Fantastic future Fantastic future
畑亜貴 田村ゆかり

キングレコード 2013-04-17
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相変わらず月子ちゃんがとにかく可愛くて、彼女を愛でているだけでも十分楽しめそうな気がしてしまうところですが(笑)、楽しいデート風景から一転、最後に落としてきましたね。

 

小豆梓がバイト三昧でそのお金を使った見栄張りのお嬢様だとか、何故かデートになったりとか、この手の作品としてはテンプレ的展開の連続かなーと思うところもありますが、そんなイベントを通して、何で月子ちゃんにしろ小豆梓にしろ、割と最初から主人公に好感度マックスなのかが見えてくるような気がするのが面白いところであり、今回もまた人付き合いにおける本音と建前の意味が窺える気がするのが興味深いところでもあります。

 

月子に関して今回開示された情報は、両親は既にいないこと、そして、鋼鉄の王こと筒隠つくしが実の姉であること。そしてその姉とは、今回の月子の小豆梓みたいな人が本当のお姉さんだったら……という呟きや、思わぬところで姉に横寺といるところを見られても、慌てて隠すどころかむしろ堂々とデートだと強調するくらいの勢いで言ったところから、あんまり関係がうまくいっていないのではないか、ということが窺える感じでしょうか。

一、二話のつくしから窺えるのは、横寺の変態性に部員の中で唯一気づいていなかった辺りはちょっと抜けているというか勘違いが激しそうなところもあるけれど、それを除けばかなり厳格な人物なのでは、ということ。今回も、わざわざ部活サボって遊んでいる部員の取り締まりなんてやっているくらいでしたし。もしもそういう厳しさを、月子に対しても何らかの勘違いを発動させている状態で発していたとしたら、月子が彼女との暮らしに息苦しさを感じていてもおかしくないなぁ、と。

 

張らなくてもいい意地や見栄を張っていたり、建前を失くしたことで言わなくていい本音が駄々漏れだったりと、これはこれで問題のある先輩二人ですが、それでも、二人の月子への対応は優しく、同時に分かりやすいものでもあるんじゃないかな、と。

小豆梓は彼女がどういうことに対して虚勢を張っているのかが分かっていれば、そうでないときの彼女の優しさが本物であると分かるだろうし、横寺は煩悩が駄々漏れでも本音しか言えないと分かっているからこそ、分かりやすい形で下心があるのが分かっているし、それ以外の部分だって常に本音であると分かっているから余計な警戒や緊張を抱くこともなくて、月子にとっては安心して懐ける相手なんじゃないかな、と。姉とうまくいっていない分余計に。

そういう意味では、彼女が横寺の行動に対して見せる嫉妬心が、横寺を恋愛対象と見てのものなのか、兄的存在と見ているからなのか、現時点では判断し辛い気もしてしまいますが、どっちにしてもかなりの変態だということが分かっていながらも彼女が横寺と共にいるのは、そういうことなんじゃないかな、と。あと、やっぱり目的のためにまっすぐに行動し続けられる横寺は、そこだけ見れば頼もしい先輩に見えるんじゃないかなという気もしますし。

 

本音しか言えないことが分かっているからこそ信頼できる月子と違い、そうした事情を知らないからこそ最後に築きかけていた関係が崩れてしまったのが小豆梓。何故彼女がバイトを掛け持ちしてまでお嬢様であるフリをするのか、という点に関しては理由が明かされないままですが、少なくとも彼女が対等な友人関係というものに何らかの闇を抱えているのは分かった感じでしょうか。

それを考えると、周囲の目を省みない横寺の行動・言動は、疑念を完全に捨て切ることはできなくとも、限りなく本当に近いのではないかと思ってしまっても不思議はないなという気がしてしまうし、それが異性からのストレートな求愛となれば(実際は横寺の台詞のチョイスが間違っているせいで勘違いしてしまっている部分が多いのだけど)、その言葉を信じる方向に傾いてしまってもおかしくないのかな、と。もっとも、そうして勘違いを含んだまま信じかけてしまったからこそ、裏切られた(こちらも勘違いではありますが)と思ったときの絶望が深くなってしまったのもあるのでしょうが。

 

そんなふうにまた裏切られたのだと思い込んだ小豆梓に対して弁明しようとしたときの横寺は、案の定本音しか喋れないせいで事態を余計に悪化させてしまっていたわけですが、ではこのとき建前で適当な嘘をついて誤魔化すのが良かったかというと、そうとも言い切れないのが興味深いところで。

もしもあの場で横寺が建前を使って取り繕えていたら、あの場は関係が拗れることなく終わったかもしれない。でも、彼が彼女に嘘をついたことには変わりなく、それが後々の関係にひびを入れてくるかもしれない。でも、悪い方向に思い込んでしまった相手に本音を包み隠さず、それを一部でも肯定するような返事をしてしまうのも、その勘違いを助長してしまうわけで。

 

この辺、難しいところだなぁと思います。いくら親しい仲でも「本音」だけでは成り立たず、ある程度の「建前」が必要なのが人間関係である、ということではあるのでしょうが、じゃあその加減というのはどうすればいいのか。

極端に振り切れてしまっている彼らだからこそ、そういったところが改めて浮かび上がってくるのが面白いところであり、同時に、人間関係の難しさを改めて突きつけられているような気がしてくるところでもあるのかもしれません。