幸町IVFクリニック 院長と培養士のIVFこぼれ話

幸町IVFクリニックの院長と培養士の、役に立つような、立たないようなブログです。 (主に院長の文句?)

2019年06月

お酒好きの女性に朗報!

幸町IVFクリニック院長 雀部です。
IVF
幸町IVFクリニック


今日は、飲酒と治療の成績の話です。

不妊治療中の女性は、「タバコはダメです」、「運動をしましょう」、「カロリーは控えめに」などなど、あれもダメ、これもダメとうるさく言われることが多いのではないでしょうか。「そんな仙人みたいな暮らししてらんないよ」と、つい飲み過ぎてしまうアルコール好きな方いらっしゃいませんか?

そんなアルコール好きな女性に朗報です。

今月発表されたばかりの論文を紹介します。
Lyngso, J., et al. (2019). "Low-to-moderate alcohol consumption and success in fertility treatment: a Danish cohort study." Hum Reprod.

2010年1月~2015年8月、デンマークで行われた研究です。

1708組のご夫婦(またはカップル)が行った1511周期の人工授精、2870周期の体外受精または顕微授精、1355周期の凍結融解胚移植の治療成績とアルコール消費量と関連を調べました。

治療開始前に質問票にて1週間のアルコール摂取状況を調べました。1杯をアルコール12gと規定して、週0杯の女性(禁酒家)、週1-2杯飲む女性(低消費)、週3-7杯飲む女性(中等消費)、週7杯より多く飲む女性(高消費)に分けました。

人工授精周期における生児獲得率を、アルコールを摂取しない女性と比較した修正リスク比は、週1-2杯飲む女性1.00 (95%信頼区間0.66; 1.53)、週3-7杯飲む女性1.20 (0.76; 1.91)、週7杯より多い女性1.48 (0.56; 3.93)で、有意差はありませんでした。

体外受精または顕微授精における生児獲得率を、アルコールを摂取しない女性と比較した修正リスク比は、週1-2杯飲む女性1.00 (95%信頼区間0.83; 1.21)、週3-7杯飲む女性0.95 (0.75; 1.20)、週7杯より多い女性0.89 (0.53; 1.51)で、有意差はありませんでした。

最初の治療(人工授精、体外受精または顕微授精)前の1ヶ月間に、羽目を外して飲み過ぎた回数と生児獲得率には、関連はありませんでした。

結論は、
「低~中等量のアルコール消費、羽目を外して飲み過ぎたエピソードは、人工授精、体外受精または顕微授精の臨床妊娠率、生児獲得率に影響しない。」
でした。

よかったですね。アルコールは少しぐらいなら治療成績に影響しないみたいです。根を詰めすぎている方、たまにはアルコールで息抜きをしましょう。ただし、飲み過ぎにはご注意を!



体外受精児の知的障害リスク

幸町IVFクリニック院長 雀部です。
IVF
幸町IVFクリニック


生殖医学の世界は日進月歩です。新しい知見が続々と論文発表されています。それら新しい知見に常にアクセスして、日々の診療に取り入れていくのも我々の重要な仕事のひとつです。

このブログでは、私が普段読んでいる論文の中から、妊娠を希望されているご夫婦が興味を持てそうな話題、またはぜひ知っておいてもらいたい知見などを、私の独断と偏見で選んで紹介しています。正確を期するため具体的なデータを載せていますが、苦手な方は飛ばして読んで下さい。

今日は体外受精児の知的障害リスクの話です。知的障害とは、18歳までに起きた知的発達の遅れにより、社会生活に適応する能力に制限がある状態です。その知的障害と体外受精などの生殖医療との関連を調べた論文を紹介します。

Hansen, M., et al. (2018). "Intellectual Disability in Children Conceived Using Assisted Reproductive Technology." Pediatrics 142(6).

西オーストラリアで実施された研究です。

1994年~2002年の間に生まれた子供のうち、少なくとも8年間の追跡調査を行った210,627人が対象です。知的障害の発症率を、生殖補助医療による子供と生殖補助医療以外の方法による子供の間で比較しました。

その結果、生殖補助医療による子供は、生殖補助医療以外の方法による子供と比較して、知的障害のリスクがわずかに増えることがわかりました(リスク比1.58、95%信頼区間1.19-2.11)。単胎児に制限しても、同様の結果でした(リスク比1.56、95%信頼区間1.10-2.21)。

統計的に推定した知的障害のリスクは、非常に早い時期の早産(一般には32週未満)、重症の知的障害、顕微授精において2倍以上でした。

顕微授精の症例において、体外受精の症例と比較して、大きく知的障害のリスクが増加し、知的障害の原因となる既知の遺伝的素因を持っている傾向にありました(27.9%、体外受精12.9%、生殖補助医療以外11.9%)。

多くの国において、早産につながる複数胚移植が日常的に行われていること、顕微授精の適応率が高いことに対して警鐘を鳴らす結論でした。

ここまで読んで、「生殖補助医療をやると知的障害のリスクが上がる」と早とちりしないようにして下さい。

生殖補助医療を受けるご夫婦の集団と受けない集団では、集団の性質が異なります。そして、年齢・妊娠歴などの背景条件を揃えたとしても、完全に集団の性質の差を取り除いたことにはなりません。つまり、この研究で認められた有意差は、「集団の性質の差に起因する可能性」と「技術自体に起因する可能性」の両方を考える必要があり、どちらかは結論が出ていない状態です。

純粋に「技術自体に起因する可能性」について検討したければ、同一の背景を持つ集団をランダムに2群に振り分けて、生殖補助医療を行って妊娠するグループと生殖補助医療以外の方法で妊娠するグループで比較するしかありませんが、現実にはほぼ実現不可能に近い研究になってしまいます。

「技術自体に起因する可能性」が否定できていない状況下で、我々はどのように対応すればいいのか?現実的な対応として、

①目先の妊娠率に惹かれて、複数胚移植を行わない
②受精しないと不安だからというだけで、適応のない顕微授精をやらない


この2点はぜひとも心掛けていただきたいと思います。


体重に注意!=卵の発育に影響

幸町IVFクリニック院長 雀部です。
IVF
幸町IVFクリニック


今日は、奥様の体重の話です。

体重を適性に維持するためには、生活習慣の改善が欠かせません。しかし、わかってはいてもなかなか改善できないのが生活習慣です。そこで、具体的なデータで過体重(または低体重)の弊害を実感して、モチベーションをアップしましょう。今年の5月に発表されたばかりの論文を紹介します。

Bartolacci, A., et al. (2019). "Maternal body mass index affects embryo morphokinetics: a time-lapse study." J Assist Reprod Genet.

母体のBMIが胚の形態的動態(時間の経過に伴って変化する胚の形態)に及ぼす影響を、タイムラプスイメージングを用いてしらべた研究です。

後ろ向き研究です。

患者さんを、BMIで4つのグループに分けました。グループAはBMI 18.5未満(低体重)、グループBはBMI 18.5-24.99(正常体重)、グループCはBMI 25.0-29.99(過体重)、グループDはBMI 30以上(肥満)です。

グループAは128人から得られた593個の胚、グループBは1107人から得られた5248個の胚、グループCは226人から得られた1053個の胚、グループD67人から得られた286個の胚が対象です。

グループD(肥満)の胚は、グループB(正常体重)の胚に比較して、胚が5細胞に到達する時間(t5)、8細胞に到達する時間(t8)が長いことがわかりました。グループC(過体重)の胚は、グループB(正常体重)の胚に比較して、胚が8細胞に到達する時間(t8)が長いことがわかりました。

胚の形態や妊娠率に関しては、グループ間に有意差はありませんでした。

グループA(低体重)の胚は、グループB(正常体重)の胚に比較して、流産率が高いことがわかりました。

結論は、
従来の静的な形態評価ではなく、タイムラプスイメージングを用いた動的な形態評価を行うことにより、母体のBMIが胚発育に影響を及ぼしていることが明らかになった。「母体の肥満や過体重」と「胚発育の遅れ」には関連がある。
でした。

体重は、軽すぎても重すぎてもダメです。正常体重(BMI 18.5-24.99)を目指しましょう。

そして、肥満や過体重は、生活習慣病など別の弊害も出てきます。妊娠を目指す上で、生活習慣の改善は避けて通れません。体外受精の技術力で妊娠させてもらうのではなく、体外受精を助けを借りながら、自分でも妊娠しやすい身体づくりをして、自分の力で妊娠するんだという意識を持つことが重要です。
 

ご主人の葉酸摂取も妊娠に影響!

幸町IVFクリニック院長 雀部です。
IVF
幸町IVFクリニック

今日は、葉酸と妊娠の話です。妊娠前から葉酸のサプリを取りましょうという話を、よく聞くと思います。その場合、大抵は女性側の話なのですが、今回は男性側の話です。

ご主人の葉酸摂取と妊娠の関連を調べためずらしい研究を紹介します。今年の2月に発表された論文です。

Hoek, J., et al. (2019). "Does the father matter? The association between the periconceptional paternal folate status and embryonic growth." Fertil Steril 111(2): 270-279.

前向きのコホート研究です。

研究の対象は、単胎妊娠された511人の妊婦さんです。内訳は、自然妊娠が303人、体外受精または顕微授精が208人です。

主要評価項目は、妊娠7週、9週、11週における頭殿長(crown-rump length; CRL)と胎児体積(embrionic volume; EV)です。

ご主人の赤血球内葉酸濃度を測定し、濃度の低い順に並べて4つのグループに分けます。低い方から第1、第2、第3、第4グループとします。

自然妊娠では、第3グループの頭殿長と比較して、第2と第4グループの頭殿長は短いことがわかりました。胎児体積に関しても同様の結果が得られました。第3グループの胎児体積と比較して、第4グループの胎児体積は小さいことがわかりました。

体外受精または顕微授精後の妊娠に関しては、 ご主人の赤血球内葉酸濃度と胎児成長曲線に有意な相関はありませんでした。

結論は、
「自然妊娠では、ご主人の赤血球内葉酸濃度が低くても、高くても、胎児の発育曲線が低くなることが示された。これらのデータは、妊娠前後のご主人の葉酸摂取状態が重要であることを示している。」
でした。

葉酸は、どちらかというと「不足」が問題になることが多く、「過剰」に注意を払うことが少ないと思います。しかし、この研究の結論によると「不足」でも「過剰」でも妊娠に影響するみたいです。

通常の食事をしていれば「過剰」になることはありませんが、サプリで摂りすぎると過剰になる可能性があります。サプリで葉酸を摂る場合、1日1000μgを超えて摂取してはいけません。一般的な用量、つまり1日400μgで摂っておくのが安全だと思います。

奥様にまかせっきりではダメです。ご主人も、いっしょに妊活がんばりましょう。





記事検索