久「『私とゆみが結ばれますように 竹井久』?これも書いた覚えないわ」

咲「『私は一と結ばれたい 竹井久』とかもありますね」

和「さすが部長ですね。私にはちょっと……」

久「違うわよ。私はこんな短冊書いてないわ。一体誰がこんなことを」

まこ「誰じゃろうな。全く見当もつかんわい。にしてもこういうのって本当に迷惑じゃな。『これからも私はまこと生きていきたい 竹井久』だなんて」

久「……」

久「ちょっと優希、あなたに頼みがあるんだけど」

優希「分かったじぇ」


風越女子

美穂子「さて、先日私たちが決定した件ですが」

ゆみ「ああ、久が誰を好きなのかは久の短冊を調べれば分かるって話だな」

一「そうだよ。みんなそろそろ久が誰を好きなのか認めるべきだよ」

美穂子「そんなことを言ってられるのもこれを見るまでです」

(例の短冊の写真を見せる)

ゆみ「奇遇だな。私にも見せたいものがある」

一「奇遇だね」

まこ(メール)『奇遇じゃな』

美穂子「ちょっとどういうことですか」

ゆみ「おい、いくら何でも久の短冊を偽造するのは良くないだろう」

一「ん?何か宅配便が届いてる」

美穂子「こ、これは……」

ゆみ「どうした?」


そこには一枚の写真が入っていた。

『私は洋榎のことを愛してるわ 竹井久』


まこ『送り主は誰じゃ?』

美穂子「大阪の愛宕洋榎とかいう人物です。大阪に上埜さんが短冊を書きにいくわけがないのでダウトですね」

ゆみ「いや、よく見るんだ。この背景にあるのはよく見れば上田城……長野だ」

一「どっちにしろ偽造だよ。きっと上田城の写真に無理やり合成したに違いない」

美穂子「いくら上埜さんが魅力だからってやっていいことと悪いことがあります」

ゆみ「そうだ。短冊の偽造なんてするやつは久の恋人にふさわしくない」

まこ『そうじゃそうじゃ』

一「それでどうするの?この中に本物はおそらく一つ。ボクのが本物に決まってるけどそれを証明する手段はないかな」

美穂子「確かに。これは八方ふさがりですね」

ゆみ「仕方ない。七夕前夜のアリバイを地道に調べていくしかないだろう」


優希「恐ろしいものを聞いてしまったじぇ。これは早く帰って部長に報告しないと……」


一「待て」

ゆみ「どうした?」

一「侵入者だ。会議は盗聴されている」

優希(しまった。もう音が立ってもいいから走って逃げるしか……)

が、その途端優希の足元に無数の包丁が突き刺さる。

文堂「侵入者を発見しました。ただちに確保します」

優希「最後に部長にだけは真実を伝えなければ……」

そして集まってきた風越麻雀部部員たちにより優希は確保されたのであった


美穂子「なるほど。盗聴とは感心しませんが、別にとってくったりするほどのこともありません。一つ条件がありますが、釈放しましょう」

優希「何だじょ」

美穂子「短冊偽造事件についての真実を言ってください。私の名前が書いてある短冊が本物ですよね?」

ゆみ「私の名前があるやつだよな?」

一「だまされちゃだめだよ」

まこ『わしが嘘をついてると言いおるのか?』

優希(真相なんか分かるわけもないけど多分全員嘘つきだじぇ)


???「そこまでだ!それ以上自分たちの罪で関係のない人を傷つけるのは良くない!」


美穂子「そ、その声は!」

照「短冊を偽造するなんて最低最悪。しかもそれを正当化しようとするあまり無関係の人に脅迫めいたことをするなんて真っ当な人間がすることとは思えない」

美穂子「そ、そういうあなただって本当はやってるのでしょう?」

ゆみ「そうだ。どうせ『お姉ちゃんと結婚したい 宮永咲』とかやってるに違いない」

まこ『そういえばそんなような短冊を見たような気がするのう』

照「私を見くびってもらっては困る」

美穂子「あ、ちょっと足がよろけました」ドン

照「あ、そ、そんな……」

照のポケットからはらはらと短冊が落ちた

ゆみ「何々?『和ちゃんと結婚したい 宮永咲』『和ちゃん大好き 咲』『麻雀部のみんなとずっと一緒にいたい 宮永咲』『京ちゃんの出番が増えますように 宮永咲』……何だこれは」

照「私は短冊偽造なんてしない!」

美穂子「だからといって勝手に短冊を回収するだなんて」

一「他人のことを言えた義理じゃないね」

まこ『それにわしは見たぞ、「お姉ちゃんと結婚したい 咲」という短冊をな!』

照「ふ、あれは咲が自分で書いたものだ」

美穂子「結局自分のことは棚に上げるのね」

照「違うな。あれは咲が幼いころに書いたやつを回収して毎年密かに私が咲の目にとまらないようにつるしてるものだ」

ゆみ「それは偽造してるのとどう違うんだ」

一「同じ穴のムジナだよ。まあボクのは本物だけどね」

優希(世の中すさみすぎだじぇ)

美穂子「もうこうなったらとりあえず一時休戦して部外者を放り出しましょう」

ゆみ「それがいいようだな」

照「かかってこい。私は短冊偽造集団には負けない」

一「かかれ!」


優希(今だ)


優希「というわけで現実は非情だったじぇ」

久「まあ、何も気づかなかったことにするわ」

和「にしてもお義姉さんには本当に困ったものです」

咲「『和ちゃんと結婚したい 宮永咲』」

和「何のことだかさっぱり分かりませんね」


カン