D' s Basement supplement

キノコ・植物・博物館
このところ通常の更新はTwitterまたはFacebookから、となっています。このBlogはまとまったものを検索可能な形で置いておきたい、という場合のために運用を続けています。 日常を表現しているツイッターはアーカイブ http://twilog.org/sakumad2003/ をご確認ください

ICOM備忘録(会議内容以外のこと)

ICOM京都大会が大変盛況のうちに幕を閉じた。中身も濃かったと思うので良かったよかっただけど、一応反省点的なことのために、中身以外のことについてメモ書きしておく。思いついたらまた適宜追加。


受付
 9/2の受付はセキュリティチェックもあるというので覚悟して前日に受付しておいて正解だったのだが、長蛇の列の原因はセキュリティチェックではなく、受付が4台?しかなかったこと。初日に来る人が多いことがわかっていたのだから、初日だけ台数を増やすとかができたら良かったんですけどね。
 予想より人が多く、前売りがなくなったのはしょうがないとして、ご飯もカバンもない(席もないかもの)当日立ち席券を用意できればよかったね。来た人を追い返すのは最悪の対応なので。

コングレスバック
 いろいろ資料をいただけたのは嬉しいが重い。コーヒーの紙コップを使わずにすむリユースの蓋付きカップでも入ってたら気が利いてるのになぁと思った。

ボランティア
 ボランティア向け研修は伝聞だが、かなり悪かったと思う
 これはコングレの担当者に猛省を促したい。ジェンダー配慮、ボランティアの学び、ボランティアへの敬意、参加してくれたボランティアの満足度すべてに配慮が足りていなかったと感じた

ホスピタリティ
 食べ物が圧倒的に足りなかった。エキシビターもちょっとした食べ物を振る舞えば大人気だったと思う。あれだけ実行委員幹部がミラノでの食事がしょぼかった、食い物の恨みは恐ろしいと言ってたのに

ソーシャルプログラム
 圧倒的に飲み物も食い物も足りない、時間短い、暑い

ジェンダー配慮
 登壇する実行委員会幹部のジェンダーバランスが悪いのは繕いようがないのだが、舞妓に芸姑、という接待文化を「財界が選りすぐりの子を」と臆面もなく言ってしまった某市長は全くいただけない。しかし、このプログラムがジェンダー的に大丈夫か、判断があったのだろうか。

環境配慮
 食事の飲み物をペットボトルの水にしていたことはマイクロプラスチックを始め環境問題に感度の高い参加者からはかなり『残念』という言葉を聞いた。ホント残念。

通訳
 ご苦労様でした。 SoundUDも含めて面白い試みでした。ただし、文字を写すディスプレーの背景色や柄模様はいただけなかった。視認性が最悪でした。

アプリ
 正直使い勝手良くなかったです。会場が全体構造把握しにくいのでやや仕方ないのもあるんですが・・各ICのデータ拾って登録とかされればよかったなぁ


録画
 AAMなんかだとセッション録画や録音などが参加者がアクセスできるような形で公開されるんですが、ICOMはしないのかな。プレナリーとかオフィシャルプログラムと総会だけでもアーカイブ公開してほしい。並行するICミーティング出ていた身としては、強く要望したい。特に総会とMDPP関係。今後の議論のためにも是非に!

【追記】
休憩スペース
 New Hallの端にあったのだけどこういう場所は大事なのでもっと真ん中に広大に確保しても良かったのでは。こういう場所がコミュニケーションスペースとして大事なんだと思う。ご意見くださいパネルは良かったと思いますよ。できればこういうところにもメインホールの映像が中継されると、エキスポ出店者の人にも情報が流れていいんだと思うんだよな。

周辺環境
 せっかくの立地を活かせていないと思う。目の前に見えている山が延暦寺のある比叡山ということを解説するコーナーが有ってもいいし、宝ヶ池公園も活かせていない。なのできのこ観察会を無理やりやってしまったのだが。

出展者
 ふと思ったのだけど、JMMAとか全日本博物館学会、展示学会、日本博物館協会や全美、全科協なども、日本の博物館の現状を示す英語の冊子とか展示とかしたら良かったのに。

【更に追記】
歴彩館
 サテライトになった稲盛ホール、そこへの移動だけでも参加者には不満があるし蒸し暑い中での移動なのに、大人数だから歴彩館を通っての稲盛ホールへの移動は通すな、とボランティアに通達する館の関係者の判断のなんとホスピタリティにあふれていることか。あれで協力したとかよく言う。

その後
 そしてICOMをやって京都の町はどういう博物館行政はどう変わったのか、どう変わるのか。京都だけではなく大阪も、日本もどう変わるのか。お祭りでなく、博物館の力になったのか。このあと何をするかだ。

フィールド調査における安全管理マニュアルを改めて読んで

日本生態学会誌69巻別冊 フィールド調査における安全管理マニュアル を受領、拝読。基本的にはhttp://www.esj.ne.jp/safety/manual/
の改訂版という位置づけ。会員の方はとりあえず配布されたマニュアルの一読を、J-Stage で公開されたら電子会員や他学会の方も打ち出して研究室に1冊常備をおすすめする。
 基本的には大幅改定されたわけではないので事故事例が私的には身近な事故ばかりな私らにはちょっと色々フラッシュバックするものがある。最近ここに載るような大きな事故がないのだとしたら良いことなのだが。
 ざっと読んで気がつくこと。
1.野外調査で研究室の機器を持ち出して調査をするためには実験室の安全マニュアルをどう適用するか、考える必要がある(例えばボンベの取り扱いなんてことがあるし、薬品の取り扱いも)関連する実験室安全マニュアルのようなものも参照先に入れておくと良いよね。
2.ヒヤリハット事例はなんか集めたほうがいいのかも。
3.なにもないのが一番。そのためには、いかに強行軍をなくすか、無理をしない文化を作るか。
あちこちからお前が言うな、と礫が飛んでくるのが目に見えるようだ。
これはたいへん自己反省を含めて、いやむしろ自分に向けて書くのだが野外調査はエクストリームであってはいけない。ビジネスライクに、余裕でできる実験計画であるべきなのだろう。以下のようなことをやってるのは外から見ればアマチュアチック(ここは悪い意味で)でプロっぽくない。つまり、部下や上司として安心して使ったり頼ったりしにくい存在だ、ということになる。

・「強行軍こなしてる俺ってすげぇ」(すごくない)
・「むかしあいつはむちゃやってな」(武勇伝じゃない)
・「フィールド=冒険」(ちがう)
・「金ないから下道で全走破」(偉くない、資金も含めた研究計画に無理がある)

んー書けば書くほど自己嫌悪。締め切りこなきゃ原稿書けない、展示の準備やなんか一切合切含めイーブンペースが苦手な自分の甘さを見つめ直さざるを得ない。年寄りはそう簡単に悔い改められないという開き直りも禁じ手にしておこう。ただ萎縮してもらいたいわけじゃない(そこは反発がある)。でもそんなもんだというふうに肯定しちゃうのは駄目だろう。ネタになるのはやはりそこにやばいものがあるからだ。常識は踏まえた上でのネタでないと成立しない。

無理・無茶はエンターテイメント的要素てんこ盛りだが悲劇とも隣り合わせ。少なくともそこは理解して置かなければ。悲劇を避けたら面白くなくなったとならないような、Thin lineを探すよ、と言ったら反省が足りないと怒られるかもしれない。

まずは取りまとめた関係者の皆さんの努力に敬意を。「フィールド調査における安全管理マニュアル」手にした生態学会員には是非一読をすすめる。

追記:事故事例の最初にある熱帯林でのI教授の事故の後、葬儀の席で当時のセンター長が述べた「Iさん、君はかっこよすぎる」との弔事が今も耳に残る。
探検部、学士山岳会、林冠生物学と切り開いてきた彼はカリスマ的存在で、研究グループは違ったが私も非常に魅力的に感じていた人物だ。その果の小型機の事故による熱帯林での死亡。たしかにあまりにもドラマチックである。寝食をともにした同僚としての弔事に私も涙した。でも、その冒険ヒロイズムは、遠くから彼を見てきたものにはあって良いものだと思うけれど、本当に近かった我々は彼と同じ轍を踏まないことをまずは考えなければならなかった。
それは今の職場でのかつて在職中になくなったH学芸員についても言える。ヒーローとしてみつつも同じ轍は踏まない。
くり返しいうが自己反省を含め、いや自分に言っている。

追記
日本生態学会から、上記の「フィールド調査における安全管理マニュアル 」がPDF公開されました。生態学会以外の方も、生物学に限らず野外調査を伴う方はどうぞご活用ください。 https://www.jstage.jst.go.jp/article/seitai/69/0/69_S1/_article/-char/ja

種分化とボトルネック

種は連続するのか、その認識は主観的(人為的な認識)なのかというのは古典的な命題であり、いろんな議論があるのはもちろん知っているし、ちゃんといろんな議論を把握できていないことも理解しているのだけど
今日思ったことのメモ
FBで書くよりBlogで書くほうが広がらなんじゃないかと思い(なんだそりゃ)
まとまらないけどメモっておく。不勉強ですみません。

・生き物の見た目にはAI認識できるくらい不連続があったりもする(気がする)。どんな生き物でもあるのかわからないけど。ドクツルタケとアケボノドクツルタケにはありそうな気がする。フモトニガイグチとオクヤマニガイグチだと自信ないけど(よくみてないだけ)。
AIで認識できる(つまり形質)の不連続と、ゲノムの不連続は一致するのだろうか。するとおもうけど、そこは確かめてみたい話だ。

・不連続は何故できるか。それは地域的なボトルネックなんじゃないか。平たくいえば、地域的に絶滅しかかること。別に寒くなるとか傾向のあるストレスでなくていい。火山の爆発でも隕石の衝突でもいい、絶滅しかかって個体群サイズが小さくなること、これによって遺伝的な偏りはかなり生まれる。元になった母集団からかなり遺伝的浮動が大きく効いてくる。定型的な方向の進化でなく、中立的な遺伝子にも浮動が効くので、色彩や形態にもだいぶ差が出るだろう。この結果各所で偏った集団ができれば、個体群サイズが回復しても、もとの母集団、あるいは近傍で別の方向に偏ってしまった元同種の集団とは変異が生じている。変異が、(完全にではなくても)生殖隔離を引き起こす要因になっていれば、これらの集団の変異はある程度固定するだろう。

・長い時間が経つとこの種間の隔たりは、偶然の交配などを積み重ねてぼんやりしてくるのであろう。そうはいってもこうしたボトルネックの痕跡はややゆっくりな進化速度を持つ遺伝領域などに
残っているのではないか。(この辺もうちょっと要件等)

・分子遺伝学的な進化速度って、こうしたボトルネックとその後の適応放散の急激な多様化を平均的に表したものという捉え方でいいのであろうか。

・ボトルネックが種分化のメカニズムとして考えられるのであれば、熱帯多雨林の高い生物多様性はどう説明すればいいのだろう。実は熱帯多雨林はすぐ乾燥化したり案外と安定しない環境だとか、というような過程を入れればいいのだろうか。

・絶滅危惧種の多い現在は、このあとでそれらの種が再び生息地を広げる条件が進んだとしたら、種分化のプレイベントみたいな状態なのかもしれない。
もう少し真面目に考えてみないとなぁ(こんなこと誰か言ってるだろうし)

とりあえず思考実験のメモとして

保護対象としてのユキヤナギ

「うちの自治体の保護上重要な植物にユキヤナギが入ってるのだけど、これってあの公園とかにあるユキヤナギ?」というようなことを尋ねられた。
確かに、春先に白い花をつけるユキヤナギは公園の緑化低木としてすっかり定着した感がある。

  wikipedia cc-by-sa 3.0 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A6%E3%82%AD%E3%83%A4%E3%83%8A%E3%82%AE 
もちろん公園のユキヤナギが保全対象なわけではなく、自生のユキヤナギがその地域に植栽によらず昔から生えていたならそれが保全対象となっているだけだ。
とはいえ、自生かどうかは昔から人の生活がある地域ではしばしば難しい。幸いにしてユキヤナギを植えるようになったのはそれほど昔ではないので生息状況を見れば自生か、植栽または植栽から逃げ出したものかはほぼわかるだろう。
古い時代の標本があればますます有力だ。
大阪では自生と思われるユキヤナギの標本は高槻市の芥川、茨木市の安威川それぞれ上流の、岩場で採取されたものがある。これらは場所から言っても年代から言っても自生と考えてよかろう。近畿では他の産地もほぼ渓流沿いの岩場だ。そこから類推して河川沿いのまして上流部なら自生の可能性がある。
だから最初の質問は、そのリストを出した調査での採集地がそうした環境なのかどうかで大きく判断が変わる。リストを出した調査者による標本も詳細な情報もない中ではなんとも判断がつかないのである。(ましてそのリストに他に植栽種があった日なんかには。)

新時代に新しいアプリ「バイオーム」におもうこと。

 Biomeのアプリローンチを、どんなものになるのだろうか、と眺めている。
 生物多様性の問題を認識しつつ、という問題意識には共感しつつも、それをどのように情報の力で解決をはかるのか、アプローチに納得まではできていない。その納得感がいまひとつないところが、応援しようという動きにまでいたってないんだろうか、と自分について分析して見るんだけど、大上段感とアプリの実装の無理矢理感のギャップが生き物見ている人にとっては、「ん?」となっちゃってるんだと思う。でもまぁ、色んな意味で注目されるのは悪いことじゃない。
 いろいろ言われるのはなんにも言われないよりはよっぽどいい。

 さらに言えば、アプリとかwebサービスの世界は、そもそも完璧なものをリリースするんじゃなくてとりあえず動いたらリリースして、市場の声を聞いて改良して、うまくマッチさせて行くというのが常道。80% is good enough. これから面白がってくれるコアなユーザーが付いてくれるか、このアプリとちゃんと組んでくれるパートナーがついてくれるのか、その上で「情報で環境課題を解決」に道がつくのか。
 要は最初の段階でいけてる、とかダメとかでなくて、しばらく走るのを様子みてみよう、ということ。うまくいくようにイベントやキャンペーンも必要だろう、そうしたところで博物館とかもうまく使えると面白いんだけどな、などと勝手に見ている。
 地理情報だって、ポケモンGOまでまともに使われるデータになってないし、LODとかIIIFも社会の中で消費される道はまだまだ未開拓。うまくいったとはいえ同時にポケモンGOで使われ方に迷惑した、と感じている名所旧跡も少なくない。生物多様性情報も「良い使われ方」になっていくためには紆余曲折はあるに違いない。実害がないように素早いいろいろな対応が必要なのは事実だが、それはこれまで出版物やデータベースで博物館もまた苦労してきたところでもある。それでもオープンにすることで守れるものもある。「生物多様性データ」に価値が出てくる世界を作れるならそれはそれで素晴らしい。研究者とは違う面白みやこだわりで動く市場を相手に、圧倒的なデータの積み重ねという現実を作れるか。質は量が作り出す、ともまたいう。

 どんな動きを作り出してくるか。とりあえずはこういう動きが出てくることは歓迎したい。あえて冷めた言い方をすれば、ダメでも第二第三のBiomeがチャレンジしてどこか成功すればいい。スタートアップでそういうもんだ。
 誰もなんにも出てこないよりはよっぽどいい。
 時代も新しくなるっていうんだ、新しいアプローチの様子を見て、みんなでダメなところはダメと声を上げて、それを乗り越えて育つもんは育ってほしい。

ICOM NATHIST講演のお誘い

国際博物館会議京都大会が2019年9月1日から7日に、京都国際会議場周辺で行われる。
この中には、自然史コレクションに関する国際委員会NATHISTも含まれる。9月2日から4日までの各日には京都で午前中に基調講演やプレナリーセッションが、昼からはNATHISTなどの各委員会が開催される。
国際委員会というと「会議」をするように聞こえるが、(もちろんディスカッションが中心の部分もある が、)実態としては博物館に関する国際学会だと思っていただいていい。
なので、自然史博物館にまつわる、様々な世界にアピールしたいこと、すべき活動を発表する場がNATHISTであると捉えてほしい。菌類に関する新しい博物館を菌学会に発表するように、博物館や博物館の活動に関する新たな視点を提供するような事例を発表してもらいたい。

一応参考に、先日全国科学博物館協議会でお話した内容を掲載しておく。

自然史資料を世界の共有財産として保全するために
ICOM-NATHIST の要求する管理者への保全努力と社会との "engagement" の追求
予稿PDF
http://jcsm.jp/wp-content/uploads/2019/02/26case16.pdf
発表スライド
https://www.slideshare.net/sakumad/icomnathist-engagement

全国科学博物館協会による参加費助成
http://jcsm.jp/collection/icom%E4%BA%AC%E9%83%BD%E5%A4%A7%E4%BC%9A2019%E5%8F%82%E5%8A%A0%E7%99%BB%E9%8C%B2%E6%96%99%E5%8A%A9%E6%88%90%E5%8B%9F%E9%9B%86/

講演申し込みサイト
ICOMメンバーでなくても講演はできます。
https://icomnathist.wordpress.com/conference-2019/

後ほど西日本ネットで解説つけます
<追記>
つけました。こちらです。http://www.naturemuseum.net/blog/2019/03/post_71.html

参加者登録サイト
全日程での参加の場合以外は急ぐ必要はありません
講演は1日参加でもできます。(講演日が決まってからの申込みでも1日券は料金変わりません)
http://icom-kyoto-2019.org/jp/reg-guideline.html

2018年総括その4 2019年への展望と抱負

里山・生態学
里山はお誘いしていただいている科研費が当たるか外れるかでまぁどの程度力を注ぐかは大きく変わる。
能勢のこと、和泉葛城山のこと、などなど地域の動きがどうなるかでも変わるだろうなぁ。そうそう、生態学会神戸大会もあるんだった。

博物館学
評価関連のプロジェクトは間違いなく動くだろうと思う。これらは法改正なんかにも絡んでいきそうなので手を抜くわけにも行かない。

文化財保全、というかレスキュー絡みの動きも、ことによるといろいろと動くことになるだろう。
博物館人でいる以上、すべての仕事は博物館学に関わってくるので、雑事を雑に終わらさず記し、記事にするという覚悟で臨まなければならない。

何よりもこの分野では2019年には否応なしに2つのことが起こる。
一つは大阪市の博物館の地方独立行政法人化。インサイダーのものとして何をどう語れるのか、悩みながらも歴史の証人としての発信の責務がある。
もう一つはICOM京都大会である。世界の中の日本の博物館を明確に意識する機会になるだろう。自然史博物館のオフサイトミーティングは大阪市立自然史博物館で行われることになる。

何れにせよ当事者として、お仕事としてこれらは関わることになる。関わる以上は雑事にはしたくない。

きのこ
きのこ展の解説書をあのままで終わらせるつもりはないので、これが自分的には当面の課題。

1月12日から行われる咲くやこの花館の「POPなきのこ展」(謎なタイトルだが)やオオサカきのこ大祭にもまぁ無関係ではいられない。
とは言え2018年のようにキノコ専業ではいけないこともまた確か。
アマチュアの皆さんとの仕事を形にすること、博物館の蓄積を形にすることを中心に、少しずつでも着実に進めていければと思う。

おそらくは2018年よりも更に激しくしんどい状況になるんじゃないかなぁとも、予想するのだが、諦めず、進めていこうと思う。


2018年総括その3 きのこ・菌類

きのこ展

2018年私が何をしたとしか、ということで言えば、やはり特別展を行った年、ということになるだろう。
学芸員にとって、特別展そのものが最大の作品、業績でもあり、来場者がその最大の評価者でもある。
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まぁとは言え、展示にはピアレビューシステムがあまり機能していない。館内では、事後に総括という自己評価の仕組みがあることはあるのだけれど、異なる立場の業界の人からのきちんとした批評というのは受けてみたい。(SNSの一言、ではなく論評として)

オーソドックスな「書いたもの」としての業績としては

解説書として発行した
佐久間大輔 2018 『きのこのヒミツを知るために ─観察から始めるきのこ入門─』大阪市立自然史博物館 100pp.
お求めはこちらからhttp://omnh-shop.ocnk.net/product/1722
があるが、他に

佐久間大輔 2018 きのこ展3つの愉しみ方 標本と図譜から見る、研究者たちの交流. NatureStudy64(7):2-4
がある。これも時間がない中でよく書いたもんだ。

博物館学のところに書いたロジックモデルのものも含め、いくつかの文章をまとめ的に書こうと思っている。
一つはもう原稿段階まで行ってるのでぜひ正月の間に目鼻を付けたい。


この他に
佐久間大輔 菌学を学ぶ学生のための,学芸員資格取得のススメ 日本菌学会ニュースレター2018-1:14-15

佐久間大輔・藤田 博昭・榎本輝彦 2019? 京都市の変形菌:榎本輝彦コレクションより変形菌36号(印刷中)

などがある。

学会発表は
佐久間大 輔 2018 菌類コレクションはどのようにして 形成されるか —採集者の多様性— . 日本菌学会信州大会 2018年5月
名部みち代・森本繁雄 ・大久保泰和・齋木達也・佐久間大輔 2018 青木実 菌類資料の研究. 日本菌学会信州大会 2018年5月
など。

この他に、共著のもので査読に敗退したり再チャレンジ中のものが4つくらいあるんだけど、これらはそのうち花開くことでしょう。

2018年総括 その2 博物館、教育関係

博物館関係
きのこ展関係のものはのぞいてもそれなりに色々書いている。


●前からの課題が形になったもの
佐久間大輔 2018 自然史系博物館をとりまく重層的ネットワーク――博物館のネットワーク
『ミュージアムのソーシャル・ネットワーキング』博物館情報学シリーズ3
考えてみればこの現行の初稿を上げたのは2015年7月の入院中のベットの上。正直もう出ないかと思った時期もありました。
2018年5月の国際博物館の日の講演で話した元ネタも入ってます。
ちなみにその日のプレゼンはこちら


佐久間大輔 2018 共生の時代のアウトリーチとアドボカシー: 生態学コミュニケーターの担うもの. 日本生態学会誌 68:223 - 232
こちらに至っては2013年の生態学会のセッションまとめ的なものです。しかも私はこのセッションのプレゼンテーターでないという。まぁ形になってよかった。

●教育関係でもいくつかの発表といくつかの文章になった
共著者のおかげ。

佐久間大輔 2018 大阪市立自然史博物館と市民科学 ―資料の収集・研究から教育普及までの協働― シンポジウム「新」自然史博物館@台湾国立博物館南面公園分館

佐久間大輔 2018 市民科学のプラットフォームとしての自然史博物館(序論として)サイエンスコミュニケーション協会誌 8(2):10-11

釋 知恵子・佐久間大輔・横川昌史 2018 幼児が出会い・関わり・次につなげる博物館体験のデザイン. 日本理科教育学会岩手大会

●評価 今年から2つほど博物館評価のプロジェクトに参加している。以下の1つ目はどちらというと私は「まな板の上の鯉」。

釋 知恵子・佐久間大輔 2018 特別展「きのこ!キノコ!木の子!」におけるロジック・モデル. 日本文化政策学会 第11回年次研究大会 平成30年11月24日
これはきのこ展まとめとも絡んで話にしなくっちゃ。

佐久間大輔 2018 博物館行動規範における研究の位置づけ. 博物館における研究評価研究会
まだ形には全然していない。。


●ICOM関係
佐久間大輔 2018 ICOM 京都大会 2019に何を求めるのか. 全科協ニュースvol48_no5「ICOM京都大会2019開催まであと1年文化の拠点としての科学系博物館の取り組み」
http://jcsm.jp/wp-content/uploads/2018/09/vol48_no5.pdf

●保存科学
この分野はもう1つ2つ書きたかったのだが。
浜田信夫・佐久間大輔 2018. 自然史博物館の収蔵庫と展示室における落下カビ調査. 大阪市立自然史博物館研究報告 72:161-166
https://ci.nii.ac.jp/lognavi?name=ir&lang=ja&type=pdf&id=http%3A%2F%2Fid.nii.ac.jp%2F1504%2F00001299%2F&naid=120006425249


あと昨年度末だが
レガシーとしての自然史標本を継承・発信するための事例集にもちょこちょこ書いたり
「ただ外国人のためだけでない多言語対応のために」なんて講演をしたり遺贈寄付のことなども少し話しているのだが、形にはできていない。
少しずつ、着実に。

2018年総括 その1 里山・生物多様性関係

毎年恒例の年末総括であります

里山に関する2018年の動きは予想に反していろいろな展開を見せた

●草山
2015-2018年にかけて行ったプロジェクト
「草山」はいつどのようにして里山林となったか―里山の今を理解し管理する視座としてhttps://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15H02855/
のまとめとして
2018年3月の日本森林学会でテーマセッションを開催した。
私のパートは
佐久間大輔 2018 大阪の里山はどのくらい草山だったのか―過去の利用と変遷を考えるhttps://www.jstage.jst.go.jp/article/jfsc/129/0/129_749/_article/-char/ja

さらに
そしてこの内容を『生物科学』70(4)に特集として投稿したことが最大の進展といえるだろう。
多分年を明けてしばらくしたら、刊行されるはず、、、です。

ちなみに、これのもとになる話の一つは
佐久間大輔・風間美穂 2018 きのこから大阪の里山を考えるいくつかのヒント. Nature Study 64(9):2-5
としてすでに刊行しています。マツタケ話は改めてまとめたいなぁ。

あと、こんなものも書きました
佐久間大輔 2018. 生物多様性保全と里山管理.「人と植物の共生 ―都市の未来を考える―」(「人と植物の共生」編集委員会編)大阪市立大学、大阪:17-21.

●能勢
昨年に引き続き、森里川海事業に関係して能勢と吹田といったような農村と都市の交流の議論を今年も続けた。8月末には吹田市でのフォーラムもあったのだが、いつものようにパネルディスカッションコーディネーターをさせていただいた。
http://www.city.suita.osaka.jp/home/soshiki/div-kankyo/kankyoseisaku/biodiversity/_91931.html

実は能勢に関してはちょっと大きな申請をしてそこに結構力を使ったりもしたのだが、まぁうまく行かなかったので改めて何かの時に。(一部は天満さんに上記の特集の中で原稿にしてもらった)


●昨年結構時間を取られたのが大阪市の多様性戦略は
とりあえずこういう形で公表されました
大阪市生物多様性戦略http://www.city.osaka.lg.jp/kankyo/page/0000431225.html

まぁ正直課題も多く残り2年後の改定に向けてのステップと位置づけているところなのだがそうしたこともあり、以下のようなまとめを書いた。

佐久間 大輔 2018 都市域における生物多様性戦略を考える(試論として). (特集 都市の生物多様性地域戦略の課題と展望) 地域自然史と保全 40(1), 53-58


●生物多様性協働フォーラム関連も収穫の一年となった。
つい最近出たものとしては

西田貴明・橋本佳延・三橋弘宗・佐久間大輔・宮川五十雄・上原一彦 2018 多様な主体の参画と協働を促す交流イベントの生物多様性の主流化への効果−普及啓発イベント「生物多様性協働フォーラム」の実践とその効果の検証. 保全生態学研究 23 : 223-244

があるが、その他に(もう年度としては昨年度だが、)季刊政策・経営研究の特集号が出た。
私もいくつかの報告を書いた。

佐久間 大輔・濱崎 加奈子 2018 文化多様性から生物多様性への気づきを. 季刊 政策・経営研究2018-1:58-67

佐久間大輔 2018 生物多様性保全を社会の中で実現するために. 季刊 政策・経営研究2018-1:87-94

西田 貴明・橋本 佳延・三橋 弘宗・佐久間 大輔・宮川 五十雄・上原 一彦・舛田 陽介 2018生物多様性の主流化に向けた課題と展望(まとめ).季刊 政策・経営研究 2018-1:106-115

これらはこちらから読むことができる

更に派生的ですがこんな講演にも繋がりました。
佐久間大輔 2018 自然への気づきと 感情的理解のための 生物文化多様性 2018.11.23 「野生生物と社会」学会@九州大学伊都キャンパス
若干かぶるようなかぶらないようなテーマ。これもなんか書かないとなぁ。

この他、生物文化多様性の関係で

台湾にも行ってきました(2018年11月)

イスラエルから帰り、自然史フェスティバルといくつかの学会をこなし、バタバタと台湾にもでかけてしまった11月でした。これは「新」生態博物館というシンポジウムで、市民科学の振興の上で、自然史博物館の役割を見つめ直す取り組みで、日本からは大阪自然史と琵琶湖博物館が参加、講演とともにデモンストレーションも行わさせていただきました。初の台湾でしたが、今後も続く交流になりそうに思いました。





美味しいものも色んな場所も見させていただきましたが、そのへんはフェイスブックのタイムライン、11月後半をご覧ください。(公開にしておきましたので、フェイスブックをお使いでない方もご覧いただけます)

イスラエルに行ってきました(2018年11月)

10月の末にきのこ展を終え、一週間でとりあえず片付け、11月頭からイスラエルへ行ってきた。来年のICOM京都大会での自然史博物館委員会の準備のためだ。
イスラエルという、まぁ一生の間にそう何度もいきそうもない場所であったが、博物館学的にも、歴史観の上でもなかなか刺激的な経験であった。今回はツイッターと言うよりはフェイスブックに多めに投稿していたので、主だったところを埋め込みながら、まとめておいた。
食べ物やその他のエピソードはフェイスブックの11月前半の記事をさかのぼってみてください。
公開に設定してあります。

オフィシャルの記事



ビジネスミーティング

↑これは理事会にオブザーバー参加していた様子。

テルアビブ大学でのセッションと見学。

教育系の発表も多く、なかなか刺激的でした。
スタインハルト自然史博物館

その他
https://www.facebook.com/sakumad/posts/2056154034442254
https://www.facebook.com/sakumad/posts/2056614517729539
https://www.facebook.com/sakumad/posts/2056621587728832

エルサレム
エルサレムでは、ヘブライ大学の自然史コレクションについてのレク、現在計画中の自然史博物館、科学博物館の現在の取り組みなどを聞きました。

もちろん、旧市街も見学。保存のスケールも、状況も、日本とはだいぶ違う。いろいろ考えさせられる。



死海へのエクスカーション



https://www.facebook.com/sakumad/posts/2068273876563603

エルサレム雑感

エルサレム滞在は個人的には観光以上の何かを持っていた。
それは自分の個人形成のバックグラウンドとしてのカトリッククリスチャンとしての背景のなにかであり、ある意味そうしたおかげで民族や宗教、というものを無視せずに現実世界と向き合って文学や歴史の背景理解をしようとしてきた20代の自分との再開のようなものであった。別に隠すつもりもないし、文章としても書いてきたことだが、20前後の時間の多くは、横浜教区カトリック学生連盟というグループに身をおいていた。本部代表まで努めたので、まぁどっぷりと言ってもいいのだろう。土日に仕事を持っている現在、教会に通うという日常は私の中にないが、早朝に一人でエルサレムをさまよった時間にふと自分の中に呼び覚まされたフレーズもあった。

学連の祈り

全能永遠にまします天主
願わくは精霊を遣わし給いてこの集いを祝し
我らをして主の善徳に習わしめ
愛と忠実と深き謙遜とを持って
我らの言葉と活動とを
御身の御栄のために
捧ぐるを得しめ給え
我等の主イエズス・キリストの名によりて
願い奉る
アーメン


たしかなにかの「派遣を求める祈り」のバリエーションであるが、
少なくとも90年代の横浜教区カトリック学生連盟では、例会を始めるときにこれを唱和していた。早朝の聖墳墓教会で祈りの間でふと断片的に思い出し、全文を思い出したのは小一時間ほどたってからだった。自分の中に全文が残っていたのを驚くような、喜ぶような。もうひとつは「学連聖歌」とされていた「おおしくも」かな。

「おおしくも」
おおしくもいさぎよし つわものぞ主のため
そのいのちささげたる あわれそのいさおし
あめつちはよしや つくるともそのみなは
つきせずとこしなえに

主を知らぬ世のために いのちすらおしまで
血潮もて示したる とおつおやのいさお
あめつちはよしや つくるともそのみなは
つきせずとこしなえに


いつわりをゆるさざる けがれなきこころを
ひのもとにかかげたる その愛ぞとうとき
あめつちはよしや つくるともそのみなは
つきせずとこしなえに


記憶だけなのでちょっと歌詞曖昧。いつか、自分の葬儀に学連関係者がいたらぜひ歌ってもらいたい聖歌である。内容はキリスト教伝来の頃の信者、いわゆる26聖人のことを歌っている。

しかし、こうしてみるとどちらも見事に古文調であり、大学生が「インテリ」だった私達より前の時代の名残だったかもしれない。「おおしくも」の方は聖歌集にのっているのと比べてもかなり時代がかっており、「軍歌みたい」という声もあったほど勇壮な感じがある。

まぁ、どういう意味かの解説を高校生にしなきゃならなかったのを思い出す。
検索してもすぐには出てこなかったので、自分用にメモ。

最後のギャラリートークで喋ったこと

きのこ展

今回のきのこ展では9回のギャラリートークを行ったが、最終日に番外編としてもう一度行った。
蛍の光が流れてもお客さんが展示物の前から動かないのを見て、区切りが必要と考えて、16:50分からクロージングアドレスとして行った。
話したのは、
私がきのこの研究に踏み入ったのは大学院から、と比較的遅かったといえるでしょう。
その最初の何もわからない頃に、いろいろ教わったのは関西菌類談話会の上田さん、吉見さん、そして本郷さん、まだ滋賀大学にいらっしゃった横山さんといった方々でした。
そして縁があって、博物館に就職をし、彼らの資料を博物館で引き取ることができました。でも、同時にそこで終わらしてはいけない。
ここに展示したように、多くのアマチュアが研究者と相互に影響をしあい、本郷さんも川村さんや今関さんの影響を受け、川村さんも本草学者や海外の研究者の影響を受けてきました。
そうした、新旧世代をつなぐのは図鑑などとともに、標本でした。今関さんも安田篤の残した標本をもとに研究をし、今井三子も南方熊楠の標本を活用していました。
そうして受け継がれたものを、これからの研究に、これから学んでいただく皆さんにつないでいくために、今回の特別展を開催しました。
先人の膨大な資料が伝えるきのこの魅力で、私も勉強してみたい、自分も標本を作ってみようという人が一人でも現れたら望外の喜びです。そこまで行かなくても、山できのこを探してみようでもいいし、今夜の晩御飯にきのこを食べよう、でも構わないとおもいます。
きのこ展に来てくださった皆さんが、きのこの魅力になにかしら感染して、明日からの自然の味方がちょこっとでも変わっていたらと思います。

本当に最後まで熱心にご覧頂きましてありがとうございました。

IMG_5161

表現としての博物館展示(きのこ展の閉幕に向けて)

きのこ展

特別展「きのこ!キノコ!木の子!」は今日を含めてあと2日間で閉幕をする。
いろいろな展示内容を詰め込んでみたが、実現した展示も、作りきれなかった展示もある。

この特別展にあたって、作った解説書は前回同様、きのこを学ぶための入門書としてつくったので、一部は展示とも重複するがほとんどが独立のプロットとなっている。造り手としては同時に2つのプロダクトを準備し、同時にリリースするというかなりしんどいやり方にチャレンジしてみた。

そして同時に、今回の特別展は特に、展示を公開して完成とせずに、だいぶ展示品を入れ替えたり追加したりを続けた。最終週まで。相談コーナーに(なるべく)座り続けたことも含めて、展示を作り上げてリリースではなく、ずっと関わり続けた展示となった。

特別展は通常、「ケースを閉めたら観客にその解釈をゆだねるもの」として捉える学芸員が多い。しかし、毎週末のように開催したワークショップ、ギャラリートークを含め、うちの特別展はムーブメント的な側面が強い。これは、市民参加型で作り上げた特別展では、皆で取り組んできたことのグランドフィナーレ的な側面があるためになおさらでもある。今回の特別展も過去ずっとアマチュアの皆さんに支えられてきたものを表現している、という部分はなくはない。

しかしそれよりも、今回のきのこ展は一学芸員としての佐久間の、盛り込みたいこと、伝えたいことをベースに作り上げたプロダクトという側面が強い。「記名性のある展示」ということは実は私達が大切にしていることでもある。その意味ではこの展示は紛れもなく佐久間のプロダクトとなっている。

以前全国美術館会議の教育普及部会で呼ばれて講演をしたときに、美術系の学芸員と、作家(画家)と、自然系の学芸員で話をしたときに、自然系の学芸員と作家の立ち位置のほうが美術系学芸員よりよほど近い、ということが非常に新鮮であった。これは自然系だけでないかもしれないが、自分の研究を背景に、体系を示す展示を行う場合には学芸員は一人称で語る。
美術館学芸員にとって、一人称は作家(画家)のものである。一人称の声をなるたけ邪魔しないように、小声で三人称で語っているように思う。主張ができるのは作家本人が参加して回顧展をやる場合、などだろう。
配列などで語らせることはあっても、作品の個性を超えて美術史の体系を語るのはうるさかろう、という気持ちはわからないでもない。(でもそういう特別展も時々面白いなぁと思うものに出会う)

今回のきのこ展では、様々な声を展示に載せた。学芸員の想いや目線だけでなく、様々な文学作品のきのこへの言及(はしゃぐ牧野富太郎を含む)、過去の菌学者の目線も文字にして示した。多少うるさいほどだったかもしれない。しかし多くの観覧者は驚くほど解説を読んでくれている、というのは主催者としては予想外の熱量を感じる瞬間だった。

展示の冒頭にインデックスとなる3つの展示を作った。たくさんの標本を展示したのはきのこの見方を伝えたいこと、生活の中のきのこを伝えたいこと、きのこを見つめた菌学者の目線を伝えたいこと、それぞれをフリーズドライ標本、しいたけ栽培やまつたけ狩りのパンフ、図鑑原画を展示したケースとパネルで端的に示した。これは一人称で語る展示でしかできないことなのだろう。

そして、解釈を委ねず、質問に曖昧にではなくできるだけ明確に答え、ギャラリートークでも研究に基づいた菌類の生態を語ってきた。「皆の想像をふくらませる」というのとは少し違い科学でわかること、わからないことにどうアプローチしているのかをできるだけ平易に伝え、「わからない」ことへのチャレンジの面白さ、「知的好奇心」を刺激してきたつもりだ。科学においては勝手に想像させることが好奇心をふくらませるのではなく、過去チャレンジを知り、いくつもの可能性が立たれた先にある追求の中にこそ好奇心がある。過去の積み重ねを嫌というほど見た上での展望、これがグーグルスカラーに書かれた「巨人の肩の上に立つ」である。

科学の特別展において膨らませてほしいものは好奇心であるそれは、語り手の抑制の中で呼び覚まされる想像力とはちょっと違うだろう。研究者が自らの信じることを語る教育的アプローチと、それを抑えて相手の論理を引き出す交流アプローチは異なる手法だ。きのこを求めてやってくる人々を想定して、その沼の深さを、奥深さを示すことを画策して、きのこグッズの展示やキャラに全く逃げず、菌学、きのこの探求というストロングスタイルで展示を語りきったつもりである。

さて、この展示はあと2日で扉が閉まる。そのときは作者としての私も全く手が出せなくなるわけだ。観覧者に対してどういう印象を残したのか、その評価は展示の意図したことに対して、どう効果が上がったのかで評価したいと考えている。その意味では、「展示で伝えたいこと」は私にとっては特別展という博物館事業の求めるゴール、ミッションでもある。それは明示しておいたほうが少々強引な一人称の語り口も理解しやすかろうという見取り図でもあったわけだが、それが成功したかどうかは、まだわからない。アンケートや様々な評価分析で改めて検討してみるべきものだろう。






THETAで空間アーカイブ

横須賀市大滝町のサクマ商店をTHETAでアーカイブしてみた
まずは1F。入り口から奥へ。
横須賀市大滝町 サクマ商店 1F-0 - Spherical Image - RICOH THETA



大滝町 サクマ商店 1F-1 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA



大滝町 サクマ商店 1F-2 - Spherical Image - RICOH THETA



大滝町 サクマ商店 1F-3 - Spherical Image - RICOH THETA



この辺から毛糸コーナー
一番奥の少し下がったあたりだ
大滝町 サクマ商店 1F-4 毛糸売り場付近 - Spherical Image - RICOH THETA



大滝町 サクマ商店 1F-5 - Spherical Image - RICOH THETA



大滝町 サクマ商店 1F-7 - Spherical Image - RICOH THETA



見事に商品がいっぱい。
大滝町 サクマ商店 1F-6 - Spherical Image - RICOH THETA



大滝町 サクマ商店 1F-8 - Spherical Image - RICOH THETA



階段下のあたり
大滝町 サクマ商店 1F-9 階段下あたり - Spherical Image - RICOH THETA



大滝町 サクマ商店 1F-10 - Spherical Image - RICOH THETA




撮影者と社長が写り込んでますが
大滝町 サクマ商店 1F-11 - Spherical Image - RICOH THETA



M2, 2Fはまた。

身近なコケ

コケにも沢山の種類があると聞いたんだけどまちなかに分布する全種の生態と分布を教えてほしいという非常にアバウトな質問を頂いた。
どう答えたものかとおもいつつ、以下のような答えを書いてみた

ご指摘のように「コケ」とひとことで言っても沢山の種類があります。平凡社の「日本の野生植物コケ」によれば、国内のコケ植物は1700種を超えるといいます。ただし、この数字は生物学的にコケ植物としてあつかわれるものだけですので、日常的に「コケ」とよんでいるものはウメノキゴケなどの地衣類も含んでいますから、その数はもっと増えます。
ではこのうち、まちなかにはどのくらいの数のものがいるでしょうか。難しい質問ですが、全国農村教育協会の「校庭のコケ」という本には190種が掲載されています。実際にはこの190種以外の苔も長居公園などにも見つかりますし、大阪では近所の公園にはいない種類も載っています。ですが、コンクリートの目地などによく見るギンゴケやホソウリゴケ、溝などによく見るハリガネゴケの仲間やジャゴケなど、コンクリートの上をオレンジ色に染めている地衣類のダイダイゴケなど、主なものはしっかり調べることができます。図書館などで借りてみるときっと参考になると思います。

参考になるかどうかわかりませんが、以下は無料で閲覧いただけます。

日本の貴重なコケの森 「京都市東山山麓」
https://ci.nii.ac.jp/els/contents110009662797.pdf?id=ART0010139650

大阪府蘚苔類資料1 大阪城公園の蘚苔類
http://www.mus-nh.city.osaka.jp/publication/bulletin/bulletin/62/62-002.pdf

大阪府蘚苔類資料2 長居公園(大阪市)の蘚苔類
http://www.mus-nh.city.osaka.jp/publication/bulletin/bulletin/64/64-004.pdf

大阪府蘚苔類資料3 万博記念公園(吹田市)の蘚苔類
http://www.mus-nh.city.osaka.jp/publication/bulletin/bulletin/68/68-004.pdf

大阪府地衣類資料機ツ控鏝園(大阪市)の地衣類相および 日本新産種を含む興味深い4種について
https://omnh.repo.nii.ac.jp/?action=repository_uri&item_id=1235&file_id=22&file_no=1

博物館は20年後の自画像を描けているか?

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先日、上野の東京文化財研究所で開催された日本博物館協会と学術会議の合同開催による
シンポジウム
これからの博物館の在るべき姿
〜博物館法をはじめとする関連法等の改正に向けて〜

に参加してきた。
日本学術会議 史学委員会 博物館・美術館等の組織運営に関する分科会からは 「21 世紀の博物館・美術館のあるべき姿 ―博物館法の改正へ向けて」 という提言がなされ、
また日本博物館協会からも「博物館登録制度の在り方に関する調査研究」報告書が刊行されたのを受けて開催されたものだ。 100名あまりの参加。チラリと見回しただけでも中部、関西、中国地方からも、参加者がチラチラ。館種も自然、美術、歴史といろいろ。規模も中小館も含めてと、事前の広報が弱かった割には結構意識高い学芸員から注目されたシンポと感じた。
内容について、いずれオフィシャルにも何か出されると思うが印象に残ったものを羅列的に。
学術会議側から
  • 日博協の登録制度の報告書は案外高く評価してもらえた。(リップサービスもあるかも)
  • 人類と社会のため、だけでなく個人のためにという視点。
  • 博物館を研究機関として大学関係者側から認知させるのはまだ案外大変。
  • そのことには現行の学芸員資格だけでは駄目なのだろう。
  • もちろんその一方で学部卒で学芸員になっている人は非常に少ない、という実態があり、大学院を終えて学芸員になっている現実が伝わっていない。
  • 日本の研究をそこ上げるために博物館の研究条件をどう上げていくのか、その合意形成を図っていかなくては。
  • 文明装置としての博物館をあるいは国家の宣伝装置としての博物館のところも気をつけないと。
  • 研究条件の事も相まって、博物館にどういう職が必要なのか、そこらを真剣にデザインして行かないといけない。
日本博物館協会側からは

  • 平成29年法改正で積み残された登録制度と「望ましいあり方」のねじれ。
  • 今回の登録基準案では、ははひろくミニマムなスタンダードをクリアできれば博物館として認め、ただし、定期的な再認証で改善が図られることを求めた。
  • より高い目標ハイアースタンダードとしての基準も作る
  • そうした部分を一気に法制化するのは難しいので自主認証などの仕組みも検討したい
  • 法の体系、所管官庁の機構改革、ICOMの博物館の定義など、様々な要素を睨んで検討を深めていく必要。

こうした議論を聞いて、私が思ったことは、まず個々の博物館で、自分の館にはどんなスタッフが必要なのか。考えておくべきだと思う。
  • なんでもできるスーパーマンは居ない。いや、スーパーマンに何でもやらせていたら単なる雑用係にしかなれないと言うべきか。
  • 学芸員資格にしても、あれは本当に学芸員になるための制度なのか。博物館経営論や展示論にしても、あれぐらいのベーシックなことは事務型の総務担当やエデュケーターも知っておいた方がいい。
  • ましてや事務長や館長になる人間は必須とすべき内容だ。
  • 学術会議の研究職と事務職みたいな二分法で考えない方がいい。研究と教育の両輪で活躍できるのは教員も学芸員も悪くないし、アドミニストレーションなんて研究者がやっても事務的内容がすごく多い。でもそこもやる人は必要。事務だけど研究の面白さ知ってる広報担当や事業連係担当がいたら素晴らしい。
  • これからは博物館のことをよく知ってる学芸員と役所から来た事務とが対立して回すのではなく、物と研究を扱う学芸員だけでなくてアーキビストとか司書とか教育スタッフとかコミュニケーション担当とか、製作スタッフ、そして寄付金集め、行政連携担当などなど、違う専門を持ったプロ集団が博物館を回していくやり方にしていきたい、というかすべき。そのためにどんな専門スキル教育が必要なのか。
  • そんな中で学芸員資格とか教育をデザインしたい。ミュージアムベーシックというのなら学芸員だけでなくてそれらの職種全部を視野にいれるべきだ。
  • もっと言えば、キャリアの中で自分が次に博物館の中でどういう役回りをしたいかセルフデザインできているか、という事も問われるだろう。そのときに、足りないスキルを身につける方策があるか。
  • そんなことが可能なような研修機会がたくさんあるといいと思う。学芸員課程は資格を出して終わりじゃなくてアフターサービスで存在感を示そう。
こうして博物館が20年後の自らの姿を想像して、どういう人材が揃っていてほしいか、今の若手が自分が退職する頃にどういう人材を採用したいのか、想像して制度設計の青写真を描いて、ようやく実現するかどうか。(そんなスピード感ではダメだろう、とは思うけど人材育成の制度を来年変えてもその人材が育って博物館で活躍するのはどんなに早く立って4〜5年位あとだ。制度を変えるのにだった数年はかかる)。
博物館の高機能化や学芸員の高度化はそんなふうに我が事として考えていきたい。

2017年懺悔その3 博物館学

結果的に見ると2017年一番豊作だったのは博物館学関係かもしれない。
それは昨年3月で科研費が一つ終わり、その成果出しとしての報告書がで、それに関連した発表や執筆の機会が多かったことがある。
報告書で私が主に関わったのは以下の5報。

日本の博物館のこれから 「対話と連携」の深化と多様化する博物館運営 
(こちらから各論文を閲覧・取得できる)

山西良平・佐久間大輔 はじめに
佐久間大輔 博物館の市民対話と協働 成長のための今後の課題
和田岳・佐久間大輔 ミュージアムショップは売店でよいか?
佐久間大輔・大原昌宏 資料管理と保全をめぐる対話と連携 -市民参加型のバックヤードマネジメント-
佐久間大輔 博物館総合調査から見た直営館と自治体出資法人指定管理館の現状と課題 -運営の継続に向けた課題を中心に-

実際にはそれだけでなく関連した口頭発表もあり、

日本生態学会
佐久間大輔 2017自由集会 [W15-5] アーカイブ活動への市民参画のためのバックヤード公開―デジタル化と市民科学の二兎を追うアメリカの博物館の模索は日本でも通用するか?

全日本博物館学会 口頭発表
佐久間大輔 2017 市民と博物館の関わりから見る「対話と連携」

特集として
佐久間大輔2017安定した博物館運営のための基盤を維持するために 対話と連携の残る課題全科協ニュース vo47no5「対話と連携から築く博物館運営
−現状を俯瞰し将来を考える −」
http://jcsm.jp/wp-content/uploads/news/PDF/vo47no5.pdf

があった。

この他に、3年ぐらい越しでようやく出た
Daisuke SAKUMA 2017 How should we prepare for the next disaster? The present situation of Japanese biodiversity heritage
http://www.iubs.org/fileadmin/user_upload/Biology-International/BI-Specials/BI_Special_Issue_No-36_beta_2_web.pdf


公益財団法人日本博物館協会 「博物館登録制度の在り方に関する調査研究」報告書(平成29年3月)
https://www.j-muse.or.jp/02program/projects.php?cat=10
もある。

その他に、
佐久間大輔・横川昌史・釋知恵子・山中亜希子(2017)「自然史系博物館における子どもワークショップの展開と課題」『子ども博物館楽校』7:18-25
https://www.dropbox.com/s/i2mhgt17j5av760/%E5%AD%90%E3%81%A9%E3%82%82%E3%81%AE%E6%A5%BD%E6%A0%A1sakuma.pdf?dl=0

2015(平成27)年度 博学連携シンポジウム「大学の“学芸員養成“教育と博物館―文化の視野を広げるために―」三重大のアーカイブ


佐久間大輔 2017 地域の核として信頼されるために:行動規範を館の活動に活かすポイント 全科協ニュー
ス47(4):9
http://jcsm.jp/wp-content/uploads/news/PDF/vo47no4.pdf

佐久間大輔 2017 博物館の当事者は誰か――カルチャーをつなぐために
『友の会で語る博物館の楽しみ方 博物館友の会20周年記念誌』 神奈川県立生命の星・地球博物館友の会 http://blog.livedoor.jp/kpmtomo/archives/51953772.html



ICOM NATHIST
DAISUKE SAKUMA 2017
The Role of Local Natural History Museums for Developing Biodiversity Conservation Strategies

等色々書いた。

これも3年越しぐらいのSNS本は、11月に初稿を返却したので今年には出るだろう。まぁこれぐらい仕事しておけば、分野としての貢献はさせてもらっているのかなとも思うけど博物館学雑誌とかに書かないとダメかなぁ。
博物館関係の科研費は現在も研究協力者として関わるものが一つ、申請中の課題が3つくらいある。どれか一つくらいは採択されてくれないかなぁ

展望は組織の独立行政法人化の動きと科研費がどうなるかによってフレキシブルにいきたいと考えている。(まぁ明言できないところが多いかな)

2017年懺悔その2 キノコ関係

きのこに関する昨年の懺悔はこちら

菌学会に行き損ねたので、

関西菌類談話会
佐久間大輔 2017 菌類コレクションはどのようにして形成されるか採集者の多様性  

文化財科学会公開講演会
佐久間大輔 2017 被災文化遺産を有害生物から守る

ぐらいでしか発表していない。(あまり良くない)
全体的にいうと、
昨年の菌学会フォーレのまとめはした。でもそこで発表した内容の投稿はできていない。正月休みに着手中。

具体にはこちら
龍谷大学自然誌研究報告 : 第1報「龍谷の森」の菌類相目録1
https://opac.ryukoku.ac.jp/webopac/TD32021273

佐久間大輔・名部みち代・森本繁雄・田中千尋 2017 2016年度菌学会菌類観察会(大津フォーレ))の狙いと工夫. 日本菌学会ニュースレター2017−2(3月):2-4

保坂健太郎・細矢 剛・佐久間 大輔ほか 2017 2016 年度日本菌学会菌類観察会目録 日本菌学会ニュースレター2017−2(3月):5-10


以下の3本は共著者の皆さんのおかげです。

野村ほか 2017 食中毒を引き起こす有毒キノコの種特異的プライマーによるスクリーニング法の開発
https://www.jstage.jst.go.jp/article/shokueishi/58/3/58_132/_article/-char/ja/

佐久間大輔・木村全邦 2017 失われた奈良県産アカイカタケ標本とその記録 関西菌類談話会会報34:14-15.

Reevaluation of Japanese Amanita section Caesareae species with yellow and brown pileus with descriptions of Amanita kitamagotake and A. chatamagotake spp. nov.
Author links open overlay panel
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1340354017300694

しかし、
この他に
収蔵庫のカビの話や管楽器の話、プライマーの話など3本(いずれも共著)が投稿中なので、まぁ悪くない感じ。あと、菌学会ニュースにも短いお話を書いたのでもうすぐ配布されます。

別記事にも書いたけど、2018年の最大の山はきのこ展。そこに向けて書物をし、標本を集め、キャンペーンを張るのが今年の展望。

民間助成金も、科研費も幾つかの野望を持って応募してみているが、それもきのこ展が一つの焦点になるようになるように描いてみてはいるのだが、果たしてどうなるか。さてさて。

大阪市立自然史博物館







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