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 写真の像は、確かバンコクの東バスターミナル(エカマイ)のすぐ前の通りにあった飲食店に置かれていたものだったと思う。
 大地の女神プラ・メートラニー。瞑想中の仏陀の邪魔をしようと魔物たちが攻めてきたときに、濡れた髪の毛から水を絞り出して魔物たちを押し流した、という神話のシーンを表しているようだ。タイでは水道局のシンボルマークにも、このシーンをモチーフにしたプラ・メートラニーが描かれている。

 小便小僧のような水が出る細工の造形にも用いられることが多く、この像もどうやらそんな仕掛けがありそうだった。

 上記の逸話から濡髪の女神とも呼ばれるようだが、実はメートラニーは水の神様ではなく大地の神様である。大抵艶めかしく描かれる女神なのは、その神話上の役割とも無関係ではないと思われる。

 世界中の神話に於いても、大地の神様は農業と密接に関係があり、豊穣の祈りや雨乞いなどの対象とされることも多くあることは、周知のことであろうと思う。

 東南アジアに於いても、雨季に雨が降らなければ飢饉が待っていた。ラオスや文化的にもラオスに近いタイ東北部イサーンでは、天空に居るパヤーティエンという男神が恵みの雨をもたらすと考えられ、雨季の前には祈りが捧げられてきた。このパヤーティエンの降らす雨、それを受けた大地の女神メートラニーは、新たな命である稲を実らせる。何を象徴しているかは、オトナの皆さんならおわかり頂けると思う。

 こういったイメージがタイだけのものかはわからない。ただし、網羅的に調べてみたわけではないが、世界中の神話を見れば、大地の神様は地母神と言ったりもするように、女神のほうが多いような印象がある。有名な合唱曲『土の歌』の終曲『大地讃頌』でも『母なる大地』と歌っているし、それに違和感もない。やはり生命を育むイメージが母性を連想させるのだろうと思ったりもする。

【写真】2008年2月
【文章】2017年10月
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