インドサファリ

2014年06月16日

ベンガルタイガーを求めて

bengal tiger

皆さまこんにちは。
今回は、ベンガルタイガーについてご紹介したいと思います。

私は、5月に2回「ベンガルタイガーを求めて」のツアーに行かせていただきました。

このコースでは、マッディア・プラデーシュ州にあるカーナ国立公園とバンダウガル国立公園にて、
タイガーサファリを楽しむ内容です。

カーナ国立公園とは、インドで最も大きな公園のひとつで、サルの木(沙羅双樹)が美しく、キップリングの「ジャングルブック」の舞台になっています。

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カーナ国立公園入口

また、バンダウガル国立公園は、世界で最もトラの密度が濃く、遭遇率はインドナンバーワンとも言われています。

さて、皆さまは世界に野生のトラは何頭いるかご存知ですか?
20世紀初頭、10万頭いたとされるトラは、現在3000~5000頭までに減ってしまっています。インドに関しては、4万頭いたといわれていますが、現在は約1600頭と言われています。(※WWFより)
それでも、インドは世界一のトラの生息国です。

ベンガルタイガー 杉本 (3)
草むらから現れたトラ

トラは生態系のトップに君臨する動物で、そのバランスがとれていてこそ豊かな森といえるのです。

ベンガルタイガー 杉本 (1)
草むらの中で捕えたイノシシを食べるトラ

ベンガルタイガー 杉本 (2)
食後に水場で休憩するトラ

トラは、漢方薬としての需要も高く、密猟の大きな原因となっていました(かつて日本はトラを使った漢方薬を売る最も大きな市場だったそうです)。その他、1930年代までは、イギリス人や上流階級の人々により、トラ狩り(スポーツ)が盛んに行われていました。こういったことが原因でトラの数が激減してしまったのです。
また、農地開発、植林の為の広大な森林伐採が行われ、その結果、動植物が減りトラが食べ物を見つけにくい環境になったのです。すると、人間の住む世界とトラの住む世界が近くなり、家畜や人を襲うようになり、トラと人間の衝突が起き、害獣として殺されてしまうという事態も起こっていました。
更に、生息地が失われ分断されると、少ないトラの間で交配が繰り返され、遺伝子の多様性が失われ、生まれる子の数が減ったり、生き残る確率の低下につながるのです。

ベンガルタイガー 杉本 (8)
正面から現れたトラ

1972年、ベンガルタイガー最大の生息国インドの時の首相インディラ・ガンディー女史は「このインドで最も美しい動物、トラを犠牲にしてまで我々は利益を追求しようとはしない」と、プロジェクト・タイガー(トラ保護活動)に取り組みました。まず、トラの保護区を設定し、保護区にコア・エリアとバッファ・ゾーンを設置しました。最終的に、23か所の保護区を新設しました。これはインドにとって大きな痛みを伴うものとなりました(森林産業収入は年間1400万ドル減)。しかし、大きな価値のあるものでした。
1983年、プロジェクト開始時2000頭だったトラの数が3000頭にまで回復したのです。しかし、成功ばかりが強調され、失敗や残された課題に目が向けられず、また数は減少してしまったのです。
保護区の設立は、水源となる流域を保全し、土壌の浸食が止まり、その恩恵を受けた人もいますが、森の利用を制限され、野生動物が農作物を荒らすなどの被害を受けた人もいるのです。こういったプロジェクトを成功させるには、地域社会の利益を確保することが不可欠なのです。保護区や近隣に住み、昔からトラの生息地を利用していた住民のことを考慮しなくてはなりません。関係者と森の資源で生計を立てている住民の努力と関与が必要なのです。地域社会のトラ保護の関心を持たせ、また、生活を支える報酬も必要です。特に、都会を含めた地域全体への教育も大切です。

バンダウガル国立公園などでは、タイガーサファリの関係者のガイドやドライバーは、近隣の住民たちに理解を求める活動もしているそうです。

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森を闊歩するトラ

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今回訪れた公園の一つ、バンダウガル国立公園。
私たちはターラ・ゾーンでサファリを楽しみました。
実は今、ターラでは、トラの世代交代という時期を迎えています。
もともとターラ・ゾーンの大部分を支配していたトラが、他のゾーンからやってきた若いオストラにテリトリーを奪われてしまったのです。

トラはテリトリーを持つ動物です。オスのトラのテリトリーには何頭かのメスを囲います。
縄張り争いに勝ったトラは、そのテリトリーにいるメスの子供を殺してしまうという習性があります。これは、メスを発情させるための習性です。

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こちらはカーナにいるメスのトラですが、尻尾をあげて尿をまいてマーキングしています

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こちらも木の幹にマーキング

この春、ターラ・ゾーンでも新しい支配トラが子供を殺し、メストラたちが警戒し、身を隠すという事態が起こっていました。
いつになく静かな森だったバンダウガルですが、時間と共に落ち着きを取り戻しつつあります。
5月18日からのツアーでは、なんとその新しいトラの赤ちゃんまで姿を現してくれたのです。ベンガルタイガー 杉本 (7)
お母さんの周りで戯れる赤ちゃんトラ

母トラの名前はカンカティ。彼女は3頭の赤ちゃんを産みました。
子供たちを引き連れて道を横断する姿は、本当に微笑ましいものでした。
まず、お母さんが道を渡り、その後を追うようにチョコチョコと3匹の赤ちゃんトラたちが道を渡りました。まるで人間の子供のように、左右の安全確認をしていました。

ベンガルタイガー 杉本 (12)

せっかくの赤ちゃんトラをうまく撮影できず非常に残念でした・・・

今回、西遊旅行では4本のツアーが出ましたが、3月、4月のツアーでは、新しい支配トラが前の支配トラとの子供を殺してしまった直後に当たり、非常にトラの観察は難しいものとなりました。
しかし、5月の初旬には少し落ち着き、更に下旬にはかなり平穏な森が戻っているように感じました。
せっかくのタイガーサファリで、トラが見られないのは本当に悲しいことですが、これも自然界のルール。
厳しい自然で生きる彼らを静かに見守りたいですね。

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ケンカで左目を失ったカンカティ

ベンガルタイガー 杉本 (11)
水場で涼むカンカティ


大切に育てて、その成長をまた来年の楽しみに、
そしていつか、豊かな森が戻って来る日がくることを祈ります。
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バンダウガル国立公園の出口の看板
”もし僕を見られなくても落ち込まないで。僕はみているよ”

Text & Photo - Haruko SUGIMOTO 杉本治子


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