2021年10月21日

落合誓子『貴族が死滅する日』を読む

貴族が死滅する日『貴族が死滅する日』東本願寺十年戦争の真相、を読んだ。
本書のことは本願寺関連の一書として知っていたが、最近、fbで少し言葉を交わすようになった落合誓子さんの玉稿であることは後から気付いた。先に読ませていただいた『女たちの「謀叛」』仏典に仕込まれたインドの差別、の文中、「ヒンドゥ」の用法につき、議論をしたのが、話はじめであったか。

さて、本書の発行は和多田進の晩聲社、出版は1995年とあった。
この年は1月17日に阪神淡路大震災が起き、次いで3月20日にはオウム真理教による地下鉄サリン事件が起きた。本書の発刊は5月20日となっている。

私事でいえば1990年に創価学会を脱会し、日蓮正宗の末寺に移り、役員をしながら、大石寺内事部『大日蓮』編集室の委託で“法主”説法のテープ起こし原稿の作成と、宗務院教学部から依頼で、池田大作の発言のテープ起こしをしていたが、日々、創価学会化していく大石寺のも嫌気がさしていた。S・ハッサン『マインド・コントロールの恐怖』を読み、発奮し書いた『カルトとしての創価学会』を晩聲社に持ち込んだが本にならない苦汁を味わいもした。(この題名で、その後、他の人が本を出したが、わたしとは無関係である)それが1995年のことだった。
翌 '96年、『マインド・コントロールとは何か』の著者、西田公昭氏を静岡県立大学に訪ねて紹介されたJDCC(日本脱カルト協会)の創立理事である日蓮宗の楠山泰道師の許で当会に所属。会報の編集長、理事もした。
創価学会、日蓮正宗、オウム真理教、統一協会、エホバの証人…その他多くの議論ある宗教団体と軋轢を生じた人々の相談は日々100人を超える相談メールが殺到していた20世紀の終わり、まさに世紀末のなかで宗教問題にどっぷりと浸かっていた…。
本書から思い切り脱線し、自分史を書き連ねたが、そうした前夜に起きていた東本願寺紛争に、当時は目もくれなかった。しかし、いま改めて読んでみると、実は日本の歴史、殊に近代史において、日本の政治に係る創価学会、統一協会、新宗連といった宗教の問題の前史における天皇崇拝とパラレルに関わる東本願寺信仰の “終焉” を詳細に語る本書は当時に、読んでおけばよかったと後悔した。
それは、内紛劇のコアとなる “法主” について、「「生き仏信仰が」いまのような形をとりだしたのはいつのころのころからか私にはよくわからないが、私の田舎の門徒衆の発想の根を探っていくと「天皇」にぶつかる。あの熱狂的な「現人神あらひとがみ」信仰と不可分ではない。しかし、「現人神」の信仰が「生き仏信仰」を生んだというよりも、むしろ真宗の伝統として、血の中にしみこんだ「ごもんじきさま信仰」が、明治、大正、昭和の天皇制復権と同時に「現人神」信仰へすりかわっていったというほうが正確ではなかろうか」(P50) といった分析が載るからである。早く感づいておけばよかった視点であった。

久方に本格的なルボルタージュを読んだという充足感があった。
多数の人々に迫り、〇〇はこうした人物、〇〇はこうしたことと整理し本願寺 “貴族” の消滅を克明に書き出されている。

こういっては反感を買うかもしれないが、真宗界隈の、ヒステリックにも、固執にも見える、極端な天皇制批判は、つまりは蓮如を原因とする法主、生き仏、「ごもんじき様」信仰という偏狂に対する自己批判であり、親鸞回帰の機運もそのためであり、落合さんは、さらに釈尊への回帰のなかで差別撤廃を俯瞰していったのだろうと思った。

わたしの半生、またいまの自分にとって、最も縁遠い親鸞や蓮如が、振り切りたい創価学会や、日蓮のように、気分に絡みつく。しかし、絡む糸の1本を解く示唆を本書は与えてくれた。

宗派のなかにあると、常に集団意識に抗わなければない負荷がある。
門跡、蓮如、親鸞から、釈尊の清流を汲もうとする落合さんのお気持ちを、ほんの少しばかり感じたといえば言い過ぎかもしれない。
§

・取り上げられている主要人物
 大谷光暢、大谷智子、大谷暢道、大谷光紹、大谷暢順、竹内克麿、曽我敏、三池新二、末広愛邦、堀江俊順、深田英雄、中山理々、稲垣敏、吹原弘宣、松本裕夫、松本昭重、訓覇信雄、峰藤亮

目次
プロローグ 大谷家の天皇・ごもんじきさま
欺叔戦争の顛末
愚橘ヲ樺瓦寮こ
祁貪信仰
固以を変質させる力
控族がほろびる日
エピローグ ホンモノとニセモノが峻別される日
資料
増補
●別刷資料・前半
●別刷資料・後半

[増補新装版] 貴族の死滅する日―東本願寺十年戦争の真相
核時代50年(1995年)5月初版1刷
著者 落合誓子
発行者 和多田進
発行所 ㍿晩聲社
Otiai.S 1995© Printed in Japan ISBN4-89188-241-7
おちあい・せいこ
石川県生まれ
著書に『原発がやってくる町』―「トリビューン能登」より(すずさわ書店)、『女たちの山』(山と渓谷社)、『コウちゃんの保育園』『男と女の出版局』(JICC出版局)など(1995年時点)

Posted by saikakudoppo at 08:20│Comments(0)