2005年12月05日

最後の挨拶

3ヶ月とは早いもので、イベントや海外出張などをしていると
あっという間に過ぎ去ってしまいました。
この短期間では伝わりにくかった感がありますが、
ふれてきた内容は、一見デザインと全く関係無いように思われる出来事も、
文化や社会と密接に絡んでいるのです。
それが少しでも知ってもらえたら、ブログをやった意味もあったかなと思います。
 
もともと3ヶ月という期間限定だった事もあり、
今後出そうと思っていた話題にふれる事が出来なかったのは
とても残念に思っています。
でも、近いうちに個人ブログを立ち上げようという意識も高くなってきました。
 
その時もまた遊びにきてください。
貴重な機会をつくっていただいたSAABの皆さん。
陰ながらブログを支えてくれたADK、BACHの方々。
何よりもここに来ていただいた方々に感謝いたします。
 
柳本 浩市
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2005年11月28日

大酒飲みの国

以前、スウェーデンのレストランで同席した現地の友人とソムリエがもめていた。後で聞いてみると、一回に出せるお酒の規制量が決まっていて、これ以上お酒が出せないということだった。もっと詳しく聞いてみると、100年以上前、国民的にお酒が好きなスウェーデンではその反動でGDPが極端に下がり国益を揺るがす問題になったそうだ。それから全てのアルコールは国営の酒屋で販売される事になり、バーやレストランでも時間や量の規制がされている。
 
国営というとお洒落じゃない感じがどうしてもするが、スウェーデンの国営機関はとてもデザインがいい物が多い。例えば、国営酒屋のシステムボラーゲットでは年2回お酒のカタログが発行されている。そのカタログの表紙には新進グラフィックデザイナーやイラストレーターが起用され、ここからメジャーになっていく事も多いという。また、中面のリストには牛やエビなどのピクトグラムがあるが、それはそのお酒が何の食べ物、飲み方に適しているのかをビジュアル表現している。
こんな酒屋をみていると、規制のなかでむしろ楽しみを見いだしている国民性がうかがえる。

bolaget
システムボラーゲットのお酒カタログとその中のピクトグラム。
店内に入るとフリーで持ち帰り出来る。たまにフリーペーパーなども発行されている。

bolaget_in
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2005年11月25日

少子化対策

ここ数年スウェーデンやデンマークなど北欧の国を訪れる事が多いが、特に感じるのが子供の多さ。ストックホルムの若者が集まるSOHO地区の公園には、ブランドファッションを身にまとった若い夫婦がベビーカーを押してやってくる。日本でよくある“公園デビュー”とはお洒落感がどこか違う。子供を持つ事がある意味ステータスのような感じさえうかがえる。
 
北欧諸国も現在の日本のように一時出生率が落ちたようだ。高納税の国にとっては将来の死活問題に関わってくる。もちろん国が率先して少子化対策に手を打つ事はあたりまえで、交通機関や医療施設など、妊婦や乳児連れに大きい優遇措置がはかられている。それ以上にメディアや民間の産業など社会全体でバックアップしていることが大きな解決策になっているような気がする。
民間と政府がひとつの問題に取り組んでいく事で本質的に社会がより良い方向にいっているような感じがして、政府ばかりに頼ってしまう今の日本の他力本願意識を自分も変えていかねば、と思う。

childbook1
たまたま見つけたこの本は、グラフィカルに子育てのノウハウや問題を紹介している。デザインで子育てを提案するという視点が面白いと思う。

childbook2
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2005年11月16日

本当のエコ

スウェーデンのマクドナルドでは、プロモーションとして紙コップの柄が巨匠デザイナー、スティッグ・リンドベリのデザインだった。リンドベリのデザインはグフタフスベリという陶器メーカーの食器の絵付けのために50〜60年代に制作されたもので、この食器はここ数年日本でも人気が高く、本国のアンティーク屋さんでも日本人が値を上げているようだ。このグフタフスベリがマクドナルドとコラボしたのが今回のコップ。スウェーデンのマクドナルドの凄いところは紙コップに防熱の樹脂を使っていない事。紙の厚みを倍近くにして、さらに表面を波上のエンボスにする事によって、手が触れる面積を減らしている。これによってホットドリンクを入れても熱さをあまり感じなくなる。素材は紙しか使っていないのでリサイクルが可能なのだ。実は日本でもこういった紙コップはあるのだがコストがあまりにもかかるため、採用しているところはほとんどない。それ以上に素晴らしく感じるのはこのリンドベリのデザインを採用した事。こんなかわいい紙コップだったらリサイクルどころか捨てるのまで惜しくなってしまう。物を捨てないというのは究極のエコロジーだと感じる。それも、絵柄だけでそんな気にさせてしまうのがデザインというものの凄さだと思う。

papercup
マクドナルドとグフタフスベリミュージアムコラボの紙コップ。
葉っぱ柄が“ベルソ”という作品名。ドット柄が“アダム”。
残念だが現在は終了、今後マリメッコ柄なども展開するらしい。
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2005年11月14日

FRONT

1年以上前だったか、スウェーデンの女性デザインユニット、“FRONT”の記事をある雑誌で見かけた。デザインというよりはまだ本格的な製品になっていないのと、コンセプチャルな内容からアーティストと言った方が正しいかもしれない。たまたまオランダ出張の際にドローグデザインのお店で丁度展示をおこなっていた。
実物を見るのは今回がはじめてだった。彼女らの作品はとてもユニークなものが多い。例えば、壁紙。カタログの制作の欄には“ネズミ”と書かれている。壁紙の展示の横のVTRをみると、壁紙をネズミがかじり、かじった部分が壁紙の模様となる。なるほど、ネズミが柄を作っているので制作がネズミなのだ。
他にはコートを掛ける壁の出っ張り。生乾きの陶器の円柱をヘビに這わせ、ヘビが通った跡は少し窪む。その窪みがコートなどを引っ掛けるフックの代わりになるという作品だ。少し歪な二股のフラワーベースもある。ウサギの掘った巣穴に石膏を流し込んでとった型をもとに作ったものだ。彼女らもそうだが、スウェーデンのデザイナーは自然や動物をモチーフにしたり、調和を考えて作られたものが多い気がする。

frontcup1
ドローグから72個限定販売されたFRONT唯一(?)のプロダクト。
温度で透明になるインクを使い、熱いものを注ぐと写真が見えてくる。

frontcup2
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2005年11月06日

ヨーロッパを旅して ーその3:アムステルダムー

今回の渡航先、最後はオランダのアムステルダム。ここ数年訪れる事の最も多い国だ。そしてこの国で注目するひとりがピート・ヘイン・イークというデザイナーだ。ピート作品との出会いは青山の某インテリアショップのオーナーとアムスに一昨年の春に行った時だった。

友人がオーナーを務めるアムスのインテリアショップで廃材を何重にも重ねたテーブルを発見した。使い古された材木は中古家具を連想させるが、それは全く違っていて、むしろ新しさすら感じた。多分、デザイナーは新素材の一つとして廃材を選んでいるんだと確信したのである。その秋から青山のお店では彼の家具を扱いはじめた。そして。僕も新しい引っ越し先用に棚を特注で作ってもらった。
 
今年のはじめ、そのピートが内装を手がけたカフェがホテルの近くにある事を聞き、今回の旅で訪れるのはこれが3回目だ。路地にも関わらず毎回行く度に客が多くなっているように感じる。内装もさながら、お店で焼いているパンや自家製のジャムもとてもおいしい。そして入り口近くにあるパンやジャムが並べられた大きな棚も廃材を使ったものである。ものすごくとんがっていながら、どこか和める感じ。それが古都アムステルダムにも通じ、この店はある意味僕が感じるオランダの縮図のようである。刺激と和み、この2つを持ち合わせた面白い国故に、僕はこの国をヘビーローテーションしてるのかもしれない。

amscafe
アムスにあるピート内装のカフェ『De Bakkerswinkel』
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2005年10月30日

ヨーロッパを旅して ―その2:アントワープー

今回はベルギーのアントワープ。日本ではファッションの街として知られているが、この街自体はあまり語られることはない。オランダのアムステルダムから電車で約2時間、パリからも同じくらいの時間で行けるので、オランダっぽい建築にフランスっぽい装飾がつけられているような感じだ。言語もベルギー語というものはなく、オランダ語とフランス語が半々だ。
 
実はベルギーファッションは日本の方が見ることが出来る。アントワープの有名なデザイナー、マルタン・マルジェラの路面店は日本には存在するが、地元ではセレクトショップに置かれている程度である。メインの通りを少しわきにそれると、先ほどまで昼食を共にしたインテリアデザイナーのスタジオ・ジョブに教えてもらった『ウォルター』がある。ここのオーナーはアントワープを世界的なファッションタウンに押し上げた、アントワープ王立アカデミーの講師でもある、ウォルター・ヴァン・ベイレンドンク氏である。太めの体格にユダヤ教のような長い髭をのばし、可愛い動物のワッペンのついたセーターを着た彼は、どこから見ても王立学校の講師には見えない、しかし、彼こそ多くのデザイナーを世に送りだした張本人なのだ。
 
彼の店は何度か海外の建築雑誌に取り上げられていたので、知ってはいたが、実際はさらに衝撃的だった。スポンジで出来た大きなテーブルや、宙に浮かんだドーナツ型のレジ、6メートル程ある熊のぬいぐるみが横たわり、ベルトコンベアのように洋服が回っている。そしてドリンク瓶の運搬ケースを積み重ねて作った壁。すべてが既成の感覚を打ち崩すかのようなものばかり。オランダにも同じようなことを感じるが、中世に栄華を持ちながらそれに依存することなく、常にその時代時代で新しい文化、芸術を生んでいくエキサンティングな街だと思う。

walter
文中でふれた『ウォルター』の店内。ドリンク瓶のケースで作られた巨大な壁
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2005年10月26日

ヨーロッパを旅して ―その1:リスボンー

今、出張でヨーロッパを訪れている。これから3回にわたってヨーロッパの旅行記をお伝えしたい。最初はヨーロッパの最西端にあるポルトガルの首都リスボンだ。
 
ポルトガルといえば日本も織田信長の時代から交流があり、大航海時代と呼ばれたその頃には、植民地をどんどん開拓し、世界的にも勢力があった国だが、今は漁業と農業が中心で、いつからかその勢いは止まってしまった。ポルトガル自体はカソリックが多いらしいが、モロッコやイスラム圏が近いので、古い建物にはイスラム建築に良く見られるモザイクタイルが外壁に使われている。地元ではアズレージョと呼ばれている。本当にイスラムのような紋様が入ったタイルもあれば、60〜70年代のモダン風デザインもあったりする。トラムで丘の方に昇っていくとこういった建物が密集していて、窓からはたくさんの洗濯物が干され、細い路地を子供が駆け回っている。日本の30年前くらいにあった田舎の風景のような異国にもかかわらず、どこか懐かしさを感じる。
 
こののんびりした街にいると、生きるために必要な最低限の利益があれば何もいらなくなってくる。もしかすると、植民地を拡大する欲ものどかな生活の中で無意味に思えてきてしまったのでは?と思った。

lisbon
ちょっとモダンなアズレージョ。廃虚も多いが、きれいに内装をリノベーションしてカフェなどにしているところも多い。
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2005年10月21日

SAAB93の細部にせまる ーコクピット編 その2ー

SAAB車の特徴の1つともいえるセンターコンソールにあるキー部分。通常はステアリングの横についているが、その部分は膝に近いので冬期、夜が長く路面が凍結する北欧では、それが原因のスリップや衝突の際に膝を怪我する事が多いらしい。そのためセンターにキーを配置しているそうだ。
北欧でなくても衝突の際には日本でも同じだと思うのと、僕なんかは暗い車内で目で見にくい鍵穴になかなかキーが入らないという事が多いのでこれはとても親切だと思った。
 
もう1つ大きな特徴が、ハンドル部分だ。シルバーの部分がまるで飛行機の操縦レバーのようなデザインになっている。SAAB93にはこのハンドルを含め、飛行機を連想させるようなデザインが各所に見られる。他の部分については今後書いていきたいと思っている。
 
こんな限られた部分に焦点をあてても、これだけの(まだまだ紹介しきれないほどあるが)細かなディテールがみえてくる。
今後も何回かに分けてディテールについては触れていきたいと思っている。
とても心地よく行き届いた細部の配慮と、何よりも操作性、安全性の裏付けの中から美しいデザインが生まれている事があらためてデザインをする事の意味を問いかけてくれているようだ。

center_key
センターキー部分
サイドブレーキで見にくいがその後ろに見えるのがイグニッション・キー。
周辺のシルバーとブラックの配色にも注目。

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2005年10月17日

SAAB93の細部にせまる ーコクピット編 その1ー

先日、SAABの新車SAAB93を観に行った。一応、関係者の方やパンフレットなどを見て予習はしてあったのと、あいにく雨だったため、一目見た時の驚きはあまりなかった。
だがその後、じっくり時間をかけて細部をみていくと、パンフレットでは分からなかった実物の丁寧さがじわじわと伝わってきた。
特に内装の中に気に入った部分が多かったので、今回はその内装を中心に、特にコクピットまわりに絞ってお話ししたい。
 
まず、マットシルバーとマットブラックが全体の基調となっていて、ヨーロッパ車っぽいのだが、どことなく違う雰囲気(これが北欧っぽさなのかもしれないが)を感じた。このシルバーとブラックの配色場所や配色の比率も絶妙だ。デンマークやスウェーデンのデザイン雑貨の雰囲気ととても相性がいい感じを受けた。
 
この北欧っぽさがより感じられたのがインパネの計器類やスイッチなどに添えられた数字や記号、ピクトグラムなどだ。それらは、ほぼ世界共通のものであるのだが、多分大きさや書体の選び方が独特なんだろうと思う。
 
次に見たのがセンターにあるカップホルダー。パンフレットでも見ていて、指一本で出し入れ可能なものだが、一瞬のうちに飛び出してきた。こんなに早いとは思わなかった。ゆっくり指で押し、収納すると絶妙な動きをしながらスルッとコンパクトにまとまってしまった。

cup_holder1
カップホルダー
指一本で出し入れ可能なドリンクホルダー。飛び出す時は一瞬。

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cup_holder3
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柳本浩市
Glyph. 代表
1969年生まれ。
北欧 × デザイン × 飛行機好きが転じ、 2002年Glyph.(グリフ)を立ち上げる。

おしゃれインテリアショップでのイベントや海外商品のプロデュース、 企業とのコラボなどちょっとした活動を手掛ける傍ら、 casa BRUTUS、Esquire、GQ、Engine、HF、Vogue、BRUTUS、など デザインコンシャスな雑誌で執筆中。

自ら出版した「Departure」はちょっとしたエアラインブームを巻き起こした。
最近の北欧デザインブームの火付け役でもある。

こだわりの趣味を仕事でも楽しむちょっとした大人である。