オプショントレードに活用できる優位性の1つとして、オプションという商品のもつ原資産の変動に対する保険的役割が故にHVが長期的にIVを下回っていることから、ガンマショートが優位であると考えています。
とは言え、売りにはたった一度の負けが痛恨の一撃となって即退場となるリスクがあり、安全性を加味せずに単純に売り続けるのは早かれ遅かれ破産に繋がるため、優位性はありません。私が実践している放置スタイルは「如何に安全にセータを取るか」を具体化した一例と考えていますが、これをシンプルな形にして、過去データを元に安全なOP売りの利回りを検証してみます。

先ず、過去5年の終値データから(2008年10月末まで)、IVの上下の影響を少なくするために同限月かつ近い権利同士のスプレッドをモデルにする。ATMと±500円の権利行使価格を対象にし、ATM±500円の玉がINしたらコールもプットもロールするルールでの収益変動を追ってみる。ここに記載しない詳細ロール条件はあまり結果に影響ありませんが、一応企業秘密ということで。とりあえず手数料は考慮していません。

損益変化

[ショートストラドル]
全期間1セット:必要最大証拠金200万と想定
年に何回かある暴落はロール後にIVドロップで取り返し、いい感じの右肩上がりで資産を伸ばしていたが、グラフの右端(昨年10月の乱高下)で数年分の利益を飛ばしている。それでもスタート時からはプラス。これが売り方の基本的な優位性の分と考えてよいでしょう。証拠金200万円からスタートしたとして、5年で+100%、20%/年の単利。長期でプラスとは言え、昨年10月のように数日で数年分の利益を吐き出すことを許容できるかどうかと言えば、私にはちょっと無理、精神的に。

[±500円ショートストラングル]
全期間2セット:必要最大証拠金300万と想定
こりゃだめだ。枚数のレバレッジはかかっているので波に乗れば資産の上昇スピードは早いが、最大証拠金が嵩んでリターン率は低い。更には昨年10月の乱高下で瀕死状態に。300万円ではじめたとして、5年で+50%、年間10%のリターンとなる。これを±1000円にして枚数を更に倍にすれば、更に悲惨なフリーフォールになることでしょう。

[ATM±500円ロングバタフライ(ショートストラドル+ロングストラングル)]
全期間1セット:必要最大証拠金50万と想定
ロングバタフライを推奨しているわけではないのですが、シミュしやすいので最大損失を限定した安全売りポジのモデルとして。結果を見てこれは驚いた。かなり安定して緩やかな右肩上がり。昨年10月の大変動相場も滑らかにこなしている。5年前に50万円からスタートしたとして+150万円。単利で+300%/5年=60%/年=5%/月。最大損失を抑えることでリスクを抑えながら証拠金レバレッジを効かす、とSPAN証拠金算出法をうまく使っている。機械的にロールするだけで月利5%。これが安全な売りポジの利回りと考えてよいのでしょう。バタバタ動いて5%/月も取れないなら、黙ってATM売って外を買って相場について行け、ってことなのでしょうか。

[My戦略]
全期間1セット:必要最大証拠金120万と想定
詳細は内緒(過去ログで大体分かると思いますが)ですが、期先を使ってジリ上げに強いコール売り系スプレッド+ジリ下げに強いプット売り系スプレッド+暴落に強いガンマロングスプレッドの3戦略をミックスさせて、現状私が取っているギリシャと±1000円範囲の損益曲線が近くなるような戦略をATMとATM±500円の期近期先で構成してシミュすると、あらビックリ。美しい右肩上がりでたまに発生する大暴落も利益に変えている。120万スタートとして5年で単利1050%, 年利108%, 月利9%。ホントかよ。でもこの結果でとりあえず現在の戦略に自信はもてるな、ウン、よしよし、と自己満足。


この検証のもう1つの目的は、OTMを使って枚数のレバレッジを上げたスプレッドを広範囲にわたって放置するのと、それに近いギリシャをATM近傍で枚数を減らしたスプレッドを狭い範囲のブレイクでロールする場合とで損益変動がどのように変わるか、の比較でした。OTMは最大証拠金の割りにリターンは高くない上に、急騰急落での損益のブレが大きい。この下ブレに耐えられるかどうかはその時にならないとなんとも言えない。

と言うことで結論ですが、現在のギリシャ、損益曲線を保ちつつ、ATM近傍の売り買いをメインにして枚数レバレッジを減らし、損益を安定させていこうと思います。それにより放置可能な変動許容範囲は狭くなりますが、1日1回昼休みに後場寄りだけでも場が見られる状況なら十分でしょう。長期的に安定収支を望むにあたり、相場環境やスマイルカーブ形状などの不確定要素を味方につけられるのなら効果的ですが、敵にならないよう敢えて影響を排除するのも1つの考え方でしょう。噴かないバックを眺めながら、こんなことを考えていました。