NHKスペシャル「“冒険の共有” 栗城史多の見果てぬ夢」を見ました。

 内容を一言でいうと、最終的には自身の死という結末を迎えた栗城氏の活動について
「ネットにおけるアンチの声によって栗城氏が追い込まれて引くに引けなくなった。」
と栗城氏の死はネットのせいだととれるものであった。そしてスポンサーやマスメディアが栗城氏の登山スタイルに影響を与えた可能性については触れなかった。

 ネット文化を記録しているサイトを運営している私は、ネットのせいだと言われてしまうと色々考えてみたくなる。そこでこの番組の内容について考えてみた。

(番組を見ていない人にはなんのこっちゃの話になってしまい申し訳ない)

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 そもそも登山とネット、特にSNSとの関係とその危険性や問題点を初めて"きちんと"指摘したのは、私の知る限りでは、他の誰でもなく3年前の私であった。その私から見て、この番組の内容、すなわち栗城氏の死をネットのせいするのは同意出来ない。

 ネットの影響が全くないとは思っていない。しかし、あったとしてもそれは彼を担ぎ上げた支援者やスポンサー、そしてマスコミが栗城氏に与えた影響と比べれば小さなものと考える。

 私が「ネットの影響による遭難死だ」と3年前に指摘したyucon氏とuedayasuji氏はスポンサーがついてるわけではなく、国内の山を趣味で登る一般ハイカーであった。だからこそネットの影響が強く出た。私は彼らの山行記録を全て見た。そして私は過去にネットで起きた出来事について調べ、書き残してきた経験を踏まえ、彼らをネットの影響による遭難死と判断した。

 栗城氏のようにスポンサーやマスメディアがついていれば当然そちらの方が彼に与えた影響が大きい。そう考えないとおかしい。まして彼は普段から登頂資金集めに奔走していたのだ。スポンサーやマスメディアの影響が大きいのは想像に難くない。しかし、番組ではスポンサーやマスメディアの問題点には触れなかった。

 栗城氏は国内の山を趣味で登る一般ハイカーとは違う。実力も登っている山も違う。彼は登頂資金を集めなければならない。そして何より彼を宣伝する存在が必要。極論を言えば登頂資金が集まらなければ、宣伝するマスメディアがなければ、彼はあのような登山スタイルを行ないたくても出来なかった。

 危険な登山をしていた栗城氏を担ぎ上げ、何度も山に向わせたのはスポンサーとマスメディアそして栗城氏を支持した人々ではなかったのか。そしてNHKは過去に栗城氏を特集して担ぎ上げていた張本人でもある。

 ネットの影響が無かったとは言わない。そもそも彼はyoutuberの先駆けといえるような事をしてきた人だ。しかし、ネットを悪者にしつつ、自分達も栗城氏を追い込んだ大きな要素だった事については触れない番組内容はアンフェアだと判断する。

 栗城氏を利用し、追い詰めた人達がその責任をネットに転嫁しようとしたと邪推もしたくなる。

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 番組で言っていた栗城氏を追い込んだネットとは、番組中では具体的な名前は言わなかったが、内容からして「twitter」と「フェイスブック」そして「2ch」の事であった。(2chには「栗城史多まとめウィキ」が含まれると思っていい)

 登山とネットの関係について考えると、ネットは「立場に縛られずに腹蔵なく意見を発信出来る場」として機能してきた。そしてネットに書き込んだ人達の中には、それが匿名であっても実は専門家や山に関わる仕事をしてきた人もいたのだろうと推察する。ネットの書き込みの中には将来を言い当てたものもあった。直近の例では昨年12月に東丹沢で死んだハイカーがいた。このハイカーは一般的ではないバリエーションコースを歩いて滑落死した。このハイカーは何故そのコースを知っていたのか。彼は吉備人出版の登山詳細図を持っていた。登山詳細図が将来事故を招くのではというのはネットで既に指摘されていた事であり、私の知る所では3年前からそういう指摘があった。(注:登山詳細図が悪いとはいっていない)

 栗城氏の登山活動については、このまま続ければ死ぬぞという指摘をネットでよく目にした。問題点も指摘していた。

 しかし、折角栗城氏の登山活動の問題・危険性を指摘しても、栗城氏を支持する人々は危険性を指摘した人達を「アンチ」「挑戦を否定する」「足を引っ張る」と言う場面をこれまで見てきた。そして番組も十把一絡げに「アンチ」とし、しかも栗城氏が死んだ原因ととれる放送をした。こうなるとやはり番組は自分の責任をネットに転嫁しようとしたと邪推したくなる。番組制作側が「それは違う」といっても結果的にそうなっている。

 栗城氏の場合は「死」という結果が既に出ている以上、ネット上の苦言は的を射ていたのであり、それを認めなければ進歩は無い。

 栗城氏がこのままでは死ぬと忠告している存在があって、しかしその忠告を潰した人は誰なのか。栗城氏を死に向わせたのはなんだったのか。スポンサーなのかマスメディアなのか栗城氏を支持した人々なのか、それともネットなのか。勿論本人にも要因はあるだろう。それは山岳界が、山の専門家がタブー無しにきちんと総括してほしい。その上でネットが全ての原因とするのであればそれでいいだろう。

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栗城氏は死に向かった経緯すら都合いいように解釈された。

栗城氏は周りを利用しようとして、実は利用されていた。


彼は死んでなお利用され続けるだろう。
そして、このような事象はこれからも起こり続けるだろう。