鵜匠日記

釣れるさかなは贅沢な日と、そこそこの日があります。 北九州市小倉在住 鵜飼秋子(公務員・演劇人)がつづる、日々と演劇のblog

さかな公団HPはこちら⇒http://sakana-kodan.info
※最近は、北九州の暮らしの中で出会ったセリフについて書き始めました。ログが少したまってきたらそのうち、新しくブログを開設します。

K駅南口のふたり(男女、20代)

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小倉駅南口ペデストリアンデッキ。
この場所でつい先日も同じようなものを見かけた。

大学生だろうか、男女が向かい合って黙って睨み合っている。

睨み合うというか、だいたいこういう場合は女性の方が滅茶苦茶睨んでいて、男性はそれをなだめるというか、本当は逃げ出したいんだけど、逃げるとそれはちょっともう取返しがつかないことになりそうなので、ひたすら目線のビームにじっと耐えている。

男女は当然、

「・・・・。」

無言だった。

彼らはペデストリアンデッキの隅っこで睨みあっていたのにもかかわらず、なぜだかとても目立っていた。

「ケンカしよるよ」

通りがかりの女性たちがたった一瞬の認識でそう発する。

つい先日見たのは泣いている女性を男性が名前を呼びながらなだめている様子。女性は泣いていたが、その顔は怒っていた。

これは昼間の話だ。夜じゃない。
なんでこんな目立つ場所で彼らはそんなことになるんだろう。

それはきっとこの場所が「駅」と「街」とのあいだにあるからじゃないだろうか、そう思う。
多分商店街に入ってそんなことはしない。この日は休日で混んでいた。人目が気になり過ぎる。
多分駅に入ってもそんなことはしない。ひっきりなしに電車が出入りしているのだ。時間が気になりすぎる。
この場所は駅でもなくて、街でもない。人がとにかくいろんな方向に歩いてはいるのだが、道でもない。
とにかくなんだかよくわからない空間なのだ。

そのよくわからない感じが、人のよくわからない感情を引き出す。
次にまた同じようなものを見かけたら、やっぱりここは変な場所なのだと思う。

T食堂の店主(男性、70代)

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かねてから行ってみたいと思っていたT食堂へ行く。
お昼時間のピークを過ぎた頃だったが、客は4〜5人ほどいた。

日替わり定食メニューの中からハムエッグを選ぶ。
今日はサービスデイだとのこと。
普段は小鉢が1皿だけど、今日は2皿選べるらしい。
小鉢は、山芋とろろ、いりこぬかみそ、にする。

メニュー表はあるのだけど、いたるところにホワイトボードがあってそこにもメニューが書いてある。
小鉢のメニューは3時間おきくらいにローテーションするらしい。

店主は席にくるたびに、必ず一声発した。

「ごはんはどうする?うちはお変わり何杯でもできますよ。普通にしとく?結構多いよ。あ、少なめね、すりきりね。最初はそこからにしとく?」

とか

「ハムエッグはほんとに何もかかってないから。そこにあるの好きなのかけて食べて」

とか

「うちはね創業96年。前はね、中津のちょい福岡県よりのところで料亭してたの。そこから数えたら96年」

とか、とか‥。

とにかくサービスが旺盛なので、ついつい話しかけたくなってしまう。

噂によると第3月曜日にだけ裏メニューのカレーがあるとか。
もう少し通ってみて、店のオリジナルルールについて把握してみることにしたい。


◆メモ|「玉川食堂」の場所
カレーの有名店「ガネーシャ」と同じ地下にあり、「ガネーシャ」の奥にあります。地下への入口は「百万両」の横にあります。
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角打ちH酒店の客(男性、50代)

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小倉の街のど真ん中、H酒店へ行く。
この日は、取材の下見のために角打ちばかりまわっており、Hは3件目。

ほろ酔いでHに入る。
Hの店内は満員。20人ほどの客で賑わっていた。

店主のお母さんに「入れますか」と尋ねると、カウンターにいた客が奥に席を詰めてくれた。
お母さんが「いいよ」と言ってくれたので、店内へ。

サッポロ瓶ビールを冷蔵庫から取って小さなグラスで飲む。
Hの名物と言われているメニューを迷わず頼む。

お母さんは魚肉ソーセージを薄切りしたのとツナをまぶしたものに、玉ねぎをスライスをたっぷりのせた皿をカウンターに出す。そこに、ものすごい量のマヨネーズを勢いよくかけ、一味もたっぷりかけた。
その名物が想像以上の迫力だったので、一同で「おおー」と感嘆。

しばらくすると案の定トイレに行きたくなったので、お母さんを探すが、お母さんは忙しくて店内に見当たらない。
仕方がないので、いかにも常連そうな見知らぬ客にトイレの場所を尋ねてみる。

すると客は、

「外にあるよ」

と言って連れていってくれた。
店内から出て店の裏手にまわる。客は、

「本当は店内にもあるんだけど、今日は人が多いでしょ。だからそういう時はこっちのトイレの方がいいんです」

と教えてくれる。

客はやはり常連であるに間違いなさそうだった。
私は丁寧にお礼を言い、トイレに入ろうとする。

中は台所のようになっていて、忙しいお母さんが顔をだし、

「ありがとね」

とその客に軽く言う。そして、

「そこで靴脱いでね」

と私に言った。

角打ちでは、まるで家のように店を知り尽くした常連客が、必ず忙しいお母さんを助ける。

◆メモ|「平尾酒店」の名物
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証券会社勤務Y(女性、40代)

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証券会社の人と生まれて初めて話したかもしれない。
自慢じゃないが私は経済の仕組みにかなり疎い。

金融とか投資とか利率とか為替とか株価とか景気とか、どこがどう関係しているのか全然説明できない。
だから本当は、証券会社とかファンドとか不動産会社とか保険会社とか、正直に言うと銀行も、なんで商売になるのか全然よくわらかない。

だけど、ちょっと勉強してみたいな、という気だけは昔からあった。
たぶん、この業界に少しでも興味が持てたら、視野がちょっと広がるかもしれない、と思っているのだ。

そんなことから、今日会ってみることにした。
まずは勉強のために。モノは試しだ。

Yは会ってみると少し印象が違った。
電話で話したときとはもっと、なんというか、角ばったバックとか、とがったパンプスとか履いていそうなイメージがあったのだが、会ってみると、そういう派手さはなく、むしろかなり控えめな雰囲気の女性だった。ただ、座った時の姿勢がとても良い。

私は、とにかく初心者だから優しくしてくださいとお願いした。
Yは微笑みながら頷き、まずは私に

「どんなふうにお考えですか?」

と聞いた。
Yは心地よい声で、だけど的を得た落ち着いた喋り方をする。

私がボソボソと「勉強してみたいんです」と話すと、
Yは頷いたあと、初心者にオススメのプランについてまず3つ説明してくれた。

Yの説明はさすがにとてもわかりやすい。
私は、利率が高いとか低いとかよりも、利率がどうやってきまるのか、とか債券ってなにとか、株価ってなにとか、そんなことばかりを質問した。

子どもが「なんで、なんで」と質問するのとほとんど変わらない。
それは自分でもよく自覚しているので、すべての質問の前に

「あの〜、ちょっと教えてください」と前置きした。

Yは私の質問のあとに、必ずレフリーみたいな感じで指を揃え、手のひらを胸のことろまで上げ、

「大丈夫です」と言った。

1時間のあいだにYはそれを3度ほどやった。

私は、最近見ているNHK「あさが来た」の銀行に関する知識など、少ない知識を総動員してYの話を理解しようと務めた。こんなにもわかりやすいYの話を理解できなければ、私と経済との付き合いは金輪際終わりなのだ。
それでも、パンフレットにあるグラフの色がきれいだなあ〜とか、私の理解はたまに散漫になった。

だけど、結局、私はYのクレバーな営業トークに聞き入り、早い話、すっかりYを信用した。

「一番大事なのは、信用だす」

「あさが来た」のセリフを思い出した。

ラーメン店Kの店主(男性、50代)

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戸畑ちゃんぽんを食べようと昼にラーメン店Kへ行った。
ここへ来るのははじめて。

12時過ぎに着いた折、お客は3人ほどだったのだが、その後ゾクゾクとお客が入ってきて満席になり、店の外には行列ができた。

ごぼう天入り戸畑ちゃんぽんを注文。
次々とやって来るお客の対応に追われながら、厨房とカウンターとテーブル席を行ったり来たりする店主の姿があった。

10分ほど経って店主がちゃんぽんを運んできた。
私が思わず

「おいしそう〜」

と言うと。すかさず、店主が

「おいしそう〜じゃない!おいしいの!」

と言った。そして

「これ、絶対おいしいから入れてね」

と言って、天使の赤だれと書かれたタッパを指さした。

店主はすばやく厨房に戻り、その後も調理をしたり、お客の会計を暗算したり、ラーメンを運んだりした。
お客との会話からすると、どうやら普段は奥さんも店に出ているようなのだが、どうも体調を崩して今日は不在の様子。

忙しそうにしながら、それでも元気にお客と会話を交わす店主の声を聞きながら、私はコシのある細い麺をすすった。

◆メモ|「寛太郎」の戸畑ちゃんぽん
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登場人物Y(男性、60代)

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北九州芸術劇場小劇場で演劇作品「彼の地」を見る。
私がこの作品を見るのは、初演とあわせて今回で2回目。
「彼の地」では北九州市が舞台になっている。

登場人物Yは定年退職を迎えたエンジニアで、かれこれ40年前に東京からこの地にやってきたという設定。
Yは食品工場などで使う業務用機械の先進的な技術を北九州の小さな会社が持っているということを知り、憧れてこの地にやってきたのだという。

今でこそ、この地の住人であることに馴染めたYだが、入社したての頃はそうではなかった。
Yは会社で自己紹介をする際、自分がここに来た経緯、自分がどれだけここに来たかったかということを熱弁し、最後にこう挨拶を結んだ。

「今日からここを僕のふるさとにしたいと思います。」

私は驚いた。
いくら憧れているからとは言え、来て間もない土地で「ふるさと」だと言うその感覚は一体どんなだろう。

結局、Yは同僚たちに

「じゃかあしい。よそもん。」

と言われてしまうのだが・・。

実は、私の出身地は北九州ではない。
出生したのは名古屋市、幼稚園から中学生まで過ごしたのが東京都杉並区、高校からは福岡県福津市、大学は福岡市だった。北九州市に来るようになったのは、劇団に入団してからで、住むようになったのは市役所に入職してからなのだ。

だから、

「出身はどちらですか?」

この質問にはいつも戸惑ってしまう。
出身という言葉にはいつも「ふるさと」のニュアンスが含まれているからだ。
「ふるさと」と呼べる場所がない。このことは、一種の劣等感というか、コンプレックスを実感させた。

私と同じようにYにも「ふるさと」と呼べる場所がないのだろうか。
東京は「ふるさと」ではなかったのだろうか。
そうだとしたら、ああ言いきってしまうのは、結構な覚悟が必要だっただろう。

「ふるさと」の定義は厳密に言うと人によってマチマチだろうから、Yのように自分が言いきってしまえばそれはそれでアリかもしれない。

そう、
北九州出身の人々が自分の町を大して面白くないと言いながらも、飲んだ時には「この町が好きだから」とか、よその町に行ったときに「確かに良いよ。でもなんか悔しい」と言ったりするその「ふるさと」愛に満ちた様子は、私にはいつも羨ましく思える。

◆公演情報|北九州芸術劇場プロデュース「彼の地」

イラストレーターK(男性、70代)

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本日、取材に同席するためアトリエにお邪魔する。
取材は、北九州でお気に入りの観光スポットをK(敬称略)に聞くものだった。

しかし、Kはそんなスポットは「ない」と言った。
でも、好きなところはある様子。

聞いていくと、電車で門司から折尾まで、それから若松まで行くのが好きとのこと。一体何を見ているのかと、質問を重ねると、

「ヒト」

と迷わず話す。

「乗ったり降りたりする人、それからその後ろの風景。片方に海、片方に山が必ずある」

とのこと。
それから1時間半くらいKは、とにかく北九州で会った「ヒト」の面白い話を沢山した。

最後、私が

「絵を描くときは、あらかじめ何を描こうと決めているのですか?」

と尋ねると、Kは

「決めません。浮かんでくるものを描く。見せてあげる」

と言って絵をその場で描いてくれた。

その様子を見て初めてわかった気がした。

その瞬間に起こったコトや感じたモノをとにかく全部栄養にする。
変わらずにある物とか場所よりも、そこに生きている人に偶然出会う。そこから自分に何が起きるかという変化を何よりも楽しみにしているのだ。

私は、生きるためのお手本を見せてもらったような気がして不思議とホッとした。
帰りにはKに絵をもらった。



【役者紹介@花盛ル】守田慎之介編

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役者紹介も最後になりました。今日はもりしんだよ。
もりしんは、普段「いすと校舎」の劇作・演出・代表です。

私としては稽古場にこういう人が役者でいてくれるのって嬉しい。
演出はなんだかんだ言っても孤独なのだ。ね、もりしん。

役者としてのもりしんをじっくり見たのはこれが初めて。
普段はおだやかな喋り方で優しいんですけど、こんな役やったらどうなるのかなあと思い、書いてみました。
これがねえ、たぶんトロンとなりますよ、アナタ。今回の役で、もりしんはあらたなファンをゲットするだろうと私は確信しています。

いつもは、作家だと思って接してきたのもあって、もりしんがこんなに役者な人だとは思ってなかった・・・。
女性にとってグッとくる男性を書かせたら、おそらく私は北九州イチであろうと自負しています。

あとね、ほっぺにホクロがあるんだけど、これが好き、とかね。
まあ、喋りたいことはいろいろあるんですけど、とにかく騙されたと思って新生もりしんを見てみて!

劇場ブログでももりしんを紹介していますよ。
チェック!チェック!

【役者紹介@花盛ル】前元優子編

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今日はまえもっちゃん。
まえもっちゃんはね、普段ハキハキ喋るから、なんかさっぱりしたイメージなんですけど。
実は肌がキレイ、声もキレイ、そしてまっすぐです。
そういう嘘のない正直な感じを、絶対芝居で引き出したいなあと思い、今回の役にしてみました。たぶん、いつもと一味違うまえもっちゃんに皆さん会えることでしょう。

まえもっちゃんの台本の解釈を聞いていると、なかなかにウェットな人だということがわかります。気持ちをとても大切にするタイプです。
そして結構な妄想野郎。わたしと良い勝負だ!

けど、忙しくしているみたいなので、体だけは気をつけておくれ。
頑張り屋さんだから、倒れるんじゃないかと思ってたまに心配になります・・。
疲れたら休むのじゃ。

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稽古に入る前のアップ。
アップのメニューはみんなが考えてやってます。
みんなで踊ってる・・・いいな、楽しそう。

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稽古中にこんな遊びを!
ちくわぶ星人?サザエさん?

劇場ブログでもまえもっちゃんを紹介していますよ。
チェック!チェック!

【役者紹介@花盛ル】松本未来編

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今日はみっくりの紹介。

私は完全にみっくりの歳を間違えていました。
たぶんこのくらいかなあと思っていた歳よりも実年齢は7つ上だった。
くそ〜、騙された!見た目、若いんだよなあ。

でも、話してみたらわかります。ちゃんとしっかりしたお姉さんでした。
若く思えるのは、まだまだスポンジのように吸収したいって思う、みっくりの向上心と謙虚さによるものだと思います。人間、いくつになってもそうありたい。

みっくりも目ヂカラがすごいよ。あとね、声が低めでちょっと渋い。
場末のバーを経営しているママとかね、そんな役もやってもらいたいなあとふと思いました。
なんか、若いんだけど渋い、そっけなさそうに見えて従順、みたいな、ギャップがみっくりの魅力です。

今回のみっくりの役は「竜子」という役なのですが、竜子は自分で書いておきながら、どうも腑に落ちないようなところがずっとありました。でも、先日、稽古場でナイスな解釈が生まれたので、そのおかげで竜子のキャラクターがグッとクリアになりました。
今日は、これをみっくりがやるのが楽しみ。

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ね、こんな風にしてるとさ、
合宿所の布団の上で女子高生が喋ってるみたいでしょ。

劇場ブログでもみっくりを紹介していますよ。
チェック!チェック!
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