昨日、2月9日に西日本自然史系博物館ネットワークでは以下の様なシンポジウムが開催された。
西日本自然史系博物館ネットワーク総会シンポジウム
「自然史標本の保全を考える 日常から緊急時、復興まで」

 阪神・淡路大震災から20年、東日本大震災から4年、自然史系博物館関係者はまず自らのこととして将来に渡る博物館の安全対策を考えなければなりません。
散発的な議論ばかりになりそうな状況を考えると、議論の場をしっかりと確保することは必要なことに感じています。そうした議論の場の前段として表題のようなシンポジウムを開催し、博物館関係者の「対話と連携」のもとに、解決の道を探りたいと考えています。

 主催側が言うのも何だが、非常に中身の濃いものとなった。いずれこの内容は研究報告書などの形でまとめても行くが、備忘録としてこのシンポジウムの概略をメモしておきたいと思う。
1.その時、何が起きるか 都市型水害と博物館 
平田 慎一郎 きしわだ自然資料館

 昨年10月の平成26年10月13日の台風20号による、都市型水害に見舞われたきしわだ自然資料館の状況。建物の構造(ドライウエル)やブレーカー、床下のパイプ、カーペットやエレベーターの仕様や構造などをよくしっておくことが素早い復旧につながる。少数のスタッフしかいない、忙しい時のマスコミ対応は課題。復旧作業の主役が抜かれてしまう。
 周辺との協力、連絡の付け方、事前の行動計画、などは確かに大切でもあり、しかしできていないことでもある。身につまされる内容であった。

2.日常のIPMと緊急時対応はつながるか
高野温子 兵庫県立人と自然の博物館

 収蔵庫管理の日常と非日常。大型収蔵庫の事例になる。小さなトラブルの発見の遅れが虫害発生につながる。非常時の仮設収蔵庫構想など、様々な想定をしている様子は素晴らしい。平常時、どれだけ自分の標本の状況、状態を把握しているか、は緊急時の対応にもつながる。
  
 ここで、先日日本博物館協会でも講演いただいた伊丹昆虫館奥山さんの「阪神淡路大震災」の時の伊丹昆虫館の状況を披露してもらう。机に平積みしていたドイツ箱がとびやすかったこと、本棚などは低いものでも倒れるなど、子供などに危険なことなど、示唆に飛んでいた。平積み放置をしない、などは日常の管理と災害対策がつながる事例だろう。


3.博物館の緊急時対応をめぐる国内の動向
佐久間大輔 大阪市立自然史博物館

 私からは、自然史系も地域の文化施設ネットワークに参加すべきこと、専門ネットワークは専門家同士の交流にどれだけ参画しているか、が重要なこと(そこに経費をケチるべきでないこと)、国レベルの動きとしての国立文化財機構などの動き、SPNHCなどの動きを紹介した。

4.東日本大震災から4年、三陸の現状と展望―これからのネットワークにもと
めるもの
太齋 彰浩 南三陸町産業振興課(自然環境活用センター)

 被災時に何もできなかった南三陸の状況、街の復興、基幹産業の復興に絡めた中でのネイチャーセンターの復興への動き、その中での研究員の個性の重要性などをお話いいただいた。外部からの調査やワークショップが来ることで盛り上がり、施設の価値が目に見えるようになった。「ミュージアムが街の活性化に役に立つ」ことを壮大なフィールドテストで実践されているんだな、と感じた。遠征団なども含め、支援できることをしっかりと見定めて連携していきたい。
この他、データバックアップ、標本分散の重要性などを指摘された。身につまされる。個人的には被災しながらも冷静に海の記録を取られていること、藻場の以前からの調査地での観測が継続されていること、などにも感じいった。

5.自然史標本の保全をめぐる国際的な動向
大原 昌宏 北海道大学総合博物館

 9月に仙台で開催された「DAB 災害と生物多様性」のシンポジウムで世界各地の博物館関係者からの話題提供を怒涛のダイジェストで紹介していただいた。すごい手際の良い要約。国内の自然史博物館関係者がこういう形で国外の事例に触れる機会をもっと作っていかないと、と改めて感じた。

総合討論.自然史標本を保全するための必要な戦略とノウハウ
 
 正直残り時間が少ない中でのディスカッションとなったが、大原さんの報告を踏まえて全体にフィードバックすることができた。平時か有事かのゼロイチではなく、小さな日常トラブルから、ちょっと大きめのトラブル、災害、大災害といろんな段階を考えてそれを避けるために、という考え方をすると災害対応から日常まではつながってくる、その具体的な動きとしてDABで提供された英語プレゼンの翻訳大会とか、他分野との交流とかできて行くといいね、やばそうな拠点はどこにあるのかの洗い出し、というような具体の動きにつなげていこうというディスカッションになったのは良かったように思います。
 また、保存科学を現場学芸員がどう学術成果として表現していくか、その場づくりも大切なように感じています。
 いずれにせよ次のステップに確実につなげることがひつようかな、と。

(参考)西日本での広報
http://www.naturemuseum.net/blog/2015/01/post_53.html