・着ぐるみ系キャラについて


最近これが流行っているというのをTwitterで見た。
キズナアイの二番煎じに見えるが、動画を再生すると声が女性声優ではなくただのコンビニバイトのおじさんであり、そこで差別化されて人気を得ているらしい(キズナアイがバーチャルyoutuber路線のパイオニアかどうかは知らないが、女性モデルに女性声優を乗せただけの亜種は徐々に増えているようだ)。
確かに英断というべきか奇矯というべきか、ここまで狐娘のモデルを作っておきながらボイスチェンジャーを使っていないのが独特の雰囲気を作っている。おじさんにしてはやや声が高いのでピッチを上げたりしているのかもしれないが、そうだとしても「やや声が高いおじさんの地声」に収まる範疇ではある。

補足96:正式には「バーチャルのじゃロリ狐娘youtuberおじさん」というキャラ名らしいが、あまりにも長すぎるので狐娘と書かせてほしい。最初は「ねこます」というのがキャラクター名だと思ったのだが、これはあくまでも狐娘を作ったおじさんのハンネであってキャラの名前ではないらしい。

こういう、キャラクターと中身が完全には一致していないキャラをとりあえず着ぐるみ系キャラとでも呼ぶことにしよう(キャラクターのガワを着ているイメージ)。以降、着ぐるみ系キャラについて「ガワ」と言ったときは外側にいるキャラクター、「中身」と言ったときは内側にいるものを指すことにする(例:「狐娘」は「ガワ」、「コンビニバイトのおじさん」が「中身」)。

最初から変則的な例で恐縮だが、カリオストロを代表とする「転生系キャラ」も広い意味では着ぐるみ系キャラの一種である→。美少女カリオストロのガワに男性錬金術師の中身が入っているわけだから。
前に触れたときには「美少女の肉体と美少女でない精神が結合した場合、肉体の美少女性が精神に侵食して心身を統合し、完全なる萌えキャラとして成立してしまう」という結論を出した。今回は「侵食」という部分のニュアンスが重要になってくる。つまり、男性錬金術師として発動しているはずの男口調がもはやその源流を失って、美少女としての属性に吸収されてしまうという部分がポイントだった。

では冒頭の狐娘でこの効果が生きているかというと、かなり微妙だ。
明け透けに言えば「この狐娘でオナニーができるか?」というのが今の問題であり、出来るor出来ないで言えば、まあ、出来る。しかし、オナニーに際して音声をミュートにするかしないかを選べるのであれば、ミュートにする方を選ばざるを得ない。男性口調が美少女としての武器だったカリオストロとは違って、(キャラの魅力としてはともかくオナニーに関して言えば)人の良さそうなおじさんの声はノイズとなってしまう。
理由としては「中身を見たとき、男性錬金術師は二次元のキャラだがおじさんは現実の人間だから」「狐娘は元々ガワと中身が完全に分離しているわけではないから」などと説明することも不可能ではないが、自分に正直になろう。どう考えても「女性の声でオナニーは出来るが男性の声でオナニーは出来ない」という、それだけの話だろう。丹下桜も別に美少女というわけではないが、丹下桜の声でオナニーすることはできる。悲しいかな、美少女の身体同化作用は性別の壁を超えなかった。

補足97:「男性錬金術師」「美少女カリオストロ」「丹下桜」が三重の着ぐるみ関係とみなせてしまうので混乱するかもしれないが(しかも後でそういう話をする)、今は「美少女カリオストロ」と「丹下桜」は同じレベルで同一のガワを構成しているとみてよい。声が中身とガワのどちらに来るかを考えたとき、性別によってそれが決定されてしまったという話。

オナニーに関しての話はこれくらいにして(ここはサイゼリヤなので)、着ぐるみ系キャラの話に戻る。

最も広い意味では、アニメ画面の中で動いているキャラクターも着ぐるみ系キャラの一種と考えられる。発している声がキャラクターではなく声優のものだからだ。
もっとも、そこに声優の意思が介在しているわけではないし、理論上は(実況動画でよく行われているように)スピーカーや音声ソフトのような中身のないもの(?)で代用できる音声を便宜的に声優が当てているという解釈もできる。それにそんな話を始めると今度は「声をキャラの所有物ではないとみなすのであれば、キャラを構成する線だってキャラの肉体そのものではなくそれを描いたアニメーターの『中身』ではないか」というような話にもなってきてしまう。今はそこに深入りするつもりはなく、「ガワと中身の距離が最も遠い着ぐるみ系キャラ」としてアニメのキャラを挙げた。

この「ガワと中身の距離」はキズナアイではかなり近づいてくる。

キズナアイのガワはちゃんとしたキャラクター設定を持っているが、動画での振る舞いを見る限りは中身の介入も大きい。リアクションや発言に大まかな流れくらいはあるだろうが、一字一句台本を読みながらゲーム実況をしているわけでもあるまい。「本来は中身から発された挙動がガワの挙動として認識されるのか」という言い方をすれば、この話題も結局はカリオストロの話と同じところに戻ってくる。イエスかノーかで言えば、これはイエスだ。
しかし、キズナアイの場合は「ガワと中身の距離が極めて近く、部分的に融合した領域が最終的なコンテンツになっている」というのが正しいように感じる。カリオストロのケースとは異なり、ガワが中身を侵食しきったのではなく、そもそも最初から中間領域が駆動している。というのは、単純にキズナアイがガワではなく中身によって動かされている要素があまりにも多いからだ。「声」「細かい発言の選択」「リアクション」などを挙げたが、「身体の動き」も中身のものだろうし(この滑らかさでモーションキャプチャーではなくわざわざCGアニメを作っているとは考えにくい)、声優ラジオのような側面があるのは否めない。

補足98:声優ラジオはアレはアレでまた厄介ではある。「声優ラジオでは演技しているときとは違って素の声優の姿が見られて嬉しい~」などというたわ言をオタクがよく言っているが、アレが素のわけがないだろうが。
ラジオという舞台で「声優キャラ」として設定されているキャラを演じているという意味では、これもまた一つの中身とガワの関係と言えてしまう。しかし、ここまで来ると普通の人間が社会に対して普通に行っている仮面の装備との境界があやふやになってくるので、とりあえずは「ガワが(二次元キャラという意味での通常の)キャラクターである」という事態に話を限ろう。


狐娘はこの融合を更に推し進めている。
平気で中身のコンビニバイトの話を始めるし、もはやガワが残っているのはビジュアル的な表皮一枚にしかない(その一枚のウェイトが重いのだが)。さっきはオナニー云々という話だったので否定的なニュアンスになってしまったが、これもまた中間領域で魅力が駆動しているんだろう。
このファンアート(かわいい)の見解がかなり正しく、中身とガワが一体として新たなキャラを構成しているというのがしっくり来る。


ファンアートを探している間にこんな動画も見つけた。
VRChatで恐らく男ゲーマーが操作する美少女キャラ二人がKISSをしているというもの(0:17~)だが、ゲイにならない限り、この路線でガワと中身が一体になることは永遠に無い(逆に言えば、ガワと中身を分離できている限りはゲイでなくてもKISSが成立する。LW的には「いやーきついっす」というのが正直なところだが……)。
こういう関係性の段階では、こちらの中身は相手のガワしか見ていないし相手の中身もこちらのガワしか見ていないという歪な対称性が現れてきて、今度は中身の介入を如何にして退けるか(退けられるように配慮するか)ということの方が問題になるんだろう。



・更新用画像

DHqn_z4VYAAuSrR[1]
……