歯周病治療

2009年02月23日

Case006 〜フルマウスメタルボンドブリッジ

このブログ、誰か見てくれてるのでしょうか^^;
週末の夜中に気が向いたら書いてます。ご質問や疑問点などございましたら遠慮なくメールでも送ってください。

さて今回は少し大掛かりな症例を紹介させていただきます。一般の開業医ではあまり見かけない症例ですが、私の得意な分野です。


f001除去前の写真は撮り忘れです。重度の歯周病で歯肉が大幅に下がり前歯部は黄ばんで破折した前装冠、臼歯部はすべて不適合の銀歯が入ってました。
下顎の前歯部(犬歯〜犬歯)以外はすべて除冠し歯周治療を施しました。本来は歯肉を剥離し歯周外科治療をしたかったのですが、患者さんの希望もありSRP、キュレッタージによる処置をしました。
除冠した状態でSRPをすればかなり歯肉の状態を改善することができますし、患者さんへの精神的・肉体的負担も大幅に軽減できます。
写真は歯周処置後、支台歯を仮形成したところです。

f002仮歯(Tek)を作製し、仮着しました。
通常のTekではなく、完成補綴物の歯冠部の豊隆、歯軸、リップサポート、切縁の位置等を探っていくためのベースにするプロビジョナルと言われる特殊なTekです。
本来は、歯頸部のラインを左右対称にし綺麗な曲線を作るために歯肉移植や整形を含めた外科処置をしたいところですが、患者さんとの相談の上、求めている審美性のボーダーラインを決めます。
このTekをたたき台にして、患者さんの希望されている歯の形態、私のセンスによる「綺麗に見える形態」「機能的にベストな形態」を探っていきます。

f003前歯部の前後的な歯軸傾斜やカントゥアは患者さんがもっとも気にされる部分です。
リップサポートは患者さんの見た目の年齢まで変えてしまうくらい重要な部分です。
前歯を前方に出せば上唇に張りが出て若返りますが、一歩間違えれば出っ歯になります。この微妙なところを追求していくのが楽しいです。


f006プロビジョナルにてある程度の形態が決まれば形成・印象し作業模型を作製します。







f004上顎前歯部は歯頸部の透明感を出すためにカラーレスにします。
※カラーレスについては後日写真とともに説明します
唇側はディープシャンファーに形成、口蓋側は適合性を重視し見えない部分のみメタルカラーにしますので通常のシャンファーに形成、臼歯部はメタボンの審美性は確保できる程度のシャンファーに形成します。



f005下顎は臼歯ですのでカラーレスにしてません。
費用が抑えられる上に、頬の影になる部分ですので通常の作製方法で十分です。
私の場合、患者さんが笑ったときの口角の位置によってカラーレスにする部位を決定してます。




f007横から








f008反対側








今回は、上顎フルマウスのブリッジで連結、下顎もブリッジではないですが歯周病による動揺がありますので連結して動揺歯を固定します。
多数歯の連結冠や多数歯のブリッジは金属の裏打ち(メタルフレーム)を作ってその上にセラミックを焼き付けていきます。これをメタルボンド(通称メタボン)といいます。意外と古くから行われている作り方で技術はかなり熟成されてますので適合はすばらしく良いです。表面に焼き付けるセラミック自体は日々進化してますので、昔のものと比べ格段に綺麗に仕上がります。


f009いきなり完成させず、まずメタルフレームがピッタリ適合するかどうか試適します。
歯から飛び出ている突起は、後からセラミックを焼き付ける時に固定する棒です。





f010咬合面から見てみると白いものが付いていますがこれはホワイトワックスという白い蝋です。







f011このようにセラミックを焼き付ける前にホワイトワックスを盛って歯冠部の豊隆や切縁の位置をチェックします。






f012犬歯の形態は表情に大きく影響します。








f013歯周病で大幅に骨吸収してしまっている部分も審美的に回復しなければいけません。








f015ホワイトワックスを口腔内に試適します。
旧補綴物除去前は咬合平面がバラバラししたが、フルマウスにて補綴する際は咬合平面を綺麗に揃えることができます。
この状態で細部をチェックし、チェアサイドにてワックスをカービングしていきます。術者のセンスがもっとも問われるところです。




f014口唇を安静にした状態で上顎前歯部の切縁が約2mmくらい見える状態が女性の場合もっとも綺麗に見えます。歯冠長はOKでしょう。
向かって左側の犬歯、側切歯が長いのでカービングします。
忙しくて写真は撮ってませんがその他の歯もカービングし、チェックバイトも採ってます。



スマイルラインなどを細かくチェックし患者さんに確認していただきます。このとき、患者さんと雑談しながら普段の会話のときの表情で歯の形態や切縁のラインに不自然な点がないかどうか何気なくチェックします。



f018そしてセラミックを焼き付け、納品されました。
歯周病で骨吸収が高度に進んでいるとどうしても歯冠長が長くなりそして歯自体が大きくなりがちですが、ちょっと工夫すればこのように自然に美しい形態で仕上げることができます。






f019上顎の向かって右側の臼歯部はブリッジのポンティックで、歯周病により抜歯された部分ですので顎堤が高度に吸収されてます。歯頸部のラインを揃えて、吸収している部分をGum色にする方法もありますが、やや嘘っぽくなりますので、歯頸線に窪みをつけて顎堤に近い部分はシェードを2段階ほど落としました。
この方法が一番無難だと思います。



f020反対側です。








f016上顎咬合面です。臼歯部の咬合面は少し裂溝ステインを付与してます。








f021口蓋側の歯頸部の見えない部分はメタルカラーになってます。完全フルベイクで仕上げることも可能ですが、マージンの適合性を考えると歯周病の方はメタルカラーにしたほうが良いです。
他人から見えることはまずありません。

切縁は透明感を出し、本物の歯と区別がつかないように仕上げてます。



f017下顎咬合面です。









f022上顎の内側はこんな感じになってます。前歯部はもちろんカラーレスです。








f023下顎の内側です。







f024口腔内にセットしました。
自然で綺麗に仕上がってます。切縁の透明感もいいですね。







f014こちらは先ほどのホワイトワックス試適時の写真です。
向かって左側の犬歯・側切歯が長かった部分も↑の完成品では改善されてます。
これが重要な過程であることがお分かりいただけるかと思います。




f025ストロボの関係で黄色くなってますが、実際のシェードはA2、A3のグラデーションで仕上げてます。女性の標準的なシェードです。

下顎の前歯(犬歯〜犬歯)は治療していないのですが、他の歯が綺麗になると急に気になってきたとのことで、急遽ホワイトコートという歯のマニキュアを塗布しました。




今までは人前で笑うときに手で口を隠していたそうですが、歯が綺麗になりその必要もなくなったようです。自然な笑顔を取り戻せたことは私にとっても一番の喜びです。












sakuradental at 00:00|Permalink