルの関係について理解することの重要性を示す一例は、第二次世界大戦中のドイツ軍の実情である。作戦・戦術上の卓越した能力にもかかわらず、戦略上の考え方に欠点があり、これが戦争の結末を左右した。ジャブロンスキ大佐は、次ぎのようにも述べている。
  「ドイツ軍は、ヒットラーの戦略目標がドイツ軍の軍事能力を超えていたので敗北した。この戦略と作戦の断絶に対して、ヒットラーの野戦軍司令官たちは、ある歴史家が書いたように、小額でポーカー・ゲームをするプレーヤーのように、彼らの知識・能力を実証し、しかも出来る限り終戦を避けるため、戦場での勝利に努力を集中したのである。」
(2) ベトナム戦争における米軍の事例
 第二次世界大戦におけるドイツの失敗とベトナムにおける米国の失敗の根本的な理由には、著しい類似性がある。私は、ベトナム戦争における作戦レベルの考察の欠如と、さらには、我々が今になってやっと理解する「作戦と戦略の断絶」の存在を指摘しているのである。付与される戦略目標は、不明瞭だった。作戦レベルの指揮官、つまり戦域最高司令官(CINC)は、国家指揮機関(NCA)に明確な戦略目標を問いただそうとしなかった。むしろ、NCAの指示は、統合参謀本部から在ベトナム米軍司令官--戦術指揮官--に直接付与された。具体的な「作戦上の指示」の欠如が主要な原因で、米軍は、曖昧な戦略目標を追求することになり、その努力は混乱し、散発的なものとなった。
 戦略目標を作戦目標に転換する作戦レベルの指揮官がいないため、焦点が欠如してしまった。ジョン.F.ミイハンIIIは、その論文[軍事行動の三レベル]の中で、次ぎのように書いている。
 「指揮官が自らの焦点を失い、戦術行動に没頭するなら、戦闘に勝利するかもしれないが、彼の任務を遂行できないであろう。これがベトナムでの大失敗の原因だった。 戦術的成功の合計が戦略目標(それ自体不明瞭な)を達成しないだろう、ということを認識することができないほど、戦術上の成功に夢中になるようになった。」と。

4、キャンペーン計画
(1)キャンペーン計画とは何か
 「戦争の作戦レベル」に対する責任を負う米軍組織内の指揮官は、戦域の最高司令官である。具体的には、統合軍司令官である戦域最高司令官(CINC)、例えば太平洋統合軍最高司令官(CINCPAC)、大西洋統合軍最高司令官(CINCLANT)、中央統合軍最高司令官(CINCCENT)である。戦域では、最高司令官が付与された戦略目標を達成するために、統合された作戦計画(operational plan)を設計する。この計画の立案は、政治・戦略上の狙いと実際の軍事手段の間のギャップを埋める。計画立案の結果生まれる「統合された作戦計画」は、キャンペーン計画と呼ばれる。
 キャンペーンは、それ自身異なる多くの定義があり、キャンペイン計画を立案しようとする最高司令官や彼の幕僚を悩ます。例えば、陸軍のFM 100-5は、キャンペーンを「戦争戦域における戦略目標を達成することを目指した一連の統合行動」として定義する。FM 101-5-1は、キャンペーンについて、「長期的な主要戦略目標を達成するために、戦争の段階を形成する一連の軍事行動」と記述する。
 要するに、キャンペーン計画は、戦略目標を軍事目標に転換するもので、作戦レベルの指揮官の意図を明確にする。この計画によって、作戦レベルの指揮官は、戦略上要求される条件を満たし、しかも効果のある軍事行動の考え方を陸・海・空部隊に明示しなくてはならない。
 スリム元帥が指摘するように、「戦争の作戦レベル」での指揮官である戦域最高司令官(CINC)は、「大きく捉えなければならない」。ジャブリスキは、さらに次のようにも記している。
 「このレベルでの指揮官は、戦略目標を達成するために戦術上の領域を超えた時間とスペースで考え、決定的な作戦目標(operational objectives)に焦点を当てることが要求される。作戦目標としては、対峙する敵部隊や予備部隊の撃破から、同盟国を引き入れたり、敵住民の支援を弱化させる、といった抽象的な目標までいろいろあるだろう。」
(2)作戦レベルにおける敵の重心の重要性
 作戦レベルの軍事行動計画(作戦計画)、すなわちキャンペーン計画は、クラウゼウイッツが言い出した敵の「重心」を破砕させるように努力しなければならない。敵の重心が破砕されたら、「全戦域あるいはその重要地域において、敵の立場を支えきれなくする」という目標は達成される。ホルダーは重心の考え方を次のように拡大する。
 「重心の考え方は、計画立案者が綿密かつ明確な目標に集中するのに役立つが、何が実際に重心であるかを見出すことは難しい。重心は、工業地帯や首都の支配、あるいは敵対する大部隊の撃破のような明確な地形目標ないしは部隊目標かもしれない。住民の物理的安全や忠誠といった非地理的な目標、即ち「ソフト」もそうである。」
 重心の考え方の重要性は明白である。それは、「戦争の作戦レベル」における指揮官とって特に重要であるが、戦争の全レベルにわたって言える。ジャブリスキは次のように記す。 「戦略との連結」が「何が重心であるか」を明らかにする。そしてすべてのものが依存する「力と動きのハブ」に焦点を当てることによって、戦争のイニシアチブをとること、さらには戦争をコントロールすることさえ可能である」と。

おわりに
 戦争の作戦レベルとキャンペーン計画の立案に関する研究および実施は、ともに無視されてきた。両方に対する関心の再到来は近年浮上しており、この傾向は継続されなければならない。なぜか。それは、将来、この小論で示したように、ベトナム戦争において大敗北をもたらした「戦略と作戦の断絶」を回避するためである。
 したがって、将校のプロフェショナルな軍事教育は、「戦争の作戦レベル」とキャンペーン計画の立案に関する履修・研究を含む必要がある。これは、将校の階級と経験に釣り合ったものであるべきだ。
(Global Security. Org に掲載された「The Operational Level: Vital Knowledge for Today’s Officer」, U.S. Marine Corps University Command & Staff College Report1989より60%の超訳)


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