ジョヴァンニッキ2

即興演奏家が本業よりアート鑑賞に夢中になっているブログです。

2018年01月

このシリーズは久しぶりになってしまった。今回は初代・歌川広重と二代目・歌川広重の対決である。

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まずは♪初代・歌川広重( 寛政9年 <1797年> ~ 安政5年 <1858年> )。所有している絵葉書は「本朝名所 相州江の嶋岩屋之図」。
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私は鵠沼海岸に住んでおり、江の島の橋のたもとまで歩いても3~40分で行くことができる。そのためこの作品には愛着がある。

大波の上端が水平線に接するように描かれているが、これは意図的なものであろうか?私はこの版画を見てサルバドール・ダリの「海の影の中で眠る犬を見るために、海の皮膚を持ち上げる少女である6歳のダリ」を想い出した。

岩屋に入ろうとしている3人の人物の大きさと比べて、この波の高さは尋常ではない。そのような誇張がなされているにもかかわらず、不自然さを感じさせないのはさすが巨匠と言えよう。

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そして♪二代目・歌川広重( 文政9年 <1826年> ~ 明治2年<1869年> )の絵葉書は「亜墨利加国賑之図」。大判3枚続きの錦絵である。
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この作品はねじれた遠近法に魅力がある。それに関しては引越す前のブログ「ジョヴァンニッキ」に記事を書いたので一部を再掲する。

<以下、記事の再掲>
何が面白いかと言うと、遠近法の使い方を誤っているからだ。右側の建物が透視図法によってだんだん小さくなってゆく。そして一番端に達したら目を左に転じてみる。すると真ん中に描かれた建物は相対的に大きすぎることがわかる。また街を歩く人々も、相対的に大きすぎたり小さすぎたりしている。このため全体を眺めると一種の眩暈(めまい)のような感覚を味わう。見ようによっては、これは幻想絵画だ。

即興ユニット「トマソンズ」は、基本的には完全即興を行う。相方が出した音に反応して音を出し、相方がそれを聴いてまた音を出し・・・という具合である。

しかしライブにおいては、完全即興だけではお客様が飽きてしまいそうだ。そのためオリジナルの曲を作曲するか、あるいは既存曲のカバーも行っている。

評判が良かった曲は複数回演奏を重ねている。現在結成7年目であるが、演奏回数の多い順にこれらの曲を並べてみた。まずは5回以上の演奏実績がある11曲を紹介する。なお私はヤル気を出すために、各曲に表紙を作っている。譜面の一部と併せて紹介しよう。

■第1位(13回)「For Eric」(阪本テツ考案:トマソンズ・オリジナル)
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これは相方・阪本テツが敬愛するエリック・ドルフィーへの讃歌のような曲だ。メロディーはエリックではなく阪本テツが考案したもで、それを基調として二人で即興を繰り広げる。立派な表紙をめくると、書いてある楽譜はこれだけだ。これで即興を行うのである。
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表紙画像はエリック・ドルフィーの最晩年の活動を収めたレコードのジャケット。実に魅力的な絵だ。

■第2位(12回)「ミリオネア・サンライズ・タウン」(ジョヴァンニ・スキアリ考案:トマソンズ・オリジナル)
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これまで私達は横浜のライブハウス「JAZZ FIRST」で通算4回ライブを行っている。その第2回目にこの曲を発表した。ミリオネア(億万長者)はJAZZ FIRSTの住所(長者町)からきている。そしてサンライズ(日ノ出)は、同店の最寄り駅「日ノ出町」をもじったものだ。

画像は金塊(億万長者のシンボル)と夜の日ノ出町である。

■第3位(12回)「Round (about) Midnight」(セロニアス・モンク曲)
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モンクの名曲をカバーしたもので、私にとって初めてのジャズピアノである。しかし私はコード譜を見ながらの即興(本当の意味でのジャズ)ができなかったので、悔しいが自分で次のような譜面を起こし、それを見ながら若干その場での即興を交えて演奏してきた。
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本当なら次のようなコード譜を渡されて、その場で(初見で)スラスラ演奏するのが本当のジャズピアニストだと思う。
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私は(非常にゆっくりした楽章なら)バロック音楽の通奏低音の数字を見ながら右手を即興で入れることができる。ジャズのコード記述はそれとはかなり異なるが、ある程度の基礎は持っていると思うので、今後の努力で本当の意味でジャズピアノを弾けるようになりたいと思っている。

表紙の画像はジョセフ・コーネルの「Habitat Group for Shooting Gallery」。大好きな作家である。

■第4位(6回)「ミステリオーソ」(セロニアス・モンク曲)
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第3位に続き、同じくモンクの曲である。テーマの呈示がチェロに合っていると思う。

画像は「ミステリオーソ+2」のレコードジャケット。原画はキリコのミステリアスな「預言者」である。

■第5位(5回)「怒りの日」(ジョヴァンニ・スキアリ考案:トマソンズ・オリジナル)
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グレゴリオ聖歌「怒りの日」をテーマとして即興を行う曲である。このテーマはベルリオーズの「幻想交響曲」など、何人かのクラシック音楽の作曲家に採り上げられている。

画像は私が敬愛する版画家・清原啓子の「魔都霧譚」。終末の暗黒世界のイメージが沸き上がってくる。この鬼才が31歳の若さで逝ってしまったのが残念でならない。

■第5位(5回)「Eleven Pictures」(ジョヴァンニ・スキアリ考案:トマソンズ・オリジナル)
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これは展覧会場で、展示作品を観ながらそのイメージを音に投影するという即興曲だ。楽譜の中味は次のようになっている。一種の図形楽譜と呼んでもいいだろう。
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表紙の画像はその展覧会の案内葉書である。

■第5位[同点](5回)「バンスリカーナ」(山下洋輔曲)
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有名な山下洋輔の曲をカバーしたものである。

画像は「Banslikana」のレコードジャケットである。

■第5位[同点](5回)「見えないこども」(武満徹作曲)
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この曲は、相方・阪本テツがフラメンコ・ギタリストの鵜野澤[うのこ]達夫とのデュエットで演奏することが多い。

画像はヴィヴィアン佐藤の作品。

■第5位[同点](5回)「太平洋ひとりぼっち」(武満徹作曲)
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この曲は、阪本テツ、鵜野澤[うのこ]達夫、私の3人で演奏することが多い。

画像は和田誠の似顔絵イラスト。阪本テツは和田誠のファンである。

■第5位[同点](5回)「In a Sentimental Mood」(Duke Ellington曲)
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この曲は阪本テツがバスクラリネット、私がチェロで演奏することが多い。ピアノがない会場で、短くまとまった演奏を求められた場合に相応しい曲である。

表紙の画像は中村岳陵の「残照」。美しい絵だ。

トマソンズ結成の年(2011年)の7月、「すみだ川アートプロジェクト2011」の一環としての「すみだ川音楽解放区」に参加した。
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久しぶりに案内図を開くと、広場での演奏や船上v.s.河岸の即興合戦など、暑かったが楽しかった思い出がよみがえってくる。
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即興合戦では演奏上のルールを書いた紙を渡された。指揮者が掲げる札の色によって演奏(動作)が定められている。
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参加者のなかには、また一緒に演奏してみたいという面白そうな人がいたが、それはまだ実現していない。

これが、トマソンズ唯一の屋外での演奏実績である。

即興ユニット「トマソンズ」は相方・阪本テツも私も、どちらも現代アートマニアである。音楽活動においてもその嗜好を引きずっているので、音楽だけを追求してきた人たちとは少し異なる人種かもしれない。

トマソンズが、ライブハイスなど音楽専門の場だけではなく、アートの環境でも演奏実績を持っているのはそのためである。

その歴史は「先史時代」にまで遡る。私達が最初にアートの環境で演奏したのは結成3年前の2008年2月、東京都現代美術館においてであった。川俣正「通路」展で即興仲間と共にゲリラ・ライブを敢行したのである。この時は数名の即興グループによる演奏であった。
通路
その流れで、ユニット結成の年、2011年の10月に横浜トリエンナーレの一環として開催された横浜新港ピアでの毛原大樹のブース「最後のテレビ」にて即興を行った。ギターとの共演であった。
新港ピア
その後しばらくの間は実績が無かったが、浪川恵美氏のご尽力により2016年の2月、横浜市民ギャラリーで開催された展覧会「美の精鋭たち」のオープニングで演奏する機会を得た。
美の精鋭たち1
美の精鋭たち1の写真
するとその勢いで同年(2016年)5月に、こんどは銀座K’sギャラリーで開催された「上野謙介/石黒隆宗Korea Triumphant」のオープニングでも演奏することができた。
上野謙介・石黒隆宗
ケイズの写真
翌年 (2017年) 2月に、まずは横浜市民ギャラリーでの2回目の演奏が実現した。
美の精鋭たち2
美の精鋭たち2の写真
そしてアートギャラリーでの演奏の流れはさらに支流を生んだ。同年 (2017年) 3月に浦賀の異色ギャラリー「時舟」で開催された「Sarong」展のパーティでも演奏したのである。
時舟1
「時舟」では同年 (2017年) 6月にも演奏の機会があり、その時はコンテンポラリーダンスとのコラボが実現した。(その後「時舟」は惜しまれつつクローズした。
時舟2
時舟2の写真
そして今年 (2018年) 年初には、これまでの流れが結束してホテル・ニューオータニでの「現代日本の芸術市場」での演奏が実現したのである。
ニューオータニ

「ともよあずさ New Year Concert 2018」(横浜みなとみらいホール 小ホール)に行った。ほぼ毎回通っているコンサートシリーズだ。
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ピアノの堀部ともよ、マリンバの中村梓の二人の名前を並べてユニット名にしたこのコンビはいつも楽しい時間を提供してくれる。
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現代のマリンバはいつ頃産まれたのだろうか?いろいろ調べてみたら、20世紀初頭だということがわかった。

という事は「普通の」クラシック音楽にはマリンバは登場していなかった事が明らかだ。モーツアルトは18世紀に没し、ベートーヴェンは19世紀に亡くなっているのだから。

従ってマリンバのために作曲された作品は全て20世紀の作曲家が作ったものである。ではマリンバでコンサートを行おうとすると、現代曲だけしか採り上げられないのであろうか?

そんな事はない。本来マリンバのためではない作品を編曲すればいいのである。今回のコンサートでも次のような曲が「編曲もの」であった:

♪ヴィヴァルディの「冬」(オリジナルは独奏ヴァイオリンと弦楽合奏)
♪バッハ「シャコンヌ」(オリジナルは無伴奏ヴァイオリン)
♪ポッパー「ハンガリア狂詩曲」(オリジナルはチェロ独奏)
♪ピアソラ「タンゴの歴史より」(オリジナルはフルートとギター)
♪ベルトミュー「ロマンティック組曲」(オリジナルはフルートとピアノ)
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ではマリンバ奏者が「借り物」で仕事をしなければならないのは、不利な要因であろうか?いや、私は逆にアドバンテージがあるのではないかと思うのである。

例えば今回作品が採り上げられたベルトミューは忘れれらた作曲家だという。私もこの作曲家の名前は聞いたことがなかった。フルート奏者の間でも決してメジャーな存在ではないだろう。

そのベルトミューを今回のようにマリンバによって演奏したのは、埋もれた作曲家・作品の再発掘ということになると考える。そしてそのような企画を思い切って行うことができるのは、本来の楽器でない立場であるマリンバ奏者などが適しているのではないか。

その理由は、私が考えるに、確立された既存の演奏テクニックや常識などに囚われることなく推進できるからである。

そのような、大げさに言えば任務を背負って、ともよあずさは今後も埋もれた宝の発掘に邁進して欲しいと願うのである。

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