2008年05月16日

ヘンリー・ダーガーの謎  『非現実の王国で ヘンリー・ダーガーの謎』



最近読んだ新書「かわいい論」で知って気になったのです。
ヘンリー・ダーガーです。
その人をテーマにした映画を見てきました。
『非現実の王国で ヘンリーダーガーの謎』です。


彼は小さな頃に知的障害扱いをされ、施設に入れられます。
そこでは、イジメや体罰があったようです。
施設を脱走し、働くようになってから物語を書き始めます。
一生を通じて書いた大長編の小説です。
その物語の挿絵も彼自身が書いていました。
画の教育は受けていません。
雑誌や新聞の切抜きを集めていきます。
そこからコラージュ、コピーなど彼なりの技法を身につけていきます。
そうした末にできた小説は1万5千ページを越えるものでした。
挿絵は数百点以上です。
圧倒的な量です。


驚くべきなのはその存在が
彼が死亡する直前まで誰にも知られていなかったという点です。
彼は仕事が終わると
ひっそりと自宅にこもり自分だけの世界を紡いでいたのです。
アパートを出ることが決まり
大家や隣人が彼の部屋に入ったときに明らかになりました。
大家の夫妻の夫の言葉に共感しました。
うろ覚えです。

"人間、家族やテレビやラジオがなければ、
 こんなに凄いことが出来る。”


まさにその通りです。
耳が痛いです。
ちりも積もれば山となるです。
そんな安易な諺で括れるものではありません。
彼は誰かに認めてほしくて書いていたのではないのです。
評価を求めた痕跡がないのです。
あくまで自分の衝動に従うままにひたすら書いていたのです。
彼にとっては作品が人生そのものだったのです。
それゆえに圧倒的な量につながったのでしょう。


彼の生き様や作品には考えさせられます。
謎めいているから余計です。
他人との接触はほとんどなかったようです。
大家、隣人、教会の人以外とは。
幼児への興味は強かったようです。
お気に入りの幼児の写真の切抜きをなくしたときは
執筆をやめ、祈りに耽ったほどです。
生前の彼を知る人は口々にインタビューで述べていました。
彼は変な人ではあったけど、狂人ではなかったと。
仕事と創作活動を両立していたことからも
たしかにそう思われます。
量や質に関しての評価は意見が分かれるかもしれません。


しかしです。
やはり凡人とは違っていたと思います。彼は。
その圧倒的な創作のパワーからは
「天才」と呼ばれた人々との共通点を感じます。
最近読んだ先輩の卒論を思い出します。
そこで知ったのは病跡学です。
精神医学的見地から天才を分析する学問です。
アインシュタインなどの歴史的人物を分析の対象とします。
端的にいえば、天才と呼ばれる人々は
なんらかの精神疾患を持つ場合がかなり多いということです。


たとえば、躁鬱状態です。
躁状態のときに圧倒的な創作パワーが爆発します。
圧倒的な集中力で
圧倒的な量やスピードの創作や研究に打ち込むのです。
かと思えば、絶望的なほどのうつ状態も経験するのです。
そんな浮き沈みを繰り返している中で
天才と呼ばれるような歴史的偉業を達成するのです。
ヘンリー・ダーガーの生涯を扱ったこの作品を見て感じたのです。
作品の評価は別にして、彼は「天才」と呼ばれる資質をもっていたと。


なによりもこの作品のいいところは
ダーガーを真摯に忠実に浮き上がらせようとしてるところです。
良くも悪くも脚色できる余地が限られているともいえます。
最大の情報源が彼の作品だということもあるかもしれません。
彼を知る人がごく少数であることもあります。
本人の映像はもちろんのこと
写真も3枚しか残っていないような人です。
よくぞここまで!という印象です。
ほんとに彼の画はイマドキです。
ポップ加減がです。
グロテスク加減がです。
色彩感覚がです。
どれも古くないです。
驚くほどイマドキなのです。
アート界への影響の大きさはかなりのものだったと思われます。

映画の要所要所で
彼の画がアニメーションで動く場面がちりばめれています。
二次元でありながらも無理なく動く光景です。
なんともいえない味わいです。

アウトサイダーアートは最近知ったばかりです。
少し、知れば知るほど思います。
人間の可能性について考えさせられます。



非現実の王国で ヘンリー・ダーガーの謎 デラックス版 [DVD]
NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン
2008-09-26



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sakowha333 at 00:12│Comments(0)映画雑感 | 芸術・芸能雑感

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