秋利美記雄 ベトナムの縫製工場を巡る

ベトナムをはじめとするアジアの縫製工場を巡っているコンサルタント・秋利美記雄が見聞したインドシナ地域の四方山話を披露する。

ベトナムやカンボジアやミャンマーやタイなど
東南アジアでのアパレル生産に必要な情報を提供する
アパレル情報サイト
「アパレル・リソースinインドシナ 」(http://apparelresource.asia
の舞台裏を紹介しています。

日本の企業の皆様にはベトナムでの商品調達に関するアドバイスを、
ベトナムの企業の皆様には日本へのセールスの相談をうけています。

<連絡先>
会社:My Lang Consultant Co., Ltd.
住所:288/G7 Nam Ky Khoi Nghia Str., Distr.3, HCMC, Vietnam
WEBSITE:http://mylang.com.vn
E-MAIL:info@mylang.com.vn

ちょうどハノイにいたので、毎年12月にハノイで開催される「ベトナムファッションフェア」を覗いてみた。
ベトナム繊維協会(Vitas)やベトナム繊維公団(Vinatex)らが共同主催する公式行事だが、
まあ、ざっと言えば、北部アパレル企業のための「年末売り尽くしセール」の共同開催で、わざわざ遠くからやってきて参加するまでのものでもない。
ICE Hanoi
展示会場はICE Hanoi(91 Tran Hung Dao, Hoan Kiem Distr.)

地元の大手企業も参加するが...

小規模な展示会とはいえ、ベトナム繊維協会(Vitas)やベトナム繊維公団(Vinatex)が絡んでいるだけあって、一部の有力企業は駆り出されるのだろう。Hanosimex、Duc Giang、Dong Xuanといった北部の大手企業に加えて、Viet TienとPhong Phuという南部大手企業も参加していた。有力企業で出展してなかったところでは、地元ハノイのMay 10と南部のNha Beが即座に頭に浮かぶ。 

Hanosimex
Hanosimex

Duc Giang 1
Duc Giang

Dong Xuan 2
Dong Xuan

Viet Tien 1
Viet Tien

Phong Phu 2
Phong Phu

だが、この展示会の主役は、地元の中小企業。名前も知らないような中小企業が年末在庫一掃セールの目的で出展し、一般客がめぼしいセール品はないかとやってくる。

今回、目立ったのはTokyo Lifeという小売企業。
調べてみると、日本にも同名の企業があるが、それとは関係はなさそうな地元企業のようだ。
ハノイだけで20店舗、ベトナム北部全域に他に30店舗以上も展開している。
衣料品だけでなく、日用品全般まで手を広げて日本の商品を扱っているのが売りで、相当な人気だった。
Tokyo Life 2
Tokyo Life
他には外資企業も少数だが出ていた。

La Chapelleは上海発祥の中国アパレル・ブランドで、10000万店近い店舗ネットワークを誇っている。ベトナムではすでに名前が通っているのだろうか、大勢の客が詰め掛け賑わっていた。
La Chapelle
La Chapelle
Peter Jensenは英国発のキャラクター・ブランド。韓国のエージェントが紹介していた。
Peter Jensen
Peter Jensen

インドネシアのパビリオンが特設

Indonesia Pavillion
特設されたインドネシア・パビリオン

今年のベトナムファッションフェアになぜだか知らないが、
インドネシアの企業がこぞって参加し、独自のパビリオンを作っていた。
参加企業34社と一大勢力で、在ハノイ大使 Ibnu Hadi氏も参加していた。
バティックなど織物や染め物が目についた。
Indonesia 4

Indonesia 2

Indonesia 3

いったい何の展示会がわからない混沌

ハノイのこうした産業展示会は、
おそらく参加企業が少なく、何でもいいので頭数をそろえるためだろうか、
まったく関係ない業種の企業が参加していたりして、混沌としている。

だから、わざわざ繊維産業展示会を見ようと気合を入れて来ると、がっかりすることになる。
ao dai corner
アオザイ屋
suites
スーツ屋
tag supplier
下げ札屋
stoll
ストール
jute bag
ジュート・バッグ
organic cotton
オーガニック・コットン
PQ pepper
フーコック島の胡椒
developper
不動産屋
胡椒を売ってたり、不動産屋が出てたりで、なぜ?と首をかしげることも多いが、気にしてはいけない。

街へ出たついでにちょっとドン・キホーテにでも寄ってみよう、くらいの感覚でちょうどいい。
仮に掘出物を見つけたときの喜びはひとしおだ。

一番の人気商品は、日本のあのブランドだった...

開催2日目の午前中という一番盛況なはずの時間帯に行ったのだが、客は少ない。
本気で取引先を探したり、商談したりするには向いてない展示会なので、仕方ないだろう。

そんな中、複数の出展者が販売している人気の日本のブランド商品に気がついた。
Uniqlo sox 2
まだベトナムには出店していないユニクロだ。(2019年ホーチミン市に出店予定)
そのユニクロの靴下を販売している業者が多く目についた。
Uniqlo sox 3
売り文句は日本の技術(Japanese Technology)だ。

だが、 なんだかおかしい。
赤いワンポイントが気になる。
Uniqlo sox (4)
なんと「UNIQLO」のロゴが刺繍されている!!!

ベトナム北部ではユニクロの知名度は非常に高く、
そのために偽物販売業者がわざわざロゴ刺繍を入れて売り出しているのだ!
これは靴下だけでなく、シャツやジャケットなども同じ。

こんなまがい物を繊維協会や公団が主催する展示会で堂々と販売するとは!

まだまだ客が少ないから、気にしてないのだろう。

おススメはしない展示会だが...

というわけで、
最初にも断ったように、内容的にはわざわざこのために見にくるような展示会ではない。

まったくおススメできる展示会ではないのだが、ずいぶん以前にたまたま立ち寄った際に、
その後長年付き合うことになった、そして今でもつきあいのあるかばん屋と巡り合ったということもあって、ひょっとしたら、「二匹目のどじょう」が泳いでいるんではないかと、今年は来てみたが、
案の定、素手で帰途に就く、このありさまだった。
期待しないほうがいい。

この記事を読んでいただき、その点をしっかり頭に叩き込んでもらえれば、幸いだ。

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今回のホーチミン市出張では生地屋をいくつか訪問した。
そのうちに、大手バイヤーばかりを得意先にしている韓国資本100%のデニム工場のセールス事務所にもお邪魔した。
実際の商品もいくつかご紹介しておこう。
P_20180915_104003_1

ミニマムオーダー

商品を紹介する前に、まずはミニマムの話を簡単に。

たいていの日本の顧客の注文は小ロットの注文となる。
小ロットならまだ聞こえはいい。実際は、ごく小ロットだったりもする。(^^;

だから、生地であろうと、アパレル商品であろうと、ともあれ訊いておく必要があるのは生産工場が受けてくれる注文の最少数量の情報だ。
これに届かないので、発注できないというケースは頻繁にある。

海外工場は国内工場に比べると、ミニマムの数量が大きいし、ベトナムの工場は中国の工場よりもミニマムが大きい。
カンボジアのように、ベトナムからさらに遠くに行けば、ベトナムよりもミニマムが大きいので、ほとんどの日本のバイヤーは話にならない。

このデニム生地工場にミニマムの質問をしたところ、返ってきた答えは以下の通り。

アパレル製品の場合、3000pcs/型。
生地の場合、3000m。

デニム生地がいいのは、色展開しないこと。
他の種類の生地なら色展開があって、色のミニマムもクリアしなければならない。
基本的にそれがないデニムは比較的数量の問題をクリアしやすい。

生地の価格帯は?

今回のデニム屋訪問は一つにはデニム専門の子供服の客先からの依頼に因る。
客先は二次製品の価格レベルを知りたがっていて、すでに中国で生産した商品の現物サンプルを持ってきていた。
商談後、私はそのサンプルを預かることになった。

サンプルを見せて、似寄りの生地をサンプルを探してもらう。

商談テーブルの上に、生地ラックから引っ張り出された生地サンプルのハンガーが積み上げられていく。
ストレッチの利き具合を確かめてみる。
それを確認後、生地値を計算してもらう。

生地No.01
C/P/SP 84/15/1
9.3oz
55/56
89x58
3/1 Z

生地No.02
C/P/SP 78/19/3
9.7oz
44/45
131x69
3/1 Z

生地No.03
C/SP 98/2
9.8oz
53/54
83x58
3/1 Z

生地No.04
C/SP 98/2
9.8oz
48/49
107x60
3/1 Z

私がもらった生地値はざっと$2台後半。

denim sample


重量級アイテムは?

それ以外にメンズの客先に何か提案できないものかと、11OZクラスのアイテムをいくつか紹介してもらった。

生地No.05
C/SP 99/1
10.8oz
53/54
81x57
3/1 Z

生地No.06
C/SP 99/1
11.2oz
54/55
72x48
3/1 Z

生地No.07
C/SP 98/2
11.2oz
56/57
85x50
3/1 Z

生地No.08
C/SP 98/2
11.3oz
54/53.5
69x51
3/1 Z

生地No.09
C/SP 98/2
11.3oz
54/55
82x54
3/1 Z

生地No.10    これはアメリカ向けの得意先あり。
C/SP 99/1
11.3oz
55/56
75x45
3/1 Z

$3台半ばのアイテムが多いが、$3を切るものもある。

もっと重い製品はないかと、訊いてみると、待ち構えていたように以下の新作2点を出してきた。

生地No.11
C 100
15.6oz
61/60
67x55
3/1 Z
$4.2

生地No.12
C 100
13.3oz
59/60
53x35
3/1 Z
$3.5

とくに、No.12は日本の顧客を意識して開発した生地だとか。
既存客からも好反応をもらっているという。

P_20180915_103957_1

アパレル製品の価格は?

この日応対してくれた二人は生地担当スタッフで二次製品はわからないという。
韓国にいるスタッフが製品担当なので、持ち込んだ製品サンプルの写真を撮っておいて、翌週改めて返事するということだった。

この商談後もう一社訪問し、昼食を採ってから自宅に戻ると、今しがた会ったデニム屋の韓国人スタッフの一人からメールが入った。
御礼ともに、韓国にいるアパレル担当のスタッフを紹介してくれていた。
すぐに返信した。
すると、今度は韓国にいるアパレル担当が電話をかけてきた。週末で外にいるのですぐには返事できないのをすまなそうに謝っていた。

週明けすぐに彼からメールが届き、見積ももらえた。

ベトナム企業だと流石にここまでの迅速な対応はできないだろう。

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デニムの商品を生産したいという客先があり、デニム生地工場に問い合わせた。
韓国資本100%の生地工場で、2013年からベトナムで操業。
かつては本国韓国でも生地を製造していたが、すでに完全に工場を閉めて、現在の製造拠点はベトナムのみ。
生産工場自体は北部にあるのだが、セールス事務所が南部のホーチミン市にある。
その事務所を訪れた。

P_20180915_100910

コンタクトが取れない アポが取れない

ベトナムではデニムの製造が盛んになり、ホーチミン市では2016年以来毎年6月にdenimsandjeans.comによるデニムの展示会が開催されている。
今年はスケジュールが合わず、顔を出せなかったが、昨年、一昨年は参加した。
この韓国企業のデニム工場も当然この展示会には毎回出展している。

その際に、スタッフの方とは名刺交換もしたのだが、なぜかもらった名刺が見当たらない。

それで、ウェブで会社名を検索し、サイトを見つけた。
連絡先はメールアドレスのみで、電話番号はない。
メールアドレスに簡単に訪問したい旨メールした。しかし、返信は来ない。

ホーチミン市への出張は訪問できる日が限られていて、それが間近に迫っていたので、
同社と取引ありそうな知り合いに頼んで、言付けしてしてもらった。
すると、1時間も経たないうちに先方が電話をくれ、やっとアポが取れた。

デニム工場のホーチミン市事務所訪問

ホーチミン市内の事務所に伺う。
この7月末に商業施設部分がオープンしたばかりの東南アジア最高層ビルLandmark81の近くにあった。

オフィスビルに入ると受付があり、そこで訪問先を告げると、身分証明書の提示を要求された。
レジデンスカードを出すと、それを預かるという。
代わりに、エレベータのカードキーをくれた。
なかなかセキュリティーしっかりしているビルだ。
アポが取れなかったら、飛び込みで行くかと考えていたが、きちんと事前にアポ取っておいて良かったとホッと胸を撫で下ろした。
飛び込みでは先方には会えない。
エレベータで事務所のあるフロアまで上がる。

エレベータから出るとすぐに会社名のボードが目についた。
ノックしてドアを開けると4-5名のベトナム人女性スタッフがデスクで仕事していた。
アポの旨を告げようかすると、一人の男性が現れ、隣の会議室に通してくれた。

広い会議室の窓の外には、Landmark81が聳え立っていた。
実に見晴らしのいい会議室だ。

ずらりと並べられた、デニム生地のサンプル棚を背にして、席に着いた。

二人の韓国人男性が入ってきて、挨拶を交わし、商談が始まった。
二人とも聞き取りやすい英語を話してくれる。

P_20180915_100918

巨大な生産能力

事前にメールで工場紹介の資料をいただいていたので、
簡単に内容を確認しながら質問を投げかけながら話を進める。

生産工場は北部の工業団地内にあり、生地工場とアパレル工場を併せ持つ。

工場の人員は総勢2500名。

生地の生産キャパは月産350万yd。
アパレルの縫製キャパは月産30万点。洗いは50万点。

元々生地屋といってもベトナムに出てきた以上アパレル製品にして売りたい。
誰しもそう考える。

<裁断-縫製>こそがこのベトナムの一番の強みだからだ。

ここも今考えているのはいかに縫製のキャパを広げるかということだった。

来年2019年6月ごろまでにアパレルの縫製キャパを月産100万点まで引き上げるとの計画をあたためている。

工場がある現在の工業団地内では工員を集めるのに限界がある。
それで、別の工員を集めやすい地域に縫製工場を出すという。
だが、これは非常にナイーブな事項なので、現時点で場所を明かすわけにいかないと言われた。
縫製工場の立地というのは重要な要素なので、それは当然だろう。

でも、彼らがくれたヒントでおよそ見当はついた。
話しながら何気なしに地名をいくつか呟きつつ、二人の顔色をうかがう。
まあ、外れるはずはない。
こちとら、20年以上ベトナム各地を歩き回って知り尽くしているのだから。

P_20180915_100937_BF

客先はユニクロはじめ大手ばかりがずらり

仕向け先市場は、米国、欧州、日本を33%ずつきれいに三等分しているとの説明があった。
残りの1%に韓国、中国などが入ると自嘲気味に語る。

主な客先を訊いたところ有名どころのブランドが出てくる、出てくる。
米国市場は、アメリカン・イーグルやターゲットなどベトナムのどの工場に行っても製品が流れているバイヤーだ。
欧州市場は、トミーフィルフィガー、ヒューゴボス他。 
日本市場では、ユニクロ、エドウィン、バロック、アダストリア、ウィゴー、ジョジョタウンとこれでもという名前が並ぶ。最後のほうに、繊維商社各社の名前も出てきた。
小さなところは、商社にたっぷりマージン落として仕入れるしかない。

だいたいにして現在の我が社は中小企業をメインの顧客としているし、規模感が桁違いにちがう。

それでも、門前払いされずにこうして商談に対応してくれたのは、ちょっとばかし仕掛けをしておいたからだろう。小さな会社は知恵を絞るしかない。

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