浦幌町立博物館の持田誠さんから新刊の表題書籍を託されましたので、ご紹介いたします。

西日本自然史博物館ネット同様学芸員の交流が盛んな北海道では北海道自然史研究会、北海道博物館教会学芸職員部会などが精力的に多様な活動を展開されています。

その中の活動の一つ、同協議会のwebサイトで連載されたコラム
「北海道で残したいモノ、伝えたいモノ」
http://www.hk-curators.jp/colm-1
はそれ自体、優れたコンテンツであり、個々の専門性を持ち、併せて地域性を持った博物館学芸員の力を総合して作られたもの、という印象が強くあります。

今回同部会の設立40週年(その年月の重みにおののきますが!!)を記念してこの連載を再編集・改稿して一冊にまとめたのが本書、となります。

帯には<北海道ウンチク本>の決定版とありますが、そもそもが博物館とはその土地の様々なストーリーを掘り起こし、集め、価値づけていく存在です。そこで活動をする学芸員たちがわが町、我らが収蔵品、という観点で紹介をしていけば、それこそ、他では聞けない、価値のあるストーリー=ウンチク
であることは当然です。

専門性を持った学芸員は、どの地域にも一揃い揃っているわけではないでしょう。特に北海道のように地域が広く、しかも人口密度の低い(つまりは町村組織の脆弱な)地域にあっては学芸員一人職場の博物館も珍しくありません。こうした地域で、学芸員が交流し相互に保管していることは特に重要なのだと思いますし、これは他の地域においても大変重要なモデルとなるように思います。

記事としても北海道ならではの植物・昆虫・化石の地域での話がたっぷりつまり、自然史系学芸員にも、歴史、美術、考古などの学芸員にとっても魅力的な話が詰まっています。他分野の興味の持ち方、調査のアプローチにも触れることができ、面白いものです。

地域で他の博物館とのコラボレーションをする方にも、地域での学芸員のあり方を見直すにも、さらには学芸員と同じく、地域資源の掘り起こしに取り組む若手研究者あるいは実務に関わる方々にもおすすめです。

西日本自然史系博物館ネットワークの今後の活動にも示唆に富む一冊でした。

北の学芸員とっておきの《お宝ばなし》
北海道博物館協会学芸職員部会
定価1500円+税
出版社: 寿郎社 348ページ
http://www.hk-curators.jp/archives/2987
amazon http://amzn.to/2i6hBHC