ココロコネクト ヒトランダム (ファミ通文庫) ココロコネクト ヒトランダム (ファミ通文庫)
庵田 定夏 白身魚

エンターブレイン 2010-01-30
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第11回えんため大賞受賞作として出版された三作品(「B.A.D.」「空色パンデミック」「ココロコネクト(※本書)」)は、発売当時も裏表紙のあらすじなんかを読んでいるとけっこう気になっていたのですが、積読本も多かった当時(今もむしろ増えてるけど……)としては、未読の本をまず片付けてからにしよう……と見送ったわけですが、そうこうする間に続刊が続々と発売し、このままでは読む前に巻数に阻まれてしまう(汗)ということで、少し前からまずは「B.A.D.」シリーズを読み始め、この「ココロコネクト」シリーズの第一巻まで辿り着きました。

 

というわけで、「ココロコネクト ヒトランダム」の感想です。……あ、ちなみに感想は書いていませんが、「B.A.D.」も既刊三巻を、間を置かずに読み進めてしまうくらいに面白かったですよ?

 

 

 

 

裏表紙のあらすじを読んでいると、うまいタイトルを付けたなぁと思ってしまうところですが、簡単にストーリーを説明すると、とある高校の部活仲間五人(男二人・女三人)の人格がランダムに入れ替わってしまい……という入れ替わりモノの物語です。と言っても、単に人格が入れ替わったことで起こるトラブルを楽しむようなドタバタコメディでは終わらないのがこの物語で、だからこそ「ココロコネクト」というタイトルにニヤリとしてしまうところなのですが(笑)。

 

あらすじにもちらりと書いてありますが、この物語の焦点となるのはむしろ、人格が入れ替わることによって浮かび上がってきたそれぞれの抱える問題……それも、“心”の問題。

基本的には主人公の太一が他の女の子の抱えるものを聞いてそれを解消していくわけですが、その解決方法が心にストンと落ちるというか、高校生ならではの等身大のものに思えてうまいなぁと唸ってしまうところ。

 

というのも、太一は別に、ヒーローのように劇的に何かを解決するわけではなくて。話を聞いて、受け止めて、受け入れて……そして、抱えていた問題を、越えられる壁にしてしまう。

作中でも語られるけど、彼らの抱える悩みは、当人にとってはもの凄く重いもので、それが衆目に晒された日には社会的に死んでしまうとまで思ってしまっているもの。でも、そういうものは案外、他人の目からしたら些細なことに過ぎないものでもあったりする。あるいは、仲間同士でなら、些細な問題に置き換えて受け入れてしまえるもので。

 

そして、そんな彼らの抱える悩みは、それこそ物語の登場人物が抱えるような壮大な問題ではなく、この本を読んでいる私たちの誰もが持っているようなものと同じもの。それが余計に、彼らに感情移入させてくれるし、彼らが見つけ出せた答えに勇気を貰えるような気がしてくる。今の自分が抱えているこの悩みも、他の誰かから見たらちっぽけなことなのかもしれない。彼らのように、そんなのは自分の思い込みで本当は違うんだとか、それでも大丈夫だとか、そんなふうに思わせてくれる誰かが側にいたのなら、今考えているよりもずっと簡単に越えられるものなのかもしれない、と。

……まあ、その“誰か”が側にいないので、袋小路からは抜け出せず、必要以上に重いものを抱えたまま溺れ続けているわけですけどね(苦笑)。でも、この物語を読んでいると、やっぱり自分という存在を、自分の人生をプラスと捉えられるか否かは、そう思わせてくれる誰かに出会えるかどうかだなぁ……と改めて思ったところです。

 

そうした核心部分以外でも、五人の掛け合い(五人揃ってだけでなく、特定の組み合わせ同士でも)が楽しいのがまたさくさくと読めてしまうところで。単純に、高校の部活動でこんなふうに時々馬鹿やりながら仲良く過ごせるのっていいなぁと思うところも。

それでいて、楽しいだけの関係ではなく、入れ替わり現象の影響で、それまでは見えていなかった他の人の意外な点が見えてきて、見直したり互いへの理解が深まっていったりするのも面白いところで。基本的にはバカキャラな青木なんかがその最たるものという気もしますし。そうした個々のキャラクターの魅力も読んでいて楽しめるところかと。そして、そんな彼らが入れ替わりを通して絆を深め、ラストの展開に繋がるわけですから、感動もひとしおかと。

 

一つだけ読んでいて気になったのは、これは文章媒体ではなく、漫画やアニメのほうが視覚的には分かりやすいかも、ということ。特に人格入れ替わり時は、「人格【身体】」で表記されていたのですが、この辺は文章だけじゃイメージし辛い部分がありましたからね。勿論、心情的な部分などについては、やはり文章媒体ならではの良さがあるわけですけど。

 

あと、物語の核心部分に置いては謎のままでも構わないのですが、諸悪の根源である「ふうせんかずら」の正体……は割とどうでもいいとしても、その目的が不明のままだったのはちょっと不気味なところかも。だって、目的が分からないということは、また何かしでかしてくるかもしれない、ってことですから(続刊が出ている以上、それが確定事項で分かってしまっているのもありますし)。ラストの伊織のことも、ひょっとしたら本当に言葉どおりのことを実行するつもりだったのかもという可能性もありますしね(伊織の台詞に驚いていた描写があったことからの推測ですが)。

とはいえ、これについてはそれこそ続刊が出ている以上、追々分かるものと思っておけばいいところですかね……。仮に謎のまま進んでも、別に彼(?)についての謎を追う物語というわけではないので、前述のとおりそれはそれでアリだとは思いますが。

 

 

そんなわけで、読後感も良く楽しめた「ココロコネクト ヒトランダム」。続けて二巻を読みたいところですが、お財布事情と果たして近所の本屋に置いてあるのかという問題があるわけですが……それでもできれば、近いうちに読みたいと思います(感想を書くかは、その内容と時間と気力次第ですが)。