コメント欄で山崎豊子の新作について話を振られたのでちょっと調べてみました。
まあ事件についての議論とかはよそにお任せするとして(投げやりすぎ)、こちらの関心は専ら「なぜこの時期に?」という点にあります。

問一 何で西山事件を題材にした?
答一 山崎豊子が毎日新聞出身なのも一因でしょう。

大作「運命の人」刊行 山崎豊子さん(5/13 読売)
 『暖簾(のれん)』(1957年)でデビューした当時、毎日新聞の学芸部記者だった山崎さんにとって、司法・立法・行政に次ぐ「第4権力」とされるマスメディアは、長年あたためてきたテーマだった。「西山事件を題材にすれば、国家権力とマスメディア、そして沖縄問題を描くことができる」と、当事者である毎日新聞元記者・西山太吉氏に取材を申し込んだ。西山氏の弁護士が保管していた、数千ページに及ぶ裁判資料も読み込み、「罪を裁かず、モラルだけを裁いた不当な裁判だった」と確信した。

問二 読売新聞が大きく取り上げてるのは何故?
答二 主筆の渡辺恒雄が西山と親密だったのが関係してるのかも。
週刊読売 S50.12.6号週刊読売 S50.12.6号水爆時評 財界人も知っていた“国家機密”
――西山記者逮捕は謀略だった…―― 渡辺恒雄
(週刊読売 昭和50年12月6日号)
大きな公共事業の建設工事に関する機密や、防衛庁の新兵器発注などで、政府の機密事項が、ひそかに業界有力者に流された例などは、数え立てればきりがないのである。
政府権力というものは、その種の機密漏りについては、いっかな、追及しようとしない。しかし、政府のウソ答弁を裏付ける資料を流しでもしようものなら、昼下がりの情事もまたその追及の対象となるのである。

元毎日新聞記者 西山太吉(3)―「朝日新聞」be on Saturday「逆風満帆」(諸永裕司)
ある日、東京へ向かった。飛行機嫌いのため、新幹線で5時間。大手町の読売新聞本社に、同グループ会長の渡辺恒雄を訪ねた。
渡辺は一審で弁護側証人として法廷に立ち、自著のなかで西山記者の活躍にも触れている。盟友だった。
山崎による連載を知った渡辺は、主人公はだれか、とたずねた。
「もちろん、俺(おれ)さ」
会長室での歓談は2時間を超えた。

そんなわけで今回の作品の取材協力者としてナベツネも名前を連ねているそうです。なるほどね。
===糸冬 了===
S48.10.21 朝日…それじゃあんまりなのでまだ続けます(笑)

山崎豊子といえば度重なる盗用事件で有名です。(直球だなおい

山崎豊子さん、また盗用 週刊誌連載中の「不毛地帯」
無名作家の作品から 連続3週間、20数ヵ所
(昭和48年10月21日 朝日)

この記事をめぐっては山崎が謝罪広告を求めて朝日新聞を提訴するという斜め上の展開をみましたが、結局和解で終結したとのこと。
作家山崎豊子さん(堺市在住)が「サンデー毎日」に連載中の小説「不毛地帯」の中で、堺市の無名作家が書いたシベリア虜囚記の記述を盗用していることが分かった。山崎さんは四十三年にも小説「花宴」で盗用騒ぎを起こし、日本文芸家協会を退会、文壇的生命は終わったとされたが、一年半後に奇跡的にカムバックした。今回は連続三週間にわたって計二十余カ所を盗用または酷似した表現を使っている。現在、「サンデー毎日」編集部と山崎さんは誌上に「おわび」掲載などの善後策を検討しており、山崎さんも事実上盗用を認めたかたち。無名作家の方は「なぜ、ご自分のペンでお書きにならないのだろう」と首をかしげているが、山崎さんの読者を無視した創作態度に文壇では「あきれた」という声さえ出ている。

弁解の余地なし

作家松本清張氏の話 引用のひん度からいって、これは無断借用じゃなくて盗用だ。前回は自分で“不祥事件”などといって問題になったが、考えの甘さがまだ残っていたのだなぁ。無名作家の作品で世間の目にふれないだろうというのは、ずるいし、二度目となればもう弁解の余地なしでしょう。初期の船場ものを読んですぐれたストーリーテラーだと思っていたが、結局は描写力の貧困な人ということになる。作家とはこんなものだと一般に誤解を受けるのがいちばん困る。

山崎と同様に新聞社出身の作家(松本清張は元朝日新聞社員)として、一緒にしてもらいたくないという思いがあったのかもしれません。
古い話を蒸し返すなという意見もあるでしょうが、そんな過去に追いやっていい話でもない。この記事の載った翌日と翌々日には西山事件第一審の弁護側最終弁論が行われている、そういう時期の出来事です。

その後「大地の子」でも盗用で訴えられたり、「沈まぬ太陽」をめぐっても朝日とひと悶着あったらしい。
『沈まぬ太陽』 を「私は許せない」、「御巣鷹山編」こそ「許せない」(週刊朝日 平成12年2月11日号、2月18日号)
「沈まぬ太陽」の真実と名誉を傷つけた「週刊朝日」のデタラメ(週刊新潮 平成12年2月24日号)
遺恨というか代理戦争というのか…

しかしそんな騒ぎをものともせず、いまや映画・ドラマ化が相次ぐ「最強」「無敵」の作家として君臨しています。
“09年後半の芸能界”山崎豊子一色になる
 今年後半の芸能界は“山崎豊子”がキーワードになりそうだ。
 10月から山崎作品の「不毛地帯」が“フジテレビ開局50周年記念ドラマ”として復活する。同作は戦時中に大本営参謀だった主人公がシベリア抑留を経験した後、日本の商社で第2の人生を歩む物語。戦闘機をめぐる商戦、自動車会社の資本提携、中東での石油開発などを通し、政官財の癒着を描いた社会派の傑作だ。

 今年の秋は、山崎作品の映画「沈まぬ太陽」も公開予定だ。航空会社を舞台に企業と闘い続けた男を描いた物語で、渡辺謙が主演を務める。これまで何度もドラマ化や映画化の話が持ち上がりながら、頓挫してきた“幻の大作”だ。

 最近のテレビは、お手軽で子供じみたドラマや、バカ騒ぎするだけのバラエティーが氾濫(はんらん)している。
 重厚で骨太な山崎作品が引っ張りだこなのは、そんなテレビの惨状に辟易(へきえき)している大人が多いということだろう。
(日刊ゲンダイ2009年5月15日掲載)

私も、たとえ盗用を指摘されようと「こまけぇことはいいんだよ!!」と撃退できるぐらいの大物になれるよう頑張ります!<そうじゃないだろw
山崎批判本も色々と刊行されていますが、
山崎豊子の『盗用』事件―『不毛地帯』と『シベリヤの歌』 (1979年)
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悉く左翼出版社というのがなんだかなー。ますます自分がどんな立ち位置にいるべきか分からなくなってきましたよ?
まあ、最終巻が刊行されれば放っといても報道量は増えるでしょう。澤地久枝らが起こした訴訟と抱き合わせにしたりとか。

あるいは政局がらみ。
民主党が政権取ったら沖縄返還密約を全部暴露するとジャスコ岡田:Birth of Blues
もともと西山が、入手した情報を記事にせずに横路孝弘らに横流ししたのが事件の発端ですから民主党(旧社会党)にとっては持ちネタのようなものです。

…何ていうか、下手なくせに自己顕示欲だけは強い役者ばかりの猿芝居を見せられてるような気分ですけど。
<6/24 更新><続く…かも?>