幸町IVFクリニック 院長と培養士のIVFこぼれ話

幸町IVFクリニックの院長と培養士の、役に立つような、立たないようなブログです。 (主に院長の文句?)

2017年12月

ビタミンD対策

幸町IVFクリニック 院長 雀部です。

今回は、前回の続きでビタミンD対策の話です。
前回の記事を読んでいただければ、ビタミン
​​
Dが妊娠しやすい身体作りに重要な可能性があるということがわかっていただけたと思います。

A  現状を知る
ビタミンDが足りているかどうかを知るためには、血液で
​25-OH​ビタミンDという項目
を調べます。

                25-OH​ビタミンD​
​(ng/mL)​
                   ​
30以上        足りてます
                   20〜29       不足
                   20未満        欠乏

この基準
​の是非​
​ついて​
はまだ議論の余地がありますが、ひろ
​く​
用いられてい
​る基準です
。当院
​では、​
体外受精を受ける予定の患者さん全員にこの検査をやっていますが、 30以上の方は
​ごくごく少数で、ほぼ​
全滅状態です。
​妊娠を予定している女性は、30以上が望ましいといわれています。

B ビタミンDを増やす
1)日光に当たる
 ビタミンDは日光に当たることによって皮膚で合成されます。実はこれが1番効果的な方法です。
​ただし、紫外線を浴びすぎると別の弊害も生じますので、ほどほどに。​

2)サプリで摂る
 当院では、20未満の方は全員
​に​
、20
​~​
29の方は希望者に
​、​
サプリを出してます。マルチビタミンで、ちょっと摂るくらいでは全然足りません。マルチビタミンを摂っている方は、どのぐらいのビタミンDが入っているかを確認してください。
当院では1日
​25μg(
1000単位
​)
を継続的に服用してもらっています。
​ちなみに、​
ビタミンD
​の成人の上限量は、​
1日
​50μg(
2,000単位
​)と設定されています

3)食事で摂る
キノコ
​や​
​の多く含まれています​。干ししいたけ、カツオ、サケ、サバ、うなぎなどを摂りましょう。
脂溶性ビタミンなので、水洗いなどで失われる心配はありません
​加熱調理による影響も少ない栄養素です。​


同じように体外受精をやったとしても、体質改善に取り組んでいる方とそうでない方では、長期的な結果が全く違ってきます。一つ一つは地味な事でも、コツコツと取り組んでいくことにより結果につながってきますので頑張ってください。



食事で摂った方がいいものありますか?

幸町IVFクリニック 院長 雀部です。

診察室でよく遭遇する患者さんの疑問や誤解第10弾です。「何か食事で
​摂った方
がいいものってありますか?」という質問を受けることがよくあります。多分、体外受精の技術に頼り切らずに、自分でも体質改善を頑張ろうという方だと思います。

食事の基本は、「カロリーは控えめ、栄養素はバランスよく」です。不足しがちな栄養素としてポピュラーな
​の​
​、​
葉酸、鉄、亜鉛
​ですね。
比較的皆さんがご存じない
​​
​、不足しがちな栄養素として
ビタミンD
​があります​
今回はビタミンDに関する論文を1つ紹介します。

​ビタミンDといえば、骨代謝に関する働きが有名ですね。​最近、生殖にもビタミンDが関与している可能性が指摘されており、ビタミンD欠乏は子癇前症や胎児発育不全などの産科合併症だけでなく着床異常のリスクを上昇させることが知られています。

ビタミンDと体外受精の成績の関連性を検証する研究が始まったのはごく最近で、賛成派(関係ある)と反対派(関係ない)の論文が乱立している状態が、現在も続いています。そのような状況に対して、メタ解析という方法で一定の小活をしようというのが、この論文です。
11の論文(計2700人分のデータ)に対してメタ解析を行い、体外受精の成績にビタミンDが影響を及ぼすかどうかを検証しています。
7の論文(計2026人分のデータ)が生児獲得率について検証していて、ビタミンDが足りている女性の方が、欠乏または不足状態にある女性よりも生児獲得率が高い可能性
あります
(オッズ比
 1.33
​、​
95%信頼区間 1.08-1.65
​、有意差有り​
​。​
5の論文(計1700人分のデータ)が妊娠反応陽性率について検証していて、ビタミンDが足りている女性の方が、欠乏または不足状態にある女性よりも妊娠反応陽性率が高い可能性
​があります​
 (オッズ比 1.34
​、​
95%信頼区間1.04-1.73
​、有意差有り​
)

11の論文(計
​700​
人分のデータ)
全てが臨床的妊娠率について検証していて、ビタミンDが
​足り​
ている女性の方が、欠乏または不足状態にある女性よりも臨床的妊娠率が高い可能性
​があります​
ッズ比 1.46
​、​
95%信頼区間1.05-2.02
​、有意差有り​
)があります。

6の論文(計1635人分のデータ)が流産率について検証していて、ビタミンDと流産率には関連性がない
​可能性があります​
(オッズ比1.12
​、​
95%信頼区間 0.81-1.54
​、有意差無し​
)

※オッズ比の95%信頼区間が、1をまたぐと「有意差無し」、1をまたいでなければ「有意差有り」です。

このように、ビタミンDが足りている女性の方が、欠乏または不足している女性よりも体外受精
​の成績が良いという結果で
した。
どうやらビタミンD、重要そうですね。

当院では、4年前より
​体外受精実施前に​
全例ビタミンDの検査を行い、欠乏状態の方に対策をとっています。具体的なビタミンD対策は、次回に続きます。


 


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障害のある子が生まれてきませんか?続き

幸町IVFクリニック院長 雀部です。

今回も体外受精の安全性の話の続きです。

【関連記事】

障害のある子が生まれてきませんか?

権威ある臨床系医学誌として知られているThe New England Journal of Medicine の論文を紹介します。

Davies, M. J., et al. (2012). "Reproductive technologies and the risk of birth defects." N Engl J Med 366(19): 1803-1813.

この論文は、南オーストラリアにおいて出産した児(少なくとも妊娠20
​週​
以上、または児の体重400g以上)を、生殖補助医療による妊娠の集団と自然妊娠の集団に分けて、先天異常(脳性麻痺、胎児異常を理由に妊娠中絶した症例を含む)の発生率を比較したものです。

308,974出産の内、6163出産が生殖補助医療後でした。先天異常の発生率は、生殖補助医療後8.3%、自然妊娠後5.8%、オッズ比1.47 (95%信頼区間 1.33 to 1.62、有意差有り)、統計学的手法で2つの集団の患者背景を揃えてもオッズ比1.28 (95%信頼区間 1.16 to 1.41、有意差有り)でした。技術別に先天異常の発生率をみますと、体外受精7.2%、オッズ比1.26 (95%信頼区間 1.07 to 1.48、有意差有り) 、患者背景を揃えると1.07 (95%信頼区間  0.90 to 1.26、有意差無し)、顕微授精9.9%、オッズ比1.77 (95% 信頼区間 1.47 to 2.12、有意差有り) 、患者背景を揃えると1.57 (95%信頼区間 1.30 to 1.90、有意差有り)でした。

※オッズ比の95%信頼区間が、1をまたぐと「有意差無し」、1をまたいでなければ「有意差有り」です。

「顕微授精危ないじゃん!」と早ガッテンしないでください。この研究は、後方視的研究のためデータの信頼性が低いのです。「ここまで話を引っぱっといて、データの信頼性が低いとはどういうこと?」と怒らないで、もう少しお付き合いください。

一般に、研究方法には後方視的研究と前方視的研究があり、前方視的研究の方がデータの信頼性が高くなります。特に、前方視的研究の中でもランダム化
​比較​
試験という方法で
​出
されたデータの信頼性が
(バイアスを
​​
排除できるため)
最も高い
​​
と言われています。最近、
The New England Journal of Medicineのような一流誌は、ランダム化
​比較​
試験による研究でないと掲載されない傾向にあります。では、なぜこの研究は
​、​
後方視的研究にかかわらず掲載されたのでしょうか?

それは、体外受精
​・顕微授精​
の技術自体が先天異常を増やすかどうかを検証する研究
で、ランダム化
​比較​
試験を行うのが非常に困難だからです。
​なぜ困難なのか?​
その理由①、今回紹介した論文が示すように、たくさんの症例を集めてやっと
​有意​
差が出るテーマのため、
​大​
規模なランダム化
​比較​
試験を行
​う必要があります。そのためには、たくさんの人員と予算が必要です​
。その理由②、患者背景によるバイアスを完全に除くためには
、自然妊娠することが証明されているご夫婦(例えば、自然妊娠
​・​
出産後2年以内
​かつ奥様が35才未満​
のご夫婦)を集めて、次の妊娠する際に、このご夫婦は自然妊娠、あのご夫婦は体外受精、とランダムに割り当ててその結果を見る必要があります。そうすると、自然に妊娠することがわかっているご夫婦に体外受精を行うという倫理的な問題が発生します。

​このように​ランダム化比較試験の実現が難しいテーマに関しては、後方視的研究でも大規模なものであれば一流誌に掲載されることになります。しかし、いくら一流誌に掲載されたとしても、結局は後方視的研究ということで、もし適切な設計のランダム化比較試験を行ったら、有意差は無くなってしまうのではという疑念が常につきまとうことになるのです。

このような状況下で、我々はどのように対応したらいいのでしょうか?
後方視的研究なので、結論にはなり得ませんが、参考データとして尊重はする必要があります。最近、受精しないとイヤだからという理由で、適応のない顕微授精が気軽に行われる傾向にあります。顕微授精の適応は、
「男性因子」、
「受精障害」、「抗精子抗体陽性」のみです。
前回の記事でも書いたように、技術の運用に際しては、「必要最小限の治療に留める」、「目先の妊娠率に惹かれて過剰医療を行わない」など、慎重な姿勢が必要です。
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