ジョヴァンニッキ2

即興演奏家が本業よりアート鑑賞に夢中になっているブログです。

私は幻想芸術が好きで、若い頃から「幻想」というキーワードで展覧会や書籍を追い求めてきた。その過程で日本・東洋・西洋の数多くの「幻想」作品を観てきた。

それらの数多くの中で大泉佳広の絵は最上級に属する。発想・構成・制作技術のどれに視点を当てても、満足できるものを返してくれるような気がする。

所有する絵葉書は、展覧会の案内葉書を含め4枚あり、2011年から2914年まで、各年1枚づつとなっている。つまりその4年間の大泉佳広の作風の変化を辿ることもできるのだ。

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まずは2011年「第79回独立展」に出展した「SOUZOU」(想像?)。「創造」かもしれないが、幻想絵画なので「想像」だろうと推測した。
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これは西洋風の大浴場であろうか?石材のひび割れや、くすんだ色調などが写実的に描かれている。そしてその中にはミニチュア玩具らしきものが構成されている。

オモチャのバスやオモチャの観覧車が作動するわけがないのだが、こうして出来上がった絵を観ていると、それらが今にも動き出しそうな気がする。怪しい風景だ。

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次は2012年「第80回独立展」に出展した「AMA GUMO」(雨雲)である。
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「SOUZOU」と同様、舞台は大浴場である。タンクが4つ吊られ、回転しながら水を噴射する装置のように見える。最上段には太陽のシンボルが置かれている。下にはバスが走っている。

この風景、若干だがマルセル・デュシャンを想起させる。「ボトルラック」にタンクをぶら下げたらこんな感じになる。冷徹なはずの器具が、この絵では有機的に感じるのが不思議だ。

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2013年「第81回独立展」に出展した「KAZE NO KIOKU」(風の記憶)。
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それまではほぼ水平に描かれていた浴場が、縦に持ち上げられている。その中に太陽、換気扇(?)、飛行機、木立、バスなどが配置されている。一味違った幻想風景が立ち上ったという感じである。

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2014年は厳密には絵葉書ではないかもしれないが、個展の案内葉書である。「TOBU JUNBI」(飛ぶ準備)が図柄に採用されている。
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案内葉書の裏面に書かれた作家本人の言葉の中で「想次元」は目を引いた。二次元でも三次元でもなく「想次元」というのがこの作家の幻想に向き合う姿勢を示しているではないか。
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ここでは大浴場が消え、少し曖昧でぼやかた背景に太陽、クレーン、飛行機が描かれている。これまでの作品と比べて、少ないモチーフに絞り込んで描いている。画像ではよくわからないが、この絵の実物を観たときは、その深い幻想風景に感動した。

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今後の大泉佳広は幻想をどのように繰り広げていくのだろうか?期待している。

「山崎康譽展 –Marks-」(ぎゃらりー由芽⦅ゆめ⦆:東京都三鷹市)に行った。
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画廊の外観。団地の集会室をそのまま画廊として活用したのかもしれない。
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地味なたたずまいだが、入口にパラソルを置くだけでお洒落度が増す。
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以前、横浜市民ギャラリーで開催された「美の精鋭たち」という展覧会で即興ユニット「トマソンズ」として演奏したことがあった。展示作品を観ながら、その印象を音に置き換えてゆくというコラボレーションである。

その打上の席で、展示作家ではなかったが、来場されていた画家が一つのドローイングを見せてくれた。それは何と私たちの演奏を聴いた印象を即興で描いたものだった。これは「双方向のコラボ」だ!

その人が今回の個展の作家・山崎康譽さんだったのである。
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展示作品の中には、刷毛でジグザグに複数本の線を引いた箇所があった。それは横浜市民ギャラリーでのドローイングの感じを想い出しながら描いたということだった。

「トマソンズの演奏が今回の展示作品に部分的に影響を与えている」と言って戴いたのは嬉しかった。
画廊を辞去して足元を見ると、「路上観察」魂を刺激する物が横たわっていた。巨匠・林丈二を真似して写真に収めた。
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遠かったが、行って良かった。

クプカの絵葉書は「灰色と金色の展開」の1枚だけ所有している。
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クプカは大好きな画家の一人なのだが、その特質がいま一つ把握しきれないでいる。この絵葉書だけを観たら未来派あるいはキュビズムの画家に限定してしまいそうだ。

手元にある啓蒙書「カラー版 20世紀の美術」(美術出版社)をひもといてみよう。
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そうしたらクプカはドローネーに代表されるオルフィスムに分類され、「垂直線の言語の為の習作」という作品が紹介されていた。
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そうかと思うと、さらに異なる視点もある。同じく啓蒙書「すぐわかる画家別・幻想美術の見かた」(東京美術)では幻想画家としてクプカが紹介されていたのである。
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掲載図版は「静寂の道」。これはまさしく幻想画だ。形而上学、オカルト、神智学などへの傾倒が示唆されていた。
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このようにクプカは未来派、キュビズム、オルフィスム、幻想などの流派・ジャンルをまたいだ取り組みをした画家であったようだ。

そもそもアーティストを勝手に(強引に)特定のジャンルに当てはめようとする事自体がけしからん事だとは思っている。しかし、ついそのような考えを発動してしまうのが素人のあさはかさ(あるいは人情)だとも思っている。

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