幸町IVFクリニック 院長と培養士のIVFこぼれ話

幸町IVFクリニックの院長と培養士の、役に立つような、立たないようなブログです。 (主に院長の文句?)

2017年10月

基礎体温表はつけないとダメですか?

幸町IVFクリニック 院長雀部です。

診察室でよく遭遇する患者さんの疑問や誤解第7弾です。
今回は基礎体温がテーマです。

皆さん基礎体温表をつけてますか?この基礎体温表、つけるのめんどくさいですよね。でも病院からつけるように言われてるので、しょうがなくつけてる方が多いと思います。今回は基礎体温表の必要性について検証してみました。

結論を先に言ってしまうと、基礎体温表はつけた方がbetterですが、つけないという選択肢もありです。ただし、つけない場合はそのデメリットを十分に理解しておく必要があります。

A 医師から見た基礎体温表
実は不妊治療を専門としてる医師の間でも、基礎体温表は必須と考えている医師と患者さんの負担になるからつけなくてもいいと考える医師と意見が分かれています。きちんと調べたわけではありませんが、傾向として必要派には男性医師、不必要派には女性医師が多い気がします。多分女性医師の方が自分でつけた経験があって、そのめんどくささを知っているのかもしれません。つけなくてもいいと考える医師がいるということは、無くても診療には差し支えがないのでしょうか?

B 基礎体温表のメリット
1 性周期を視覚的に把握できる
いわゆる教科書的な基礎体温表の読み方です。これについては、基礎体温表の基礎知識について解説したサイトやパンフレットがたくさんありますので、そちらを参照してください。

2 超音波の所見+αの情報として有用性が高い
実は基礎体温表が威力を発揮するのはここです。

分かり易い例で説明しましょう。性周期の経過を把握するために、経腟超音波法は非常に有用な検査ですが、万能ではありません。例えば、性周期10-12日目に排卵前のある程度大きい卵胞を期待して超音波検査をしたところ、卵胞が無かったとします。考えられることは、卵胞が育っていない、または既に排卵してしまったのどちらかです。そのような時は、まず超音波で内膜を診ます。内膜が薄い場合は卵胞が育っていない、内膜が高温相の状態になっている場合は排卵後と考えられます。しかし、症例によっては内膜を診ても判断がつかないことがあります。ここで、基礎体温表の登場です。基礎体温が低温相の場合は卵胞が育っていない、高温になってきているようなら排卵後と診断できます(まれに、排卵直後のため低温相ということもあります)。基礎体温表が無い場合は、必要に応じてホルモン検査をしましょうという話になることがあります。(もちろん基礎体温表を見ても判断がつかない時は、必要に応じてホルモン検査が追加になることはあります。)
このように、基礎体温表があると診断に役立つ情報が増えますので、診療の精度が上がります。また、状況によっては +  αの検査を省略できることもあります。

C 基礎体温表のデメリット
デメリットは、なんと言ってもつけるのが面倒くさいことでしょう。患者さんによっては、基礎体温をつけなくてはいけないという義務感のため、精神的に追い詰められてしまう方もいらっしゃいます。

D まとめ
このように基礎体温には、メリットとデメリットがあります。メリットとデメリットを秤に掛けて、メリットが大きいと考えるのであればつける選択になりますし、デメリットが大きいと考えるのであればつけない選択もありだと思います。

一般に医師は、メリットの方を重視して基礎体温をつけて下さいと話をすることが多いと思います。私も原則必要派です。しかし、患者さんによってはデメリットの方を大きく感じる方がいらっしゃいます。そのような方は、無理して基礎体温をつける必要はないと思います。その代わり、基礎体温をつけている方と比較して+αの検査が必要になってくる可能性があることを理解しておいてもらう必要があります

基礎体温表ぐらいあってもなくても、同じように診てくださいというのは無理な話です。もし同じ様に診れるとしたら、基礎体温表を毎朝頑張ってつけている方が報われない話になってしまいます。

当院では、原則基礎体温表をつけていただいていますが、無理な方は医師に申し出てください。基礎体温表をつけないというのも ひとつの治療のあり方なので、それはそれで対応していきます。

E 追加
「基礎体温表を見せてください」と声を掛けると、「今朝36.〇〇度でした」とか数字を羅列した表を提示される方がいらっしゃいます。これはあまり意味がありません。基礎体温は、検査データのように数値で正常・異常と判断するものではなく、動きを視覚的に把握するものなのでグラフになっている必要があります。最近は便利なスマホアプリもたくさんありますので、どんどん利用しましょう。紙のグラフでなくても、スマホの画面上のグラフで十分です。また、毎朝が無理な方は、飛び飛びでも構いませんので、できるだけつけましょう。

仕事と体外受精の両立

幸町IVFクリニック 院長 雀部です。


診察室にてよく遭遇する患者さんの疑問や誤解第6弾です。今回は仕事と治療の両立がテーマです。

 

「フルタイムで仕事をしているのですが、それでも体外受精できますか」という質問が最近増えています。頻度的には間違いなく3指に入ると思います。仕事をしている女性が体外受精の治療を受ける場合、どのような問題が発生するのでしょうか?問題点を整理して解決の糸口を探ってみます。


どのような問題が生じるのか

通院のため仕事を頻繁に休まなくてはいけなくなり、仕事や職場の人間関係に支障をきたすことがあります。

 

採卵のタイミングに休みが取れなかったり、必要な日に通院できなかったりすると、それが原因で治療がうまくいかないことがあります。途中で治療がキャンセルになることもあります。

 

仕事と治療の両立が難しいと言うことで治療の先延ばしをすると、どんどん歳を重ねてしまい、さらに治療に時間がかかる年齢になってしまいます。

 

これらの問題をどう折り合いをつけていくかは非常に難しい問題です。

 

一般的な対応

まず思いつく一般的な対策は、次の3つではないでしょうか

 

職場の上司に相談して通院に協力してもらう

最初に試みるべき対策はこれでしょう。最近は理解のある職場も増えてきているようです。

 

治療を先延ばしにする

治療の先延ばしは、妊娠率に影響してきます。治療する側としては、できるだけこの選択肢は避けてもらいたいものです。

 

仕事または妊娠、どちらかをあきらめる

最後の選択肢です。

 

C もう一工夫してみましょう

Bの2と3はできれば避けたい対応です。ではBの1が不発に終わった場合、もう手がないのでしょうか。もう一工夫できないでしょうか。


少し綱渡りですが、「体外受精の質が多少落ちることを覚悟の上で診察回数を減らす」という対策はどうでしょうか。

 

要するに、医師と相談して比較的重要度の低い診察を省略するという手です。ただし、診察を行わなかったために生じるデメリットについては許容してもらう必要があります。例えば、治療の経過が想定外の動きをしたときに、診察をしていれば対策が執れたのに、診察を省略したために途中で治療がキャンセルになる、などです。

 

この対策の主な目的は、治療を先延ばしにしないということです。100点満点の体外受精を目指すことができなくても、とりあえず80点の体外受精を目指して、先延ばししないで治療を受けてみようという考え方です。

 

これは、医師と患者さんの意思疎通が十分なされていないと、実現不可能な対策です。もちろん治療上の最重要ポイントを外すと治療そのものが成り立たなくなってしまいますので最低限の休みは確保する必要があります。それでは重要な診療から見ていきましょう。

 

最も重要なのが採卵日です。

当院では朝採卵をして11時前後に診察をして帰宅となります。ただし、その日の午後はご自宅で安静をとっていただきますので、ほ1日がかりの治療となります。1番困るのが、その日程が2、3日前にならないと決まらないということだと思います。しかし、採卵日は省略するわけにはいかないので、これはなんとか都合をつけて下さい。卵巣刺激開始時点で大体この辺かなというのはわかりますので担当医にご確認ください。

 

次に重要なのが採卵日を決めるための診察です

タイミングが良いと1回の診察で採卵日が決まることもありますが、通常23回診察が必要になってきます。この通院も比較的重要度が高い通院になってきます。


次に比較的重要度の低い診察を見てみましょう。

診察の重要度は患者さんごとに異なってきますので、よく検討する必要があります。例えば、月経周期が安定している方は、卵巣刺激開始日の診察を省略して、予め処方しておいた薬剤を月経2/3日目より自動的に開始するという手が使えることがあります。また、過去に卵巣刺激をやった経験があり、かつその経過が安定している方は、採卵日を決めるための診察の回数を減らすことができるかもしれません。


質の高い体外受精にこだわっていると仕事をしている女性は治療そのものができなくなってしまいます。最重要の診察はなんとかがんばって通院して、比較的重要な診察は医師と相談して調節するというスタンスの方が早く治療に取り掛かれる可能性があります。そのかわり通院を省略することによって生じるデメリットは 十分に理解しておく必要がありますし、そのデメリットが発生したときにそれを許容する心の余裕が必要です。


D まとめ

一般的な対応から一歩踏み込んで、医師と協力して診察を調節してみるという選択肢を提示しました。仕事を調節して、診察を調節して、それでも仕事と治療を両立できない場合は、残念ですがどちらかをあきらめるしかないと思います。


治療する側としては、なんとか避けてほしいのが治療の先延ばしです。治療を先延ばしして年を重ねてしまうことによって、気がついたら体外受精をやっても妊娠できない年齢になっていたというのが最悪の結末です。仕事と治療の両立について考えることは、将来の人生設計そのものです。前述のような結末にならないように、ご夫婦でよく相談してください。


当院は、働く女性のために土日も診療しております。ご夫婦だけで方向性を決められない場合は、どうぞお気軽にご相談ください。


 


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体外受精が必要かどうか、どうやって判断したらいいの?

こんにちは 院長の雀部です。 


診察室でよく遭遇する患者さんの疑問や誤解の第5弾です。今回は、体外受精の適応(体外受精をやる必要があるかないか)がテーマです。

 

当院では、体外受精をやった方がいいのかどうか判断に迷っているご夫婦の相談も受け付けています。体外受精の専門クリニックで、体外受精をやった方がいいかどうかを相談したら、体外受精を勧められるに決まっているじゃないという声が聞こえてきそうですが、そんなことはありません。私は、過剰医療が嫌いなので、必要が無い方には必要ありませんとはっきり言います。それでも、受診して相談するのは、心理的にハードルが高いですよね。そこで、自分でも大まかな目安がつけられるように、わかりやすく解説します。

 

A 明確な医学的適応があるご夫婦

1 卵管が詰まっていると指摘された方

2 子宮内膜症を指摘されたことのある方

3 抗精子抗体陽性と指摘された方

4 精子が少ない、または運動性が低いと指摘された方

これらの指摘は純粋に医学的問題なので、ご夫婦が悩む必要はありません。産婦人科医が考えて判断する問題になってきます。指摘してくれた先生に、体外受精が必要かどうかを相談してください。もし専門医の意見を聞きたいという方は、「相談希望」と連絡していただければ、相談の診察予約をお取りします。

 

B 明確な医学的適応がないご夫婦

問題となるのは、不妊検査で特に異常が見つからない(いわゆる原因不明の)ご夫婦、そしてまったく不妊検査・治療歴がないご夫婦です。体外受精に踏み切る明確なきっかけが無いので、タイミングを逃してずるずると年を重ねてしまうことになりかねません。かえってAの1~4に当てはまり、体外受精が必要と判断されたご夫婦の方が、明確なきっかけが目前にあるため、早い時期に体外受精に踏み切ることにより、最終的にいい結果が得られる可能性もでてきます。

 

このような明確な医学的適応がないご夫婦は、「奥様の年齢」を目安に判断してください。

1 奥様が40

残念ながら、一般不妊治療をやっている暇はありません。すぐに体外受精に踏み切ってください。体外受精をすぐにやったとしても、苦戦する可能性があります。

2 奥様が20代~30代前半

一般不妊治療を一定期間やって妊娠しない場合は、体外受精の適応になります。ただし、一般不妊治療をダラダラやっているとあっという間に時が過ぎていきますので、ある程度集中して、期間を区切って治療を受ける必要があります。目安としては12年一般不妊治療をやって、妊娠しない場合は体外受精に踏み切った方がいいと思います。

3 奥様が30代後半

ここに該当するご夫婦が最も注意が必要です。そして、自分で考えて、自分で動かないと、誰も何も言ってくれません。この時期の時間の使い方で、最終的な結果が大きく変わってきます。 

「一般不妊治療を一定期間(半年から1年)やって、結果が出ていない」、「抗ミューラー管ホルモン(AMH)低値を指摘された」、「FSH基礎値が高いといわれた」など、ひとつでもネガティブな条件が加わった場合は、早めに体外受精に踏み切ることを勧めます。

そのような条件が無い方は、半年~1年ほど一般不妊治療をやって妊娠しない場合は、体外受精という流れになります。ただし、絶対に避けてほしいのが、30代後半を一般不妊治療で過ごしてしまい、40歳になってから、あわてて体外受精に踏み切るというパターンです。「40歳を過ぎても体外受精をやればなんとかなるから大丈夫」という根拠のない思い込みをしている方がいますが、かなり背水の陣です。体外受精まで含めた治療で、40歳までに妊娠・分娩を終えるつもりで臨んでください。

 

 ここまで述べてきた体外受精に踏み切るタイミングは、皆様が考えていたよりかなり早いタイミングだったのではないかと思います。不妊治療は、時間との戦いです。少しでも早い時期に、精度の高い治療を受けることにより、最終的な結果が変わってきます。お金や時間を理由に治療を先延ばしにしても、年を重ねれば重ねるほど、さらにお金も時間もかかってきます。この記事を参考に、適切な時期に治療を決断してください。ご夫婦だけで判断がつかない場合は、「相談希望」と連絡していただければ、相談の診察予約をお取りします。

 


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