幸町IVFクリニック 院長と培養士のIVFこぼれ話

幸町IVFクリニックの院長と培養士の、役に立つような、立たないようなブログです。 (主に院長の文句?)

2019年07月

体外受精は悪者ではなかった!

幸町IVFクリニック院長 雀部です。
IVF
幸町IVFクリニック


今日は、生殖補助医療と周産期(妊娠22週~出生後7日未満)リスクの話です。

「体外受精児は、周産期リスクが高い」というデータがいろんなところで発表されています。それに伴い、体外受精をやると周産期リスクが増大すると考えている方が、患者さんだけに留まらず、医療関係者にもいます。

そのような話が出るたびに、「体外受精児の周産期リスクが高いのは、体外受精の技術自体に問題があるのではなく、比較している集団の背景の差に起因している可能性がある」ということ説明しています。

しかし、それを実際に証明するのは非常に難しく、結論が出ていない状態が続いています。その難問を、(完璧ではありませんが)かなり気持ちよく証明してくれた研究を紹介します。今年の3月に発表された論文です。

Goisis, A., et al. (2019). "Medically assisted reproduction and birth outcomes: a within-family analysis using Finnish population registers." Lancet 393(10177): 1225-1232.

この研究の画期的なところは、家族内に体外受精児と自然妊娠児がいる家族のみを抽出し、体外受精児と自然妊娠児を比較した点です。これにより、比較する集団の背景のバイアスを(完璧ではありませんが)かなり取り除くことができます。

フィンランドにて行われた研究です。2000年末時点で0-14歳の子供が少なくとも1人いる家庭の20%をカバーできる65,723人を対象としました。

評価項目は、出生時体重、妊娠期間、低出生体重児リスク、早産リスクです。

自然妊娠児62,947人、体外受精児2,776人でした。その内1245人が、兄弟姉妹間比較の対象となりました(自然妊娠児620人、体外受精児625人)。

全データの比較では、体外受精児は、(自然妊娠児に比べて)周産期リスクが高いことがわかりました(例えば、出生体重は60g軽く、早産リスクは2.15ポイント高い)。

ところが、兄弟姉妹間比較では、その周産期リスクが統計学的、実質的に軽減されることがわかりました(例えば、出生体重は30g軽く、早産リスクは1.56ポイント高い)。

結論は、
我々の結果は、「体外受精児の周産期リスク増大は、大部分が体外受精の技術自体以外の因子に起因している」ことを示している
でした。

体外受精の治療を受けているご夫婦にとっては、「ほっと」する結論だと思います。しかし、ただ「ほっと」するだけで終わらせてはいけません。

体外受精を必要としているご夫婦は、周産期リスクを高めるような背景を持っていることがあります。そのような背景を持っていた場合、妊娠した後に実際に周産期リスクに直面する可能性があります。そうならないためにも、体外受精の技術力で妊娠させてもらうのではなく、「身体づくりをしっかりやりながら、体外受精の力を借りて妊娠するんだ」という姿勢が重要になってきます。


流産歴がある方は葉酸を摂りましょう!

幸町IVFクリニック院長 雀部です。
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今日は、葉酸の話です。胎児の神経管閉鎖障害(無脳症、脳瘤、二分脊椎など)と葉酸が関係している話は有名なので、皆さんもご存知だと思います。厚生労働省は、妊娠前から葉酸のサプリを1日0.4mg摂ることを推奨しています。

妊娠を希望されている女性は、全員葉酸のサプリを摂取することが勧められますが、特に過去に流産歴がある女性は要注意なようです。今年の6月に発表された論文を紹介します。

Pei, L., et al. (2019). "Effect of periconceptional folic acid supplementation on the risk of neural tube defects associated with a previous spontaneous abortion or maternal first-trimester fever." Hum Reprod.

葉酸のサプリを摂取しないことは、過去の流産歴、または妊娠初期の高熱と関連した神経管閉鎖障害のリスクを上昇させるかどうかを検証しました。

1993年-2002年に行われた研究で、神経管閉鎖障害の児を持つ104家族と障害のない児を持つ100家族を対象としています。

過去に流産歴が有り、妊娠成立前後に葉酸を摂取しなかった女性は、(過去に流産歴が無く、葉酸を摂取していた女性と比較して)神経管閉鎖障害のリスクが上昇することがわかりました。さらに統計学的に詳しく解析すると、神経管閉鎖障害のリスクに関して、「過去の流産歴」と「葉酸を摂取しなかったこと」の間に相互作用があることがわかりました。

妊娠初期に高熱を伴う疾患に罹り、妊娠成立前後に葉酸を摂取しなかった女性は、(高熱を伴う疾患に罹らず、葉酸を摂取していた女性と比較して)神経管閉鎖障害のリスクが上昇することがわかりました。しかし、さらに統計学的に詳しく解析すると、神経管閉鎖障害のリスクに関して、「妊娠初期の高熱」と「葉酸を摂取しなかったこと」の間に相互作用がないことがわかりました。

結論は、
「流産歴がある女性が葉酸サプリを摂取しないと、神経管閉鎖障害のリスクを上昇させる。」
でした。

妊娠を希望する女性は、全員葉酸を摂ることが推奨されますが、流産歴がある女性は、特にその重要度が増すようです。皆さん、しっかり葉酸を摂りましょう!



40歳未満、原因不明は体外受精が有効!

幸町IVFクリニック院長 雀部です。
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今日は、原因不明不妊の話です。

「一般不妊検査で異常なし=私たちには異常ない=体外受精をやらなくても妊娠できるはず」

と考えている方いらっしゃいませんか?そういう方は、過去の記事「原因不明なのになぜ体外受精?」を参照して下さい。

不妊原因不明の患者さんを実際に体外受精で治療した結果を検証した研究を紹介します。今年の6月に発表されたばかりの論文です。

van Eekelen, R., et al. (2019). "IVF for unexplained subfertility; whom should we treat?" Hum Reprod.

体外受精を受けた原因不明のイギリスの40,921カップルと待機療法(医療介入は行わずにタイミング指導のみ)を行った原因不明のオランダの4,875カップル、スコットランドの975カップルを比較しました。

1年以内に妊娠したカップル、無排卵症、卵管閉塞、子宮内膜症、男性不妊のカップルは除外しました。

1年間の治療後の妊娠率は、体外受精47.9%、待機療法26.1%でした。体外受精の方が、21.8%妊娠しやすいことがわかりました。

さらに詳細な解析を進めると、女性が40歳未満のカップルは、待機療法と比較して体外受精の方が有効でしたが、34歳を過ぎるとその効果が急激に低下することがわかりました。

一方、女性が40歳以上のカップルについては、待機療法と比較して体外受精はあまり有効ではなく、その差は10%以下でした。

女性の年齢に関わらず、不妊期間が短い(1年)、続発性不妊のカップルには、体外受精はあまり有効ではありませんでした(30%以上の自然妊娠率が見込まれるため)。

結論は、
「女性が40歳未満の原因不明カップルには、(待機療法と比較して)体外受精が有効である」
でした。

原因不明のカップルは、奥様の年齢が若い内に体外受精をトライした方が、良い結果が得られるようです。不妊治療はとにかく早めに!

逆に「じゃ、女性が40歳以上になったら体外受精をやる意味が無いんだ」という風に考えるのは危険です。

女性が40歳以上の原因不明カップルで、体外受精の有効性が低いというのは、体外受精と待機療法どちらを選択したとしても、妊娠に関してシビアな状況に置かれていますよということだと思います。治療としては、より精度の高い体外受精をお勧めします。



40代の妊娠は何がハイリスク?

幸町IVFクリニック院長 雀部です。
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今日は、40代の妊娠のリスクについてです。

私は、「40歳までに妊娠・分娩を終えるつもりで、家族計画を立ててくださいね」といつも患者さんに説明しています。それは、40歳以降は妊娠のリスクが跳ね上がるからです。しかし、「40代の妊娠はハイリスクですよ」と言われても、何がどのようにハイリスクなのかピンとこない方もいらっしゃるのではないでしょうか?

そこで、年齢と好ましくない妊娠結果の関連性を検証した研究を紹介します。

Frederiksen, L. E., et al. (2018). "Risk of Adverse Pregnancy Outcomes at Advanced Maternal Age." Obstet Gynecol 131(3): 457-463.

デンマークにて行われた研究です。369,516の単胎妊娠を対象としました。

35-39歳のグループ、40歳以上のグループを20-34歳のグループと比較し、年齢と好ましくない妊娠結果の関連性について検討しました

この研究では、好ましくない妊娠結果として、染色体異常児、染色体正常児の先天性異常、流産、死産、妊娠34週以前の分娩を取り上げています。

40歳以上のグループでは、10.82%の女性が1つ以上の好ましくない妊娠結果を経験したのに対して、20-34歳のグループでは5.46%でした(オッズ比2.02、99.8%信頼区間1.78-2.29)。

40歳以上のグループは、20-34歳のグループと比較して、染色体異常(3.83% vs 0.56%)、流産(1.68% vs 0.42%)、妊娠34週以前の分娩(2.01% vs 1.21%)に関してハイリスクであることがわかりました。死産と染色体正常児の先天性異常に関しては、リスクに差はありませんでした。

リスク予測チャートによると、母体高年齢、生殖補助医療の使用、未経産、妊娠中の喫煙、肥満は、好ましくない妊娠結果の絶対的予測リスクを上昇させることがわかりました。

冒頭にて述べたとおり、妊娠・分娩は40歳までに終えることが望ましいです。しかし、諸事情により妊娠・分娩が40歳以降になった方は、ここで挙げたリスクを十分に認識し、慎重に経過を診る必要があります。

妊娠は、年齢が上がるに従いリスクも上昇します。35歳以降の女性は1歳でも早く妊娠することが重要です。40歳以降の方は一般不妊治療をやっている余裕はありません。直ちに体外受精を検討してください。35-39歳の方は一定期間(1年以内)一般不妊治療を行い、結果がでない場合はすばやく体外受精にステップアップしてください。


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