D' s Basement supplement

キノコ・植物・博物館 このところ通常の更新はTwitterから、となっています。どうも8月21日以降設定変更されたAtomPubの相性が良くなく、うまくリンクまで設定できていません。なのでうまく更新されていないと感じたら http://twilog.org/sakumad2003/ をご確認ください

ICOM NATHIST講演のお誘い

国際博物館会議京都大会が2019年9月1日から7日に、京都国際会議場周辺で行われる。
この中には、自然史コレクションに関する国際委員会NATHISTも含まれる。9月2日から4日までの各日には京都で午前中に基調講演やプレナリーセッションが、昼からはNATHISTなどの各委員会が開催される。
国際委員会というと「会議」をするように聞こえるが、(もちろんディスカッションが中心の部分もある が、)実態としては博物館に関する国際学会だと思っていただいていい。
なので、自然史博物館にまつわる、様々な世界にアピールしたいこと、すべき活動を発表する場がNATHISTであると捉えてほしい。菌類に関する新しい博物館を菌学会に発表するように、博物館や博物館の活動に関する新たな視点を提供するような事例を発表してもらいたい。

一応参考に、先日全国科学博物館協議会でお話した内容を掲載しておく。

自然史資料を世界の共有財産として保全するために
ICOM-NATHIST の要求する管理者への保全努力と社会との "engagement" の追求
予稿PDF
http://jcsm.jp/wp-content/uploads/2019/02/26case16.pdf
発表スライド
https://www.slideshare.net/sakumad/icomnathist-engagement

全国科学博物館協会による参加費助成
http://jcsm.jp/collection/icom%E4%BA%AC%E9%83%BD%E5%A4%A7%E4%BC%9A2019%E5%8F%82%E5%8A%A0%E7%99%BB%E9%8C%B2%E6%96%99%E5%8A%A9%E6%88%90%E5%8B%9F%E9%9B%86/

講演申し込みサイト
ICOMメンバーでなくても講演はできます。
https://icomnathist.wordpress.com/conference-2019/

後ほど西日本ネットで解説つけます
<追記>
つけました。こちらです。http://www.naturemuseum.net/blog/2019/03/post_71.html

参加者登録サイト
全日程での参加の場合以外は急ぐ必要はありません
講演は1日参加でもできます。(講演日が決まってからの申込みでも1日券は料金変わりません)
http://icom-kyoto-2019.org/jp/reg-guideline.html

2018年総括その4 2019年への展望と抱負

里山・生態学
里山はお誘いしていただいている科研費が当たるか外れるかでまぁどの程度力を注ぐかは大きく変わる。
能勢のこと、和泉葛城山のこと、などなど地域の動きがどうなるかでも変わるだろうなぁ。そうそう、生態学会神戸大会もあるんだった。

博物館学
評価関連のプロジェクトは間違いなく動くだろうと思う。これらは法改正なんかにも絡んでいきそうなので手を抜くわけにも行かない。

文化財保全、というかレスキュー絡みの動きも、ことによるといろいろと動くことになるだろう。
博物館人でいる以上、すべての仕事は博物館学に関わってくるので、雑事を雑に終わらさず記し、記事にするという覚悟で臨まなければならない。

何よりもこの分野では2019年には否応なしに2つのことが起こる。
一つは大阪市の博物館の地方独立行政法人化。インサイダーのものとして何をどう語れるのか、悩みながらも歴史の証人としての発信の責務がある。
もう一つはICOM京都大会である。世界の中の日本の博物館を明確に意識する機会になるだろう。自然史博物館のオフサイトミーティングは大阪市立自然史博物館で行われることになる。

何れにせよ当事者として、お仕事としてこれらは関わることになる。関わる以上は雑事にはしたくない。

きのこ
きのこ展の解説書をあのままで終わらせるつもりはないので、これが自分的には当面の課題。

1月12日から行われる咲くやこの花館の「POPなきのこ展」(謎なタイトルだが)やオオサカきのこ大祭にもまぁ無関係ではいられない。
とは言え2018年のようにキノコ専業ではいけないこともまた確か。
アマチュアの皆さんとの仕事を形にすること、博物館の蓄積を形にすることを中心に、少しずつでも着実に進めていければと思う。

おそらくは2018年よりも更に激しくしんどい状況になるんじゃないかなぁとも、予想するのだが、諦めず、進めていこうと思う。


2018年総括その3 きのこ・菌類

きのこ展

2018年私が何をしたとしか、ということで言えば、やはり特別展を行った年、ということになるだろう。
学芸員にとって、特別展そのものが最大の作品、業績でもあり、来場者がその最大の評価者でもある。
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まぁとは言え、展示にはピアレビューシステムがあまり機能していない。館内では、事後に総括という自己評価の仕組みがあることはあるのだけれど、異なる立場の業界の人からのきちんとした批評というのは受けてみたい。(SNSの一言、ではなく論評として)

オーソドックスな「書いたもの」としての業績としては

解説書として発行した
佐久間大輔 2018 『きのこのヒミツを知るために ─観察から始めるきのこ入門─』大阪市立自然史博物館 100pp.
お求めはこちらからhttp://omnh-shop.ocnk.net/product/1722
があるが、他に

佐久間大輔 2018 きのこ展3つの愉しみ方 標本と図譜から見る、研究者たちの交流. NatureStudy64(7):2-4
がある。これも時間がない中でよく書いたもんだ。

博物館学のところに書いたロジックモデルのものも含め、いくつかの文章をまとめ的に書こうと思っている。
一つはもう原稿段階まで行ってるのでぜひ正月の間に目鼻を付けたい。


この他に
佐久間大輔 菌学を学ぶ学生のための,学芸員資格取得のススメ 日本菌学会ニュースレター2018-1:14-15

佐久間大輔・藤田 博昭・榎本輝彦 2019? 京都市の変形菌:榎本輝彦コレクションより変形菌36号(印刷中)

などがある。

学会発表は
佐久間大 輔 2018 菌類コレクションはどのようにして 形成されるか —採集者の多様性— . 日本菌学会信州大会 2018年5月
名部みち代・森本繁雄 ・大久保泰和・齋木達也・佐久間大輔 2018 青木実 菌類資料の研究. 日本菌学会信州大会 2018年5月
など。

この他に、共著のもので査読に敗退したり再チャレンジ中のものが4つくらいあるんだけど、これらはそのうち花開くことでしょう。

2018年総括 その2 博物館、教育関係

博物館関係
きのこ展関係のものはのぞいてもそれなりに色々書いている。


●前からの課題が形になったもの
佐久間大輔 2018 自然史系博物館をとりまく重層的ネットワーク――博物館のネットワーク
『ミュージアムのソーシャル・ネットワーキング』博物館情報学シリーズ3
考えてみればこの現行の初稿を上げたのは2015年7月の入院中のベットの上。正直もう出ないかと思った時期もありました。
2018年5月の国際博物館の日の講演で話した元ネタも入ってます。
ちなみにその日のプレゼンはこちら


佐久間大輔 2018 共生の時代のアウトリーチとアドボカシー: 生態学コミュニケーターの担うもの. 日本生態学会誌 68:223 - 232
こちらに至っては2013年の生態学会のセッションまとめ的なものです。しかも私はこのセッションのプレゼンテーターでないという。まぁ形になってよかった。

●教育関係でもいくつかの発表といくつかの文章になった
共著者のおかげ。

佐久間大輔 2018 大阪市立自然史博物館と市民科学 ―資料の収集・研究から教育普及までの協働― シンポジウム「新」自然史博物館@台湾国立博物館南面公園分館

佐久間大輔 2018 市民科学のプラットフォームとしての自然史博物館(序論として)サイエンスコミュニケーション協会誌 8(2):10-11

釋 知恵子・佐久間大輔・横川昌史 2018 幼児が出会い・関わり・次につなげる博物館体験のデザイン. 日本理科教育学会岩手大会

●評価 今年から2つほど博物館評価のプロジェクトに参加している。以下の1つ目はどちらというと私は「まな板の上の鯉」。

釋 知恵子・佐久間大輔 2018 特別展「きのこ!キノコ!木の子!」におけるロジック・モデル. 日本文化政策学会 第11回年次研究大会 平成30年11月24日
これはきのこ展まとめとも絡んで話にしなくっちゃ。

佐久間大輔 2018 博物館行動規範における研究の位置づけ. 博物館における研究評価研究会
まだ形には全然していない。。


●ICOM関係
佐久間大輔 2018 ICOM 京都大会 2019に何を求めるのか. 全科協ニュースvol48_no5「ICOM京都大会2019開催まであと1年文化の拠点としての科学系博物館の取り組み」
http://jcsm.jp/wp-content/uploads/2018/09/vol48_no5.pdf

●保存科学
この分野はもう1つ2つ書きたかったのだが。
浜田信夫・佐久間大輔 2018. 自然史博物館の収蔵庫と展示室における落下カビ調査. 大阪市立自然史博物館研究報告 72:161-166
https://ci.nii.ac.jp/lognavi?name=ir&lang=ja&type=pdf&id=http%3A%2F%2Fid.nii.ac.jp%2F1504%2F00001299%2F&naid=120006425249


あと昨年度末だが
レガシーとしての自然史標本を継承・発信するための事例集にもちょこちょこ書いたり
「ただ外国人のためだけでない多言語対応のために」なんて講演をしたり遺贈寄付のことなども少し話しているのだが、形にはできていない。
少しずつ、着実に。

2018年総括 その1 里山・生物多様性関係

毎年恒例の年末総括であります

里山に関する2018年の動きは予想に反していろいろな展開を見せた

●草山
2015-2018年にかけて行ったプロジェクト
「草山」はいつどのようにして里山林となったか―里山の今を理解し管理する視座としてhttps://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15H02855/
のまとめとして
2018年3月の日本森林学会でテーマセッションを開催した。
私のパートは
佐久間大輔 2018 大阪の里山はどのくらい草山だったのか―過去の利用と変遷を考えるhttps://www.jstage.jst.go.jp/article/jfsc/129/0/129_749/_article/-char/ja

さらに
そしてこの内容を『生物科学』70(4)に特集として投稿したことが最大の進展といえるだろう。
多分年を明けてしばらくしたら、刊行されるはず、、、です。

ちなみに、これのもとになる話の一つは
佐久間大輔・風間美穂 2018 きのこから大阪の里山を考えるいくつかのヒント. Nature Study 64(9):2-5
としてすでに刊行しています。マツタケ話は改めてまとめたいなぁ。

あと、こんなものも書きました
佐久間大輔 2018. 生物多様性保全と里山管理.「人と植物の共生 ―都市の未来を考える―」(「人と植物の共生」編集委員会編)大阪市立大学、大阪:17-21.

●能勢
昨年に引き続き、森里川海事業に関係して能勢と吹田といったような農村と都市の交流の議論を今年も続けた。8月末には吹田市でのフォーラムもあったのだが、いつものようにパネルディスカッションコーディネーターをさせていただいた。
http://www.city.suita.osaka.jp/home/soshiki/div-kankyo/kankyoseisaku/biodiversity/_91931.html

実は能勢に関してはちょっと大きな申請をしてそこに結構力を使ったりもしたのだが、まぁうまく行かなかったので改めて何かの時に。(一部は天満さんに上記の特集の中で原稿にしてもらった)


●昨年結構時間を取られたのが大阪市の多様性戦略は
とりあえずこういう形で公表されました
大阪市生物多様性戦略http://www.city.osaka.lg.jp/kankyo/page/0000431225.html

まぁ正直課題も多く残り2年後の改定に向けてのステップと位置づけているところなのだがそうしたこともあり、以下のようなまとめを書いた。

佐久間 大輔 2018 都市域における生物多様性戦略を考える(試論として). (特集 都市の生物多様性地域戦略の課題と展望) 地域自然史と保全 40(1), 53-58


●生物多様性協働フォーラム関連も収穫の一年となった。
つい最近出たものとしては

西田貴明・橋本佳延・三橋弘宗・佐久間大輔・宮川五十雄・上原一彦 2018 多様な主体の参画と協働を促す交流イベントの生物多様性の主流化への効果−普及啓発イベント「生物多様性協働フォーラム」の実践とその効果の検証. 保全生態学研究 23 : 223-244

があるが、その他に(もう年度としては昨年度だが、)季刊政策・経営研究の特集号が出た。
私もいくつかの報告を書いた。

佐久間 大輔・濱崎 加奈子 2018 文化多様性から生物多様性への気づきを. 季刊 政策・経営研究2018-1:58-67

佐久間大輔 2018 生物多様性保全を社会の中で実現するために. 季刊 政策・経営研究2018-1:87-94

西田 貴明・橋本 佳延・三橋 弘宗・佐久間 大輔・宮川 五十雄・上原 一彦・舛田 陽介 2018生物多様性の主流化に向けた課題と展望(まとめ).季刊 政策・経営研究 2018-1:106-115

これらはこちらから読むことができる

更に派生的ですがこんな講演にも繋がりました。
佐久間大輔 2018 自然への気づきと 感情的理解のための 生物文化多様性 2018.11.23 「野生生物と社会」学会@九州大学伊都キャンパス
若干かぶるようなかぶらないようなテーマ。これもなんか書かないとなぁ。

この他、生物文化多様性の関係で

台湾にも行ってきました(2018年11月)

イスラエルから帰り、自然史フェスティバルといくつかの学会をこなし、バタバタと台湾にもでかけてしまった11月でした。これは「新」生態博物館というシンポジウムで、市民科学の振興の上で、自然史博物館の役割を見つめ直す取り組みで、日本からは大阪自然史と琵琶湖博物館が参加、講演とともにデモンストレーションも行わさせていただきました。初の台湾でしたが、今後も続く交流になりそうに思いました。





美味しいものも色んな場所も見させていただきましたが、そのへんはフェイスブックのタイムライン、11月後半をご覧ください。(公開にしておきましたので、フェイスブックをお使いでない方もご覧いただけます)

イスラエルに行ってきました(2018年11月)

10月の末にきのこ展を終え、一週間でとりあえず片付け、11月頭からイスラエルへ行ってきた。来年のICOM京都大会での自然史博物館委員会の準備のためだ。
イスラエルという、まぁ一生の間にそう何度もいきそうもない場所であったが、博物館学的にも、歴史観の上でもなかなか刺激的な経験であった。今回はツイッターと言うよりはフェイスブックに多めに投稿していたので、主だったところを埋め込みながら、まとめておいた。
食べ物やその他のエピソードはフェイスブックの11月前半の記事をさかのぼってみてください。
公開に設定してあります。

オフィシャルの記事



ビジネスミーティング

↑これは理事会にオブザーバー参加していた様子。

テルアビブ大学でのセッションと見学。

教育系の発表も多く、なかなか刺激的でした。
スタインハルト自然史博物館

その他
https://www.facebook.com/sakumad/posts/2056154034442254
https://www.facebook.com/sakumad/posts/2056614517729539
https://www.facebook.com/sakumad/posts/2056621587728832

エルサレム
エルサレムでは、ヘブライ大学の自然史コレクションについてのレク、現在計画中の自然史博物館、科学博物館の現在の取り組みなどを聞きました。

もちろん、旧市街も見学。保存のスケールも、状況も、日本とはだいぶ違う。いろいろ考えさせられる。



死海へのエクスカーション



https://www.facebook.com/sakumad/posts/2068273876563603

エルサレム雑感

エルサレム滞在は個人的には観光以上の何かを持っていた。
それは自分の個人形成のバックグラウンドとしてのカトリッククリスチャンとしての背景のなにかであり、ある意味そうしたおかげで民族や宗教、というものを無視せずに現実世界と向き合って文学や歴史の背景理解をしようとしてきた20代の自分との再開のようなものであった。別に隠すつもりもないし、文章としても書いてきたことだが、20前後の時間の多くは、横浜教区カトリック学生連盟というグループに身をおいていた。本部代表まで努めたので、まぁどっぷりと言ってもいいのだろう。土日に仕事を持っている現在、教会に通うという日常は私の中にないが、早朝に一人でエルサレムをさまよった時間にふと自分の中に呼び覚まされたフレーズもあった。

学連の祈り

全能永遠にまします天主
願わくは精霊を遣わし給いてこの集いを祝し
我らをして主の善徳に習わしめ
愛と忠実と深き謙遜とを持って
我らの言葉と活動とを
御身の御栄のために
捧ぐるを得しめ給え
我等の主イエズス・キリストの名によりて
願い奉る
アーメン


たしかなにかの「派遣を求める祈り」のバリエーションであるが、
少なくとも90年代の横浜教区カトリック学生連盟では、例会を始めるときにこれを唱和していた。早朝の聖墳墓教会で祈りの間でふと断片的に思い出し、全文を思い出したのは小一時間ほどたってからだった。自分の中に全文が残っていたのを驚くような、喜ぶような。もうひとつは「学連聖歌」とされていた「おおしくも」かな。

「おおしくも」
おおしくもいさぎよし つわものぞ主のため
そのいのちささげたる あわれそのいさおし
あめつちはよしや つくるともそのみなは
つきせずとこしなえに

主を知らぬ世のために いのちすらおしまで
血潮もて示したる とおつおやのいさお
あめつちはよしや つくるともそのみなは
つきせずとこしなえに


いつわりをゆるさざる けがれなきこころを
ひのもとにかかげたる その愛ぞとうとき
あめつちはよしや つくるともそのみなは
つきせずとこしなえに


記憶だけなのでちょっと歌詞曖昧。いつか、自分の葬儀に学連関係者がいたらぜひ歌ってもらいたい聖歌である。内容はキリスト教伝来の頃の信者、いわゆる26聖人のことを歌っている。

しかし、こうしてみるとどちらも見事に古文調であり、大学生が「インテリ」だった私達より前の時代の名残だったかもしれない。「おおしくも」の方は聖歌集にのっているのと比べてもかなり時代がかっており、「軍歌みたい」という声もあったほど勇壮な感じがある。

まぁ、どういう意味かの解説を高校生にしなきゃならなかったのを思い出す。
検索してもすぐには出てこなかったので、自分用にメモ。

最後のギャラリートークで喋ったこと

きのこ展

今回のきのこ展では9回のギャラリートークを行ったが、最終日に番外編としてもう一度行った。
蛍の光が流れてもお客さんが展示物の前から動かないのを見て、区切りが必要と考えて、16:50分からクロージングアドレスとして行った。
話したのは、
私がきのこの研究に踏み入ったのは大学院から、と比較的遅かったといえるでしょう。
その最初の何もわからない頃に、いろいろ教わったのは関西菌類談話会の上田さん、吉見さん、そして本郷さん、まだ滋賀大学にいらっしゃった横山さんといった方々でした。
そして縁があって、博物館に就職をし、彼らの資料を博物館で引き取ることができました。でも、同時にそこで終わらしてはいけない。
ここに展示したように、多くのアマチュアが研究者と相互に影響をしあい、本郷さんも川村さんや今関さんの影響を受け、川村さんも本草学者や海外の研究者の影響を受けてきました。
そうした、新旧世代をつなぐのは図鑑などとともに、標本でした。今関さんも安田篤の残した標本をもとに研究をし、今井三子も南方熊楠の標本を活用していました。
そうして受け継がれたものを、これからの研究に、これから学んでいただく皆さんにつないでいくために、今回の特別展を開催しました。
先人の膨大な資料が伝えるきのこの魅力で、私も勉強してみたい、自分も標本を作ってみようという人が一人でも現れたら望外の喜びです。そこまで行かなくても、山できのこを探してみようでもいいし、今夜の晩御飯にきのこを食べよう、でも構わないとおもいます。
きのこ展に来てくださった皆さんが、きのこの魅力になにかしら感染して、明日からの自然の味方がちょこっとでも変わっていたらと思います。

本当に最後まで熱心にご覧頂きましてありがとうございました。

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表現としての博物館展示(きのこ展の閉幕に向けて)

きのこ展

特別展「きのこ!キノコ!木の子!」は今日を含めてあと2日間で閉幕をする。
いろいろな展示内容を詰め込んでみたが、実現した展示も、作りきれなかった展示もある。

この特別展にあたって、作った解説書は前回同様、きのこを学ぶための入門書としてつくったので、一部は展示とも重複するがほとんどが独立のプロットとなっている。造り手としては同時に2つのプロダクトを準備し、同時にリリースするというかなりしんどいやり方にチャレンジしてみた。

そして同時に、今回の特別展は特に、展示を公開して完成とせずに、だいぶ展示品を入れ替えたり追加したりを続けた。最終週まで。相談コーナーに(なるべく)座り続けたことも含めて、展示を作り上げてリリースではなく、ずっと関わり続けた展示となった。

特別展は通常、「ケースを閉めたら観客にその解釈をゆだねるもの」として捉える学芸員が多い。しかし、毎週末のように開催したワークショップ、ギャラリートークを含め、うちの特別展はムーブメント的な側面が強い。これは、市民参加型で作り上げた特別展では、皆で取り組んできたことのグランドフィナーレ的な側面があるためになおさらでもある。今回の特別展も過去ずっとアマチュアの皆さんに支えられてきたものを表現している、という部分はなくはない。

しかしそれよりも、今回のきのこ展は一学芸員としての佐久間の、盛り込みたいこと、伝えたいことをベースに作り上げたプロダクトという側面が強い。「記名性のある展示」ということは実は私達が大切にしていることでもある。その意味ではこの展示は紛れもなく佐久間のプロダクトとなっている。

以前全国美術館会議の教育普及部会で呼ばれて講演をしたときに、美術系の学芸員と、作家(画家)と、自然系の学芸員で話をしたときに、自然系の学芸員と作家の立ち位置のほうが美術系学芸員よりよほど近い、ということが非常に新鮮であった。これは自然系だけでないかもしれないが、自分の研究を背景に、体系を示す展示を行う場合には学芸員は一人称で語る。
美術館学芸員にとって、一人称は作家(画家)のものである。一人称の声をなるたけ邪魔しないように、小声で三人称で語っているように思う。主張ができるのは作家本人が参加して回顧展をやる場合、などだろう。
配列などで語らせることはあっても、作品の個性を超えて美術史の体系を語るのはうるさかろう、という気持ちはわからないでもない。(でもそういう特別展も時々面白いなぁと思うものに出会う)

今回のきのこ展では、様々な声を展示に載せた。学芸員の想いや目線だけでなく、様々な文学作品のきのこへの言及(はしゃぐ牧野富太郎を含む)、過去の菌学者の目線も文字にして示した。多少うるさいほどだったかもしれない。しかし多くの観覧者は驚くほど解説を読んでくれている、というのは主催者としては予想外の熱量を感じる瞬間だった。

展示の冒頭にインデックスとなる3つの展示を作った。たくさんの標本を展示したのはきのこの見方を伝えたいこと、生活の中のきのこを伝えたいこと、きのこを見つめた菌学者の目線を伝えたいこと、それぞれをフリーズドライ標本、しいたけ栽培やまつたけ狩りのパンフ、図鑑原画を展示したケースとパネルで端的に示した。これは一人称で語る展示でしかできないことなのだろう。

そして、解釈を委ねず、質問に曖昧にではなくできるだけ明確に答え、ギャラリートークでも研究に基づいた菌類の生態を語ってきた。「皆の想像をふくらませる」というのとは少し違い科学でわかること、わからないことにどうアプローチしているのかをできるだけ平易に伝え、「わからない」ことへのチャレンジの面白さ、「知的好奇心」を刺激してきたつもりだ。科学においては勝手に想像させることが好奇心をふくらませるのではなく、過去チャレンジを知り、いくつもの可能性が立たれた先にある追求の中にこそ好奇心がある。過去の積み重ねを嫌というほど見た上での展望、これがグーグルスカラーに書かれた「巨人の肩の上に立つ」である。

科学の特別展において膨らませてほしいものは好奇心であるそれは、語り手の抑制の中で呼び覚まされる想像力とはちょっと違うだろう。研究者が自らの信じることを語る教育的アプローチと、それを抑えて相手の論理を引き出す交流アプローチは異なる手法だ。きのこを求めてやってくる人々を想定して、その沼の深さを、奥深さを示すことを画策して、きのこグッズの展示やキャラに全く逃げず、菌学、きのこの探求というストロングスタイルで展示を語りきったつもりである。

さて、この展示はあと2日で扉が閉まる。そのときは作者としての私も全く手が出せなくなるわけだ。観覧者に対してどういう印象を残したのか、その評価は展示の意図したことに対して、どう効果が上がったのかで評価したいと考えている。その意味では、「展示で伝えたいこと」は私にとっては特別展という博物館事業の求めるゴール、ミッションでもある。それは明示しておいたほうが少々強引な一人称の語り口も理解しやすかろうという見取り図でもあったわけだが、それが成功したかどうかは、まだわからない。アンケートや様々な評価分析で改めて検討してみるべきものだろう。






THETAで空間アーカイブ

横須賀市大滝町のサクマ商店をTHETAでアーカイブしてみた
まずは1F。入り口から奥へ。
横須賀市大滝町 サクマ商店 1F-0 - Spherical Image - RICOH THETA



大滝町 サクマ商店 1F-1 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA



大滝町 サクマ商店 1F-2 - Spherical Image - RICOH THETA



大滝町 サクマ商店 1F-3 - Spherical Image - RICOH THETA



この辺から毛糸コーナー
一番奥の少し下がったあたりだ
大滝町 サクマ商店 1F-4 毛糸売り場付近 - Spherical Image - RICOH THETA



大滝町 サクマ商店 1F-5 - Spherical Image - RICOH THETA



大滝町 サクマ商店 1F-7 - Spherical Image - RICOH THETA



見事に商品がいっぱい。
大滝町 サクマ商店 1F-6 - Spherical Image - RICOH THETA



大滝町 サクマ商店 1F-8 - Spherical Image - RICOH THETA



階段下のあたり
大滝町 サクマ商店 1F-9 階段下あたり - Spherical Image - RICOH THETA



大滝町 サクマ商店 1F-10 - Spherical Image - RICOH THETA




撮影者と社長が写り込んでますが
大滝町 サクマ商店 1F-11 - Spherical Image - RICOH THETA



M2, 2Fはまた。

身近なコケ

コケにも沢山の種類があると聞いたんだけどまちなかに分布する全種の生態と分布を教えてほしいという非常にアバウトな質問を頂いた。
どう答えたものかとおもいつつ、以下のような答えを書いてみた

ご指摘のように「コケ」とひとことで言っても沢山の種類があります。平凡社の「日本の野生植物コケ」によれば、国内のコケ植物は1700種を超えるといいます。ただし、この数字は生物学的にコケ植物としてあつかわれるものだけですので、日常的に「コケ」とよんでいるものはウメノキゴケなどの地衣類も含んでいますから、その数はもっと増えます。
ではこのうち、まちなかにはどのくらいの数のものがいるでしょうか。難しい質問ですが、全国農村教育協会の「校庭のコケ」という本には190種が掲載されています。実際にはこの190種以外の苔も長居公園などにも見つかりますし、大阪では近所の公園にはいない種類も載っています。ですが、コンクリートの目地などによく見るギンゴケやホソウリゴケ、溝などによく見るハリガネゴケの仲間やジャゴケなど、コンクリートの上をオレンジ色に染めている地衣類のダイダイゴケなど、主なものはしっかり調べることができます。図書館などで借りてみるときっと参考になると思います。

参考になるかどうかわかりませんが、以下は無料で閲覧いただけます。

日本の貴重なコケの森 「京都市東山山麓」
https://ci.nii.ac.jp/els/contents110009662797.pdf?id=ART0010139650

大阪府蘚苔類資料1 大阪城公園の蘚苔類
http://www.mus-nh.city.osaka.jp/publication/bulletin/bulletin/62/62-002.pdf

大阪府蘚苔類資料2 長居公園(大阪市)の蘚苔類
http://www.mus-nh.city.osaka.jp/publication/bulletin/bulletin/64/64-004.pdf

大阪府蘚苔類資料3 万博記念公園(吹田市)の蘚苔類
http://www.mus-nh.city.osaka.jp/publication/bulletin/bulletin/68/68-004.pdf

大阪府地衣類資料機ツ控鏝園(大阪市)の地衣類相および 日本新産種を含む興味深い4種について
https://omnh.repo.nii.ac.jp/?action=repository_uri&item_id=1235&file_id=22&file_no=1

博物館は20年後の自画像を描けているか?

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先日、上野の東京文化財研究所で開催された日本博物館協会と学術会議の合同開催による
シンポジウム
これからの博物館の在るべき姿
〜博物館法をはじめとする関連法等の改正に向けて〜

に参加してきた。
日本学術会議 史学委員会 博物館・美術館等の組織運営に関する分科会からは 「21 世紀の博物館・美術館のあるべき姿 ―博物館法の改正へ向けて」 という提言がなされ、
また日本博物館協会からも「博物館登録制度の在り方に関する調査研究」報告書が刊行されたのを受けて開催されたものだ。 100名あまりの参加。チラリと見回しただけでも中部、関西、中国地方からも、参加者がチラチラ。館種も自然、美術、歴史といろいろ。規模も中小館も含めてと、事前の広報が弱かった割には結構意識高い学芸員から注目されたシンポと感じた。
内容について、いずれオフィシャルにも何か出されると思うが印象に残ったものを羅列的に。
学術会議側から
  • 日博協の登録制度の報告書は案外高く評価してもらえた。(リップサービスもあるかも)
  • 人類と社会のため、だけでなく個人のためにという視点。
  • 博物館を研究機関として大学関係者側から認知させるのはまだ案外大変。
  • そのことには現行の学芸員資格だけでは駄目なのだろう。
  • もちろんその一方で学部卒で学芸員になっている人は非常に少ない、という実態があり、大学院を終えて学芸員になっている現実が伝わっていない。
  • 日本の研究をそこ上げるために博物館の研究条件をどう上げていくのか、その合意形成を図っていかなくては。
  • 文明装置としての博物館をあるいは国家の宣伝装置としての博物館のところも気をつけないと。
  • 研究条件の事も相まって、博物館にどういう職が必要なのか、そこらを真剣にデザインして行かないといけない。
日本博物館協会側からは

  • 平成29年法改正で積み残された登録制度と「望ましいあり方」のねじれ。
  • 今回の登録基準案では、ははひろくミニマムなスタンダードをクリアできれば博物館として認め、ただし、定期的な再認証で改善が図られることを求めた。
  • より高い目標ハイアースタンダードとしての基準も作る
  • そうした部分を一気に法制化するのは難しいので自主認証などの仕組みも検討したい
  • 法の体系、所管官庁の機構改革、ICOMの博物館の定義など、様々な要素を睨んで検討を深めていく必要。

こうした議論を聞いて、私が思ったことは、まず個々の博物館で、自分の館にはどんなスタッフが必要なのか。考えておくべきだと思う。
  • なんでもできるスーパーマンは居ない。いや、スーパーマンに何でもやらせていたら単なる雑用係にしかなれないと言うべきか。
  • 学芸員資格にしても、あれは本当に学芸員になるための制度なのか。博物館経営論や展示論にしても、あれぐらいのベーシックなことは事務型の総務担当やエデュケーターも知っておいた方がいい。
  • ましてや事務長や館長になる人間は必須とすべき内容だ。
  • 学術会議の研究職と事務職みたいな二分法で考えない方がいい。研究と教育の両輪で活躍できるのは教員も学芸員も悪くないし、アドミニストレーションなんて研究者がやっても事務的内容がすごく多い。でもそこもやる人は必要。事務だけど研究の面白さ知ってる広報担当や事業連係担当がいたら素晴らしい。
  • これからは博物館のことをよく知ってる学芸員と役所から来た事務とが対立して回すのではなく、物と研究を扱う学芸員だけでなくてアーキビストとか司書とか教育スタッフとかコミュニケーション担当とか、製作スタッフ、そして寄付金集め、行政連携担当などなど、違う専門を持ったプロ集団が博物館を回していくやり方にしていきたい、というかすべき。そのためにどんな専門スキル教育が必要なのか。
  • そんな中で学芸員資格とか教育をデザインしたい。ミュージアムベーシックというのなら学芸員だけでなくてそれらの職種全部を視野にいれるべきだ。
  • もっと言えば、キャリアの中で自分が次に博物館の中でどういう役回りをしたいかセルフデザインできているか、という事も問われるだろう。そのときに、足りないスキルを身につける方策があるか。
  • そんなことが可能なような研修機会がたくさんあるといいと思う。学芸員課程は資格を出して終わりじゃなくてアフターサービスで存在感を示そう。
こうして博物館が20年後の自らの姿を想像して、どういう人材が揃っていてほしいか、今の若手が自分が退職する頃にどういう人材を採用したいのか、想像して制度設計の青写真を描いて、ようやく実現するかどうか。(そんなスピード感ではダメだろう、とは思うけど人材育成の制度を来年変えてもその人材が育って博物館で活躍するのはどんなに早く立って4〜5年位あとだ。制度を変えるのにだった数年はかかる)。
博物館の高機能化や学芸員の高度化はそんなふうに我が事として考えていきたい。

2017年懺悔その3 博物館学

結果的に見ると2017年一番豊作だったのは博物館学関係かもしれない。
それは昨年3月で科研費が一つ終わり、その成果出しとしての報告書がで、それに関連した発表や執筆の機会が多かったことがある。
報告書で私が主に関わったのは以下の5報。

日本の博物館のこれから 「対話と連携」の深化と多様化する博物館運営 
(こちらから各論文を閲覧・取得できる)

山西良平・佐久間大輔 はじめに
佐久間大輔 博物館の市民対話と協働 成長のための今後の課題
和田岳・佐久間大輔 ミュージアムショップは売店でよいか?
佐久間大輔・大原昌宏 資料管理と保全をめぐる対話と連携 -市民参加型のバックヤードマネジメント-
佐久間大輔 博物館総合調査から見た直営館と自治体出資法人指定管理館の現状と課題 -運営の継続に向けた課題を中心に-

実際にはそれだけでなく関連した口頭発表もあり、

日本生態学会
佐久間大輔 2017自由集会 [W15-5] アーカイブ活動への市民参画のためのバックヤード公開―デジタル化と市民科学の二兎を追うアメリカの博物館の模索は日本でも通用するか?

全日本博物館学会 口頭発表
佐久間大輔 2017 市民と博物館の関わりから見る「対話と連携」

特集として
佐久間大輔2017安定した博物館運営のための基盤を維持するために 対話と連携の残る課題全科協ニュース vo47no5「対話と連携から築く博物館運営
−現状を俯瞰し将来を考える −」
http://jcsm.jp/wp-content/uploads/news/PDF/vo47no5.pdf

があった。

この他に、3年ぐらい越しでようやく出た
Daisuke SAKUMA 2017 How should we prepare for the next disaster? The present situation of Japanese biodiversity heritage
http://www.iubs.org/fileadmin/user_upload/Biology-International/BI-Specials/BI_Special_Issue_No-36_beta_2_web.pdf


公益財団法人日本博物館協会 「博物館登録制度の在り方に関する調査研究」報告書(平成29年3月)
https://www.j-muse.or.jp/02program/projects.php?cat=10
もある。

その他に、
佐久間大輔・横川昌史・釋知恵子・山中亜希子(2017)「自然史系博物館における子どもワークショップの展開と課題」『子ども博物館楽校』7:18-25
https://www.dropbox.com/s/i2mhgt17j5av760/%E5%AD%90%E3%81%A9%E3%82%82%E3%81%AE%E6%A5%BD%E6%A0%A1sakuma.pdf?dl=0

2015(平成27)年度 博学連携シンポジウム「大学の“学芸員養成“教育と博物館―文化の視野を広げるために―」三重大のアーカイブ


佐久間大輔 2017 地域の核として信頼されるために:行動規範を館の活動に活かすポイント 全科協ニュー
ス47(4):9
http://jcsm.jp/wp-content/uploads/news/PDF/vo47no4.pdf

佐久間大輔 2017 博物館の当事者は誰か――カルチャーをつなぐために
『友の会で語る博物館の楽しみ方 博物館友の会20周年記念誌』 神奈川県立生命の星・地球博物館友の会 http://blog.livedoor.jp/kpmtomo/archives/51953772.html



ICOM NATHIST
DAISUKE SAKUMA 2017
The Role of Local Natural History Museums for Developing Biodiversity Conservation Strategies

等色々書いた。

これも3年越しぐらいのSNS本は、11月に初稿を返却したので今年には出るだろう。まぁこれぐらい仕事しておけば、分野としての貢献はさせてもらっているのかなとも思うけど博物館学雑誌とかに書かないとダメかなぁ。
博物館関係の科研費は現在も研究協力者として関わるものが一つ、申請中の課題が3つくらいある。どれか一つくらいは採択されてくれないかなぁ

展望は組織の独立行政法人化の動きと科研費がどうなるかによってフレキシブルにいきたいと考えている。(まぁ明言できないところが多いかな)

2017年懺悔その2 キノコ関係

きのこに関する昨年の懺悔はこちら

菌学会に行き損ねたので、

関西菌類談話会
佐久間大輔 2017 菌類コレクションはどのようにして形成されるか採集者の多様性  

文化財科学会公開講演会
佐久間大輔 2017 被災文化遺産を有害生物から守る

ぐらいでしか発表していない。(あまり良くない)
全体的にいうと、
昨年の菌学会フォーレのまとめはした。でもそこで発表した内容の投稿はできていない。正月休みに着手中。

具体にはこちら
龍谷大学自然誌研究報告 : 第1報「龍谷の森」の菌類相目録1
https://opac.ryukoku.ac.jp/webopac/TD32021273

佐久間大輔・名部みち代・森本繁雄・田中千尋 2017 2016年度菌学会菌類観察会(大津フォーレ))の狙いと工夫. 日本菌学会ニュースレター2017−2(3月):2-4

保坂健太郎・細矢 剛・佐久間 大輔ほか 2017 2016 年度日本菌学会菌類観察会目録 日本菌学会ニュースレター2017−2(3月):5-10


以下の3本は共著者の皆さんのおかげです。

野村ほか 2017 食中毒を引き起こす有毒キノコの種特異的プライマーによるスクリーニング法の開発
https://www.jstage.jst.go.jp/article/shokueishi/58/3/58_132/_article/-char/ja/

佐久間大輔・木村全邦 2017 失われた奈良県産アカイカタケ標本とその記録 関西菌類談話会会報34:14-15.

Reevaluation of Japanese Amanita section Caesareae species with yellow and brown pileus with descriptions of Amanita kitamagotake and A. chatamagotake spp. nov.
Author links open overlay panel
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1340354017300694

しかし、
この他に
収蔵庫のカビの話や管楽器の話、プライマーの話など3本(いずれも共著)が投稿中なので、まぁ悪くない感じ。あと、菌学会ニュースにも短いお話を書いたのでもうすぐ配布されます。

別記事にも書いたけど、2018年の最大の山はきのこ展。そこに向けて書物をし、標本を集め、キャンペーンを張るのが今年の展望。

民間助成金も、科研費も幾つかの野望を持って応募してみているが、それもきのこ展が一つの焦点になるようになるように描いてみてはいるのだが、果たしてどうなるか。さてさて。

2017年懺悔その1 生態学・里山関係

昨年の懺悔メモ
には
「展望】
キノコと里山の論文は書いてしまう。本も夏前脱稿を目指して書く。草山の件は生態学会に間に合わせ
なくっちゃ。

とある。申し訳ありません。書けていません。実は本の一節を依頼されていたのですが果たせませんでした。痛恨の極み。改めて春までに書きたい(書けなければもしかしたら特別展の図録が最初になっちゃうかも)

【やったこと】
いわゆる学会発表は

日本生態学会
佐久間大輔 2017 過去200年の大阪周辺の景観変化から考える都市と里山
http://www.esj.ne.jp/meeting/abst/64/I01-12.html

第9回文化景観研究会
天満和久・佐久間大輔・道盛正樹 2017 大阪府能勢町の生物多様性ポテンシャルに支えられた銀寄クリ林景観

「地域自然史と保全研究発表会 関西自然保護機構2017年度大会」
 P12:キノクニベニシダとは何か?:数見保則・佐久間大輔(大阪市立自然史博物館)
 P13:科学と環境政策のための根拠標本の行方:佐久間大輔(大阪市立自然史博物館)
ぐらいでした。

里山関係ではほかに主なお座敷は

Osaka City University International Symposium
"Symbiosis of People and Plants for the Future of the City" (June 10-11, 2017)
History of Woodland - What We Can Trace in Their Biodiversity

佐久間大輔2017「大阪の里山と自然」大阪みどりのトラスト協会森人塾(2017.10.15)

ぐらいかなぁ、シンポジウムは
大阪みどりのトラスト協会「里山"いこま" を、まもり、つかう活動交流会 」
関西自然保護機構「都市が里山に関わるということ 森里川海と都市住民」
などをコーディネート

それに対して書いた物は
佐久間大輔 2017. 高校生の課題研究、ポスター発表を考える ― 多様な人材育成のために ―. 大阪の生物教育(大阪府高等学校生物教育研究会誌) 44:59-60
佐久間大輔 2017. 大阪の生物多様性を維持するために−森里川海の多様性ホットスポットの保全と地域・都市における合意形成の重要性−地域自然史と保全. 39(1) 29-36

の2本だけ、とは情けない。(みどりのトラストの会報とかはあるけど)

でも、まぁ
季刊「政策・経営研究」に主著2本+共著が一本投稿済み
日本生態学会誌に1本投稿済み(現在リビジョンを要求されている段階)
なので、まぁ少し許せる感じ。

【進行中のプロジェクト】
・大阪市生物多様性戦略(案外時間を取られている)
もう少しするとパブコメ段階になります。

京都府生物多様性地域戦略(意見募集、1月12日まで!)

・能勢・吹田での森里川海実証事業。これが上記の関西自然保護機構のシンポジウムや書物、文化景観研究会につながっている。クリ林の価値を少し考える切っ掛けにしたいと考えています。これはもうしばらく関わっていくことになるでしょう。

・草山プロジェクト
能勢の話にも関わるものなんだけど、この3月の日本森林学会で少し話します。
3月でプロジェクトが一段落できるか。もう少し続くか。。

【今年の展望】
まずは生態学会誌の原稿直しをして、キノコと里山の話を投稿したい。
能勢、和泉葛城あたりに引き続き関わることになるだろうと思われるのでここもちゃんと仕事にしていきたい。

2017年総括と2018年年頭所感

あけましておめでとうございます。
2018年、平成30年、戊戌(つちのえいぬ)年、
国連の世界年は今年がすっぽりと抜けているらしい。
ワタシ的には2度めのきのこ展の年になります。
なんやかんや皆様にも色々お願いをしたりご迷惑をかけたりだと思いますが、何卒ご容赦そしてご協力ください、と前もって感謝とお詫びを。

さて、Blog的には毎年念頭に『懺悔』と称して昨年度の成果の未達を嘆く、というのがローカルルール。
これは私が学生時代に菌類関係の院生の自主ゼミで冬の間にシーズンの総括と来季の飛躍を誓う!という研究計画ゼミをそう呼んでいたところから来ている。この懺悔ゼミ、当博物館では年初のゼミで全員が年初の誓いを立てるというかたちで普及しているのだが、言い出しっぺとしては早めに自分の総括をしておきたいと思いBlogにあらかじめ書いている。
ちなみに前回のきのこ展の前年2008年の総括は
こちら
進展してねー。

さて、このエントリーでは成果に直結しないことを総括しておこうかな、と。
2017年はセントルイス、ピッツバーグと2回のアメリカ、チェンマイ周辺と北部タイへと海外遠征が続いた。まとまった時間、国際的な文脈でいろんなことを考える時間があるのは貴重な体験だったと思う。ICOMのこともあり、自分のいる博物館の立場や役どころなどをいやでも意識する。

逆に国内的にはろくに遠出しなかったな、という一年だった。それはフィールドも、という意味で。
もう少し大阪のフィールド各地を歩き回りたくもあるが、叶わなかった。
研修がやたら立て込んだり、館内的にもいろんな事を抱え込まなくちゃいけなかったり、ますます時間がなくなっていることは明白。

では2018はどうするか。
首の締まり方はますます激しくなると思う。
そうしたことを全部自分で片付けられるとは思っていないのでまぁ周りを巻き込むとしか言いようがないか。
海外行きは大型のタイ行き案件はちょっと遠のいたので台湾+アルファぐらいの予定だが、幾つかのプロジェクトの進み方によってはわからない。まぁそんなにバンバン行くこともなかろう。
国内は大阪の北や南の案件が手がかかっているのでそちらを中心に、キノコで少し遠出という感じか。
博物館でこれから数年で起こる事をきちんとレポートするだけでも重要な仕事な気もするので、とにかくまっとうに博物館生活を突き抜けることにする。
そしてそれよりも何よりも2018年夏には9年ぶりの「きのこ展」をやるつもりになっている。正月もそのための書物に取り掛かりつつある状況。(まだガッツリの域にまではいっていない)。

その手前の幾つかの片付けないといけないこともあるのだけど、今年のメインディッシュは「きのこ展」。相当そこに向けて絞り込んでいかないといけないので、いろんなことを不義理するかもしれません。

最初に先にお礼とお詫びを述べたのは、そういうわけなのです。



北タイの里山雑感

今朝まで 機中2泊、現地3泊というなかなかの強行軍で北タイの山地照葉樹林とその間に営まれる村の棚田、焼畑を見学する機会を得た。
北タイの里山
東南アジア、熱帯林というイメージの強いタイではあるが、今回訪問したのはいずれも標高1000mを超える地域である。ここにはフタバガキ科の樹木もいるが、シイ属、マテバシイ属、ナラ属(カシの仲間)が茂る。今回は見ることができなかったが、隣国ラオスにはクヌギまで茂っている。熱帯山地林、照葉樹林の続きと言える林だろう。こんな森林の間で村を営み、水田とその周囲の山を組み合わせて生業を営む。この生態系を日本の里山と対比して研究したいという動機はよく分かる。
日本のかつての里山がそうであったように、現代の北タイの里山もまた、都市との結び付きが強い。日本でも炭や柴を都市に出すだけでなく、様々な野菜や漢方薬、特殊な炭などを出して収入を得ていた。現在のタイの里山でも、焼畑を焼いた後に作られるのは、花、マメ、果樹、トマトやレタスなどの野菜、更にはコーヒーなどの都市で消費される作物だ。自給自足的な里山や焼畑ではない。なお棚田の米は殆どが自家あるいは地域で消費されるという。
 もちろん北タイの里山が現在のような姿になったのは、少数民族の定住化政策、麻薬栽培とそこから抜けるためのロイヤルプロジェクトによるテコ入れなど、様々な変遷があってのことであり、都市と結びついた里山が伝統的な姿だというつもりは全くない。
 が、日本が里山イニシアチブみたいなものを推進するのであれば、このタイの里山を否定することはできないだろう。生態系サービスによる生産財を用いて村が発展する(少なくとも見た場所はいずれも拡大している様子が伺えた)という姿に、江戸末から明治に山間の村々が豊かだった日本の姿をやはり重ねてみたくもなる。果たしてこの形は持続的なのか。そこもしっかり見ていかないといけない。
 焼畑は長く熱帯林の破壊原因として石弘之さんの著書の頃から悪役である。確かにアマゾンの幹線道脇に展開している焼き方のスピードは凄まじい。タイの焼畑もどのような展開になっているのか、もう少し過去の研究を眺めてみないといけないだろう(増野さんをはじめ幾つかの研究をしっかり読み込まないと、と思っているところ)。
 今回の熱帯行きは個人的には20歳頃に行った南カリマンタンのバンジャルマシンから奥に入った熱帯雨林伐採現場、D4の秋頃だっけに行った後輩の結婚式でサラワクのクチンから奥に入ったロングハウスに続けて奥深いところ。南カリマンタンが外部資本による皆伐という地域住民と自然との両者vs外部資本、であったのに対し、サラワクはヤシプランテーションの拡大がやはりキーになっていたように思う(もちろんその前駆としての木材収奪はあったのだろうけど)。プランテーションは半ば搾取されながらも地域住民が外部資本に取り込まれている。これら二つに比べ、北タイの里山は木材収奪というプロセスがあまり噛んでいないようにみえる。燃料需要も含めて、それほどの圧力はなく、単に焼畑として利用するために焼いて、休耕してを行っているようにみえる(焼畑がどのように実態として規制されているのかもしっかり調べないといけない)。
大規模伐採なしに、住民の事情(動機)のみで二次林化、耕作が広がっている部分は前の二つとは大きく構図が違い、里山的でもある。
 たった足掛け4日はいっただけのフィールドだが、そんなことを感じた。
 研究をするフィールドの可能性を持って熱帯にはいったのは実は初めて。そもそもこの分野に足を踏み入れた背景にはそれこそ熱帯林問題があった。石弘之さんにも影響を受けた部分もある。菌類に手を出したのも熱帯林の菌根に興味を持ったからという点も大きい。結局は近いところでないと菌類研究は難しいと大学近くにフィールドを張り、里山へと手を広げていくことになったわけだが、そこから一周回って里山ネタで熱帯山地林に行くというのは、自分としては面白い転がり方だよなぁと思ったりもするわけだ。このプロジェクトが採択されるのか、どうなっていくのかまだわからないところだけど、まずは帰ってきての感想としてのメモ。



菌学(に限らずフィールド系)を学ぼうという学生さんへ 特に学芸員資格に関連して

 最初に断っておくけど、この文章は菌学をどうやって勉強したらいいとか、おすすめの教科書とか、おすすめの研究室を紹介したりするものではない。勉強のことは自分のいる大学の先生とか、この人に教わろう、と決めた先生に聞いてください。どっちかというと、そうじゃない部分のお話。学生の皆さんには余計なことの部類に入るかもしれない。
 そもそも、この文章を私が書いている動機は、学生さんのためにという思いやりのこもったものではなく、極めて利己的な、ギョーカイの事情的な要素がプンプンと匂うのだ。正直そんな説教臭い文章を書くような質ではないし、自分がそもそも四半世紀前に、そんなことを素直に聞くような学生ではなかったのをようく知っているのでちょっとどころか結構ためらいがあったりもするのだ。
 でもそのためらいを越えて、書こうか、というのはまさに利己的動機、将来博物館で菌類を担う担当学芸員を一定数は確保しなければ、という事情からなのだ。ほら、利己的でしょ(とはいえ、私はまだしばらくは引退する気もないし、ぽっくり行く予定もないことは申し添えておく)。ただ、もともと博物館学芸員を目指していないで、最終的に(いや最終かはわからんがとりあえずこの20年)学芸員をやってしまった立場からいえば、別に博物館に限らないとは思っている要素でもあるのではとも思っている。もう一つあるとすれば、これから書くことはいわば寄り道のすすめみたいなものだから、教官からは書きにくいだろうなぁ、というのと、人によっちゃダメ出しにも聞こえるかもしれないから、これも今の世の中直接の指導教官からはやりにくいのもかも、なんて思うからだ。指導のしがらみもない私のほうが書きやすいかと思い、遠い回り道をするような書き出しで間合いを探りながらなんとかファイルを消去せずに書き始めているのだ。

 さてと、見取り図を示して書いていかないといつまでも目的地にたどり着かないから、ここで書きたい事を先に示そう。とりあえず3つのことを強調したいと思っている。一つ目は菌学を追求するのにも大変かもしれないけど、つま先立ちしてその他の世界をよく見渡しておくべきだ、ということ。二つ目は、菌学におけるアマチュアの重要性をよく認識しといた方がいい、ということ。三つ目はモノ、情報の処理の流れをしっかり知っとくことは大事かもよということ。
 そりゃ博物館学芸員になるにはそうだろうって?でもそればっかりじゃないと思うよ。一つ目は、菌類の生態を考えれば他の生物との関係なしにやってる菌類のほうが少ないわけで、生活史考えるんでも生態的な機能を考える上でも他分野の人と渡り合ってアピールできることが非常に大事。他の分野で何がいま面白いのかなぁ、これは自分の研究とどこかつながるかなぁということを意識していたほうが将来ポスドクで幅を広げるにしても共同研究の機会を作るにしても大事。そもそも公募の機会は「菌類」の募集じゃないかもしれないしね。他の分野にもからむ仕事をしておけば、採用される可能性だってある(まぁ、私もそうだった)。小さな大学や博物館の生物のポストは、色んな分野がわかること、その中で人と違う専門をもっていることは案外重宝される。人と違うだけじゃダメで、そこそこ色んな分野がわかることも大事。博物館だと他の分野との共同作業多いから、やっぱり大事。菌類専門でポストを取っていくにはこういうことも一つの戦略だと思う。
 二つ目は菌学がプロとアマチュアの両者から成り立っている学問というのを利点として活かすべき、ということでもあります。アマチュア団体との交流しっかりやってると博物館は結構即戦力としてポイント高いと判断されることも多い(少なくとも面接まで行けば)。大学でも社会貢献は重要視されるくらいだし。そういう打算的なことを抜いて、院生の皆さんはライフプランを考えていく上で大学以外の人間関係をもっていることはすごく大切だと思う。大学院を出て教育や企業の現場に行くこともまぁ、ふつうのことだし、そのときに菌類研究をどう続けられるのか、なんてワーキングモデルをもっておくことは大事なことだと思う。何より科学が市民の中にあることをよく理解できる現場だと思いますよ。
 三つ目のモノ、情報の流れを知る、というのは色んな方法があるけど、一つおすすめしておくのは、大学や企業に行くにしても「博物館」という世界を知っておくことは良い経験だと思う。大学で、標本の作り方、保管の仕方、情報の取扱をしっかり学べるところは、もはや少ないのではないだろうか。標本の取扱をまなぶ「資料保存論」、「保存科学」なんていう世界があることは普通に菌学だけやっていると意識しないんじゃないだろうか。博物館経営論も研究機関・教育機関が社会の中に存在している意義を考えるきっかけになるんじゃないか。例の大臣発言でもってちらりと注目が集まった「学芸員資格」だが、大学で必要な単位を取得して申請すると得られる国家資格だ。自分の大学でどうやったらその単位を取得できるのか、どんな形で開講されているのか、まずは調べてみたらどうだろう。もちろん卒業にも学位には関係のない単位だが、学芸員資格関連の単位をとっておくのは、研究者としてやっていくにもプラスになる要素は多いのではなかろうか、と思う。そりゃ単位を揃えるのにはそれなりにいろんな事業を受けなくてはならなくて大変なんだけど。
 学芸員資格を取得するには、大学などで単位を取るほかに2つのルートがある。一つは試験認定。東京で年に一回受験チャンスがある。過去問などはここで公開されている。単位数も多くなったため、一年で全部取得するのはけっこう大変だが、数年かけて全単位合格すれば取得できる。もう一つは、終始または博士を持った人が博物館で【2年以上学芸員補として勤務すれば】審査認定を申請できる。ただし、これも自動的にではなく審査があるので、博物館で単位取得に相当するうような博物館学関連の業績をきちんと上げていることが必要なようだ。
 近年の学芸員資格単位が増えてから、各地の博物館で採用に苦労するケースを良く耳にする。特に研究者試行で学芸員をとりたいのだけど、県などの人事が「学芸員資格」を採用条件に入れているために候補者が極端に減ってしまうケースが少なくないからだ。理科系の学芸員採用に学芸員資格を求めていない博物館もないではないが、逆に言えば、求めてくる所もそれなりに多い、ということだ。博物館への就職を考えるなら、とっておくことを進める。博物館への理解も深まるから、採用選考時にも当然役に立つ(ただし、批判的に学ぶのであれば、だ。どんな分野でもそうだけど)。注意点は学位を持っていて上記のように勤務経験がないと学芸員資格相当にはならないので、「受験資格がない」とはなからはねられる場合も多い、ということだ。
 博物館学の単位は文系的内容が多くて・・という声も聞くがそれは教え方にもよるし、実習はどこを選ぶか、だ。大阪市立自然史博物館での実習は春に自己申告で、大学事務から申し込む。それに漏れてしまったが、どうしてもという菌類関係者は個人的にコンタクトしてほしい。規定にあるように別枠の実習の可能性もある。博物館学の単位が自分の大学や学部で揃わない?そんな場合にも昨今は多くの大学で他大学の単位を申請できるケースもあるだろう。放送大学の学芸員資格関連の講座も単位互換制度などもあり、選択肢だろう。場合によってはその他通信教育などもある。

 学芸員の資格なんてなくてもいいじゃない、という意見もあるだろう。たしかに、資格がなくても、博物館に対する深い理解があれば通用するかもしれないし、就職後、養成し取得するでもいいかもしれない。けれど、博物館法に規定された職種として、登録博物館にはその配置が要請されるという観点から、受験資格に最初から要求してしまう博物館も多いことは現実だ。大きな博物館には資格を持っている人がすでにたくさんいるから、新人の資格が必須でなくてもという可能性はあるが、最初から要求する大規模博物館が少なからずあるというのはやはり現実だ。

 博物館に就職せずとも個人研究者として博物館の振る舞いを理解していれば、資料の保存や社会教育の現場、地域と大学の関係の結び方、そして大学としての経営の方向に至るまで、自分の視点が持てると思う。一研究者としてでなく、社会の中での研究者のあり方を意識することにつながるからだ。フィールドで研究材料を取得し、しばしば地域社会にその還元をする必要がある研究者には、きっと役に立つと思う。

 ちなみに自分の大学で、教官がそういう自然系の学芸員資格所持の学生の養成もしたいなぁという奇特な人がいた場合には然るべき学芸員に集中講義をやってもらうケースもあるだろう。私自身は来年度は特別展を抱えるため全く対応できないけど、再来年度以降であればケースによっては対応できるかもしれないし、仲介ぐらいはできるかも。

 自然系学芸員候補の養成は、比較的大事で急務な課題だと思う。まずは、本人のやる気と意識なんだけれど。色んな分野を眺めて、なおかつ博物館の世界まで単位を取るというのは忙しい大学院生には簡単じゃないかも。だとしたら学部の学生はそういう状況を見こして、先に揃えとくという考え方でもいいと思う。

 学生が時代や業界の今後を眺める構図は私とは違うだろうから、今後5年10年、どういうところにポストが有って(空いて)、自分が研究を長くするにはどういうキャリアプランを想定するのがいいのか、自分なりに虎視眈々と考えていいんじゃないかな。私の視点からは、その一つの可能性は上記のような各ポイントにあると思う。もちろん私が学生の時とは時代は違う。ここまでの話は採用側の事情を含めてのアドバイスだ。違う時代にどういうビジョンで見通して、生き残るべく考えるかは、学生さん次第。
もう少し追記するかもしれないけどまずはここまで。

 

ミドルヤード

今日は某所でとある冊子の企画会議的なミーティングがあり、なんとなく一番古くからやってるわたしがブレストを仕切る展開に。
科学系博物館をめぐる、共通の課題をいろいろと話題にしていく中で、収蔵庫の問題はやっぱり出てくる。
博物館にとって収蔵庫は基本中の基本なんで増設しないのはけしからん、標本は社会の財産なんだからつくるのが当然だ、という議論はマコトに正論なんだけど、それだけじゃなかなか進まないよなぁという非常に現場感覚に溢れた会議なんでもう少し踏み込むことができる。

「標本があふれてる、でも標本は大事だし活用の可能性はたくさんあるよね。でもほっとくとみんな捨てられちゃうよ?」
という現実を前にして、どんな答えを出すことができるか。さっきみたいな正論だけ言ってると話が少しも前に進まないでやっぱり捨てられちゃうかも。

100点もらえる正解がない中で、とりあえずの答えを出してきたひとつがモバイルミュージアムかなぁという議論になった。

それともう一つが収蔵展示、とも呼ばれるミドルヤードなんだろう。
展示室(フロントヤード)と収蔵庫や研究室(バックヤード)の中間で資料に近い距離を作り出す、ミドルヤード。国内だと戸隠地質化石博物館などが意識してるようだ。
このブログでもちょっと書いた2月に行われた研究会でも海外事例などを元にだいぶ掘り下げた議論をしていた。

モバイルミュージアムとミドルヤード、多分あともう一つはなんでも博物館に集中させるのではなくて、地域の中で資料をしっかり維持していくエコミュージアム的な発想、整理なんではないかと思う(もちろんそれらの資料もほっとくんでなくて博物館も協力して守っていくことが大切)。産業遺産なんかはこの発送がすごく大事だと思う。

閑話休題。
会議の後に、Tさんから紹介を受けて、「産廃から始まる創造・想像展」というのを見学した。
産廃の姿を見せて、そこから生まれ変わった什器に囲まれたワークスペースを見学するという、なかなか刺激的なものなんだけど、ワークスペースを見学できるように公開しちゃってるのが面白い。
展示空間と仕事空間が分けられてるのはパーティションロープだけで、打ち合わせは展示側に越境してきてるし、そもそもこの企画がワークスペースの主催者とアートディレクターと材料提供した産廃リサイクル企業で進められているもんで、ワークスペースと言うかプロジェクト自体を「魅せる」のがこの企画みたいになっている。
ワークスペースとの距離を縮める展示空間的なもの、これもミドルヤードなんだろうな、と思った。

でも考えてみたら大阪市立自然史博物館の情報センターやミュージアムサービスセンターはそもそもがバックヤードにいる学芸員との距離を縮めるミドルヤードの走りみたいなもんだろう。
恐竜のプレパレーションラボも、オープンラボも実現できていないけど、ミドルヤードを意識的にもっと整理・整備していっても面白いのかもしれない。
もちろん、場所だけ作ってもダメだけど、何故かうちの学芸員は会議をする時にこういうミドルヤードでやりたがるんだよね。
適度なノイズとか空気感を持ちながら議論をするのは案外大事なことなんだと思う。

大阪市立自然史博物館






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