幸町IVFクリニック 院長と培養士のIVFこぼれ話

幸町IVFクリニックの院長と培養士の、役に立つような、立たないようなブログです。 (主に院長の文句?)

飲み物と体外受精の成績

幸町IVFクリニック院長 雀部です。

睡眠、タバコと生活習慣改善の話が続いています。今回は、飲み物の話です。

さっそく論文を紹介しましょう。

Machtinger, R., et al. (2017). "Association between preconception maternal beverage intake and in vitro fertilization outcomes." Fertil Steril 108(6): 1026-1033.

2014年~2016年に生殖補助医療による治療を受けた140人の患者さんを対象とした前向き研究です。普段飲んでいる飲み物と体外受精の成績の関係を検討しています。砂糖の入ったソーダをよく飲む方は、まったく飲まない方と比較して、採卵で回収できた卵子数が1.1個、成熟卵子数が1.2個、受精した卵子数が0.6個、良好胚数が0.6個少なかった。生児獲得率は、砂糖入りソーダをまったく飲まない方と比較して、1日1杯以下の砂糖入りソーダを飲む方で-12%、1日1杯以上飲む方で-16%低かった。コーヒー、カフェイン入り飲料、ダイエットソーダは、体外受精の成績に影響を及ぼさなかったと報告しています。結論として、カフェインの有無に関わらず、砂糖入り飲料は、体外受精の成績に悪影響を及ぼす可能性があるとのことでした。

コーヒー好きの方、よかったですね~。カフェインは、影響しないようです。でも、コーヒーに砂糖を入れて飲むのはNGです。

もう一つ気になる飲み物があると思います。アルコールです。
Abadia, L., et al. (2017). "The association between pre-treatment maternal alcohol and caffeine intake and outcomes of assisted reproduction in a prospectively followed cohort." Hum Reprod 32(9): 1846-1854.

2006年~2016年に生殖補助医療を受けた300人の患者さんの493治療周期を対象とした前向きコホート研究です。治療を受ける前の1年間のアルコールとカフェインの摂取状況を申告してもらい、体外受精の成績との関連を検討しています。アルコールをまったく飲まない方の生児獲得率は34%、1日量の少ないグループより順番に46%、41%、42%、41%でした。カフェインは、1日量の少ないグループの生児獲得率より順番に46%、44%、42%、40%、40%でした。結論として、低度~中等度のアルコール、カフェイン摂取は、体外受精の成績に影響しないということでした。

妊娠前から、あれもダメ!これもダメ!だと息が詰まってしまいますよね。飲み過ぎなければ、カフェインもアルコールも大丈夫なようです。でも、妊娠したらアルコールは絶対ダメ!、カフェインも控えめに!



男性のタバコと妊娠

幸町IVFクリニック院長 雀部です。

前回、妊娠しやすい身体づくりには睡眠が重要だという話をしました。今回は、タバコの話です。

昨今の禁煙ブームで、喫煙者はさぞかし肩身が狭い思いをしているのではないでしょうか?私自身も30代半ばまで喫煙者だったので、なんとなく気持ちが分かります。そして、追い打ちを掛けるように不妊クリニックでまたタバコの話をされて、もううんざりという顔している患者さんをよく見かけます。

当院では、喫煙している方に禁煙を勧めています。奥様は、必ず禁煙していただき、禁煙できるまで治療に入りません。ご主人は、禁煙できるまで治療に入りませんとまでは言いませんが、極力禁煙を勧めています。

女性側は、自分が妊娠するんだという実感があるためか、意外とすんなりと禁煙の勧めを受け入れてくれます。困るのが、男性側です。男性側の喫煙と妊娠の関係が、どうも実感できないようで、協力が得られないケースが多々あります。よく奥様から、「いくら言っても主人が聞いてくれないので、先生から直接言ってもらえませんか?」と頼まれることがあります。

そこで、今回は男性側のタバコと妊娠の関連について話したいと思います。さっそく論文を紹介します。

Kovac, J. R., et al. (2015). "The effects of cigarette smoking on male fertility." Postgrad Med 127(3): 338-341.

男性の喫煙と妊娠の関係がわかりやすくまとまっているreviewです。ネット上で全文読めます。皆様が気になると思われる部分を、引用されている文献を提示しながら説明します。

まず、タバコが精液検査の結果に及ぼす影響についてです。
Ramlau-Hansen, C. H., et al. (2007). "Is smoking a risk factor for decreased semen quality? A cross-sectional analysis." Hum Reprod 22(1): 188-196.

2542人の健康男性を対象とした横断的研究です。喫煙男性は、精液検査のパラメーターである精液量、精子濃度、精子運動性のすべてにおいて、非喫煙男性と比較して低い結果でした。さらに、喫煙と精子濃度の関係は、1日のタバコの本数に依存して悪化する傾向にあり、1日20本以上のタバコを吸う男性は、非喫煙者と比較して19%精子濃度が低下しました。

次に、男性の喫煙が生殖補助医療の成績に及ぼす影響についてです。
Fuentes, A., et al. (2010). "Recent cigarette smoking and assisted reproductive technologies outcome." Fertil Steril 93(1): 89-95.

生殖補助医療の治療を受ける166組のカップルを対象に行われた前向きコホート研究です。男性側の喫煙により生産率が21.1%から7.8%に低下することが報告されています。

そして、副流煙にも注意が必要です。
Neal, M. S., et al. (2005). "Sidestream smoking is equally as damaging as mainstream smoking on IVF outcomes." Hum Reprod 20(9): 2531-2535.

生殖補助医療を受けた225人の女性を対象とした後向き研究です。自身が喫煙する38人、ご主人が喫煙するため副流煙に暴露される環境にいる40人、非喫煙者146人の着床率はそれぞれ12.0%、12.6%、25.0%、妊娠率はそれぞれ19.4%、20.0%、48.3%でした。ご主人が喫煙するため副流煙に暴露される環境にいる女性は、自身が喫煙者の女性と同程度の着床率、妊娠率であることが報告されています。

どうでしょう? 男性側のタバコが、いかに治療の成績に悪影響を及ぼしているかがよくわかると思います。

タバコの害が、どれだけ医学的に証明されても、喫煙者は自分だけは大丈夫と心のどこかで思っています。タバコの害については思考停止状態になっていますので、まわりからいくら言われても心に響きません。でも、論理的に物事を考える習慣のある方は、データを突きつけると意外と素直に受け入れてくれることがあります。試しに、このブログの内容を話してみたらどうでしょう。



睡眠妊活

幸町IVFクリニック 院長 雀部です。

当院は体外受精の専門クリニックですが、妊娠しやすい身体作りにも力を入れています。体外受精の専門クリニックが、なぜ妊娠しやすい身体作りを指導するの?と違和感を覚える方いらっしゃいませんか? その違和感を覚える方は、体外受精という技術を過大にイメージしている可能性があります。

体外受精は生殖補助医療と言われている通り、生殖を補助する技術です。 対象となるご夫婦の実力以上の結果を引き出すことはできません。体外受精の治療を受ける方は、並行してご夫婦の妊娠力を上げていく必要があります。体外受精をやることになったからこそ、今まで以上に妊娠しやすい身体作りに励みましょう。

 学校の勉強に例えると、妊娠しやすい身体作りは基礎となる教科書、体外受精は参考書の応用問題に相当します。基礎となる教科書をおろそかにして、参考書の応用問題を解くためのノウハウばかり追い求めても成績は上がりませんよね。それと同じことです。

【関連記事】
 他力本願

妊娠しやすい身体作りというと、大体食事と運動の話が出ます。もう一つ大事なことを忘れていませんか? 睡眠です。

睡眠も大事です

さっそく論文を紹介します。
 
Wise, L. A., et al. (2018). "Male sleep duration and fecundability in a North American preconception cohort study." Fertil Steril 109(3): 453-459.

2013~2017年にインターネットを利用して行われた前向きコホート研究です。北米に住む1,176カップルを観察対象とし、男性側の睡眠と妊娠の関係を調べています。その結果、睡眠時間が6時間未満の男性は妊娠力(つまりパートナーを妊娠させる能力)が低いことがわかりました。この傾向は、以前子供を持った経験のある男性において特に強く認められました。

どうでしょう? 妊活には、睡眠も重要そうですね。

これは男性側の論文なので、女性側の論文がないか探してみたら、ありました。

Kloss, J. D., et al. (2015). "Sleep, sleep disturbance, and fertility in women." Sleep Med Rev 22: 78-87.

“Sleep Med Rev”は睡眠医学に関するジャーナルです(専門外なので、どの程度信頼できる医学誌なのか私には分かりません)。Reviewなので具体的なデータの提示はありませんが、睡眠トラブルの治療は妊娠力を高める可能性があるという内容が述べられています。

昔、睡眠学習というのがあったのご存知ですか? (古すぎて年がばれる?)
努力しなくても、寝てる間に勉強ができるようになるというやつです。私も盛んにやりましたが全く効果が上がりませんでした。でも、睡眠妊活は、本当に寝るだけで効果が上がりそうです。

睡眠のサプリ

メラトニンというサプリがあります。メラトニンは、睡眠のホルモンです。サプリで簡単に摂ることができて、副作用が無い睡眠薬として有名です。日本では市販されていませんが、アメリカでは薬局で簡単に入手できます。

メラトニンは、睡眠に関する作用以外に、卵巣における抗酸化作用があり、この作用を期待して不妊治療にも用いられます。当院でも使用しています。睡眠トラブルのある方は、使ってみたらどうでしょう。睡眠の質改善と、卵巣における抗酸化作用の両方を期待できるかもしれません。




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