幸町IVFクリニック院長 雀部です。

今回は、前回の胚移植数の話の続きです。これは非常に重要な問題なので、もう少し話を続け
​ます

今回は
​、​
この胚移植数に関してとても興味深い論文を紹介します。
これは2個の胚を1個ずつ2周期に分けて移植した場合と、2個とも1周期で移植した場合を比較した論文です。 不妊原因、年齢、BMIごとに、妊娠率、多胎妊娠率を比較しています。

例えば、排卵障害、年齢35
​​
歳、BMI30 の女
​​
性の妊娠率は、1胚移植54.4%(2周期の累積)、2胚移植46.5%、年齢40歳、PMI 30 の女性の妊娠率は、 1胚移植31.3%(2周期の累積)、2胚移植28.9%
​した​
。一方、多胎妊娠率は、 2胚移植を行った
​​
35歳女性32.8%、40歳女性20.9%、1胚移植を行った35歳女性2.7%、40歳女性1.6%(2周期の累積)でした。(この1胚移植の多胎妊娠は
​、​
一卵性双胎と考えられます。)

どうでしょう?意外な結果だったのではないでしょうか?
一般に、​1つの周期に限ると、2胚移植の方が1胚移植より妊娠率が高くなります。​ところが、胚の個数を揃えて1胚移植、2周期累計の妊娠率で比較すると、1
胚移植の方が
​2​
胚移植より妊娠率が高くなります。
​つまり、
2個の胚があるときは
​、​
1個ずつ2周期に分けて移植した方が、
2個の胚をまとめて1周期で移植するより高い妊娠率になる可能
性があ
​るということです​
。そして重要なポイントは、
1胚移植の多胎妊娠率が圧倒的に低いことです。この論文は、後方視的研究のためエビデンスレベルは低くなりますが、注目すべき内容だと思います。

皆様の目的は、ただ妊娠することではなく、安全な妊娠
​・​
分娩をすることだと思います。そのためには、目先の妊娠率に惹かれて2個の胚を移植せずに、妊娠後を見据えて1個の胚を移植する冷静さが必要です。正しい知識を持っ
​​
て、安全な妊娠
​・​
分娩を目指してください。