ジョヴァンニッキ2

即興演奏家が本業よりアート鑑賞に夢中になっているブログです。

2016年06月

「密の世界」(フェイアートギャラリー:横浜)に行った。雨天で、しかも駅から遠い場所だったが、それでも足を運んだのは銀座の画廊で見かけた案内葉書に惹かれたからである。

密の世界_0001

裏面は同じデザインをモノクロームにしただけなのだが、これまた興味をそそられた。

密の世界_0002

ところが会場に行ったら、もちろん面白かったのだが、事前に思い描いたイメージとどこか違う。悪いわけではないのだが、違和感があったのだ。

そしてその理由が判明した。主因は案内葉書に記された「密」の文字である。これはどのような字体なのか知らないが、私はハチミツの「蜜」だと思って、幻想的でかつ妖異な世界へ誘ってくれそうな期待感を抱いたのだ。

しかし実際は精密の「密」であった。会場には「繊細に細部まで制作された」という説明文が掲げられていた。細密画、あるいはそれに近い作品の展覧会という意味だったようだ。

当初の怪しげな雰囲気に対する期待感が裏切られ、展示作品は毒の無い、むしろユーモラスに傾斜したものが多かった。そのスイッチを切り替えるのに少し時間がかかったが、それから後は素直に楽しんで鑑賞できた。

この勘違いは、もしかすると新たなマイブームの種になったかもしれない。

アットホームコンサート(横浜山手111番館)にチェロで出演した。ラフマニノフの作品だけを集めて演奏するという企画である。これは友人と組んでいるピアノトリオ「トリオレヴリー」のコンサートであるが、今回は特別出演のヴィオラ奏者を加えてピアノ四重奏の編成で臨んだ、

ラヴィとレヴリ_0002


私が出演したのは次の曲目である。すべてラフマニノフ作曲であり、またピアノ三重奏曲を除く3曲は私が編曲し、ヴィオラを加えて4人での演奏である。

♪ピアノ三重奏曲 第1番「悲しみのレント」
♪ピアノ協奏曲 第2番より第1楽章
♪交響曲 第2番より第3楽章
♪「14の歌曲集」より「ヴォカリーズ

なおアンコールはラフマニノフでなく、ピアソラ作曲「ブエノスアイレスの春」のトリオ編曲版を演奏した。重厚なラフマニノフが続いたので、最後は軽妙なピアソラで気分を変えたのだ。

暑いなか聴きに来て下さった方々、ありがとうございました。

アトリエ・ラ・ヴィとは高校同期生が中心となって組織した私的カルチャースクールのような場である。ここでは音楽、美術、文学など多彩なジャンルの活動が行われており、年に1回発表会を開催している。

ラヴィとレヴリ_0001

今年は記念すべき第5回目にあたり、メンバーは一段とレベルアップした感がある。過去のブログ記事でも触れたが、ここでもう一度第1回から今回までの経過を振り返ってみる。

第1回(2012年)
会場:ル・クラシック(藤沢)
・記事の中でこの会の性格を述べた:
多様なジャンルの作品が一堂に会し、様々な音楽が奏でられ、全体として大きなコラボレーションが形成されていた。「アトリエ・ラ・ヴィ」と公的なカルチャースクールとの最も大きな違いは、アットホームな雰囲気で発表会参加者の相互の情報・意見交換と親睦が図れたことだと思う。
・頑張って陶芸作品も出展したぞ。

第2回(2013年)
会場:リラホール(藤沢)
・語りとチェロ演奏とのコラボ「平家チェロ」なるものを企画して実演した。世界で初めての取り組みだと思っていたが、平家物語を題材としたチェロ演奏は過去に例があった。残念だが「世界初」の呼称は取り下げた。
ただし那須与一が射とめた扇がひらひらと空中を舞うさまを紙ヒコーキで表現したのは私が初めてだと思う。当日は失敗し、投げたらすぐ落下してしまったが(苦笑)。
・シューベルト作曲ピアノ五重奏曲「鱒」の連続演奏を始めた。この回は有名な第4楽章を演奏した。

第3回(2014年)
会場:リラホール(藤沢)
・ピアノで即興演奏を行った。ブリテン作曲「青少年のための管弦楽入門」の中の「ロンド」をテーマとした自由な即興である。
・「鱒」は第5楽章。この回から演奏グループに「アンサンブル・ソロッタ」という呼称が与えられた。

第4回(2015年)
会場:リラホール(藤沢)
・「おじさん連弾」でサティ作曲「ジュ・トゥ・ヴ」を同級生のA君と演奏した。
・「鱒」は第1楽章。私が最も苦手とする楽章で苦しんだが、なんとかゴマかしてソツなく終わらせた(と思う)。
・トーンチャイムでは初めて指揮を担当し、私が編曲した「君といつまでも」を演奏した。私は、指揮はほとんどやった事が無く自己流だったが、まあ何とか終わらせた。

■第5回(2016年:今回)
会場:リラホール(藤沢)
・「じゃまーず」なるユニットを結成し「神田川」を演奏した。私は通常ヴァイオリンで演奏するオブリガートをチェロで弾くという課題に取り組んだ。またメンバーの一人のアイデアで、全員肩に赤いタオルを掛けて演奏した。歌詞の「♪赤い手ぬぐいマフラーにして」を視覚化したものである。

・寄せ集めアンサンブル「ソロッタ」ではプッチーニの歌劇「トスカ」より「星は光りぬ」を同級生の独唱により演奏した。声楽との合わせは大変難しかった。またヨハン・シュトラウスの「皇帝円舞曲」も演奏した。どちらも同期生の編曲によるものである。

・今回はアート・文学関係の活動には参加しなかった。またいつか、第2回で行った「平家チェロ」のような創作活動で参画したいと思っている。

打ち上げではスパークリングワインに酔いしれた。

「石黒隆宗 展」(ギャラリーれがろ:荻窪)に行った。

小泉正彦ほか_0007

石黒隆宗はマイブームの一つ「何も説明しなくて良い理想的なアート」に該当する作家である。案内葉書がそれを裏付けている。どういう事かというと、ただ単に「石黒隆宗展」とだけ記載され、余計なキャッチフレーズは添えられていないのだ。その必要がないからであろう。
小泉正彦ほか_0008

一方、説明が必要な場合、あるいは説明により集客を増やそうという意図がある場合は副題が書かれていることが多い。今年の様々な個展を振り返り、案内に記載された副題を拾ってみると:

♪○○○へ告ぐ
♪まぼろしの○○○
♪形はひびき、○○○は・・・
♪○○○の先にあるもの
♪終わりなき○○
♪○○○○の風

まだまだ多数見つけられる。なお上記のサンプルの中には巨匠モランディの展覧会も含まれていることを補足しておこう。

石黒隆宗の作品はこうした言葉による修飾が無くても、それ自体が完結した美を鑑賞者に向けて発している。石黒作品を観たことが無い人がいたら、一度ぜひ観て欲しいと思う。

図録の表紙はリーフレット同様、「07.06.85」(部分)が採用されていた。ただし異なる部分をトリミングしているが。

ザオ・ウーキー_0004
さて、ザオ・ウーキーのこれらの抽象作品を一言で言い表すとしたらどうなるだろうか?例えばカンディンスキーの抽象絵画には「冷たい抽象」と「熱い抽象」の2つの流れがある。その分類が当てはめられないだろうか?

「造船所の船」は私の好きな線の構成に彩色された作品だ。これは「冷たい」、「熱い」の両方の特質を兼ね備えているように見える。

ザオ・ウーキー_0005
「サヴァンナ」は、形状的には「熱い抽象」に属すると思うのだが、その色調は熱くない。暖かいという感じがする。

ザオ・ウーキー_0007

「22.06.91」も同様だ。

ザオ・ウーキー_0006
こうしてザオ・ウーキーの抽象絵画を観てゆくと、どうやら「冷たい」、「熱い」の中間に位置するように思えてきた。そこで無理矢理「暖かい抽象」という分類を考えてみた。

ただしアート作品を何らかのジャンルに押し込めるのは良くない事だとは思う。「ザオ・ウーキーの抽象」が一つの独立したジャンルである、と考えた方がより本質に近いと思う。ここで「暖かい抽象」というジャンルを考えたのは、新たなジャンルを創案するという自分勝手な趣味だと言われれば、実はその通りである。

このように、いろいろな事を考えさせられたザオ・ウーキー展だった。行って本当に良かった。

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