ジョヴァンニッキ2

アマチュア作曲家が本業よりアート鑑賞に夢中になっているブログです。

「庄田次郎10 DAYS」の一環として企画された「横浜白楽BithesBrew 7 DAYS」の中日にトマソンズがゲスト出演した。
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庄田次郎は、日本フリージャズ創世記から活動し、即興音楽界のゴッドファーザーと呼ばれる重鎮である。チラシの写真を見てもわかるが、諸肌脱いで「人生即興だ!」と叫んでトランペットなどを吹きまくる独自のスタイルだ。

この「7 DAYS」は庄田次郎が一つのライブハウス(横浜白楽BithesBrew)にて7日間連続で行うライブである。日替わりでゲストが共演する形で、私達はその一端を担わせてもらったのだ。

このような有力者にゲストとして呼んでもらって大変に光栄である。なぜかなと思ったが、トマソンズは他に類似のユニットがあまりないユニークなコンビなので「こいつら変っているから一緒にやれば面白くなるだろう」と思って戴けたのではないかな。

チラシの裏面が凄まじい。
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何やら怪しげなムード満点の画像が散りばめられている。こんなダークな1週間のライブシリーズでチェロが2人(森重靖宗と私)も出演するのがまた変わっているかもしれない。

今回のライブでは3人全員のアンサンブル(?)をはじめ、3通りのデュエットも披露した。

♪テツとジョヴァンニ:「トマソンズ」そのものである。
♪庄田次郎とジョヴァンニ:デュエットとしては初の経験。
♪庄田次郎とテツ:アルトサックス同士の「対決」で締めた。

会場のピアノは鳴りがいいように調整されていたようだ。雲みたいな漠然とした音には不向きだが、粒立ち良く明瞭に音を響かせるのには向いていた。そのため、庄田次郎とテツの嵐のような「音合戦」の只中でピアノを主張するのには最適だった。

庄田次郎さん、このような刺激的な場を経験させて戴き、ありがとうございました。

即興ユニット「トマソンズ」の単独ライブに出演した。会場は今回が2度目となる横浜の「ジャズ・ファースト」。ゲストにフラメンコ・ギタリストの鵜野澤達夫を迎え、さらに飛び入りゲスト2名(ピアノのKYOUおよび打楽器の野村おさむ)を加えての演奏となった。

相方・阪本テツの集客努力が実り、今回も前回同様、満員御礼となって嬉しかった。

最近私は演奏曲の楽譜一つ一つに表紙を作ることが趣味となった。今回演奏した曲の楽譜にもすべて表紙を付けたので紹介がてらライブを振り返ってみよう。

<1セット>

1セットはトマソンズのオリジナル曲を並べ、トマソンズがどういうユニットであるかを示した。

♪トマソンズ・オリジナル新曲「ミリオネア・サンライズ・タウン」
テツ:バスクラリネット
ジョヴァンニ:ピアノ
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当初私は2つの曲を考案した。ライブハウスの住所(長者町)をもじった「ミリオネア・タウン」、および最寄り駅(日ノ出町)をもじった「サンライズ・タウン」である。その後これらの2曲を合体させて1つの楽曲にしたのがこの曲である。

♪トマソンズ・オリジナル「11(イレブン)・ピクチャーズ」
テツ:アルトサックス、バス・クラリネット、ソプラノサックス
ジョヴァンニ:チェロ
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過去2回、横浜市民ギャラリーで開催された展覧会「美の精鋭たち」のオープニングで演奏した曲である。

展示された抽象作品の画像をそのまま楽譜として見ながら、イメージを膨らませて即興演奏するという趣旨の作品である。同じ画像を見ながらの演奏ではあるが、即興なので毎回異なった音になるのが面白いところだ。

♪トマソンズ・オリジナル「フォー・エリック」
テツ:ソプラノサックス
ジョヴァンニ:ピアノ
野村おさむ:ドラムス
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エリックというと、ギタリストのエリック・クラプトンを想い出す人が多いと思うが、エリック・ドルフィーのことである。相方・阪本テツが大好きなアーティストなのだ。

曲名は「エリック・ドルフィーに捧げる」とか「エリック・ドルフィーに敬意を表して」というような意味だ。簡素なモチーフに基づく即興である。

<幕間>

♪飛び入り即興
KYOU(ピアノ)+野村おさむ(ドラムス)

子守歌を題材とした優しい即興だった。

<2セット>

♪セロニアス・モンク作曲「ミステリオーソ」
テツ:バス・クラリネット、アルトサックス
ジョヴァンニ:チェロ、ピアノ(連弾)
鵜野澤達夫:ギター
KYOU(飛び入りゲスト):ピアノ(独奏、連弾)
野村おさむ:ドラムス
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ゲスト、飛び入りゲストを含めフルメンバーでの演奏だ。メカニカルな主題に基づき、全パートが入り乱れての即興合戦といったセッションとなった。

♪武満徹作曲「見えない子供」
テツ:ソプラノサックス
鵜野澤達夫:ギター
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トマソンズでは珍しくボサノバ風の演奏を披露した。今回のステージで最も聴きやすかったのではないだろうか。

♪武満徹作曲「太平洋ひとりぼっち」
テツ:ソプラノサックス、ピアノ
ジョヴァンニ:チェロ
鵜野澤達夫:ギター
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太平洋をヨットで横断した堀江謙一の手記「太平洋ひとりぼっち」による同盟の映画に付けられた音楽である。原曲は武満徹作曲だが、ジャズ風にアレンジされた演奏に基づき、鵜野澤が中心となってコードを解析した。

♪ディヴィッド・ラクシン作曲「ローラ」
テツ:アルトサックス
ジョヴァンニ:ピアノ
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原曲は映画「ローラ殺人事件」に付けられた音楽である。それをジャズ風にアレンジしたコード譜を基にトマソンズ用の譜面を起こして演奏した。

<アンコール>

♪セロニアス・モンク作曲「ラウンド・ミッドナイト」
テツ:アルトサックス
ジョヴァンニ:ピアノ
野村おさむ:ドラムス
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原曲名は「ラウンド・アバウト・ミッドナイト」。「ローラ」同様、コード譜を基に演奏譜を書き起こした。

<アフターアワーズ>

♪チック・コリア作曲「スペイン」
KYOU:ピアノ
鵜野澤達夫:ギター

途中からテツもサックスで加わった。大変な熱演だった。終演後しばらく残っておられたお客様はこれを聴けてラッキーだったと思う。

「Point de Vue vol.11 ~出雲市立第一中学校合唱部を迎えて~」(浜離宮朝日ホール:東京都中央区)に行った。
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最近ほとんどコンサートに行かなくなった私がこのコンサートに行った理由は次の通りである:
1.現代曲の初演が多いこと
2.演奏曲の歌詞を友人フランク・ワインアルトナー(仮名)が構成・作成したこと
3.妻が共演しているピアニストの家族が出演すること
4.今回の企画者の一人で作曲家の鈴木輝昭氏は、もしかしたら私が作曲で師事していたかもしれないこと

上記の4.には補足が必要だろう。
昔、私は作曲家になりたいと思い、ある時ある友人と「ヨーイドン!」で同時に研鑽を始めたことがあった。その友人は鈴木輝昭氏に師事し、私も一緒に習いたいなと思ったのである。種々の理由でそれはやめたのだが、鈴木輝昭氏の存在は、私の創作意欲をかきたてたのだった。私が尊敬する作曲家。三善晃の弟子でもあるし・・・。
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作曲評論をしてみる。

♪柏木恒希「Five fragments~オーボエ、チェロ、テノール、パーカッションのための~」
今回の発表曲の中では最も古典的な組み立てであった。即興に委ねる個所がほとんどなく、譜面にきっちり書き込まれた感じだ。小気味いいリズムとテンポで聴く人を飽きさせない工夫が凝らされていると思った。

4人のアンサンブルの中に声(テノール)を含ませたことに関しては、ワインアルトナー君と議論した。話のポイントは「歌は音の立ち上げが楽器より遅れるから、器楽アンサンブルに含ませるのはいかがなものか」という論点であった。

器楽の中の声というと、シェーンベルクの名作「月に憑かれたピエロ」を想い出す。この途方もない名作では、声は最初は厳密な音程を取り、その後上がったり下がったりして変化する。その微妙な揺れ動きが器楽アンサンブルに波紋を起こし、曲の深化に役立っている。

それに対してこの作品では、テノールはほとんど器楽的に扱われていた。そのため、先に書いた立ち上げの問題が出て来た。それを補うのは器楽と異なる音色およびテクストによる象徴性である。差し引きして得られたゲインがプラスかマイナスか?それは微妙なところであり、プラマイゼロではないかと思えた。

そういう意味で、この作品は、まずまずの出来という結論になると考える。

♪高濱絵里子「Improvisations Ⅱ~クラリネット、チェロ、ピアノのための~」
プログラムに書いてある通り即興性の強い曲で、即興演奏を志す私としては興味深かった。

作曲者の自作自演(ピアノ)なので、他のパート(クラリネット、チェロ)の即興部分を設けるという配慮をしてあったにもかかわらず、ピアノ主導的に流れていた。これは作曲者本人の意向と気持を考えると自然かもしれない。

しかし、そのような主従関係は、室内楽においてはあまり好ましいものではないと考える。もう少しクラリネットとチェロの活躍の場を増やし、その間ピアノは我慢するという構成で臨んだ方が良かったのではないか。

ピアノでの即興は見事であり、私などは真似できないレベルであった。

♪土田豊貴「リファレンスポイント~笙、クラリネット、チェロ、マリンバのための~」
柏木作品では器楽アンサンブルに声を加えることの是非が論点となったが、この作品では西洋楽器に和楽器を加えるという点が焦点となった。

西洋楽器に和楽器を加えるのは、古くは武満徹が「ノヴェンバー・ステップス」で試みた。これは1967年の作品であり、当時はもの珍しさも手伝って話題となった。

このような場合、「融合」を求めるのか「拮抗」を狙うのかによって作曲の方法が異なってくると思う。「拮抗」の方は考えやすい。異質なもの同士をぶつけ合うことにより、それまで無かった新たな響きを得るからである。

それに対して「融合」は難しい。そもそも異なる文化環境で育てあげられた楽器同士を融和させるには、互いの特質を変容させて歩み寄るしか方法が無い。

この作品は、どちらかというと「融合」を目指したようである。プログラムに載せられた作曲者自身の言葉でも「笙を西洋楽器と同列に扱いたい」となっていたからである。

そこには課題がある。もともと、西洋楽器とは異質な笙に西洋楽器のような音を出させるという事については、私は否定的である。融和させるなら最初から全部西洋楽器で編成すれば良いからである。

今回の演奏のうえでは「融合」はある程度成功していたように思う。そして笙という楽器の演奏法・技法における広がりを引き出し、「笙はこんな事も出来るのか」という新たな発見と驚きも伴っていた。そういう事が目的であると限定的に考えるなら、この作品は成功していると思う。

♪鈴木輝昭「《とおく》~同声合唱とピアノのための~(詩:谷川俊太郎)」
ピアノのパートが素晴らしかった。この作品は4曲から成る組曲であるが、極論すると声楽パートを除外し、ピアノだけでも立派な4楽章のソナタになるのではないかと思うほどであった。

こんなにピアノパートが面白いと、声楽のほうを聴かなくなる。それでは問題なので、極論の続きだが、ピアノパートは手加減してもう少し地味に書いた方が全体的には良かったのではないか、と思うのである。

♪森山智宏「ナイト パッセージⅢ」
古典的な弦楽三重奏では、各楽器が独立性を保ちつつ融和するという書法が取られていた。それに対してこの曲では、時々全楽器のハーモニーが聴かれたが、ほとんどの部分が各パートのソロを繋いだ形になっていた。

音色などが異なる楽器が交互に持ち味を出すというのは一興だが、せっかく3つのパートがあるのだから、アンサンブル的な要素がもっと欲しかった。ただし、私はバッハなどのポリフォニーを偏愛しているので、特にそう感じたのかもしれない。

♪土田英介「クラリネット、ヴァイオリン、ピアノのためのトリオ」
多分に即興を盛り込んでいるとはいえ、クラシック音楽のように楽譜に書き込んだ部分も多く、全体的に安定していた。作曲コンクールなどにおいては、減点が少ない作品と言えるかもしれない。

それと関連するが、各楽器の特性を比較的上手に活かした作品であるように聴こえた。

♪鈴木輝昭「遠野幻燈~二群の童声合唱とパーカッションのための詩曲~」
子供の演奏という制約のため、合唱にはさほど現代的な書法を用いず、パーカッションにモダニズムを任せた形で作られていた。

また合唱団の一部のメンバーにも打楽器を担当させることにより、空間的な広がりも意識させる作品となっていた。

残念だったのは、そのような工夫が凝らされた力作であるにもかかわらず、全員がステージから音を発するので、空間を表現するはずの打楽器の音が合唱と融和し、モノラル的に聴こえてしまったことである。

これを回避するには、打楽器を担当するメンバーをステージの外・客席側に配置すべきだろう。そうすれば全体として三次元の音空間が形成され、作曲者が意図した効果が得られると考えた。

しかしホールの運営面を含め現実的な要因により、そのような演出は困難だったのであろう。

久しぶりに現代曲の初演をたっぷり聴くことができて良かった。

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