ミミズクと夜の王

【あらすじ】
魔物のはびこる夜の森に、一人の少女が訪れる。
額には「332」の焼き印、両手両足には外されることのない鎖。
自らをミミズクと名乗る少女は、美しき魔物の王にその身を差し出す。
願いはたった一つだけ。
「あたしのこと、食べてくれませんかぁ」
死にたがりのミミズクと、人間嫌いの夜の王。
全ての始まりは、美しい月夜だった。
それは、絶望の果てから始まる小さな少女の崩壊と再生の物語。
(表紙折り返しのあらすじより)

「−−−−−電撃文庫のくせにっ!!」(←失礼)
良い意味での叫びですが。
これは、一応便宜上ライトノベルと分類してみましたけど、
内容は『ライトノベル』ではありません。
むしろ単行本としての装丁のが似合うのではないか、とそう思ったぐらいです。
だからなのか、今回挿絵が全くないのですが、
文章の雰囲気としても、物語の雰囲気としても、
その形が一番合っていると思います。
というか、下手に入れられたら、文章を追っていた目がそちらに気を取られ、
一瞬だけど、物語の外に放り出されることになってしまい、
せっかくの世界が存分に味わえなくなってしまうような気がするので、
イラストを付けないと判断した人はとても良い選択をしたと心底思います。

この作品の持ち味は、すごく素直に心の響く文章。
「あれはこうじゃないか」「もしかしたらこうなるんじゃない」
「マジで!それ意外!!」「うわぉ、びっくり」「あはは、おっもしろ〜」
そんな台詞はこれっぽちも浮かびませんでした。
ただただ素直に、直接心に届く、まるでどこかのおとぎ話のようなお話でした。

『昔々あるところに、一人の女の子がいました。
女の子は森の中で月の瞳を持つ夜の王と出会いました。』

そんな語り口でも違和感はないでしょう。
ときどき文章が拙い部分もあるのですが、
それすらもその作品を引き立たせるものにしかなっていません。
そして、主人公のミミズク。
“ちょっと足りない”、泣き方や怒り方、本当の笑い方も知らない少女なのですが、
人々(魔物を含め)は、彼女と接するとき、“何か”をもらいます。
それは、あげようとしてあげられるものではなくて、
何もしてないけど、しようともしてないけど、だからこそ与えられるもので、
だからこそ愛おしい存在です。

この話は、『好き』とか『嫌い』とかじゃなくて、
すーっと胸に住み込む(←間違いでなく)話です。
読めば、そっとミミズクと夜の王が息づきます。

あたたかく、やさしく、せつない、そんな物語です。