アリアンロッド・サガ・リプレイ・アクロス(1)  天に月、地に剣 (富士見ドラゴンブック 23-31) アリアンロッド・サガ・リプレイ・アクロス(1) 天に月、地に剣 (富士見ドラゴンブック 23-31)
久保田 悠羅

富士見書房 2008-10-20
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 8月に発売された「アリアンロッド・サガ・リプレイ\鑞陲離廛螢鵐札后廚紡海、サガ・シリーズ第二弾、「アリアンロッド・サガ・リプレイ・アクロス‥靴坊遏地に剣」が発売となりました。

 

「アクロス」シリーズのGMは久保田さんということで、「ハートフル」シリーズのようなギミック満載のシナリオに期待が掛かるところでしたが、エリンディル大陸の冒険者の物語とはまた違った、アルディオン大陸を生きる傭兵たちの物語としては十分面白いものを見せてもらったかと。舞台設定が他のリプレイの5年前ということもあって、ある程度の確定した未来が分かっている状態での過去の物語、というシナリオを遊ぶ楽しさも少し分かったような気がしましたし。選択によって変化する物語は、プレイヤーとして遊べたら凄く楽しそうです。……ただまあ、戦闘に関しては遠慮したいものがありましたけど(汗)。

 

 この「アクロス」シリーズのイラスト担当の植田亮さんは、最初名前を見たときは「誰?」と思ったのですが、その後調べてみたら、以前表紙絵に惹かれて(無論、中身も検討した上で、ですが)購入した小説のイラストを描いていた方ということで、それからは割と楽しみにしておりました。実際、表紙絵も中のイラストも、佐々木さんやbomiさんなどとはまた違った感じのアリアンロッドの世界が見られて良かったと思います。

 

以下、キャラクターと各話感想。

 

 

◆キャラクター

 舞台設定が5年前、という以外にも、このシリーズだけPCがレベル1からスタート、というのがあったわけですが、何故このシリーズだけそういう扱いだったのかは、本書を読んで納得しました。TRPG完全初心者の吉村さん(※「吉」の字が違いますが、出てこなかったのでこれで)と、TRPG経験は豊富だけど「アリアンロッド」は初心者の矢薙さん。そんな二人がプレイヤーで参加するということで、分かりやすく1レベルから、ということのようで。同時に、「サガ」シリーズから「アリアンロッド」に触れる読者への入門書的位置付けでもあるのかと。「ハートフル」でいろんな遊び方を見せてくれた久保田さんがGMというのも、そういう理由ならその選出も納得ですし。

 

 さて、そんな感じで作られたキャラクターたちは、何と攻撃役が全員遠距離攻撃というパーティーに(笑)。そういう偏ったパーティーというのは面白そうでもあり、不安でもあるわけですが、今のところはきくたけさんの「ボルテクスアタック」が宙に浮いている以外は何とかうまくいっているのかなぁ、といったところ。第一話のゴーレム戦のようなのも含めて長短あるでしょうが、この先どうなるのかはけっこう楽しみです。

ユンガー:エルダナーンで美形キャラなのに、眼鏡で無精ヒゲというギャップが面白いなぁというが最初の印象。シナリオ開始後は、ツヴァイの未熟さをからかいつつも(?)肝心なところではきちんと締める小隊長は良い感じで、今のところこのシリーズの中では一番好きなキャラかもしれません。

能力値の問題で「アリアンロッド」ではエルダナーンがシーフ/レンジャーというのは今までありませんでしたが、他のゲームや物語ではむしろエルフと弓のセットはよく見ると思うので、ビジュアルはけっこうしっくりときました。というか、基本ルールブックのヴァーナよりもこっちのほうが嵌るかも? どうでもいいですが、これが「アルディオン大陸ガイド」のサンプルキャラにエルダナーンの弓持ちが入ることになったきっかけというのは面白かったです。

エルザ・ブルックス:「ホントにTRPG初心者か?」というつっこみに頷いてしまうほど、すっかりエルザとして溶け込んでいる吉村さん。あれこれ設定が浮かぶのは、脚本やシリーズ構成をやっている方だからかと思いますが、それをそのまま演じてしまえるのは凄いと思います。第一話の時点でも、寝起きが悪いとか、調理道具を持ち歩いているとかでそれなりにキャラが立っていたように思うものの、第二話では完全に商人キャラとして確立してしまいましたし。ついでに、GMの提案とはいえ先行シリーズのPCであるアルの姉ということになったので、シナリオネタまで提供することに。これは、次巻以降も楽しみなキャラです。

ツヴァイ:きくたけさんとしては珍しい熱血系少年キャラ。珍しいというか、こういう役は初めて見たような気が。立場的には下だったカッツにしても、先輩として後輩を引っ張っていく部分はあったと思うので、正真正銘の導かれる側のキャラを見るのは初めてかと。でも、これはこれで新鮮で面白いです。懸念していたダイス目は良かったり悪かったりで、少なくともカッツよりは良いような印象がありますが……それでも最後に決めきれなかった辺りは、ツヴァイの未熟さの表れと思えばあれはあれでシナリオ的には面白いのかもしれません。

ダイン:これで外見がもっと人間っぽかったら、もしくはメロディーのように可愛い(ごつくない)感じだったらなぁ……というのが個人的には非常に残念なキャラ。立ち位置的にはたぶん一番好きなタイプと思うので。こう、さり気なく慎重論を差し込むところとか(笑)。データ的には、アコライトでHP回復、アルケミストでMP回復という、こういうタイプの支援キャラも面白いなぁと思いました。あとは、もう少し堅くなれば盾役兼支援役としては完璧でしょうか?

 

◆第一話「裏切りのプレリュード」

 冒頭でも書きましたが、エリンディルでの冒険者とは違って、傭兵としてのシナリオが面白かったです。この第一話では、グラスウェルズ軍偵察時の三つのルートと、レイウォール軍への援軍要請時の帰還の選択が特にそうですかね。どちらも、どれを選ぶかで物語が全く違うものになっていた、というのも面白いところですし、その選択を、傭兵としての視点に立って考えて動いていく、というのもまた面白いところで。久保田さんも解説で触れていますが、こういったところで、こちらの舞台は戦争中であり、そこで生きる傭兵たちの物語というのが伝わってくるのが良いですしね。

 

 又、そうしたところから、さり気なく冒険の定番であるダンジョンに繋げていったのはうまいと思いました(PCの選択次第ではまた違う展開だったでしょうけど)。何気なく高レベルエネミーが出てきたのには驚きましたが、直接戦闘するのではなく、危機感を煽るものの一つとして出すのは、それはそれで面白いと思いました。メロディーのようなお助けキャラにするのも良いですし。

ただ、ラストバトルまでもが高レベルエネミーなのには「え……?(汗)」と思ってしまいましたが。1レベルPCに3レベルのモブ(複数)と8レベルのボス……何か一手間違えれば、あるいは極端にダイス目が悪かったら全滅しかねないバランスかと。まあ、そのバランスを取るための装甲のギミックは面白いとは思いますけどね。こんなことが言えるのは、PCたちが無事乗り切ったからではありますが。

 

◆第二話「陰謀のアルペジオ」

 殺意ありまくりのラストバトルに、久保田さんGMのセッションには参加したくないなぁと思ってしまいました(笑)。いや、そこまでの部分はかなり参加してみたいんですけどね。この第二話でも、仲間救出のための方法とか、エルザの機転で危機を回避した諸々とか、第一話と同様、選択次第でいろいろと変化したであろう部分は面白そうなので。下手打つとラストバトルで敵が増えるとかも、それだけ見れば面白いとは思いますし。ただ、途中でやたらと戦闘がある上に、その中にもラストバトルで戦う中にも、中ボスレベルの敵が混じっているのはどうなのかと。更には、ラスボスが16レベルって(汗)。残りHP5まで追い詰めただけでも凄いと思いますよ、これは。まあ、全滅の可能性が高いことを見ていたからか、救済策も用意していたので、ここで「アクロス」シリーズ終了となることはありませんでしたけど。

 

 第一話の時点で怪しかったグレゴリーは、ヒューバードの名前が出たことでそっちの陰謀かと思いきや(第一話の援軍遅延自体はそうだったのかもしれませんが)、バルムンクという特定の国に捕らわれない謎の組織の関係者、と。……スカディといい、久保田さんってこの手の組織が暗躍している話が好きなのかしら……?なんて思ってしまいますが、平行する3シリーズの中でこれを扱うのに最適なのは、PCたちが傭兵という立場にいるこのシリーズというのもあるのかも。

 

 シナリオ的なものとは別として、エルザとユンガーのアリアンロッド初心者コンビが見ていて面白かったです。エルザがどんどん商魂たくましいキャラになっていくのも笑えるところでしたが、個人的には、転倒したまま攻撃を繰り出すという思い切った戦法を取り、更にはそれで実績を上げていたところがツボでした(笑)。

 

 

 余談ですが、この本のサブタイトルである「天に月、地に剣」にはどんな意味があったのだろうというのがふと気になりました。今までのリプレイのサブタイトルって、大体内容と関連があるようなタイトルが付けられていたと思うのですけど……。