幸町IVFクリニック 院長と培養士のIVFこぼれ話

幸町IVFクリニックの院長と培養士の、役に立つような、立たないようなブログです。 (主に院長の文句?)

夜勤シフトは閉経を早める?

幸町IVFクリニック院長 雀部です。
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今回は、夜勤の多い職業と妊活の関係についての話題です。

夜勤の多い職業に就かれている方、本当にご苦労様です。

夜寝ないで仕事をするのは、身体的にきついですよね。私自身も、以前はお産もやっていましたので、夜勤のつらさは身にしみてわかります。若い内は、まだ体力がありますので、一晩ぐらい寝なくてもなんとかなるのですが、年齢を重ねると段々きつくなってきます。

この体力を消耗する夜勤シフトが閉経年齢に及ぼす影響を検討した観察研究を紹介します。今月発表されたばかりの最新の論文です。

Stock, D., et al. (2019). "Rotating night shift work and menopausal age." Hum Reprod.

22年間(1991~2013年)、80,840人の看護師を対象に行った大規模な研究です。

22年間の観察期間中に、27,456人(34%)が自然閉経を迎えました。

その結果、2年間に20ヶ月以上、ローテーションで夜勤シフトこなしている女性は、夜勤シフトの無い女性と比較して、早期閉経のリスクが高いことがわかりました(MV-HR=1.09, 95%CI: 1.02-1.16)。

2年間に20ヶ月以上の夜勤シフトは、45歳未満で閉経または観察が打ち切られた女性において、特に早期閉経のリスクが高いことがわかりました(MV-HR=1.25, 95%CI: 1.08-1.46)。

同様に、累積10年以上の夜勤シフトは、45歳未満で閉経または観察が打ち切られた女性において、早期閉経のリスクが高いことがわかりました(累積10-19年 MV-HR=1.22, 95%CI: 1.03-1.44)(累積20年以上 MV-HR=1.73, 95%CI: 0.99-3.35)。

夜勤シフトは、閉経を早め、生殖可能な期間を短くする可能性があります。妊活を考える時期がきたら、夜勤シフトの多い方は、仕事を見直す必要があるかもしれません。


 


体外受精児の小児癌リスク

 幸町IVFクリニック院長 雀部です。
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体外受精などの生殖補助医療は、概ね安全ということで世界中で広く行われていますが、実は体外受精児の長期予後についての研究はほとんど進んでいないのです。インプリンティング疾患や小児癌が増えるなどの報告もありますが、今だに結論は出ていません。

今回は、体外受精児の小児癌リスクについて、平均観察期間21年かつ大規模な研究が発表されましたので紹介します。今月発表されたばかりの最新の論文です。

Spaan, M., et al. (2019). "Risk of cancer in children and young adults conceived by assisted reproductive technology." Hum Reprod.
「生殖補助医療によって生まれた児の小児癌リスク」

オランダにて1980年~2001年に不妊治療の結果生まれた児を対象とした前向き観察研究です。児の総数47.690人、その内体外受精児24,269人、自然妊娠13,761人、体外受精以外の一般不妊治療妊娠児9,660人です。

平均観察期間21年間、体外受精児の平均観察期間はやや短く20年間、自然妊娠児の平均観察期間24年でした。小児癌は231例に認められました。

すべての小児癌についてまとめて解析すると、体外受精児の小児癌リスクは、自然妊娠児、一般不妊治療妊娠児と比較して、増えませんでした。

体外受精児の18歳以降の癌については、自然妊娠児と比較して、有意差はありませんでしたが、わずかに増えました(HR=1.25, 95%CI: 0.73-2.13)。

顕微授精と凍結融解胚移植の結果生まれた児において、小児癌リスクは、有意差はありませんでしたが、わずかに増えました(顕微授精HR=1.52, 95%CI: 0.81-2.85、凍結融解胚移植HR=1.80, 95%CI: 0.65-4.95)。

リンパ芽球性白血病、悪性黒色腫のリスクは、体外受精児において、自然妊娠児と比較して、有意差はありませんでしたが、わずかに増えました(リンパ芽球性白血病HR=2.44, 95%CI: 0.81-7.37、悪性黒色腫HR=1.86, 95%CI: 0.66-5.27)。

全体として、体外受精児の小児癌リスクは増えないと結論しています。

さらなる研究が必要ではありますが、これだけ大規模な研究で有意差が出ないので、体外受精児の小児癌リスクについては、自然妊娠児と同じレベルと考えていいと思います。皆さん、安心して治療に専念してください。


 


凍結胚移植vs.新鮮胚移植

幸町IVFクリニック院長 雀部です。
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今回は、凍結胚移植と新鮮胚移植、どちらの方が妊娠しやすいかという話題です。

基礎知識として、凍結胚移植と新鮮胚移植それぞれのメリット、デメリットをおさらいしておきましょう。

①凍結胚移植は、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)発症のリスクを回避できる。これは、凍結胚移植の最大のメリットです。
②新鮮胚移植は、同じ周期に卵巣刺激ー採卵を行うため、着床の時期にエストロゲン高値が持続したり、クロミッドを使用した場合に内膜が薄くなるなど、卵巣刺激が着床に関して不利な方向に影響することがある。
③凍結胚移植の方が、異所性妊娠の発症が少ない。
④新鮮胚移植は、胚移植ー妊娠判定まで1周期で終わりますが、凍結胚移植は、最低でも2周期必要になります。その分、時間、通院回数、費用などが、余分に掛かります。
⑤ホルモン補充周期で凍結融解胚移植を行った場合の話ですが、胚と内膜のタイミングを簡単に合わせることができます。また、ERA検査などで、着床ウィンドウがずれていることがわかった場合、簡単に補正できます。

細かいものは他にもありますが、主にこの5つを押さえておけば十分だと思います。

前置きが長くなりましたが、凍結胚移植と新鮮胚移植、どちらが生児獲得率が高いかを検討した論文を紹介します。今月発表されたばかりの最新の論文です。

Bosdou, J. K., et al. (2019). "Higher probability of live-birth in high, but not normal, responders after first frozen-embryo transfer in a freeze-only cycle strategy compared to fresh-embryo transfer: a meta-analysis." Hum Reprod.

「卵巣刺激に対して高反応する患者さんは、新鮮胚移植と比較して、凍結胚移植の方が生児獲得率が高い」

8つのランダム化比較試験、総患者数5265人のデータを、メタアナリシスという方法で解析した論文です。8つのランダム化比較試験のうち、4つは卵巣刺激に高反応する患者さん、残りの4つは正常反応する患者さんを対象としています。

新鮮胚移植と全胚凍結後に行われた最初の融解胚移植の成績を、生児獲得率で比較しています。

卵巣刺激に高反応する患者さんは、新鮮胚移植と比較して、凍結胚移植の方が、生児獲得率が高いことがわかりました(RR:1.18、95%CI: 1.06-1.31)。

卵巣刺激に正常反応する患者さんは、新鮮胚移植と凍結胚移植の生児獲得率に有意差はありせんでした(RR: 1.13、95%CI: 0.90-1.41)。

卵巣過剰刺激症候群は、両群とも凍結胚移植の方が有意に低い発症率でした。

卵巣刺激の方法、卵子を最終成熟させる方法、凍結方法など、背景条件が補正されていないため、エビデンスレベルはあまり高くありませんが、卵巣刺激に高反応する患者さんに関しては、凍結胚移植に軍配が上がるようです。

当院では、卵巣過剰刺激症候群のリスクが低く、内膜厚が十分な患者さんには、新鮮胚移植を行います。新鮮胚移植で良好胚を戻しているにも関わらず、妊娠に至らない患者さんは、次からは凍結胚移植を検討します。

良好胚を凍結胚移植しても妊娠しない患者さんは、内膜側に何か原因がないかどうかを調べます。必要に応じて、子宮鏡、子宮内膜組織診、Trio検査などを行っていきます。

患者さんの状況を診ながら、新鮮胚移植と凍結胚移植を使い分けていくことが重要です。


 
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