July 30, 2019
吉本興業問題で見過ごされている2つの「闇」
参院選の結果も「れいわ新選組」も丸山議員のN国入党も京都アニメーションの事件も気になりますが、この半月ほどいちばん気になっているのが、実は吉本興業問題だったりします。
きっかけは芸人による反社会的勢力への闇営業問題だったわけですが、そこから一気に芸人たちの不満が噴き出し、吉本興業の企業体質が浮き彫りになりました。「単なる芸能ニュースじゃないか」と思う人もいるでしょう。しかし、この話題を他人事とは思えずに見つめている人たちがいるはずです。会社に部品のように使い捨てられる人たち。パワハラ上司に逆らえず苦しい思いをしている人たち。「実力社会」「成果主義」の美名のもとに会社に都合のいい競争を強いられている人たち。この問題の結末いかんでは、彼らは自分の状況を諦めたり、絶望的な日常を受け入れたりするかもしれません。ですので、この問題は何としても希望のある結末にしなければいけないと思います。
すでに芸人たちの不当な労働環境は様々な形で明らかになってきました。しかし、決定的な「闇」がまだ2つ見過ごされていると思います。
1つは、芸人を都合よく使うテレビ局の問題です。吉本興業がこれほど巨大化できたのは、テレビ局に対して芸人を安価に提供してきたからに他なりません。バラエティ番組のひな壇の席埋めに、ドラマの端役に、果てはニュースのコメンテーターにと、芸人は実に都合よく使われています。テレビ局にとって、番組を成立させるうえで吉本興業の存在は極めて大きいのです。
それこそ宮迫が司会をしている「アメトーーク」の「仮バラシ芸人」の放送回で、そんな芸人たちの状況が取り上げられていました。「仮バラシ」とは、本命のタレントの補欠として芸人のスケジュールを「仮」押さえし、本命の出演が決まれば芸人側の「仮」押さえをキャンセル(=「バラシ」)することだそうです。仮バラシを受ければギャラは入ってきません。しかし「仮」とはいえスケジュールは押さえられているので他の仕事は入れられません。彼らは完全にテレビ局の都合に翻弄されているのです。
こういったテレビ局の傲慢な買い手市場ぶりは、もちろんテレビの情報番組では問題提起されませんが、ここが改善されなければ単に芸人への管理教育がきつくなるだけです。せめて「仮バラシ」に対してはキャンセル料を払うような仕組みを作るべきではないでしょうか。
「闇」のもう1つは、そこはかとなく気になっている「安倍政権と吉本興業との癒着」です。安倍政権は吉本興業に対し「クールジャパン機構」を通して最大100億円の税金を出資するとしています。また政権は沖縄で辺野古基地の建設を強行する一方、「基地跡地の未来に関する懇談会」のメンバーに、なんと吉本興業会長の大崎洋氏を選んでいるのです。
その代わりなのか何なのか、今年になって安倍首相は、吉本新喜劇に出演したり、松本人志と会ったりして、事実上の選挙アピールをおこなっています。吉本興業が会社ぐるみで安倍政権オシしているのは明白でしょう。
吉本興業の会長・社長・副社長は3人ともダウンタウン元担当であり、吉本の現体制は「松本王国」とも言われています。このところ松本は一見よさげなことを言っていますけれども、構造的には吉本トップと松本と安倍総理が密接に支え合う関係です。「加藤の乱」が鎮圧された今、吉本興業の体質改善は遠のいたと言えるのではないでしょうか。
吉本のパワハラ幹部がクビにならずに済みそうなのは、もしかしたら安倍政権への「闇営業」のおかげではないかと思ってしまいます。そうだとしたら、本当に「バラシ」をすべきなのは安倍政権と吉本興業との「闇」なのかもしれません。