ソードアート・オンラインフェアリィ・ダンス 1 (電撃コミックス)ソードアート・オンラインフェアリィ・ダンス 1 (電撃コミックス)
川原 礫 葉月 翼

アスキー・メディアワークス 2012-10-27
売り上げランキング :

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

 

サブタイトルどおり、ルグルー回廊でのイベントを消化した第十九話。かなりサクサクと進んだ印象で、久々の戦闘シーンなんかはもうちょっと長くやってくれても良かったかなーと思わなくもなかったですが(あと多少なりともRPGをやる人間としては、せっかくの新しい街並みはもうちょっと見てみたかった(笑))、でも全体的には満足度のほうが高いエピソードでしたね。



そう感じた一番の理由は、今回は全体を通して、キリトがSAO生還者であることを強く感じさせてくれるエピソードだったからでしょうか。

例えば、サラマンダーの集団との戦闘シーン。サラマンダーたちは当然キリトよりALOを長くやっているわけだから、スプリガンの得意魔法が幻惑魔法だってことは知っているだろうし、その中には自身の姿をモンスターに変えるものがあることだって知っているはず。だから、理論上はキリトがいくら巨大な悪魔の姿に変わったからといって、そこにいるのが本当はちっぽけな一人のプレイヤーであることは分かっているはずで。……でも、人間にとって視覚の影響というのは大きくて、こんなものは幻覚だと分かっていても、目の前に巨大で獰猛な生き物の姿があれば怯むし、それが残虐な手段で仲間を次々と殺していったら恐ろしいと思ってしまう。キリト本人が言うには、戦闘中は意識が飛んでいたそうですけど(笑)、そしてその魔法の使用を提案したの自体はユイのようですけど、本気の死地で二年間も戦っていたキリトだからこそ、そうした心理状況は彼らよりもずっとよく分かるんじゃないかって。



そういうところだけじゃなく。所詮ゲームなんだから死んでもまたやり直せばいい、そう提案したリーファの言葉を跳ね除け、自分が生きている限りは絶対に仲間を殺させないと啖呵を切ったキリトは、SAO時代の彼の葛藤を知っている視聴者としては、その言葉が胸に響かないはずがないと思えるもので。かつては自分の過失で仲間を失った傷から一人でいることを選んだ彼が、今は仲間を守るために全力を尽くす。そんなふうに強く言えるようになった彼が嬉しいし、頼もしいと思えるところで、だからこそ彼は強いんだと納得できるところでもあるんじゃないかな、と。

その考えは、ラストのシーンにも繋がっていて。自分の利益を考えるなら、アスナ救出を第一に考えるなら、ここでリーファを切り捨て、サラマンダーに加勢したほうが近道になる。だけど、キリトはそれを決して選ばない。それは単なる一ゲーマーとしての信念だけでなく、本当にいろんな人と出会い、そんな人たちと触れ合い、生き方を見てきて……そして何より、現実と仮想を昇華した大切な人から教えられたことで、彼自身も獲得したものだったから。

彼の中で、あの二年間は確かに生きている。そしてその二年間の経験が、キリトという人物を一回りも二周りも成長させて、だからこそ魅力的に見えるのだということを見せてくれたのが、何より嬉しかったことのような気がします。



……そういうのとは別に、ゲームだからこそ取引材料としてアイテムやお金に価値はある、と分かっている根っからのゲーマーなキリトさんの一面も見られたのは面白かったところですしね(笑)。



これまでのキリトの生き方、そして今回ラストでリーファにああいうふうに語ったキリトを考えれば、次回のキリトがどういう行動を取るかは自ずと分かってしまうもので。次回どこまでいくかは分かりませんが、サブタイトルからするとたぶん高確率で今回以上に盛り上がる戦闘シーンが入ってくるんじゃないかなぁと予想できるので、その辺も含めて楽しみにしたいところです。



◇次回「猛炎の将」