2007年11月

2007年11月24日

順番

2歳になった娘に、最近しばしば「順番だよ、順番」と声をかける。だいぶ言葉を覚え自我のようなものが育ってきた分、ほかの子と玩具を貸し借りしたり、いわゆる協調するのがなかなかできない。シャベルを手にしたままほかの子の持っているカップを取ろうとするようなとき、ササッと近寄っては「後で借りようね。順番、順番」となだめる訳だ。
児童書によれば、2歳児にとって手にしている物は、まだ自分自身の延長であり、もう少し自我の輪郭がはっきりするまでは、物を他人と共有することは難しいとか。そんなわけで、最近は妻とともに「順番まてるかな?」キャンペーンを実施中なのだが、なにしろ親父が親父なので、2歳にしてなかなかの不貞腐れっぷりである。こちらも自分に「すぐには出来ねえんだ。順番、順番」と言い聞かせている。

試合のあとで、写真を撮りながらブラブラ調布まで歩く。新しい建売り住宅と、わずかな葉野菜を残した黒い土。中央道を降りる車のテールランプの列。嬌声を上げて駆け抜けていく自転車の小学生たち。だんだんに力を失っていく光のなかで、その色を逃がさないよう慎重にシャッタースピードを決め、その輪郭がぶれないようにしっかりとカメラを握りしめ、シャッターを切る。

線路沿いを歩くうちに、そういえば、調布駅もそろそろ建替えが始まるんだよな、と思い出す。調布から府中に向かう線路沿いは、とてもここから電車に15分乗れば新宿に着くとは思えないほど、鄙びた風景が続く。細い路地の奥には色褪せた空色の米軍ハウスがまだ残っていたりして、思わずハッとしたりする。
それでも我らが飛田給駅のように、だんだんと駅は新しく、ミニチュアのような小さな踏切たちを密かに匿ってきた線路もコンクリート製の高架式に替わりつつある。

調布駅の建替えの話を聞いてから、駅の写真を撮っておこうと思いつつ、そのままにしていた。今日はまだフィルムも3〜4枚残っているし、撮らなかったらこれっきりかもしれないな、と思い駅前の踏切、萬来軒の横からレンズを向けてみる。下りたままのオレンジのバーの内側を、左に曲がって橋本に向かう相模原線と、まっすぐ新宿に向かう特急が、銀の車体にお互いのライトを反射させながらすれ違う。毎日目にしていた景色のはずなのに、52mmのレンズの中にはいつもの親密さはなかった。変な形の交番、暗い蛍光灯の下の小さな改札口、古びた階段を上った先の幅の狭いホーム、そのいずれにも。


以下、メモにて。
・土肥ちゃん、本当にお疲れさまでした。何と言ったらいいのか分からないですが、もがきながらも戦い続ける姿を、俺は忘れないです。ポストギリギリのシュートを左手一本で何本も弾き出した土肥ちゃんが、俺のJナンバーワンGKです。
・福西には、お疲れさまでした、というより、すまない、という気持ち。万全のコンディションではないものの、持ち味は出したはず。これで戦力外なら、一体何を期待して獲得したんだろうか?残り少ない現役生活の、貴重な1年を無駄にさせて、すまない。
・そして、原さん。何人かが原さんのせいだ的な事を言っていましたが、俺はそうは思わない。サイドアタックとプレッシングと4バックが大好きなおじさんだと最初からよく知っていたし、ペナルティに迫ってからのアイデアに乏しいことも分かっていたから、今年の結果は初手からこんなものだろうと思っていました。
・分からないのは、去年あそこまでガタガタになったチームにいきなり3位以内という達成が極めて困難と思われるノルマを課し、チーム再生途上のプロセスを評価しないフロントの考え方。これでは最初から任期は1年と決まっていたのではないかとあらぬ誤解を招きかねない。
・大宮戦の内容は、シーズン初めのチームから比べれば格段に進歩していた。サイドを活かしつつサイドだけに頼らない、攻めの気持ちを持ちながら、緩急、メリハリのある試合運びが出来ていた。3月には散々だったクロスの質も大幅に向上していた。相手が大宮という事を差引いても、方向性は間違ってない、熟成させる価値のあるチームだと思いました。
・次期監督は城福さんでも誰でも好きにすればいいけど、時間だけは十分あげて欲しい。西野ガンバだって最初はグズグズもいいところだった。予算や戦力はまだしも、時間を掛けずにいいチームを作ることなどオシムだってできないのだから。
・昔は神戸や京都のフロントをバカにしていたが、どうやら今度は自分の番らしい。
・拙速で情緒的な俺の東京よ、お前は何処へいくのだ?なんとか今野に残って欲しいと思いつつ、胸を張って残ってくれと今は言えない。
・でも浅利は辞めるな。まだやれる。


窓の外をぼんやりと見ながら、流れていく布田や国領といった馴染みの駅名を眺めるうちに、声を出さずに「 俺も昔ここにいたんだぜ。俺だってここの一部だったんだ」と呟きそうになり、馬鹿らしくなってやめる。たとえ声にしなくても、それは口にしてはならない。すべては順番なのだ。



sakuralemmon at 19:03|PermalinkComments(0)TrackBack(0)clip!備忘録