父と母は決して仲が良かったわけではなかった。
父はよく外出していて、外にも交流が多かったが、
母は基本出不精で、庭や家で過ごすのが好きだった。
退職後、色々旅行もしたようだが、
あまり楽しかったという話は聞いたことがなかった。
父は10年ほど前に死んだ。がんだった。
当時、いろいろいろいろ(-゛-メ) 諸事情あって
その時には財産を相続する意思のなかった私は早々に放棄したのだが、
後々の手続きとかも考えて、妹と母の二人で
ある程度財産分割したら?と言ってみたが
「私が全部相続します」といって譲らなかった。
家は中古で買って15年後
使い勝手が良いようにと母の意見によって建て替えられたものだ。
だから、父のことはともかく、
家のことは好きなのだと思っていた。
今、母は自身の家を家として認識していない。
自分の家だと話をしても混乱し、
落ち着かなくなり「家へ帰る」と出かけようとしてしまう。
夜には勝手にかぎを開けて出かけようとしてしまう。
そのくせ、「あれはうちにあったものだ」といって
「持ち帰る」荷物を山のように用意してしまう。
病気だし、不安なのだからしょうがないと思うが、
その様子を見ているのは、やはり辛い。身体も辛かった。
そんな苦労の甲斐あって?最近やっと落としどころが見つかった。
「妹の家」として伝えることにしたのだ。
病院に通うために次女の用意した家に住んでいるのだ。
親戚皆に治療のためにここにいることを伝えている。
長期間かかるから、荷物も結構持ってきている。
だからここに泊まって?
というと、やっと少し安心するらしい。
それでも数分で忘れてしまう。又説明する。
やっと寝たと思っても、
夜中にまた忘れて「帰る」と外に出ようとする…それを毎日繰り返す。
本当の家は、東北の自分の故郷にあるらしい。
やっぱりそこに帰りたいと思うのだろうか?
まあ、帰っても
母の両親はとうにいないし、代替わりしているし。
家も建て替えているので.、母の思っている家はもうない。
その時母はまた別の家を探すのだろうか?
私たちには子供がいない。
代替わりする家族はいない。
家を持つって。
家って何なのか。
そして、自分が確実にその家を「家」と認識できるのか。
根本から考えろと現実を突きつけられている気がする。