愚禿道化の備忘録

持ち前の鈍ーい感性で四季折々森羅万象を忘れないように記すグータラ記録

カテゴリ: 読書

「川漁」(戸門秀雄著 農山漁村文化協会刊)を入間市図書館から借りて読了した。
聞くところによると、この本は著者が自ら図書館へ寄贈したという。

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著者は埼玉県入間市出身で私めの中学の後輩だ。入間川にすぐ近い場所で川魚やキノコ料理の郷土料理の店を営んでいる。最近はご無沙汰だが、もちろん氏の店で料理を味わったこともある。

例によって表紙カバーの説明を記す。
「埼玉県入間市で郷土料理店を営みながら、各地の川を訪ね歩き、奥深い川漁の世界を克明に記録してきた著者が、半世紀にわたり通い続けてきた名川・魚野川。川名は「サケの多く獲れる川」に由来し、長岡の殿様が初鮭(はつな)一匹に米7俵の褒美を与えた古い歴史がある。豊饒な川を舞台に発展した、さまざまな魚の漁法・漁具・食べ方・伝承などを古老から聞き書き。川の恵み、漁り(すなどり)、活かしきる知恵を集大成した"川漁の小宇宙"ともいうべき労作。」

本文370ページ、ハードカバーの、確かに労作だ。表紙には魚沼市指定文化財の「大白川の捕鱒の図」があしらわれている。

氏は若い頃より渓流釣りに魅せられ足繁く各地の渓流を尋ね、ヤマメや岩魚に親しみ、さらにキノコにも造詣が深くなったらしい。趣味が高じて、かどうかはわからないが、その知識や経験を活かして郷土料理店を開いた行動派だ。

この本では著者の川、特に新潟県を流れる魚野川や魚への愛情、古来よりの伝承、習俗、川の文化に対する真摯な態度が深く読み取れる。
驚嘆するのは信じられないほど多方面への取材と参考文献の多さだ。そして何よりも感じられるのは著者の川や魚に対する愛情の深さだ。

私めにも馴染の深い魚やその漁法を取り上げているので目に鱗の項目もあり、非常に参考になり面白く読んだが、魚や釣りに興味のない方でも興味深く読めること請け合いだ。

「伝説と怪談」シリーズ1~4(泉昌彦著、㈱柳正堂書店発売)を読んだ。
多分亡き父が読んだのだろう、我が家の本棚に眠っていた。昭和43年初版、46年5版とある。

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第1集の表紙には題字の前に「甲・信・三河・秩父多摩・富士・昇仙峡をめぐる」とあって、主に甲州や富士山近辺の伝説、民話、会談、伝承、古文書、歴史、地理などが硬軟・ノンフィクション・フィクション織り交ぜて、微に入り細を穿って綴られている。
普段茸採りに行っている地方の話なので親しみがあって非常に興味深く読んだ。

著者の取材は多岐にわたり、さすがに山登りというだけあってそのフットワークはさすがだ。しかも古文書などの参考文献も相当数ありいったいこの人は何者なのだという感想だ。
どうやら著作時は甲府市に在住していた在野の研究者で、登山家としても相当だった人らしい。

内容のほんの一例をあげると、武田信玄から続く甲州の金山とそれにかかわる埋蔵金の話や砂金採取の方法などがある。
茸採りの際にたまに訪れる黒川金山や鶏冠山の話も掲載されているので、現地を思いだしながら読んだ。

内容は興味深い本だが、残念ながら誤字脱字が多い。読める漢字にはルビがあるが、肝心の人名や地名の読めない難しい漢字にはルビがないという不備がある。
古い本なので写真はモノクロで極めて不鮮明だが、これは仕方がないか。
編集が疎かで、内容に脈略がないところがある。色気話がちょいと下品で稚拙な表現があったりする。歴史話は読めない人名や地理が多く難読だが、民話・伝承の類は読みやすい。
シリーズは5集以降も続いているらいいが家になかった。全体的にはなかなか面白い本だった。


アンソニー・ホロヴィッツ「カササギ殺人事件」(山田蘭訳、創元推理文庫、上・下巻)を読了。
海外ミステリーの最高峰との書評に誘惑されて読んだが、そうか?という感じ。

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作中作があって2度楽しめるといううたい文句だが、無理矢理長くしたようで冗長だ。
ほとんどの登場人物を犯人の可能性がある設定にしていて、さらに下巻では作中作の作者をめぐる物語にしてあるので登場人物も多い。

何より、読了するのに長くかかってしまった原因は私め個人にあって、いつでもそうだが、海外翻訳物は登場人物の名前と関係を覚えるのが極めて苦手で、いちいちこの人物は誰だっけ、どういう関係だったっけと巻頭にある主な登場人物のページをたびたび見直す始末だ。
当然登場人物の名前はカタカナで、それが一段と人物を覚えるのを困難にしている。
翻訳者に望むことだが、登場人物も日本名にしてくれないかなあ。
例えばスーザン➡須佐子、アラン・コンウェイ➡今道安良仁とかね。そうすれば少しは登場人物を覚えられるかもしれない。

長編小説にはよくあることだが、あまり長くし過ぎて結末が意外に単純だったりする。これもそんな類か?

横山秀夫著「ノースライト」(2019年、新潮社)を読了した。
宣伝文句には「一級建築士の青瀬は、信濃追分に向かっていた。たっての希望で設計した新築の家。しかし、越してきたはずの家族の姿はなく、ただ一脚の古い椅子だけが浅間山を望むように残されていた。一家はどこへ消えたのか? 伝説の建築家タウトと椅子の関係は? 事務所の命運を懸けたコンペの成り行きは? 待望の新作長編ミステリー。」とある。

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題名のノースライトとは北向きの採光のことで、評価が高かった主人公渾身の傑作住宅設計に取り入れたことからきている。
ミステリーとあるが探偵や警察のサスペンス物ではなく、建築設計家の作品をめぐる物語で、成り行きや謎解きを想像しながら一気に読める。

建築に関する描写は、著者が建築家であるかのように微に入り細を穿っている。巻末に参考文献が載っているが相当研究調査取材したと思われる。私めの知人には高名な建築家がいるが、彼らがこれを読むとどんな感想を聞かせてくれるだろうか。

主人公が所沢の事務所に努めていて、近隣の馴染の地名が出てくるのがなぜかうれしいものだ。圏央道入間インターから浅間へ向かう描写もある。

私めは読書は夜床についてから寝ながら読むのが常なので、著者の作品では、「64」もそうだったが、こういうミステリーは途中でやめるのが難しく、つい寝不足になってしまうのが困りもんだ。

柳家小三治「ま・く・ら」(講談社文庫)を読んだ。
小三治師匠が様々な席で演じた落語の本題の噺の前にしゃべるマクラ集だ。

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マクラは本題への導入部であるが、小三治の個性が出ていて抜群に面白い。
いわば小三治のエッセイだ。
読んで面白いのだからその場で聞けばもっと面白いに違いない。

今はこの続編の「もひとつ ま・く・ら」を読んでいる。

何十年か前、柳家小三治の落語を生で聞いたことがある。
その時の演目は「野ざらし」だった。
入間市市民会館でのいわゆるホール落語で、その時すでに小三治は名が出ていたが、はっきり言ってあまり面白くなく、素人判断では上手だとも思わなかった。
その時のマクラはどんな話をしたか全く覚えていない。

その当時私めは「野ざらし」は三遊亭圓遊が演じたのをカセットテープで何回も聞いていたからセリフもすっかり覚えていた。
小三治は何だかその演目をあまりやってなくてやっと覚えたような演じ方だった。
言葉がなかなか出てこないから私めはそこはこのセリフだと自分で先に頭の中で言ってしまう状態だったから面白くなかったのだ。

本当はその話し方がいいのかもしれないので、あまり一人の落語家の同じ話を聞きすぎるのも良くないのかもしれないと今では思っている。

例えば、「芝浜」も立川談志のを絶賛する人が多いが、私めは何と言っても3代目桂三木助だね。
なにしろそれもテープで何回も聞いているから慣れて愛着が出ちゃうのだ。

人間国宝柳家小三治、元気なんだろうか。

玉村豊男著「体の履歴書 病気自慢」(世界文化社2018年)を読んだ。
37歳から36年間で8つの病院に14回入院した著者の病気遍歴だ。

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いやはやすさまじくも壮絶な病気との戦いの連続だ。

私めのような歳になると何人か集まると決まって病気や薬自慢の話になるが、玉村氏のこの本を読むとそんなのは甘っちょろい、氏に比べれば私めなど健康そのものではないかと思えてくる。

大体の内容はこうだ。

37歳の時中央道で車が一回転し頭部挫傷、左耳裂傷で緊急入院、転院したのち中耳の隔壁にヒビが入っていることが判明してさらにKO病院耳鼻科に入院が最初の入院だ。

転居した軽井沢の自宅で4年後大量吐血、佐久総合病院で輸血を受けるも下血が止まらず輸血を繰り返す。
吐血の原因は最後まで不明だという。
ここでは40日間入院していったん退院するも輸血後肝炎(C型肝炎)に罹患していることが判明、その後慢性化する。

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その13年後取材先のパリで突然強力なアレルギーに襲われ、酒を飲んでマンゴーを食べると発症することに気づいた。
帰国後医院で血糖値を計ったら800もあり糖尿病棟始まって以来の新記録と誉め(?)られた。

さらにさらに、胃潰瘍による内出血が原因で貧血で倒れ、入院中に激しい痛風発作。
白内障手術。
新薬により肝炎完治。
完治後肝がんが発生、RFAというラジオ波焼灼手術。
その翌年も2度にわたりガン発見でRFA。

というような、気の弱い人なら聞いただけで卒倒しそうな病歴が悲惨感がなくむしろ爽快さを感じられるくらいのまさしく病気自慢(もちろんワインや絵画やヨガ等の氏の趣味も)が語られている。

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せめてものお見舞いに山葵の花

え、皆さん、高血圧?頻尿?胃もたれ?ハゲ?膝痛?足首骨折?獣多毛症?不整脈?その他いろいろ?
それは元気に生きてる証拠ですよ!と、この本を読むと思えてくるのであります。

高校の一つ下の後輩、本郷秋太郎が小説第2弾、短編集を自費出版した。
この出版は販売が目的ではなく、友人知人に頒布だ。

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著者はあとがきで、好きな隅田川と橋を背景にした老年版青春小説と書いているが、実際は青年版恋物語と言ってもいい内容だ。

本郷秋太郎はもちろんペンネームで、奥付に書いてあるから明かしてもいいだろう、本名は篠と言って、高校時代は生徒会長も務めたなかなかの人物だ。

理系に進学したにもかかわらず文章を書くのが好きで、ペンネームはもともと短歌の号だ。
今は医療機器を製作している会社の社長さんだ、いや、会長だったかな。

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編集・装丁・印刷はもちろん当社が請け負った。

表紙には著者の知り合いによる版画をあしらい、本文には著者や知り合いが撮った東京本郷界隈のモノクロ写真が挿入されている。

感心するのは解説が入っていることだ。
著者と懇意の私立高校長が寄稿していて、著者の交友範囲の広さを物語っている。

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255ページもあるので立てられるのだ。

私めは文系だが知り合いには理系が多い。
理系の人間は概して文を書くのが苦手なようで、書いても誤字脱字のオンパレード、なかなかこの分量の文章をかける人は少ない。
おまけにノンフィクションではなく創作というのがすごい。

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太宰を気取ってスコッチバーでの著者近影も巻末に出て来て、至れり尽くせり?

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ちなみにこれが第一弾のエッセイ+小説。

皆さんも自伝や創作、エッセイその他の自費出版はいかがですか。

村木厚子著「日本型組織の病を考える」(2018年8月角川新書)を読んだ。







村木氏は厚労省局長時代の2009年に郵便不正事件で検事の証拠改竄隠蔽により大阪地検特捜部により冤罪で逮捕され、翌年無罪を勝ち取ったのち厚労事務次官まで上り詰めて退官した人だ。

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身に覚えのない事件で逮捕されてから裁判、そして無罪判決、その後の自らの体験を生かした日本の硬直化した組織の変革を目指した活動などが内容となっている。

この人が犯してない罪で逮捕されてから無罪になるまでの過程は、恐ろしい。
偶然の出来事で検事による証拠改竄隠蔽が発見されて結果無罪になったが、それが表れてこなければ冤罪となっていただろう。
そのくらい日本の警察、検察、司法は怖い。

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今騒然となっている日産ゴーン氏の逮捕の手法は村木氏と同じ人質司法ではないのか。
逮捕拘留して弁護士の立会もなく取り調べ、家族にも面会させず、劣悪な狭い独房に入れて、あることないことマスコミにリーク、罪を認めなければ保釈もしないらしい。


ゴーン氏は罪を犯しているかもしれないし、そうでないかもしれない。
司法で大事なことは真実を明らかにするということだ。
決して村木氏にしたように罪を無理矢理作り出すようなことはしてはならない。

ゴーン氏の日産以外での最大の功績は、日本の人質司法の現実を民主主義先進国の欧州各国が報道、批判することになったということだろう。

それにしても、報道によれば、大企業のトップの報酬はすごい!
私めの車の代金のホンの一部も彼のところに行ってるぞ。

小出裕章・佐高信の対談集「原発と日本人―自分を売らない思想」(角川学芸出版・2013年)を読んだ。

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これもやはり先日先輩が持って来てくれた中の一冊で、先輩はこのところ日本の欺瞞を告発するテーマの内容の本に関心があるらしい。

私めが原発の危険性を頭に刷り込まれたのは数十年前、広瀬隆氏の「東京に原発を!」を読んだからだと記憶する。
当時から著者は原発がそんなに安心ならなぜ首都圏に原子力発電所を作らないのか、そうしないのは政府・電力会社が原発の危険性を認めているからだというような内容の本だったと思う。

それから数十年、チェルノブイリ、スリーマイル等の外国の事故でやはり原発はいったん事故あれば取り返しの付かない危険極まりないものだというのを再認識したのだが、日本では細かい事故はあったものの大事故は幸い起きず、危険意識もだんだん薄らいでいった。

それが日本での福島原発の大事故だ。事故と言うより事件と言った方がいいかもしれない。

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結局日本人は皆騙されたのだ。

この本の共著者は、それから一歩進んで、騙された方にも罪があると言っている。
騙された方はもちろん被害者だが、騙された内容が取り返しがつくようなものだったらまだいいが、原発という取り返しの付かない事故が起ってから騙されたと気が付くのはやはり罪かもしれない。

そうならないように自分の心と命を売らず、できる限りの声を上げなければいけない。

佐高信・松元ヒロ「安倍政権を笑い倒す」(角川新書・2015年)を読んだ。
評論家の佐高信氏と「ザ・ニュースペーパー」の芸人松元ヒロの対談だ。
なんにも怖いものなしの二人は、時の最高権力者をバカ呼ばわりするとは恐れ入りました。

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先日先輩が持って来てくれた何冊かの中にあった本で、帯には「権力者を風刺する毒のある物まねで、多くの知識人を魅了する芸人・松元ヒロと辛口ジャーナリスト佐高信が、積極的平和主義のかけ声のもと、戦前へと回帰しようとする安倍政権の矛盾や理不尽を、笑いによって斬る!」とある。

主に第一章で安倍氏(私めだって総理には氏づけだぜ)をおちょくり、安倍氏のバカぶりを披露している。
以下見出しから。
「アンダーコントロール」の大ウソ
”あべこべ内閣”のおもてなしは「裏ばかり」
上から目線の傲岸不遜さ
お粗末な言語能力
「わが軍」という本音
「切れ目なく」に気をつけろ
「反省」はあっても「おわび」はなし
「バカな大将、敵より怖い」

言っとくけど、私めが言ってるんじゃないよ、佐高氏と松元氏だからね。

二人が総理をバカ呼ばわりするのは理由がある。
小中学生の国会見学で、見学が終わって質問タイムになったら一人の生徒が「安倍さんはどうして国会議員という職業についたんですか?」と聞いた。
そしたら安倍氏は「それはですね、私の父もこの仕事をやりました。私のおじいさんもこの仕事をやりました。だからこの職に就きました」と答えたらしい。
松元氏はこれを聞いて、「これは正真正銘のバカだ」と確信したという。
せめて「暮らしやすい国にするため」とか、「世の中を良くしたい』とか、もう少しまともな答え方をすると思っていた、そういう政治家としての志のようなものを片鱗でもいいから小中学生に見せて欲しいところだと言っている。
それに応えて佐高氏は「無理だよ、そんなもの安倍にはないもの」と言いたい放題だ。呼び捨てだし、恐いものなしだ。

その他にも、あるテレビ局でその年を漢字一文字で表せばという質問に、総理は「変化」って答えた。
クルーは困って、「総理、一文字で…」と再び尋ねたら今度は「責任」と言ったという。
総理は一文字と二文字の意味が分からない、1と2の違いが分からないんだと佐高氏は言う。

てな話が出てきて、人生における笑いの大切さを訴える内容になっている。

今日は土曜日だけれども、こんなことを書いてる暇はないんだ、安倍総理のように「全力で」「しっかりと」「切れ目なく」「最重要課題」の仕事しなくちゃ。

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