2016年07月19日

イランの文化・その一

今回はイランの娯楽に関してご紹介いたします。

イランではイスラームの教えに忠実に、日本でいうカラオケ、ボーリング場、バーなどの娯楽が禁止されています。その代り、首都テヘランを中心に大都市には映画館が多くあります。家族みんなで、友達と、時には恋人と、話題の映画が出る度に映画館はお客さんでいっぱいになります。日本と同様、売店もしっかりあり、ポテトチップスからアイスまでメニューは所によってさまざまです。

イランの映画というと、想像がつきにくいかもしれませんが、近年あるイラン人映画監督が先手を切り、イラン映画は世界の注目を集めています。その監督というのが、アスカル・ファルハーディー氏(Mr. Asghar Farhadi)です。彼は、1972年にイランのエスファハン州にあるホメイニーシャフルという町で生まれました。現在はイランやフランスを中心に脚本家・映画監督として活躍しています。

彼の代表作に、「別離」があります。英語では「Separation」、ペルシア語では「Jodai-ye Nader az Simin」の名で呼ばれています。イランで非常に有名な俳優ペイマーン・モアーディー氏と女優レイラー・ハータミー氏が夫婦役で主役を演じました。イランが抱える社会的・宗教的な問題をメインテーマとし、現代イランで日常的に起こるトラブル・事象をいくつも取り扱っていることで、“イランを識る”には打ってつけの作品です。これは2011年の作品ですが、第61回ベルリン国際映画祭でいくつもの賞を受賞し、更には第84回アカデミー賞で外国語映画賞を受賞しました。上述のように日本でも「別離」の名で日本語訳バージョンが発売されたため、ご覧になられた方もいらっしゃるかもしれません。

別離


彼の2009年のヒット作に「彼女が消えた浜辺」があります。英語では「About Elly」、ペルシア語では「Darbare-ye Ellyの名で発表されています。若者の友人グループで海へ遊びに行った先で、主人公エリーが行方不明になるところからストーリーが始まっていきます。エリーを演じたのは、タラーネ・アリードゥースティー氏。彼女もまた数々の映画やドラマ作品に出演する人気の演技派女優です。また、近年ではフランスで活躍中の女優ゴルシーフテ・ファラーハーニー氏と、「別離」にも出演した俳優ペイマーン・モアーディー氏、そしてイランで最も人気のあると言っても過言ではない俳優シャハーブ・ホセイニー氏が出演するある種のミステリー作品です。

彼女が消えた浜辺


そして、アスカル・ファルハーディー氏が初めて本格的にフランスで、フランス語の映画を作ったのが2013年に発表された「ある過去の行方」(英語では「The Past」、ペルシア語では「Gozashte」)です。あるイラン人男性が妻であるフランス人女性と離婚をするために、そして娘に一目会うために、飛行機に乗りフランスへ向かうところから始まります。夫婦と、夫婦を取り巻く家族との人間関係がテーマの作品です。第66回カンヌ国際映画祭でフランス人妻を演じたベレニス・ベジョ氏が女優賞を受賞しました。

ある過去の行方


彼の最新作に「The Salesman」(ペルシア語で「Forushande」)があります。主演を務めたのは、イランで一番人気、俳優シャハーブ・ホセイニー氏と女優タラーネ・アリードゥースティー氏です。つい先月の2016年5月に第69回カンヌ国際映画祭が開催されました。アスカル・ファルハーディー氏は見事この作品で脚本賞を受賞し、シャハーブ・ホセイニー氏は男優賞を受賞しました。イラン国内でもこの知らせはトップ・ニュースとして大きな注目を集めました。

SALESMAN



脚本家・映画監督アスカル・ファルハーディー氏の作品はイラン国内のみならず、世界でも刻々とその意義や価値を認められ始めています。日本では考えられないような社会的・宗教的な問題から、日本人にも通じる人間関係を取り巻くトラブルまで、さまざまな観点から非常に興味深い作品ばかりです。

彼のいくつかの脚本は書籍となり購入することができます。写真はテヘランで手に入れた、映画脚本7本が1冊になったもの。
映画脚本



皆さんもぜひイラン文化に触れるべく、イラン映画をご覧になってみてはいかがでしょうか。


arima_saiyu at 09:55│ イラン