35億年に及ぶ試行錯誤を繰り返した結果、大自然はくっついて重力に逆らう方法や糖質を使用して1世紀もの乾燥に耐える方法など、様々な発明品を作り出してきた。そうした自然のシステムからヒントを得て考案された科学技術は意外なほど多い。
バイオミメティクス(biomimetics)とは、生体のもつ優れた機能や形状を模倣し技術開発やものづくりに生かすという言葉だが、ここでは自然を参考に生み出された10の科学技術を見ていくことにしよう。
1. マジックテープ / ゴボウの実
1941年、スイスの電気技師ジョルジュ・デ・メストラルは犬を連れてアルプスに狩りに出かけた。そして帰宅してみると服や犬の毛皮に野生ゴボウの実が張り付いているのを発見する。この植物は通過する生き物に張り付いて、種を遠くまで運んでいた。これを顕微鏡で覗き込んだメストラルは、単純な作りのフックが繊維や毛皮の輪に引っかかっていることを発見する。
このヒントを得てから10年後、様々な素材で無数の実験を経た末に、マジックテープという新型のファスナーの特許が生み出された。
2. ゲッコーシール / ヤモリ
ヤモリが重力に逆らい壁に張り付いていられるヒミツは、指先のシーティーという極小の毛にある。ここに極小スケールでしか効かない、ファンデルワールス力が働き、張り付くことができるのだ。これは接着剤がなくともぴったりと張り付き、しかも剥がすこともできるという優れものだ。
近年では、シリコンを使ってシーティーを模倣することに成功し、様々なヤモリ技術が開発されてきた。切り立ったガラスの壁を登れるガジェットや自重の数百倍もの重量の物体を持ち上げるロボットなどがその一例である。
また宇宙で修理を行うロボットもある。これはLEMUR(Limbed Excursion Mechanical Utility Robot = 四肢移動式メカニカル・ユーティリティ・ロボット)といい、国際宇宙ステーションの保守管理を担当する。その姿もヤモリそっくりだ。
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