転載元:

『「脳細胞」は増やせる!脳にいい「5大行動」とは?そして脳をダメにするものとは?』より
デイヴ・アスプリー 栗原百代:翻訳家
ライフ HEAD STRONG シリコンバレー式頭がよくなる全技術



シリコンバレーでIT企業家として長年活躍してきた著者が、ITの専門家としての技能を生かして、自らの体を「ハック」し尽くし、さらには23年の歴史を持つパロアルトのNPO、シリコンバレー保健研究所の所長(後には会長)として、さまざまな医学分野のエキスパートに取材し、現在の科学の最先端の脳の機能UP法を1冊にまとめた。タイトルは『HEAD STRONG シリコンバレー式頭がよくなる全技術』。アメリカでは初版から10万部で刊行され、大反響を呼んでいる。本稿では、同書から特別にそのハイライトを紹介したい。


NG要素「脳細胞を殺す環境有害物質」

 重金属、溶剤、添加物、あるいは母なる自然から生じる毒素など、神経毒に環境中でさらされると、神経発生の比率が大幅に低くなり、既存の脳細胞が死んでゆく。

 神経毒の多くはまた、ニューロンに影響を与えて、脳機能の最大化にとって不可欠な化学的メッセンジャーである神経伝達物質の使い方を変えさせたりもする。

 マイトトキシンはまた別種の毒で、ミトコンドリアのパフォーマンスを害するのだが、ニューロンはエネルギーの変動にとりわけ敏感だから、これもニューロンを死なせかねない。

 僕らは毎日、神経毒の海を泳ぎまわっている。いまやこれらは食品にも加えられている。僕らの周囲にも体の内部にも存在している。神経毒をどうやって避けるか、いったん体に入ったらどうやって解毒するかについてはあとで詳述する。いまのところは、なるべくこの毒を避けることと体の解毒システムを高める策をとることが、脳のパフォーマンスを向上させるカギであると覚えておくことが肝要だ。

【その1】神経発生率を変える「食事」

 神経発生率を決める最も重要な要素はおそらく食事だろう。正しい原料がなくては成育できる健康なニューロンは作れない。

 神経発生率を低下させる食物もあれば向上させる食物もある。

 神経発生率を低落させる2つの食物は、糖と、酸化した(損傷した)脂肪だ。酸化した脂肪は血中に入ると炎症を起こす。その炎症が、貴重なATPを生成する能力を鈍化させ、血管の内部を詰まらせ、脳への血流を阻害して、神経発生をのろくする。

 糖分の多い食事で神経発生率が鈍化するのは、血流中のインスリン量が増加するからだ。インスリンが多く出すぎると、脳も含めて体内のあらゆる器官が弱められる。ある研究で、高糖質食を与えられたマウスは、ほんの2ヵ月で認知機能の大幅な低下を見せた(*1)。特筆すべきは、最も損傷された部分が海馬だったこと──神経発生が起こる部位だ。糖は神経発生の大敵である。

 ほかには神経発生率を高められ、新しいニューロンを健康かつ活発に保てる食物もある。オメガ3脂肪酸はとりわけ神経発生率に大きな影響を与える。脳の脂肪の3分の1がオメガ3脂肪酸の一種、DHA(ドコサヘキサエン酸)であり、研究によって、食事中のオメガ3脂肪酸の量を増やした結果、成人期の神経発生が増大することがわかった(*2)。

【その2】脳にとっての「奇跡の肥料」バイオフラボノイド

 柑橘系の果物や多くの野菜に見られるこの植物成分は、新しいニューロンの生存に不可欠だ。ポリフェノールと呼ばれる植物由来の化学物質もそれで、コーヒー、チョコレート、ブルーベリー、ぶどう、その他の青、赤、オレンジ色の食品に見られる。

 それどころか僕らが通常捨ててしまうコーヒーの実は、ニューロンの成長のために最もよく研究されているポリフェノールを含んでいる。ポリフェノールはニューロンにとっての奇跡の肥料だ(*3)

NG要素「脳細胞を損なうストレスとうつ」

 慢性のストレスが海馬での神経発生をひどく阻害していることが証明されている(*4)。ストレスもうつ状態も脳の同じ部分に神経性萎縮とニューロンの損失を起こすことが明らかになっている(*5)。

 興味深いことに、抗うつ剤は反対の作用をもち、慢性うつの患者の神経発生率を高める(*6)。一部の科学者の考えでは、抗うつ剤の効果はそれが神経発生に与える影響にも起因しているという。

 うつ症状の人は新しい脳細胞ができればできるほど気分が良くなるだろうし、脳がエネルギーを効率よく作れば作るほど、気分が良くなるだろう。そしてうつが少なくなるにつれ、神経発生の比率も同様に改善する。僕はべつに、もっと抗うつ剤をと推奨しているんじゃない──もっと神経発生を起こすようすすめているのだ。

 慢性うつでない人にとって、知っておくと助けになるのは、慢性的なストレスを避けるあらゆることが脳細胞の生成に役立つことだ。他方、一時的な急性ストレス──短期間で生じ消えていくストレス──は、あなたの体に、そろそろ元気を回復して新しい脳細胞を形成する頃合いだと教えてくれる。

【その3】健康なストレスをかける「運動」

 脳への血流を高め、体に短期間の健康なストレスをかけることは、神経発生率を向上させる。運動はまた、新しいニューロンを死から守る神経成長因子の放出を促す(*7)。心配はご無用──スポーツジムに奉仕する必要はない。

 本書の手早く簡単なエクササイズは、新しいニューロンを成長させて、生かしつづける絶好の方法だ。フィットネスクラブ通いをする必要はないが、できるならばやってもよい。それによってあなたはミトコンドリアとニューロンを増やし、パフォーマンスを上げられる。

【その4】ニューロン生成を高める「楽しい環境」

 科学者マイケル・カプランは刺激の多い環境が動物のニューロン生成を高めることを発見した(*8)。実験動物を面白い遊具でいっぱいのケージに入れ、神経発生のレベルを観察したのだ。僕はこの実験を真摯に受け止め、本書の大半を書くことになるバイオハッキング研究施設をたくさんの刺激に満ちた夢のような環境にした。そこは、多くの時間を過ごす僕たちが夢中で楽しめるような面白い小道具でいっぱいだ。

 もし僕が新しいニューロン生成の問題を解決せねばならなくなったとして、何の変哲もないベージュ色の壁をにらんで研究しつづけることで脳細胞をむざむざ死なせてしまったら、悔やんでも悔やみきれない!

【その5】脳細胞に感謝される「セックス」

 2010年、ラットの海馬に性体験が与える影響を観察する実験が行なわれた(*9)。成獣のオスのラットを、性的に受容可能なメスに1回だけ、または14日連続で1日1回めあわせた。セックスが神経発生率にどう影響するかの観察に加えて、セックスの期待に直面したラットのストレスレベルも調べた。

 結果は、僕ら人類にとっても非常に興味深く示唆的だった。1回だけセックスしたラットは、ストレスホルモンのコルチゾール値が上昇し、海馬の新しいニューロンも増えた。その一方で、14日連続でセックスしたラットは、コルチゾールの増大は初日だけだったにもかかわらず、神経発生率の改善はつづけて見られたのだった。

 この発見を僕らの寝室ではどのように解釈するか? まあ、ストレスがたまっていると思っても、とりあえずそのムードになるように頑張ってみるのが得策じゃないだろうか。この研究は、セックスはコルチゾールの短時間噴出という悪影響を抑えながら、神経発生率を高められるということの強力なエビデンスになっている。あなたの脳細胞(とパートナー)は感謝してくれるだろう。

(本原稿は『HEAD STRONG シリコンバレー式頭がよくなる全技術』よりの抜粋です)

(以上転載はここまで)