IMGP4879滋賀県の林業センターのプレスリリース以降、再びカエンタケの報道が増えている。私が対応したものだけでも新聞二紙、テレビ二番組。実はこれ以外に、お断りした取材が二件程ある。
さて、ここではなぜカエンタケ報道に対応しているのかそのスタンスを改めて書いておこうと思う。一部にはカエンタケを特に取り上げる必要は無い、という方もいる。私も騒ぎたてたくはない。実際お断りした企画は、芸人が取材したいというものだった。芸人のリアクションで見せるべき話題では無い。その上であえてマスコミ対応しているのはなぜか。(いや正直、時間の取られ方的には遠慮したい仕事ですらある)
ツイッターでなく、ブログで久しぶりに書こうと思ったのは、長くなりそうなのと、切り出すのでなくまとめて読んでいただいた方がいいと思うから。ついでにいうと、ここしばらく収集したデータのまとめレポート用の議論のたたき台をやってみたいという事もある。

1.カエンタケは増えているのか。
観察事例や、博物館の標本からは今世紀に入り、間違いなく増加傾向と言えます。
カエンタケは、20世紀に出された図鑑には、載っていないものもおおく、また載っていても「稀」なきのことされています。激しい中毒が明らかになり、以降図鑑に積極的に載せられるようになりました。観察例数の増加には、こうしたカエンタケに対する認知の向上も影響しているかも知れません。しかし、長年きのこを研究しているアマチュアが20世紀にはほとんどみた事がなかったのに頻繁に見るようになったという意見を述べているのは注目に値します。また、博物館の収蔵品は珍しいものはより意欲的に収集あるいは寄贈される傾向にあります。プロの収集は、一般ほどにはバイアスを受けないと考えられますが、それでも、急激な増加が見られています。

2.カエンタケはなぜ危険なのか。
口にした時の激しい中毒症状はすでに報道されているところです。こんなもの口にしないだろうからわざわざ言わんでも、という声もありますが、あえて反論。
・こんなもの、というのは文化圏により違う。関西は野生きのこを採取して普段食べるという文化が松茸を除き薄い地域です。しかし、東北や信州では、ベニナギナタタケを含め、様々なきのこを積極的に口にする。実際、カエンタケの初期の中毒事例は山形や新潟など、ナラがれが初期に発生し、しかもきのこ食文化の濃い地域で起きている。近年は人の移動も激しく、東北で子ども時代を過ごした人が移住、定年後を関西で過ごすなど珍しくも無い。そうした時に昔の杵柄で事故を起こす事も珍しく無い。こんなもん、というのは食べない人の感覚でしか無い。
・カエンタケが載っていない図鑑で他の候補が無いからと、ベニナギナタタケやホウキタケ類に当てはめてしまう。食べようとする人は、絵合わせで間違える傾向にあります。図鑑に載っていない種類が沢山ある、という前提は、きのこの研究をしている人だけのもので普通の人は図鑑のどこかに載っているはずと思ってしまう。驚かれる事かも知れませんが、まだ日本のきのこは半分以上名前のない状態です。しかも、カエンタケの毒性が明らかになったのは1980年代末、それ以前からの図鑑もまだ沢山売られている状態です。

・触ってだめ(炎症を起こす)、というこれまでにないパターンの毒性。これまで、私を含め多くの観察会では、「毒きのことは、食べてはじめて中毒を起こすのであり、観察は安全だ」、と話してきました。むしろ毒きのこは積極的に手にとって観察し特徴を把握するように、と。しかし、この説明には唯一の例外としてカエンタケの事を話す必要が生じています。これが他の毒きのこと違う警鐘が必要な理由です。数の多さだけならオオシロカラカサタケの方がよほど出会う人がおおい。けれど、オオシロカラカサタケは食べなければよい。カエンタケはそうはいかないのです。触っても大丈夫だった、という人もいます。もちろん野生の生き物ですから、毒の強さもばらつきはあるでしょう、また幼菌から老菌までの間で成分も変化します。古くなれば毒も消え、虫もたかっています。大丈夫な時も確かにありますが、だからといってみな安全なわけでは無い。戦場でも弾に当たらなければどうという事は無い、というような程度の大丈夫、でしょうか。
・知られていない。林の中には他にも危険な生き物はたくさんいます。スズメバチやマムシ、あるいはイラガなどの毛虫、極端なところではクマなどなど。ただこうした生き物に比べカエンタケは圧倒的に知られていない。京都や滋賀では保育園、幼稚園の子どもが遠足で行く森にもたくさん発生しています。少なくとも先生たちには、これが危険なきのこだと、認識してもらう必要があります。

ただし冷静な対応を。
・カエンタケを触らなければいい。スズメバチやマムシのように襲ってくる事はないのですから。生えているのをみながら脇でお弁当を食べてもどうという事は無いでしょう、というくらい。間違ってもいじらなければ。
・赤いきのこをなんでもこわがる、というのは無駄。指の様な形のカエンタケをしっかり把握しましょう。
・野生の生き物ですから、管理者の責任にするのが難しい点もあるでしょう。注意喚起、啓発が必要です。全部取り除くのは困難。きのこをとっても切り株に菌糸は残っています。カエンタケがある世界に私たちは生きているのです。

最後に触ってしまったら、できるだけ早く、石鹸でよく洗ってください。毒成分は油によく溶け、水には溶けにくいので、石鹸で洗うのがよいでしょう。

20110928誤字訂正しました。
朝ズバ!の二次取材でフジテレビ系、別取材で日テレエブリ、スッキリ、他でも流れたみたいですね。2009年当時のバンク映像も使われてました。

以下は日本きのこ学会のリリース
私はこのリリースに関与していませんが、参考に
http://wwwsoc.nii.ac.jp/jsmsb/misc/PR20110916.pdf

読売新聞のニュース
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=46060