ジョヴァンニッキ2

即興演奏家が本業よりアート鑑賞に夢中になっているブログです。

2019年06月

ニューヨークのホイットニー美術館を訪ねた時のプチ武勇伝を紹介する。

ある展示室に架かっていた抽象画がとても気に入った。写真を撮りたかったが、「撮影禁止」だった。ものすごく下手だがイラストを描いてみた。
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そこには若いイケメンのスタッフがいた。彼に「NO PHOTOS」のサインについて「私は英語が読めないのでよくわからないが、写真を撮ってはいけないんですか?」と<英語で>聞いた。

英語を話せる人が英語を読めない、という日本人的ジョークを彼が理解したかどうか?それは今だにわからない。それより感動したのは彼の返事だった。記憶が正確ではないが、おおよそ次のようなことを彼は言ったのだ。

「あなたが本当に現代アート、特にこの絵が好きならば、写真を撮りたいだろう。残念ながらここは撮影禁止だ。でも、もし撮ったとしても、私はあなたに殴りかかったりはしないよ。」

どうですか、この柔軟さ!世界中の美術館やギャラリーに、彼のようなスタッフが多く勤務することを願いたい。

なお、誠に残念なことに、その写真はどこかでなくしてしまった・・・。

「布が好き 服が好き 田中史子 作品展」(numART:藤沢市鵠沼海岸)は近所なので2度行った。
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芸術的な柄のポシェットがあったので購入した。幾何学的な文様だが冷たさがなく、逆に温もりを感じる。
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内側もアートだ!外側と全く異なるタイプの意匠が施されていた。
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購入したら包装紙の代わりにお洒落なバッグに入れてくれた。感激!
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嬉しかったので白ワインを2杯飲んでしまった・・・。

会期はあと3日。7/2(火)までやっているので、特に地元の方々はぜひ観て下さい。

私は即興ユニット「トマソンズ」の一人としてピアノとチェロを弾いている。しかしピアノが上手いわけではない。「世界一ブルクミューラー(注1)が似合う男」と自称している。
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そんな私が海外セミナー(注2)でサンフランシスコに滞在した際、スポーツバー(注3)でピアノを弾いたのだ。その店にはグランドピアノがあり、楽器の周囲がカウンターになっていて飲める。この形はあちこちの店で(日本でも)よくみられる。すごーく下手だがイラストを描いてみた。
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その店では専属のイタリア人女性のピアニスト(注4)が毎日弾いていた。その日、店内は空いていて私たち以外に日本人観光客が数名飲んでいた。すると彼女はカウンターで飲んでいた私に「あなた弾く?」と言って引っ込んでしまった。

私は店内を見渡し、客はほとんど日本人だということを考慮して、少し前に人気があった連ドラ「おしん」の主題歌を弾いた。聴いてわかるかと心配したが、客の一人が「あっ、おしんだ」と言っているのが聞こえて安心した。他愛もない話だが、これが私のプチ武勇伝の一つである。

注1:ブルクミュラー
ピアノのおけいこでバイエルの途中あたりで取り組むことが多い曲集。演奏技術が高くなくても弾けるように書かれている。曲ごとに様々な情景が設定され、子供が飽きない工夫が凝らされている。私のピアノ演奏技術は子供レベルで、この曲集程度だという意味である。

注2:海外セミナー
私が勤務していたメーカーが主催で、日本での顧客筋に募集をかけ、米国など外国の2~4都市を回り、各地で大学教授の講義や企業訪問を行う企画。私は講師や訪問先の手配を行い、いくつかのセミナーは随行した。

注3:サンフランシスコのスポーツバー
ユニオン・スクエア付近にあったスポーツバー。店の名前は忘れた。スポーツバーとはベーブ・ルースなど大物のスポーツ選手の写真パネルを多数飾ってあるバーである。日本でいえば錦絵を飾る居酒屋に相当する。

注4:イタリア人女性のピアニスト
彼女は事故で手の指に損傷があった。しかし他の指でカバーしながら器用に様々な曲を弾きこなしていた。とても人柄がいい人だった。

私は片岡球子の作品の絵葉書を1枚持っている。リトグラフの「牡丹咲く富士」である。
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遠景の富士山と手前に描かれた牡丹の大きさの比率が異常である。遠近法を考慮しても、花が巨大すぎる。

この不均衡は素朴派を想起させる。私はアンドレ・ボーシャンの「ラヴァルダンの城の前、丸いフルーツ皿に乗った果物と花々」の絵葉書を持っていたが、同じような不釣り合いがみられる。
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このように構成上の歪みがあっても全体としてバランスが取れた作品になっている。これは片岡球子の持って生まれた資質と、計算されたコンポジションの両輪がうまく機能したからであろう。

明後日6/28(金)は奇跡的に昼から夕方まで時間が空いた。当然のことながら、アート三昧を考えている。

同様のことが先々週の金曜日(6/14)にもあり、その時は比較的遠く(池袋、浅草など)を回った。今回は銀座、京橋を中心にしようと考えている。
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同日に開催している展覧会のうち、行ってみたいと思ったものを数えたら10カ所を超えてしまった。時間の制約があるので、これらを全て回るのは無理だと思う。残念ながら絞り込みをしなければならない。

なお夜は高校同級生で組んでいるオヤジバンド「ジャマーズ」の練習というか何というか、があるので横浜に移動する。17時頃には都心を離れなければならない。残念ながらアーティストとの一献は叶わない。

前の記事で水木しげるのシュルレアリスム絵画からの引用について書いた。今回はストーリーの借用について触れる。

「暑い日」(注1)という作品がある。
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ホラー小説を愛好する私は、このタイトルを見た瞬間、出典がわかってしまった。W.F.ハーヴィーの掌編「炎天」(注2)である。

「暑い日」の初出は1966年に刊行された「漫画天国」で、当時のタイトルは「むし暑い日」だったらしい。

一方、ハーヴィーの「炎天」は1910年に発表されていた。これは怪奇小説の中でも古典中の古典であり、有名な作品だから水木なら入手していただろう。

ただし水木が読んだのは原文(英文)だと思われるから、読んでゾクっとする英語力を有していたと思われる。私も英語は得意な方だが、もしこの小説(の英語原文)に初めて接したら、果たして背筋が凍ったかどうか・・・自信ない。

絵画にしろ、小説にしろ、著作権の問題はどうなっていたのかと心配した。いろいろ調べると、最初は無頓着に引用していたのが実態とか。その後法律がうるさくなって、いろいろ苦労して解決したらしい。

しかし私としては、著作権うんぬんより、日本語以外の書物を積極的に漁り、糧にしていった水木の努力に敬意を表したい。

注1:ホラーコミック傑作選 第2集「畏悦録 ~水木しげるの世界~」(角川ホラー文庫)より
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注2:怪奇小説傑作集1(創元推理文庫)より
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「ゲゲゲの鬼太郎」シリーズには「姑獲鳥(うぶめ)」という作品がある。これは1968年「週間少年マガジン」に掲載された。その中に迷路のシーンがある(注1)。
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これはロバート・ヴィックリーというアメリカの画家が1951年に描いた「ラビリント(迷宮)」という作品(注2)の引用であろう。
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私は水木しげるを剽窃ということで責めているのではない。逆に尊敬しているのである。

ヴィックリーの絵が1951年に描かれたとしても、水木しげるが即刻知ることはできなかっただろう。これは私の推測だが、アメリカで出版されたアート関係の雑誌を水木が取り寄せ、その中にヴィックリーの絵の写真を見つけたのではなかろうか。

もしかしたら、水木がヴィックリーの絵を知ったのは「姑獲鳥」の執筆中だったかもしれない。

ネットが普及していなかった当時、水木は国内外の最新の情報を郵送などの手段で手広く収集し、自らの創作に役立てていたのだろう。

海外雑誌の購入には書籍の価格に輸送費と関税がのしかかる。水木は貧しかったらしいから、このような情報収集の費用を捻出するのは大変だっただろうと推測する。

注1:「妖怪大統領」(ゲゲゲの鬼太郎(五):ちくま文庫)より
注2:「幻想芸術」(マルセル・ブリヨン著、坂崎乙郎訳:紀伊國屋書店)より

「水木しげる 魂の漫画展」(そごう美術館:横浜)に行った。
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私は、水木しげるは「ヘタウマ」だと思っていた。しかし今回の展示を観て、それはとんでもない間違えだと思い知らされた。実際は「ウマウマ」だったのである。

「ウマウマ」は私の造語で、ヘタウマの対義語である。「普通の意味でも絵が上手」で、なおかつ「味がある絵を描く」というような意味である。
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上記に関しては私が力説するより実際に展示作品を観て戴いた方が早い。興味を持たれた方、ぜひ足を運んで下さい。
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2004年、ブリジストン美術館でザオ・ウーキーの個展を観た。抽象偏愛の私ではあるが、その印象は強烈だった。

♪「造船所の船」(1951年)
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展覧会でも観た。デュフィーみたいな洒脱な線刻にセンスいい色彩が施されている。具象と抽象の中間ぐらいの作品だと思う。こんなに素敵だと具象も抽象もない。

♪「サヴァンナ」(1952年)
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直感的に絵として好きになった。意味を考え始めるとキリがない。背景は砂漠の砂を連想させる。そこにある緑は乾燥地帯で健気に生きている植物を想わせる。具象・抽象のどちらの観点で鑑賞しても合点がいく作品だ。

♪「07.06.85」(1985年)
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この作品は1985年の夏に制作されたのだろう。日付がそのまま作品名になっている。砂浜に押し寄せる津波のように見えるが、作家の意図はわからないが、純粋に造形が美しい。

♪「22.06.91」(1991年)
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上記同様、日付をそのまま作品名になっている。画面が明るい。長らく続いた「暗い半抽象」の世界から「明るくて楽しい抽象」に鞍替えしたかもしれない。

横浜中華街のちょっと入り組んだところに「AAA Gallery」がある。
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「ペン画の世界展 第Ⅳ画」に行った。目的は点描画家のS.miの作品。
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これは「不屈」。
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そして「旅立ち」。どちらもメメント・モリの感じだがグロテスクさは無い。
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「12の窓」という連作も展示されていた。
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これらはリーフレットに紹介されていた。
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悪い話:リーフレットが売り切れて、買えなかった。
いい話:リーフレットが売り切れて、S.miの人気が証明された。

S.miという作家については、そのうち別の記事で紹介したい。

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