幸町IVFクリニック 院長と培養士のIVFこぼれ話

幸町IVFクリニックの院長と培養士の、役に立つような、立たないようなブログです。 (主に院長の文句?)

2018年05月

ネットより運動

幸町IVFクリニック院長 雀部です。

これまで、食事、睡眠を取り上げてきましたが、運動も忘れてはいけません。今回は、運動の話をしましょう。

早速、今年4月に発表されたばかりの論文を紹介します。

Russo, L. M., et al. (2018). "A prospective study of physical activity and fecundability in women with a history of pregnancy loss." Hum Reprod.


流産歴1-2回、年齢18-40歳の健康な女性1214人を対象とした研究です。(妊娠と生殖における低用量アスピリンの効果を検証する研究のセカンドの研究として実施されたため、流産歴1-2回の女性が対象となっています。)この研究の参加者には、過去1週間の運動状況の自己申告後に、6性周期に渡り、妊娠を試みてもらいます。そして、運動状況と妊娠しやすさの関連について検討しました。

その結果、BMI25以上の女性は、ウォーキング(1回10分以上、中央値 週3時間)をやるだけでも、妊娠しやすくなることがわかりました。また、週4時間以上、激しい運動をする女性は、まったく激しい運動をしない女性と比べて、妊娠しやすいことがわかりました。

ある生殖医療専門医の先生が、「不妊治療中の患者さんは、ネット中毒の方が非常に多い。ネットを見ている暇があったら、外に出て運動した方が、よっぽど妊娠への近道なのに・・・」とおっしゃっていました。私も同感です。

「何か妊娠に結びつくいい情報がないかな」と、ネットをやっていると、あっという間に30分、1時間経ってしまいます。何時間もかけて探しても、ろくな情報が転がっていません。情報収集はわれわれ専門家に任せて、外に出ましょう。その方が、精神衛生上もいいですし、内分泌環境も変わってきます。

ウォーキング程度の運動で結構です(逆に、今まで運動してこなかった方は、いきなり激しい運動はしないで下さい)。週に3時間以上を目安に運動してください。気持ちも前向きになれますよ。




レスキューICSI

幸町IVFクリニック院長 雀部です。

今回は、レスキューICSIの話題です。

「レスキューICSIって何?」という方のために少し説明しておきます。

通常の体外受精(媒精)を行った場合、受精の確認を採卵日の翌日朝に行います。この段階で未受精だと、卵子はそのまま廃棄になってしまいます。ところが、この廃棄になってしまう卵子の中には、顕微授精をやれば救える卵子が含まれています。そのような卵子を救う顕微授精ということで、レスキューICSIという技術が考案されました。

一昔前のレスキューICSIは、採卵日の翌日朝の受精確認の際に、未受精だった卵子に対して行っていました。しかし、このやり方だと受精率も妊娠率も悪く、とても臨床で使えるレベルの技術ではありませんでした。

近年行われているレスキューICSIは、採卵当日に行います。そうすると、受精率、妊娠率が大きく改善します。当院でも、大活躍の技術です。この技術が使えれば、受精しないとイヤだからという理由で、適応の無い顕微授精をやる必要がなくなってきます。

このレスキューICSIの成績をまとめた論文を紹介します。

Huang, B., et al. (2015). "Neonatal outcomes after early rescue intracytoplasmic sperm injection: an analysis of a 5-year period." Fertil Steril 103(6): 1432-1437 e1431.

13,232周期を対象とした後ろ向き研究です。内訳は、体外受精9,631例、顕微授精2,871例、レスキューICSI 730例です。それぞれの妊娠率(胚移植当たり)は、体外受精45.33%、顕微授精44.39%、レスキューICSI 43.42%でした。生産率は、体外受精36.40%、顕微授精37.91%、レスキューICSI 33.67%でした。多胎妊娠率、分娩方法、平均妊娠期間、早産率、平均出生時体重、先天性異常率についても、レスキューICSIは、体外受精、顕微授精と比較して同等の結果でした。

結論として、レスキューICSIは、体外受精や顕微授精と比較して、同等の妊娠率、生産率が得られ、安全性についても同等の技術であると述べています。

このように、採卵当日に行うレスキューICSIは、成績も安全性も問題の無い、臨床レベルで使える技術です。この技術があれば、受精しないとイヤだからという理由だけで、最初から顕微授精をやる必要はありません。媒精を行い、未受精だったらレスキューすればいいのです。皆さんもこの技術を使って、必要最小限の治療で妊娠を目指しましょう。

最後にひと言
適応のない顕微授精は、過剰医療です。

【関連記事】
体外受精から顕微授精へステップアップ???




果物とファストフード

幸町IVFクリニック院長 雀部です。

今回は、食生活と妊娠のしやすさについてです。不妊クリニックで食生活など生活習慣に注意するように言われても、何をどうすればいいのかわからない方が多いと思います。その答えとまではいきませんが、参考になる論文が発表されています。今月発表されたばかりの最新の論文です。

Grieger, J. A., et al. (2018). "Pre-pregnancy fast food and fruit intake is associated with time to pregnancy." Hum Reprod.
5598人の女性を対象とした研究です。内訳は、何らかの不妊治療を受けた方340人、受けていない方5258人です。妊娠14-16週の診察時に、後方視的にデータを収集しています。

その結果、果物の摂取頻度の低い方、ファストフードの摂取頻度の高い方は、妊娠までに時間がかかり、妊娠までに12ヶ月以上を要する方の割合が増える傾向にありました。果物とファストフードそれぞれの最も頻度の高い群と最も低い群の比較では、妊娠までに要した時間は0.6-0.9ヶ月程度、妊娠までに12ヶ月以上要した方の割合は4-8%程度の差がありました。緑色葉野菜と魚は、妊娠までに要した時間、妊娠までに12ヶ月以上を要する方の割合に影響しませんでした。

妊娠を目指す方は、果物をよく摂り、ファストフードをなるべく避けた方がいいようです。

この論文のように、妊活における生活習慣の見直しや妊娠しやすい身体づくりの重要性をテーマとする論文が近年ものすごく増えており、毎月のように発表されています。それに伴い、医療側の意識も変わってきていますし、患者さんの理解も進んできています。

10年前に、患者さんに生活習慣の改善の必要性や妊娠しやすい身体づくりの重要性を説いても、一部の患者さんを除いてほとんど聞き流されていた状況とは、隔世の感があります。今や、不妊治療と並行して体質改善に取り組むのは、当たり前のことになってきました。

これは、体外受精の治療を受けている患者さんにも当然当てはまりますし、むしろ体外受精をやることになったからこそ体質改善にいっそう力を入れる必要があると思います。

当院は、ただ体外受精をやるだけではなく、妊娠しやすい身体づくりもいっしょに指導していく方針で、日々の診療に取り組んでいます。また、診療だけに留まらず、このブログでも役に立つ情報をなるべくわかりやすく発信していきますので、ぜひまた読みに来て下さい。





イノシトールで卵の質改善

幸町IVFクリニック院長 雀部です。

早速ですが、「イノシトール」というサプリ、聞いたことありますか?あまりなじみの無いサプリかも知れませんが、不妊治療にとっても役立つのです。

イノシトールとは、ブドウ糖から生合成される糖アルコールの一種です。かつては、ビタミンB群に属すると考えられてきましたが、研究が進むにつれてビタミンの定義を満たしていないことがわかり、現在ではビタミン様物質として扱われています。9つの異性体が存在し、その内の1つであるミオイノシトールをイノシトールと呼ぶのが一般的です。白色の粉末で、すっきりとした甘みがあります。

脂肪肝や高脂血症など、生活習慣病の予防に効果があると言われています。不妊治療のおいては、多囊胞性卵巣症候群(PCOS)に有効である可能性があります。

このイノシトールの不妊治療における効果を検証した論文を紹介します。
Zheng, X., et al. (2017). "Inositol supplement improves clinical pregnancy rate in infertile women undergoing ovulation induction for ICSI or IVF-ET." Medicine (Baltimore) 96(49): e8842.

7つの研究をメタアナリシスという方法でまとめて解析した論文です。体外受精・顕微授精の治療を受けている935人の女性が対象です。イノシトールの投与により、統計的に有意な妊娠率の向上、流産率の低下が認められました。また、グレード1の良好胚率、未熟・変性卵率、排卵誘発剤の総量にも改善がみられました。

結論として、ミオイノシトールの投与により体外受精・顕微授精の臨床妊娠率を改善できると述べています。また、胚の質改善、不適切な卵子(未熟卵や変性卵)の減少、排卵誘発剤総量の減少にも有効である可能性を示唆しています。

当院でも導入して使っています。ご希望の方は、診察室にてご相談ください。



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