8月16日、YUKASEE MEDIAが古賀茂明さんに関して報じました。今回は後編です。

前編
8月15日 古賀茂明氏が語る「更迭・保安院・天下り」

以下転載
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経済産業省の役人の頭の中(下)

 原子力損害賠償支援機構法が成立し、東京電力の福島第一原発事故の賠償はより具体的に進んでいくことになるが、この法律は東電救済が前提とも言われる。また、再生エネルギー法案も参院を通過する見込みだが、2つの法律の運用はどうなっていくのか。経済産業省の現役キャリア官僚で大臣官房付の古賀茂明氏が先日、自由報道協会主催の記者会見で、役人の立場から本音を語った。(内容は一部省略)


■「政府はウソを言い続けている」

 賠償支援機構からのお金は計算上では利益に計上されるために、東電の西澤俊夫社長は「債務超過に陥ることはない」とした。もちろん返済すべきお金だけに、制度運用はなし崩し的ではなく厳密にやってもらいたいところだが…。

古賀茂明氏)
 基本構造として大きな問題があると思っています。最大の問題は、この事故だけではなく、今後の事故にも適用する前提で作られています。そうすると、今後、原発の事故を起こしても絶対に(電力会社を)潰さないという政策の宣言になっているのです。これは究極のモラルハザードの法案だと理解しています。

 原発事故を起こすという事はとんでもないことなので、事故を起こしたら、会社がつぶれるという前提で事業をやってもらわないと困るのですが、賠償のために生かし続けますという仕組みです。

 結局、いずれにせよこのままいくと東電だけではなく、すべての賠償に適用されます。 廃炉だとか様々な費用負担をすることが難しくなって、どうしても足りない部分が、電気料金、国民負担になってくる。それはやむを得ないでしょう。むしろ、政府はウソを言い続けるのはマズいと思います。

 負担があることを前提として、大事なことは(国民負担を)最小限に抑えることです。では、どうやって最少化しますか。


■東電もJALと同じ処理をすべきだった

 JALは潰したけど東電は潰さないのか。例えばJALの株主からすれば、不公平感が出てもしょうがない。さらに生かし続けるために、電気料金値上げなどが待っている?

古賀氏)
 今の政策では株主を保護することになります。また、銀行の債権も保護します。株主資本約1.6兆円、銀行債券約4兆円くらいがそれぞれあります。この8割くらいをカットすると、本当は5兆円くらい損する人がいるのです。

 JALの場合、株は紙きれになりました。銀行の債券も社債も9割近くカットされています。それでも別に飛行機が止まっているわけではありません。本来は、東電にも同じ処理をすべきです。そうすれば5兆円くらいの損をするので、国民に負担を上乗せする必要がなくなります。

 本来はそうすべきですが、事実上しないということが可能になっています。自公民でも修正しましたが、さらに改悪になっています。返さなくていいというお金、つまり賠償機構に税金を直接投入して、新たな道を付け加えています。

 抽象的な文言ですが、政府の責任というものを入れていまして、これは、聞こえはいいのですが、条文をよく読むと、賠償責任だけではなく、原発の推進も含めた原子力事業全体がうまくいくように政府の責任を入れています。賠償責任だけではなく、今後は東電が企業としてお金が足りませんとなれば、被災者のためでなくても、政府がお金を出せるということです。

 こういうことは、明らかに官僚たちが考えたものだと思います。

 お金に色はついていないので、料金を賠償以外の理由で上げるとかそういうことをやるかもしせれません。それで、東電の経営を少し楽にしてやるとか。機構の運営は経産大臣がチェック、コントロールしていくことになりますが、不透明な形で政府のサジ加減一つです。世論を見ながらの運用になると思いますが、みんな忘れてきたぞ、となると何かにつけて料金値上げをするかもしれません。


■原発推進派も今は「推進」と言えないだけ

 再生エネルギー法案は通過の見通しだが、この運用についての議論はほとんど進んでいない。発送電の分離も進めずに、さらには、長期的な展望もなく「買い取り」を決めるだけ。不安いっぱいの運用となりそうだが…。

古賀氏)
 発電とは長期にわたるものなので、長期的に安定したスキームであるかどうかが重要です。経産省は本気か? とよく言われますが、わたしも疑問です。

 原発は今でこそ、波風が高いので推進ということは自民党でも声をあげて言いませんが、また、そっちの方向に行くだろうなと思います。そうなると、再生可能エネルギーは二次的、三次的な存在にすぎないとなって(元に)戻ってしまうのかな、とひじょうに心配になってきます。

 買い取りを決めるだけでなく、全体の電力市場を長期的にどうするか、絵を早く示さないと。原発は何年で廃炉にするとか、そこを再生可能エネルギーで埋めるしかないと決めればメッセ-ジになります。
 
 しかし、そこがフラフラしていて、どうせ原発に行くんだろうなと、買い取ると言っただけでは、長期的には保たなくて電気料金が上がるという脅しで、不安をたくさん残したままやるのは、推進という意味では足りないと思います。

 今、混乱期なので、そんな先の大きなことを言うべきではないという意見もありますが、早く議論して大きな方向性を決めるべきだと思います。


 後記)今後の事故にも適用できそうな賠償スキームを作り、そして発送電分離などをしないまま、再生エネルギーを推進するという矛盾。やはり、電力会社が企業にとっては最大の「お客様」という存在であるかぎり、今後も今の構造はほとんど変わらないのだろう。電力会社はこうして守られていく?
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引用元:経済産業省の役人の頭の中(下) | YUCASEE MEDIA(ゆかしメディア) | 最上級を刺激する総合情報サイト | 1