2006/10/07 朝日新聞be2006/10/07 朝日新聞be←平成18年10月7日
朝日新聞be on Saturday「フロントランナー」
(文・及川智洋、写真・高橋洋)

<新風舎>民事再生法の適用申請へ…自費出版大手(1/7 毎日)
 自費出版大手の出版社「新風舎」(松崎義行社長、東京都港区)が事実上倒産したことが分かった。7日午後、東京地裁に民事再生法の適用を申請する。負債額は約20億円で、関連会社の新風ホールディングスを含めると約25億円。新風舎によると、印刷会社の支援が既に決まっているといい、現在出版契約をしている約1100人の書籍制作を含め事業を継続しながら再建を進めていく。債権者向け説明会は9日に開く。

 同社が昨年末、債権者に送った文書によると、一部マスコミ報道による批判などから売り上げが急落し、債務支払いが滞ったという。同社は昨年7月、絵本や自伝を出版した複数の著者から「書店に並べて宣伝、販売するという契約と異なり、わずかな冊数しか店頭に並ばなかった」として提訴されている。

自業自得といってしまえばそれまでかもしれませんが、マスコミ・ジャーナリストの皆さんは「自己責任」という言葉がお嫌いなようですしね(嫌味)

かといって行政の責任で、税金から補填する筋合いの話でもないでしょう。
そもそも出版業界には監督官庁がない。個人情報保護法のときマスコミが「メディアに監督官庁を設けるとは何事か治安維持法の復活だギャーギャー」と言っていたことを忘れたとは言わせません。
消費者問題であれば経済産業省の管轄になるのかもしれませんけど、果たして消費者なのかというのも微妙です。再販問題のときには「本や新聞は他の商品とは違う文化的ナントカであって読者と消費者は違う」とさんざん聞かされましたっけね。読者が消費者じゃないなら況や著者をや(強引。)

で、この会社を祭り上げたマスコミの責任はどうよ?

ネットでは早くから問題になっていたようです。写真家・藤原新也氏のブログより。
新風舎の倒産に関しての私的見解(1/8)
 当出版社はひろく一般人から多くの金を集め、やがて出版界においても出版点数においては講談社を抜き、トップに立つ勢いがその時点であった。このことは何を意味するかというと情報の占有化が進むということだ。当社は大手新聞雑誌などに多大な広告を出稿し、一方的なプラスイメージを一般に植え付け、さらにその広告出稿によって大手マスコミにも口封じができる立場に立ったのである。
 一例として朝日新聞 などはbe on Saturday「フロントランナー」という紙面で、自費出版ブームを作った詩人経営者新風舎社長松崎義行さん41歳(2006年10月7日)という大々的なインタビューを行っている。
私のサイトの投稿者も実際にその記事によって新風舎に信頼感を抱き、迷っていた当社の企画に乗ったという方も何人かおられた。こういった金を動かすことのできる者が情報を占有するという今日的情報化社会の不健全な状況を少しでも改善すべきだという思いが、ブログで何日にも渡って被害者の実話を取り上げた真意である。ちなみに私はこの件に関し朝日新聞の一編集委員に電話で忠告をするとともに、なぜこういう記事ができるのかそのメカニズムを知りたいとの注文を出したが満足の得られる回答はなされなかった。

それで報道に手心を加えたという疑惑もあります。
朝日新聞、新風舎提訴を「実名」で報道(2007年11月21日 J-CAST)
新風舎についての報道をめぐっては、07年7月に自著の出版契約を同社と結んでいた4人が虚偽の説明を受けて出版費用を騙し取られたとして、新風舎に合計約763万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした際、大手紙のなかで朝日新聞だけが「大手自費出版社」として「匿名」で報じていた。この「匿名報道」については、週刊誌やスポーツ紙のコラムなどで、同紙の広告主の1つが新風舎であったため、実名報道ができなかったのではないかといった指摘もあった。

「武富士広告費五千万円」同様、朝日はこうした汚い企業体質を持っているということですね。そのくせ天声人語では他人事のような口を利く。
天声人語 2008年01月11日(金曜日)付
自費出版で急成長した新風舎が経営に行き詰まった。「著作が書店に並ぶ」と宣伝し、費用を著者と分担する手法で約1万5000人の本を出した。ところが、本屋にないなどの苦情が続き、裁判も起きていた〔中略〕▼誰しも、自分の創作や人生を形に残したいと願う。自費出版の盛況は、この国の豊かな文字文化のたまものでもあろう。「庶民の作品群」は、だから店頭での人気では測れない価値を宿している▼新風舎は前金を払った約1100人の本を制作中だった。誰かの手に取られる日を夢見てつづった労作だ。「羽」を待ちわびる文字たちが、つつがなく飛び立つことを祈る。

じゃあテメエのとこが設立する、あまり意味があるとは思えない新会社「朝日新聞出版」で引き取ってやれよ(嘲笑)

読売もまた然り。
自費出版の新風舎が提訴されて朝日新聞叩きに拍車をかける(?)週刊文春 実践ビジネス発想法(2007年07月06日)
新風舎のビジネスについては、これまでにも種々の疑惑が噂されてきました(「新風舎」にだまされた 自費出版の巧妙手口)。そうした中、朝日新聞は2006年10月7日の土曜版beの「フロントランナー」で、同社の松崎義行社長についての好意的なインタビュー記事を掲載しています。さらに系列のBS Asahiの方でも、今年の1月には同様な内容の映像版も放送する念の入れようです。〔中略〕

こうした朝日の新風舎びいきとも思える報道を揶揄したのが、週刊文春の2006年11月30日号の記事『朝日新聞がモテ囃す「詩人経営者」に憤る作家のタマゴたち』です。今回新風舎が正式に提訴されたことで、文春側が朝日叩きの格好の材料を手に入れたことになります。来週の週刊文春には、これをネタにした記事が掲載される可能性は高いと思います。

しかし、新風舎をもて囃していたのは朝日新聞だけではありません。読売新聞でも『「新風舎」松崎義行さんに聞く 存在感増す「共同出版」』(2006年8月3日)、『詩人少年、社長になる』(2006年12月6日)といった記事を掲載しています。松崎社長に注目したのは、朝日よりも読売の方が時期的には早いくらいです。

松崎社長のインタビュー記事より(待田晋哉記者)。
 一昨年には文庫を創刊し、中沢けい『海を感じる時』、辺見庸『自動起床装置』など作家のデビュー作を刊行。今年5月には、町田康や西原理恵子など多彩な執筆陣が名を連ねる雑誌「少年文芸」を創刊した。無名の人々の表現欲をベースに、活動の幅を広げる同社のようなケースも出てきた自費出版・共同出版の動向は、さらに影響力を増すのではないかと予感させる。

なにせ21世紀活字文化プロジェクトを推進してきた読売新聞が賞賛してるんですから信用する人がいても無理はない、という解釈も可能でしょう(ええ、私は当初から「活字利権」だと批判してきましたが何か?)。読売自身が行った日米共同世論調査でも、裁判所・自衛隊・学校・警察などを抑えて依然として新聞が一番信頼されているそうですから♪
しかも『詩人少年、社長になる』は日経BP社刊とこんなところで守旧派三社が揃い踏みw
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残念ながら新風舎に払ったカネを取り戻すのは困難でしょう(倒産とはそういうものだ)。ここは平成電電出資被害者結束委員会平成電電 民事訴訟みたいに被害者が新聞社を訴える−こちらも被告は朝日・読売・日経!−という展開を期待したいものです。何かにつけて「ネットの言論は無責任」と貶める既存マスコミの、立派な責任の取り方をみせてもらおうじゃないですか。

<1/20 追記>
新風舎は民事再生を断念し、破産手続きに移行するとのことです。
[新風舎]破産へ…前受け金10億円、千人の著書未完成(毎日)
 自費出版大手の「新風舎」(松崎義行社長、東京都港区)は19日、記者会見を開き、破産手続きに入ることを明らかにした。民事再生法に基づく再建を目指したが、支援を表明していた印刷会社「帆風(ばんふう)」(東京都新宿区)が撤退。これを受けて東京地裁が18日に再生手続きの廃止を決定した。

 新風舎の保全管理人、川島英明弁護士は、負債は約20億円と説明。「厳しい状況だが事業の受け皿を探すなど、新しい枠組みを模索する」と、事業の譲渡先を探す考えを示した。また、本を製作中の著者約1000人が支払った前受け金は計約10億円に上るという。製作中の著者を対象に今月末に予定した説明会は中止を決めた。

新風舎商法を考える会という団体もあるそうで、次の一手に注目です。