私自身はずっとホーチミン市に住んでいるのだが、
アパレル製品のモノづくりのお手伝いをする際には、最近では北部の工場を起用する場合が多い。
工賃の問題、工員の問題など、諸々の事情を考慮するとそれが有利だという判断からだ。

それでもホーチミン市にいるのは、ベトナムといえば、客はまずはここに来るからという理由だけだ。

ホーチミン市内の工場は工員不足

かつては、ホーチミン市でもハノイでも町中に何千人もの工員が働く縫製工場があったものだが、
次第に郊外に移り、最近ではかなり郊外までいかないとない。

ホーチミン市をとれば、
ゴーバップ(Go Vap)区、タンビン(Tan Binh)区、ビンタン(Binh Tan)区、7区、9区、12区などが
区部ではもっとも近い工場がある地域で
工場らしい工場といえば、ボックモン(Hoc Mon)、クチ(Cu Chi)、ニアベ(Nha Be)などの郡部にまで足を運ばないと見られない。

そして、先に挙げた区部の工場はと言えば、結構悲惨な状況だったりする。
何が悲惨なのかといえば、縫製工場なのに工員がいないこと。
かつての大工場もスペースやミシンが余っていて、人員数はしぼむ一方だ。
もう今時縫製工場でミシン踏みする若者などいないわけである。

ホーチミン市の中心ではレストランやカフェやスーパーなどきれいで楽な職場はいくらでもある。
何を好んで縫製工場のような3K職場で働く必要があるだろうか?

人件費は上昇の一途

新興国ベトナムの給与水準は上昇の一途で、
ホーチミン市やハノイなど給与水準がもっとも高い第1地域の2016年の最低賃金は350万ベトナム・ドン(約1.6万円)だが、
来年2017年にはこれが375万ベトナム・ドン(1.7万円)に上昇することが決まっている。

もっとも、ホーチミン市やハノイでは以前からそうだが、
工員らの給与は、この国の定めた最低賃金のレベルをはるかに上回っている。
今や500万ベトナム・ドン(2.5万円)くらいが最低レベルで、当然ながら腕のいい工員になるとこれをはるかに超える給与をもらっている。

都会の華やかな暮らしぶりを見れば、誰もが納得すると思う。

安さで勝負は今や昔

工員がいないうえに、しかも、人件費が高騰しているとなると、
縫製工場としては、もはや付加価値の低い、安い商品を生産する仕事は割に合わなくなる。

安さで勝負の時代は去って、単価のとれる商品を作っていかないとやれない時代に入っている。

繊維公団(Vinatex)総裁も輩出したP社といえば、かつてはボトムの知られた工場だったが、
今では、本社工場は単価の安いパンツ生産をあきらめ、スーツの生産に乗り出した。
そして、パンツの生産ラインは郊外のB地区に残すのみとなっている。

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同社は他社に先駆けてFOB商売(製品売り)に手を付け、加工賃商売よりも付加価値の高い商売をしている。このあたりも、うまく切り盛りしていくには必要なことだろう。
工賃仕事しかできない工場だともはや持たなくなっているようで、小さな工場の閉鎖の話をちらほら聞くようになった。

海外向けOEM生産一辺倒からの脱却

先週は、数年ぶりでベトナムで1,2を争う大型工場N社を訪れた。

私が商社時代に、ベトナムで初めての日本向けの本格的なスーツ生産ラインを立ち上げた思い入れある工場だ。

今や業界の若きリーダーと目されるC社長に直接メールを入れて工場見学を頼むと、
二つ返事でOKしてくれ、副社長や技術顧問など会社の中枢のスタッフが応対してくれた。
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同社の工場に行って、変わり映えに驚いたのは以下の2点。

まず、人員の目減り具合。
前回がいつだったかは定かでないが、7区の本社工場地区で6000人と言っていた記憶がある。
それが今や3000人程度。
人員の直間比率は65:35ということなので、ミシンのオペレータは2000人ということになる。

もう一つの大きな変化は、スーツ生産一色になっていたこと。
同行の顧客は調査目的で見えた方々で、事前に企業案内を見て、
スポーツ生産ラインやカジュアル生産ラインも見学できると期待していたらしいのだが、
それらはすべて地方の生産工場に移管してしまっていた。

理由は先に述べた通りで、同社でも人件費の上昇と工員不足に苦しんでおり、それゆえ、単価のとれる製品を突き詰めていくと、彼らの答えはスーツだったというわけだ。

それでも、大きな工場の敷地の一角に紳士シャツの生産ラインが2ラインだけ残っていた。
スーツと合わせて要求されるアイテムだからだろう。

同社はこれまでの海外向けのOEM生産一辺倒から脱却し、ODM生産あるいは国内向けの自社ブランド製品の生産さらには販売まで手掛けるようになっている。当然主力のアイテムはスーツ、シャツの紳士向け商品で、3つのブランドを持っている。

紳士シャツはハンガーシステムを導入して、生産性の向上に努めていた。
ハンガーシステムの導入によって、導入以前と比べ20%も生産性があがったという。

同社では自前で国内に自社製品の店舗網を設けているが、
ホーチミン市を中心とした南部のみならずハノイなど北部でも販売している。

 
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