シムシャール・パミール

2015年07月13日

シムシャールのクッチ(2015年6月20日) ~①~

アッサラーム・アレイクム(こんにちは)!
大阪支社・登山/トレッキング担当の楠です。

6月、私にとっては恒例ともいえる5年目にして5度目のパキスタン北部・シムシャールへ。
ミングリク・サール(6,050m)という山に登頂するという醍醐味もあるツアーですが、
何といってもハイライトは、“ヤク・サファリでクッチに同行”です。
今回は2015年6月20日に行われたその様子を、簡単にご紹介させていただきます。


まずは、「クッチ」について。そしてここ数年におけるシステムの変化について。
そもそもクッチとは、ここシムシャールに暮らすワヒ族のシムシャリ(シムシャール出身の人)が、
5月から10月にかけて計4回、シムシャール村(3,100m) ⇔ シュイズヘラブ(4,350m)
⇔ シュウェルト(4,670m)の村(集落)の間で、定期的に家畜を移牧させる際の移動ことを指します。
※シュイズヘラブ、シュウェルトのエリアは「パミール」(シムシャリにとっての“人々が家畜とともに
  暮らすことができる山の草地”)と呼ばれています。
DSC_0134シムシャール村

DSC_0272シュイズへラブ

DSC_0849シュウェルト


シムシャリは、数千の家畜(ヤク、羊、ヤギ)と、必要な牧草地のバランスを保つための知恵を、
約400年における長年の経験で心得ています。
しかし最近は、その家畜の面倒(朝夕の乳搾り、放牧、乳製品作りetc)をみる
女性の数の減少により、ここ5年でも少しシステムに変化がみられるようになってきました。

シムシャールでは男女の仕事分担がはっきりとしています。
そして、この5ヶ月(5月半ば~10月半ば)間、村を離れたパミールで家畜の面倒をみるのは、
基本的に女性の仕事です。夏であってもパミールの標高は4,000mを越え、
朝晩の厳しい寒さ、山岳地方特有の悪天候にも耐えぬく体力と精神力が求められます。
時には、まだ足腰がおぼつかない赤ちゃんを背負いながらも、家畜の乳搾りをしています。
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女性の数の減少における主な原因は2つだと、シムシャリのガイドが答えてくれました。

①シムシャール村から外界へのアクセスが良くなった(2003年に自動車道が完成)ことにより、
 目(意識)が外を向くようになったこと。特に若い世代は、シムシャール村外の学校
 (カリマバード、ギルギット、イスラマバードetc)に通う生徒も多くなりました。
 ※2015年7月現在、シムシャール村内にも計2つの学校があります。 

②昔からこの仕事をしてきた世代の女性にとっては、パミールでの仕事は念願ではあるが、
  体力的に厳しいこともあり、息子や娘たちが説得をして引き止めていること。
  ※とはいうものの、自分たちの家畜の面倒をみなくてはならないので、
    他の親戚や友人に、その対価を払って、面倒をみてもらっているようです。

このような事情により、特にヤクの面倒に回す女性の手の数が足りておらず、
昨年からは男性も数名ずつ定期的に交替をしながら、夏のパミールに残るようになっています。
今年はまず7名が残りました。

クッチのような村をあげての大掛かりな行事の時には、出稼ぎにでている男性も手伝いに帰ってきます。
力仕事(石造りの家屋の修理)や危険な仕事(ヤクの毛刈り、コントロールする紐を通すための鼻穴開け
、去勢etc) は男性の仕事です。
DSC_0404鼻穴を開けると・・・

DSC_0405紐が通る(荷ヤク用)

DSC_0672ヤクの去勢

男性たちは高地に強く山歩きが得意なことから、山岳ガイドや8,000m峰をも含む登山の
高所ポーターとして働いている方も多くいます。



さて、次回はいよいよ今年のクッチの様子について。乞うご期待!

<下記参照>
ツアーレポート
<新企画>秋・黄金のシムシャール

kusunoki_saiyu at 06:58|Permalink

2011年07月27日

ミングリク・サール(6,050m) 登頂記 ~その弐~

 さて、ミングリク・サール(6,050m)登山、後半戦です。

 ハイキャンプからは尾根伝いに更に上を目指します。雪も出てき始めるので滑落にも要注意です。今季、ミングリク・サールを登るのは我々が初めてらしく、勿論トラックなどは無く、先頭のディダールさんがキックステップで足場を作ります。しかし身長170cm足らずの僕は高身長のディダールさんとは歩幅が合わず、結局自分の歩幅で登ります。残念…。歩幅を合わす重要性を再認識ですね。

DSC_0209あそこが頂上かな?









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 7時、ロープをつけるポイントまで来ました。ケルン(石を積み上げたもの)があり、見晴らしも良い所です。頂上はまだ見えませんが、あともう少しという気配が感じられます。あいにく、この時間帯から徐々に雲が出始め、頂上での景色に不安が残ります。この辺りからはクレバス(氷河に出来る深い割れ目)も現れ始めるので、しっかりとお互いを確保しながら慎重に登ります。

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 雪も徐々に深さを増していきます。基本、膝丈までの深さでしたが、稀に太ももまでズボッといきます。こういう柔らかい雪面は体力が奪われますね。傾斜も急になってくるのでジグザグに登ります。標高も徐々に6,000mに近付いてきて、頂上はもうすぐです。

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 9時13分、頂上に到着!!ミングリク・サール(6,050m)登頂成功です。ひとまず足場が固まっていないので、斜面を踏み固めスペースの確保をします。それから改めて3人でがっちり握手、そして抱き合い、記念撮影。つい興奮して叫んでしまいました!しかしあいにくの空模様で、この頂上から拝める筈の世界第2位のK2(8,611m)と第12位のブロード・ピーク(8,047m)は雲の中。。。非常に残念でしたが、遥か眼下には登り出し地点の草原が広がり、登頂の達成感を感じさせてくれるには充分な光景でした。

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 9時45分、下山開始です。登山事故は下山時に起きることが多く、油断は禁物です。慎重に下りながらロープをつけたポイントまで辿り着き、ロープを外します。尾根上まで行くと、そこからは“石の川”とでも云わんばかりの急坂を一気に下っていきます。土壌が湿って柔らかいので滑りながら下りていく感覚でしたね。まぁあまりブーツにとっては良くないのでしょうが…。

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  <頂上にあったクレバス>

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 12時半前には下山を終え、ミングリク・ベン(麓)まで到着。寒い中、そこで待っていてくれた多くの方々に祝福してもらい、少々ヒーロー気分を味わわせて頂きました!!下からも我々の下山する姿が観えたらしく、それもこの登山の一つの魅力ですね。
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 安全第一を考えた登山の為には、しっかりとした準備(計画、装備、体力、技術、知識など)が必要です。今後も安全にかつ楽しい登山を提供する側として、様々な事を感じ、またそれを将来に繋げていく、活かしていく決意を固めた登山となりました。でも何よりも、このミングリク・サール(6,050m)は素晴らしい山です!そう思える山に出逢えて光栄です。ちなみに、シムシャリと家畜達のクッチ(夏村間の大移動)の最中にも見ることができます。是非一度お試しあれ!!

 これからもパキスタンの色々な山の魅力をお伝えしていきますので、ご愛読よろしくお願いいたします。






関連リンク
ミングリク・サール(6,050m)登頂!
クッチ2011シムシャル・パミール
パキスタンの山旅

kusunoki_saiyu at 19:33|Permalink

2011年07月19日

ミングリク・サール(6,050m) 登頂記 ~その壱~

 さて、今回はミングリク・サール(6,050m)登頂のお話です。

 余談ですが、、、日本の最高峰富士山の標高は3,776m。もし4,000m峰以上の山を登りたいのであれば、海外に足を運ぶしかありません。登山が好きな方ならそれぞれ、いつかは登ってみたい(又は観てみたい)目標の山、憧れの山があるでしょう。そこに向かって段階的に一歩一歩進んでいければ理想的です。6,000m峰、この高さの山は一つの良い目標(又はそれ以上の目標に達する為の良い段階)になり得ると言えるでしょう。

 本題です。先日同行させて頂いたパキスタンの山旅「シムシャル・パミール」のツアー予備日、視察を兼ねミングリク・サール(6,050m)という夏村①シュイジェラブ(4,350m)と夏村②シュウェルト(4,670m)の間に聳える6,000m峰に登らせて貰いました。メンバーは現地シムシャル村出身(シムシャリ)のディダールさん、そして弊社パキスタン現地法人SAIYAHのコック(料理人)のワジッドさんです。

 通常ならベースキャンプ(BC)(4,720m)から頂上を目指すのですが、今回の登山は急遽決まった事だったので、夏村①シュイジェラブ(4,350m)からの出発になりました。標高差は1,700m(BCからなら約1,300m)です。

 深夜1時、ワジッドさんが甘くて温かいパキスタニ・チャイ(ミルクティー)を用意してくれたので、まずは安全・登頂祈願の乾杯!そして出発です。ヘッドランプを頼りに、隣の小さな丘(グルチンワシュク・サム)(4,645m)まで登ります。そこからミングリク・サールBCまで、ほぼ平坦な道を進みます。途中の沢にて二人は直接水分補給。さすが現地人!私は念の為に一応控えます。。。ちなみに高所登山でのお勧めアイテムの一つにハイドレーションがあります。行動しながらでも少量ずつ水分補給、これが理想的です。ただ水分を本体に押し戻すなどして、チューブ内やチューブの口が凍るのは必ず防がなければいけませんね。

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 BC手前からガレ場の急登です。ここまでが約2時間半。ミングリク・サールも頭を出し始めました。小休憩を交えながら尾根上のハイキャンプを目指します。4時15分頃、空が明るみ出してきました。眼下には夏村②シュウェルト方面にザック・ゾーイ(小湖)とルップ・ゾーイ(大湖)が見え、湖面にはまだうっすらと氷が張っているのが分かります。

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 4時45分、ハイキャンプに到着です。テントが幾つか張れそうです。そしてここからは良い景色が拝めます。ヒスパー・ムスターグ山群がピンク色に染まっていく姿には開いた口が塞がりませんでした。遠くにはシスパーレ(7,611m)もばっちり見えました!

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<ヒスパー・ムスターグ山群(左)> <中心の鋭鋒がシスパーレ(7,611m)(右)>

 前半戦はここまでです。次回は後半戦。乞うご期待!!

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<ミングリク・サール(6,050m)>


関連リンク
ミングリク・サール(6,050m)登頂!
クッチ2011シムシャル・パミール
パキスタンの山旅

kusunoki_saiyu at 09:11|Permalink

2011年07月07日

シムシャリの真髄

 皆様、ここ最近の暑くじめじめした日々を如何お過ごしでしょうか?

 私は6月10日から22日間、パキスタン北部と中国の国境にあるシムシャル村を基点としたヤク・サファリ(ヤクに乗って移動)のツアー「シムシャル・パミール」に同行して参りました。と申しましても、私自身はシムシャル村出身の人々(シムシャリ)と共に全行程を歩かせて頂きました。登山学校もあり、登頂者も含め8,000m峰への高所ポーターも数多く輩出しているシムシャル村。男女問わず、シムシャリの高地での強さを肌で体感しました。「どこの山に登ったの?」と訊くと、「ナンガパルバット!」「私はGⅡ。」などなど、名だたる高峰が次から次へと出てきます。とても頼り甲斐がありますね!!
 
 さて、それでは私がここでのトレッキング・登山を通じての体験談を、数回に分けてお話させて頂きます。まずは最強のシムシャリについてです。
IMG_1474 驚いたのはヤクのスピードです。お客様はヤクに乗っている訳ですので、私も勿論そのスピードで歩かなければなりません。急登ではヤクも疲れるので速くはないのですが、平坦な道、ゆるやかな登りは意外と速いのです。基本的に少し早歩き程度のペースでのトレッキングとなりました。正直、幾らか遅れを取ってしまったこともありました。シムシャリのヤク使い達は、そんなヤクの鼻の穴を通した紐をひきながら、且つ楽しそうに話をしながらも速いペースで進んでいます。本当に体力があります。強いです。

IMG_1428ヤクもヘトヘト。。

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 次に、シムシャリ達の急坂の下り方です。30°はあるであろう斜面を彼らは真っ直ぐに凄まじいスピードで走りながら下っていきます。もちろん我々はジグザグにゆっくりと下りました。その際に使われるものが、杖代わりの長い木棒です。ブレーキ代わりに地面に当てながら下ります。正直、湿った柔らかい土壌なら出来る方もいるでしょうが、彼らは乾いた固い土の上でその芸当を披露するのです。30分かけて登ったスライディングエリアを30秒で駆け下りていくのです。素晴らしい度胸とバランス感覚です。

DSC_0106DSC_0101目立つ長い木棒








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 シムシャリは男性のみならず女性も強い。牧草地を求め大移動するクッチでは、何千頭というヤク、羊、ヤギを女性達が主体的にコントロールします。石、鞭の様な木の棒、キック(蹴り)、、、容赦無しです。4000m代後半という高地で彼女達は家畜を走って追い立てるのです。彼女達にとってヤクは富ですからね。そのおかげでクッチの日のヤクは速かったので、私は何千頭ものヤクのお尻ばかり見ていた様な気がします。

DSC_0320迫力、凄いです!!


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 トレッキング中、急に立ち止まったと思いきや、あるヤク使いが歌を歌いだしました。素晴らしい歌声、歌詞、メロディーです。私の歩く姿をみて「You are like Shimshali.(お前はシムシャリの様だ。)」と声をかけてくれるフレンドリーなヤク使いでした。さすがにその素晴らしい歌声の後に「お前の番だ。歌ってくれ。」と振られたのには参りました。彼らは歌を通して神への感謝と敬意を示しているのです。更には、ショポディン峠(5346m)でも急に手拍子、歌、ダンスが始まりました。標高なんてもう全く関係ないですね。楽しそうなのでついつい場違いのダンスで混ざってしまいました。でもここで一番張り切っているのは弊社パキスタン現地法人SAIYAHの社長ヨーセフ氏か…笑

 シムシャリ達と過ごした日々、本当に充実していました。笑って、食べて、飲んで(ヤクミルクのことです!)。シムシャリには底知れぬ魅力を感じます。パキスタンの山々には是非彼等と共に登りたいです。皆様もシムシャリ達と同じ時間を共有してみたいと思いませんか?来年に乞うご期待!!

 最後にもう一度、シムシャリの勇姿を!
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 さて次回は、夏村シュイジェラブとシュウェルトの間に聳えるミングリク・サール(6,050m)登頂のお話です。



kusunoki_saiyu at 23:23|Permalink