秋利美記雄 ベトナムの縫製工場を巡る

ベトナムをはじめとするアジアの縫製工場を巡っているコンサルタント・秋利美記雄が見聞したインドシナ地域の四方山話を披露する。

タグ:原糸原則



10月初めのTPPの大筋合意以降、ベトナム絡みのこの話題は尽きることがない。
日本でも各地でセミナーが開かれたりして、騒がしくなっていると聞く。
アパレル業界でも生産国ベトナムに俄然注目が集まっているが、実際に何が変わるのか?

結論から言えば、TPPで直接的に大きく変わるのは<ベトナム生産-米国市場参入>と言っていいだろう。

日本向けのアパレル生産には直接的な影響は皆無だが...

日本向けのアパレル生産にはほとんど直接の影響はない。
というのも、ベトナムからの日本向けのアパレル輸出には、すでに日・ASEAN包括的経済連携(AJCEP)が2008年12月から施行されており、こちらのルールのほうが今回のTPPのルールよりも総じて適用条件が緩いからからである。
たとえば、一番問題となる原料の生地に関しても、AJCEPでは2工程ルールで製織の工程がASEAN域内で行われていればいいのが、TPPでは
(yarn forward)で紡績から加盟国内の資材を使う必要がある。
そのため、対日輸出についていえば、TPP合意によるメリットはほとんど見いだせない。
むしろ、間接的には、他市場向けとの兼ね合いで不利に働くと予想される。

日本向けの縫製ははじかれる

ちょうど今、繊維ニュースで掲載中での「TPP合意 どう変わる繊維産業」連載記事では、帝人フロンティア社長・日光信二氏がこの点をズバリ言い切っている。
 短期的に、日本向け縫製がはじかれる懸念があります。欧米向け拡大を期待する声が大勢を占めるわけですから、相対的に小ロットで要求品質レベルも高い日本向けにどこまで対応してもらえるか分かりません。縫製キャパシティーが増えたとしても、欧米向けが落ち着いてから日本向けに触手を伸ばす流れになるかもしれず、その間の日本向けのスペース不足は、とくにスポット的にベトナム工場を活用する企業にとっては重要な懸念材料です。
繊維ニュース 2015年11月30日(月曜日)「TPP合意 どう変わる繊維産業④」より

私自身、この点を懸念し、2013年に「ベトナムへのアパレル生産シフトは、今年がラストチャンスだ!」という記事を書いたが、今まさにこれが現実化する様相を帯びている。

対日アパレル生産には自社工場の確保が必要

上記日光社長はこう続ける。
 ベトナム生産の9割以上を自社専用工場・ラインで賄う当社にとって、対日OEMでのこうした課題は、強みを発揮できるチャンスです。
繊維ニュース 2015年11月30日(月曜日)「TPP合意 どう変わる繊維産業④」より

今後は日本向けの生産拠点を持ちたいと思えば、自社工場を構えていく必要があると思う。他社の中に自社向けの生産ラインを持つ話もできなくはないが、欧米向けが幅を利かせる中でそうした話が通せるか大いに疑問だ。
実際、Viet TienやNha Beなどの大型縫製工場は、対欧米向けに大きく舵取りをしていて、日本向けの生産はすでに確立している既存の生産キャパをただこれまで通りに回しているだけだという。
スポット生産はまったくの論外で、年間稼働させる専用ラインを確保できれば御の字ではないだろうか?

商社は対米輸出を

対日向けのアパレルOEM生産では各メーカーから縫製工場へ直接取引が主流になりつつある中で、商社の役割は対米輸出にシフトするだろう。
前述の帝人フロンティア社長日光氏もインタビュー記事でこう述べている。
この数年凍結していた欧米向けを再開するミッションも掲げ、現時点でどこまでベトナムで調達できるか、これから探っていきます。工場運営の平準化につながるメリットも期待できますね。
繊維ニュース 2015年11月30日(月曜日)「TPP合意 どう変わる繊維産業④」より

対米輸出こそは、いわゆる一般アパレル業者ではできない話であり、ここぞ商社の出番と言ったところだろう。中国・韓国勢ばかりにやらせておかず、日本の商社も上記の帝人フロンティア同様、その存在価値を大いに発揮していただきたい。

米国向けの拡大は25%以上

 米国向け輸出が拡大するという声が大勢です。ベトナムの繊維輸出は10~15%の高水準で成長しており、その半分以上を占める米国向けで「25%増は確実」と分析する声もあります。
 シェア15~20%で続く欧州向けもベトナム・EU自由貿易協定が大筋合意に達しましたから、輸出拡大の中心は欧米でしょう。
繊維ニュース 2015年11月30日(月曜日)「TPP合意 どう変わる繊維産業④」より

各国議会での批准が成され、細かなルールが決まり、TPPが本格的に効力を持つのは2017年以降、また、先頃正式署名されたEUとの自由貿易協定が効力を持つのは2018年とされているため、今後はベトナム国内各社はこの機会をどう活用していくか具体的に考えてくるだろう。
大きな商機なので、各社とも欧米市場をものにしようと必死になると思われる。日本企業でも商社を中心にこの機を活かすところがでてくるだろう。またと巡ってこない大チャンスになると思われる。
そして、このチャンスを掴むには、早期にベトナムに進出して、当地からの観測をしていくことが必要だと思う。日本にいては見えないモノがオンタイムで見えてくることだろう。

日本向けは自社工場の建設が必要

一方で、主として、中小規模の欧米向けの生産に十分な条件の満たない工場も選別されてくることだろう。そうした工場が日本向けに特化してくる可能性はあるが、それもごく一部にとどまるのではないだろうか。いずれにせよ、今後の対日輸出にベトナムで取り組むなら、自社工場を建設する覚悟が必要になりそうだ。
もちろんこの間、ベトナム独自の規制が取り払われて、世界の一般的な枠組みに入っていくことで、投資の障壁は著しく低くなってくるだろうが、規模はともかく工場を年間稼働させるだけの商材をもたないところは非常に厳しくなると思われる。



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TPP、TPP、、、と長渕剛の唄う「ろくなもんじゃねえ」のように、
ベトナム国内はこの話題で盛り上がっている。

10月5日、米国・アトランタでの各国の閣僚会合での交渉結果が発表されてからというもの
ベトナムの株式市場だけでなく、海外市場の株式市場でもベトナム関株は買いになっている。

ベトナム:TPPへの大きな期待の中で、縫製企業が第3四半期決算結果を公表
アパレル・リソースinインドシナ」より

私が興味を持ったのはこの動きに関して、早速アセアンの他の国々が反応してきたことだ。

インドネシアは自らアセアンの盟主との誇りがあるので、この状況を忸怩たる思いで眺めていたことは想像に難くない。

マレーシアとベトナムがインドネシア製造業の脅威に
アパレル・リソースinインドシナ」より

繊維ニュースに掲載している定期コラム「インドシナ見聞録」でも、
今月はこの話題に触れてみた。

秋利美記雄のインドシナ見聞録「19」TPP 熱い歓迎と危惧と


先日10月9日にも地元経済紙「投資」に馴染みの顔写真が載っていたので、気になって読んでみた。
ベトナム北部フンイン省商工会会長も務める有力アパレル・メーカーHung Yen縫製(Hugaco)の
Duong会長のインタビュー記事だった。
Duong会長とは私も商社勤め時代以来10年以上の長い付き合いがある。



彼の言葉を辿ると、
今回のTPPの大筋合意で期待が高まっているが、
手続き上、各国とも国会の批准手続が必要なので、
実際にその効果が見えるようになるのは2017年以降だろうという。

この機にベトナムの繊維業界は概して何らかの利益を享受することができるが、
とりわけ外資系企業はわずかな時間に投資し、大きな利益を上げることが可能と彼は見ており、
その代表的な例として、クワンニン省に投資した中国企業の天虹紡織(Texhong)社を挙げている。

TPPには原糸原則(Yarn Forward)というルールがあり、製糸工程から製品までを完結させなければならない。
この難題を梃子に各企業が投資効果を上げ、競争力を高めることで長期的な市場をものにするべきとし、
とはいえ、川上の取組は実に遅れているベトナムではこの状況を改善するには国の援助が必要と
Duong会長は主張していた。

繊維産業は引き続き当分ベトナム輸出産業の先導役であるだろうし、
この機を活かさない手はないというのが、誰もが一致するところだと思う。

Duong会長もこの記事の中で主張されているが、
川上の中でも、とくに染色の工程は、排水処理の引き起こす環境問題などが絡み、
ベトナム現地企業だけでは容易に解決できる見通しは立たない。

日本などの技術大国からの支援も喉から手が出そうなほどほしいのは間違いない。
この分野は日本企業にとっても大きなチャンスだと思うのだが、進出を目指される企業はないものだろうか?



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