幸町IVFクリニック 院長と培養士のIVFこぼれ話

幸町IVFクリニックの院長と培養士の、役に立つような、立たないようなブログです。 (主に院長の文句?)

2018年01月

ERA検査 (子宮内膜着床能検査)

幸町IVFクリニック 院長 雀部です。

今回は、ERA検査(endometrial receptivity analysis)という子宮内膜着床能検査の話です。

「ERA検査って何?」という方のために、内容を説明しておきます。

「着床ウ
​ィ​
ンドウ」ってご存知ですか? 子
​​
宮内膜に、ある一定の時期だけ着床のための窓が開き、タイミングよく受精卵が来るとスムーズに着床するという概念です。逆に、窓が閉じているときに、受精卵が来ても着床することができません。もちろん概念的なものなので、実際に子宮内膜に窓が開くわけではありません。

子宮内膜の日齢を診る検査として、「子宮内膜日付診」という検査があります。黄体中期(基礎体温の高温相の真ん中あたり)に、子宮内膜の組織を採取して顕微鏡で細胞などの形態を診て、子宮内膜の日齢を推定するという検査です。しかし、胚移植のタイミングのズレを判断する検査としては精度が低く、あまり役に立ちませんでした。着床ウ
​ィ​
ンドウと
​いう​
のは
​、​
細胞などの形態を
​診て​
​捉えるの​
​​
難しいようです。

ERA検査とは? 
新しいERA検査は、子宮内膜の組織を採取するところまでは同じなのですが、細胞などの形態を顕微鏡で見るのではなく、細胞の遺伝子が働いているかどうかを診ます。細胞はたくさんの遺伝子を持っていますが、すべての遺伝子が働いているわけではありません。細胞の種類や状態によって、働いている遺伝子と休んでいる遺伝子が違います。この検査では、子宮内膜の細胞が持っている遺伝子のうち、着床の時期に働いていると考えられる遺伝子236個について調べ、子宮内膜が受け入れ状態(受容期)になっているかどうかを診断します。

​検査の​
方法
まず、凍結融解胚移植を行うときと同じ方法で子宮内膜を作ります。子宮内膜を作る方法には、排卵周期とホルモン補充周期というやり方があり、どちらでも実施できます。ただし、ホルモン補充周期の方が子宮内膜の日齢の調節性に優れているため、こちらを用いることが多いと思います。まず、エストロゲンを投与して子宮内膜を十分に厚くします。次にエストロゲンとプロゲステロンを投与します。プロゲステロンの投与開始日を日齢0として、5日目に子宮内膜の組織採取を行います。採取した組織は専用の容器に入れて検査に提出します。
プロゲステロン投与開始
​から​
何時間後に組織を採取したかを計算して
​、​
そのデータもいっしょに
提出します。

結果の読み方
結果が出るのに2〜3週間かかります。「受容期です」と戻ってきた場合には
​、​
胚移植のタイミングは合っていますので特にやり方を変える必要はありません。 受容期
​から
はずれてる場合は、前にずれているのか後にずれているのか、どのぐらいずれているのかを教えてくれます。例えば、「受容期よりも前なので6時間遅く胚移植を行ってください」など具体的に指示が
​戻って​
きます。その指示通りに時間また日をずらして、次の胚移植を行います。このように時間単位で調節をすることになった場合、ホルモン補充周期だと簡単かつ正確に調節が可能です。また、2日以上ずれた場合は、2日ずらしたした状態で再検査が必要になってきます。

高額な検査なので、全員に行うわけにはいきませんが、良好胚を2回以上移植して着床しない方は検査してみたほうがいいと思います。検査会社のデータによると、検査された方のうち
​28.6%​
の方
​が受容期をはずれていた​
そうです。ご希望の方は、担当医またはスタッフにお声掛けください。

他力本願

幸町
​​
IVFクリニック院長雀部です。

食事や栄養素の話が続いたところで、妊娠しやすい身体
​づくり​
の重要性について話をしておきます。

​まず、​
問題を1つ。

奥様の年齢
​など背景​
条件
​がほとんど​
同じご夫婦
​に対して​
​同じやり方で​
体外受精をやったとします。その結果、
すぐ妊娠するご夫婦と
​、​繰り返し体外受精をやらないと
妊娠しないご夫婦がいます。その差は何
​だと思いますか​
? 

運でしょうか? 
私は、体質の差
​だ
と思
​っています​

ではその体質
​の差​
とは何でしょう? 

 一般に、西洋医学では、検査で異常値または異常所見を示した時、多くの場合
​で​
それは疾患を意味し、治療の対象になってきます。逆に、正常範囲に入っている
​時​
は治療の対象となりません。ところが、正常範囲には幅があり、治療の対象とならない正常範囲の方でも、いろんな状態の方がいらっしゃいます。ある検査項目に注目してみても、全く正常の方と異常に近い正常の方がいらっしゃ
​います​
。このような、疾患として扱われない範囲内での身体の状態の差が、体質の差となってきます。

身体の状態が不健康な方向に向かうと、まず影響を受けるのが生殖です。
生物は、個体が健康だと身体のメンテナンスに費やすエネルギーが最小限で済み、生殖の方にエネルギーを振り向けることができます。ところが、個体の健康状態が悪化すると、生殖に振り向けるべきエネルギーが削られて、身体のメンテナンスの方に振り向けられてしまいます。なぜなら、生物にとって、個体の維持の方が、生殖より優先順位が高いからです。よって、少しでも身体が不健康な方向へ傾くと、真っ先に生殖の力が落ちることになるわけです。

このように生殖の力が落ちている状態で体外受精をやると、採卵しても卵子が回収できなかったり、卵子が回収できても変性卵だったり、異常受精したり、胚発育が不調だったり、胚移植しても着床しなかったりなど、
いろいろな段階で引っかかることになります。​

「そこを、技術の力でなんとかできないんですか?」と、
よく患者さんから聞かれます。

そもそも体外受精と言うのは、生殖補助医療と言われる通り、妊娠を補助
​する技術​
です。
​妊娠のいろいろな過程をショートカットすることはできますが、配偶子(
精子または卵子
​)
自体に妊娠する力が
​ない
​、​
体外受精の技術でなんとかするのは
​難しくなってきます​

では、どうすればいいのか? もう、答えはお分かりですね! 落ちている生殖の力を元に戻すしかありません。​生殖の力を取り戻すためには、生殖にエネルギーを振り向けられるように、身体を健康に持っていくところから始めなくてはなりません。


ところで、診察室ではいろんなタイプの患者さんに会います。よく見かけるパターンを見てみましょう。

1 今まで一般不妊治療をやってる間は
​生活習慣の​
改善などに取り組んでいたのに、体外受精をやることが決まった途端投げ出してしまう方
「高いお金を払って体外受精をやることになったのだから、もう自分で努力をする必要はない。体外受精の技術が何とかしてくれるだろう
​。​
」と心のどこかで思っている
​方です​

​医師や看護師に
言われていろいろ始めてみるのだけども、すぐに投げ出してしまう
​身体​づくり
の重要性を、頭でわかっていても
実感​
できていないので、
​ちょっとしたことで​
すぐ投げ出してしまう方です。

3 そもそも妊娠しやすい
​身体づくり​
が重要であるという発想が全くない
​、
またはそういうものを馬鹿にしている方

ひょっとして、当てはまっている方いませんか? 共通しているのは、自分の力で妊娠するんだという意識が薄く、他力本願状態になっていることです。

体外受精の技術を用いたとしても、技術の力で妊娠させてもらうのではなく、技術の助けを借りてあなた自身の力で妊娠するしかありません。もし仮に
、身体の状態があまり良くない状態で、なんとか
体外受精の技術力で
​のりきっ​
たとしても、
妊娠した後に
妊娠性高血圧症
​、妊娠性糖尿病​
などの母体合併症
​が待っている可能性もあります
​​体外受精をやることになったとしても、妊娠するのは自分であるということを意識して、身体づくりに取り組んでください。



葉酸対策

​​
幸町IVFクリニック 院長 雀部です。

前回、血中葉酸値とビタミンB12値が高い方は体外受精の成績が良好という論文を紹介しました。今回は具体的な葉酸対策の話をします。

A サプリ
​で摂る​
葉酸は、サプリで摂るのが手っ取り早いです。厚労省は、1日
​​
0.4
mg(
​4​
00μg)​の摂取を勧めています。当院でも初診
​の段階で、​
妊娠を希望されている方全員に、葉酸のサプリを
​摂る​
ように勧めています。

妊娠すると葉酸の需要が増えるので、1日0.8
​mg(800μg)​
程度はとったほうがいいと
​いう​
主張もあります。私もこれに賛成で、葉酸は少し多めに
​摂る​
ように勧めています。ただし、医師の管理下で摂取する場合を除いて、1日1
​​mg(1000μg)
を超えないように気をつけてください。

前回の論文でも紹介したように、葉酸は、ビタミンB12をはじめとした他のビタミンと協力し
​合って​
働きます。できればマルチビタミンで摂るのが望ましいです。当院でも
​アメリカから並行輸入した
マルチビタミン/ミネラルサプリを準備して、必要な方にお勧めしています。
​鉄は入っていませんが、亜鉛対策にもなります。​
ただし、妊娠がわかったらマルチビタミンは中止し、妊婦さん
​でも服用できる​
葉酸​
サプリに変更
​してもらっています​
。なぜなら、ビタミンA
​は​
妊娠中に過剰摂取すると胎児奇形につながる
​ため、妊婦さんがサプリで積極的に​
ビタミンAを
摂ることはお勧めできないからです

​なぜ、わざわざアメリカからサプリを並行輸入しているのでしょうか?「海外ブランドのサプリを揃えておいた方が、かっこいいから」、ではありません。ちゃんと理由があります。

日本のサプリの問題点
​に​
少し
​触れておきましょう
​サプリは、販売ルートによって市販サプリと医家(医療機関)向けサプリに​分けることができます。一般に、
市販サプリ
​は​
安全性
​(健康被害がでないこと)​
と価格
​抑制​
が重視され
​て​
いて、
​〇〇成分含有と謳ってはいても、健康被害がでないように成分
用量を抑えたり
、価格抑制のために安い原材料を使用したりする傾向にあります
。よって、健康増進のために飲む分には構わないのですが、不妊治療のように成果を求めて体質改善をする目的には、まったく不十分な内容のものがほとんどです。

一方、医家向けサプリは、医者の信用力を利用して売ろうする戦略ですので、
高価格帯の商品が多くなります。その分、質のよい原材料を十分な用量入れた、内容的に充実したものが多い傾向にあります。サプリの成分によっては、有名なブランドの原材料があります。医家向けサプリの中には、そのようなブランドものの原材料を使用しているものもあるのですが、その分価格は高くなります。でも、それにしても価格が
​​
高い! 
​どう考えても
高い!
​ 
このように、日本国内では内容と価格のバランスが取れたサプリを見つけることができず、結局辿り着いたのがアメリカのサプリだったというわけです。

さすが、サプリ先進国アメリカ! 我々から見て、「こんなに入れて大丈夫なの?」と心配になるぐらいの用量が入っています。ちなみに、前述の当院で準備しているマルチビタミン/ミネラルは、メーカー推奨の服用量1日6カプセルなのですが、我々日本人には多すぎるため、当院の患者さんには1日3カプセルで飲んでもらっています。しかも、内容が充実している割に価格が安い! 関税を払っても安い! ということで、当院では、アメリカから輸入したサプリが揃う結果となっています。

​B 食事で摂る
レバーや緑の葉野菜などに多く含まれています。ただし、食事からの摂取は、効率があまりよくありません。食事からの吸収率は50%程度、サプリからの吸収率は85%程度とされています。それに加えて、水溶性のため調理によって損失し易い栄養素です。葉酸に関しては、サプリは必須のようです。

途中かなり脱線してしまいましたが、以上が葉酸対策です。体質改善の参考にしてください。

 


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食事で摂った方がいいものありますか?その2

明けましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いいたします。

幸町IVFクリニック 院長 雀部です。

今回は「食事で摂った方がいいものありますか?」の第二弾です。第一弾では、
不足しがちな栄養素
​としてあまり知られていない
ビタミン​
Dを紹介しました。第二弾は、不足しがちな栄養素の中では最もポピュラーな葉酸の話です。

葉酸と言えば、
​​
児の神経管
​閉鎖障害​
との関連が有名ですね。厚生労働省は、
児の神経管
​閉鎖障害​
を予防するために、妊娠を予定している女性は毎日0.4ミリグラムの葉酸サプリメントを妊娠前から
​摂る​
ことを推奨しています。

葉酸の効果は、児の神経
​管閉鎖障害​
の予防だけではありません。体外受精の成績にも影響を及ぼしてるようです。血中の葉酸値と体外受精の成績の関係を検証した論文を1つ紹介します。


​この
The American Journal of Clinical Nutrition(
​​
Am J Clin Nutr)というジャーナルは、PubMedにおいてCore Clinical Journalsに指定されている一流誌です。

論文の目的は、血中の葉酸値、ビタミンB12値と体外受精の成績の関連性について検討することです(いきなりビタミンB12が出てきましたが、葉酸とビタミンB12はお互い協力し合って働きます。葉酸が十分に足りていても、ビタミンB12が不足していると葉酸はその効果を発揮できません)

ランダムに抽出した100人の女性に対して行った154サイクルの体外受精について前方視的に解析しています(前方視的研究は後方視的研究に比べて信頼性が高くなります)。血中の葉酸とビタミンB12
​は、​
治療周期の3日目から9日目の間に測定しています。
その結果、​
治療開始時点での葉酸とビタミンB12
​が​
両方とも中央値以上の女性は
​、​
両方とも中央値以下の女性と比べて生
児獲得率が1.92倍
​(有意差有り)
​した​

葉酸とビタミンB12
​が両方とも高い女性は、体外受精の成績が良好なようです。

体外受精の治療を受けている方は、どうしても体外受精の技術的な面に目が行きがちです。しかし、どんなに良い治療を受けたとしても、妊娠の土台である身体作りができていないと、なかなかその成果が現れません。体外受精の治療効果を最大限にするためにも、妊娠しやすい身体作りをがんばりましょう。
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